ハイスクールD×D~堕ちた聖女の剣~   作:剣の舞姫

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お待たせしてすいません。
専門学校への入学準備に忙しくて執筆時間が取れませんでした。


第六話 「炎の悪魔」

ハイスクールD×D

~堕ちた聖女の剣~

 

第六話

「炎の悪魔」

 

「それで、リアス・グレモリー、今日は何故君の実家のメイドが此処に居るのかね?」

 

 紅茶対決が一先ず終息を終え、アーチャーが改めてリアスに尋ねた。

 そもそもリアスの実家のメイド、それもメイド長を務める者が突然この場所に来ているという自体が変なのだ。

 確実に何かあると見て間違い無いだろう。それもリアスの実家関連の厄介事と想定できる。

 

「とりあえず、全員揃ったことだし、アーチャーの疑問に答える意味も込めて説明するわ」

「お嬢様、ここは私が説明しましょうか?」

「いえ、自分でするわ……実はね」

 

 グレイフィアの提案を断り、リアスの口からグレイフィアが此処に居る理由について語られようとした時だった。

 突如、部室内に魔力の波動を感じ、そちらに目を向けてみれば見覚えの無い魔法陣が展開されているのが見えた。

 炎に包まれた魔法陣は、その主が炎に連なる者だという事を明確に表しており、そしてその魔法陣について一誠、アーシア、アーチャー以外は何なのか知っている。

 

「フェニックス家の魔法陣……!」

 

 フェニックス。伝説上で語られる不死鳥と呼ばれる聖なる鳥の名だが、リアス達が悪魔であるという事を考えるのなら、別の意味になる。

 ソロモン72柱が1柱、侯爵の位を持つ序列37位の悪魔、フェニックスこそがこの場では正しいだろう。

 

「ふぅ……久々の人間界だな」

 

 現れたのはネクタイを着けずに着崩したスーツで身を包むホスト風の青年だった。

 紅蓮の炎をものともせず寧ろ涼しげな表情でリアスに目を向ける彼こそが、フェニックスの名を冠する悪魔だ。

 

「やぁ、愛しのリアス……会いに来てやったぜ」

「ライザー……」

 

 吐き捨てるようにリアスが青年の名を口にした。

 ライザー。ライザー・フェニックス、それがこの青年の名であり、今の様子から見るにリアスとライザーの間には只ならぬ関係性が見て取れる。

 

「部長、こいつ誰ですか?」

 

 恐らくは貴族なのだろうが、あまりに品が無いライザーに一誠が少し顔に嫌悪感を浮かべながらリアスに尋ねた。

 リアスはライザーの名を口にするのも、ライザーを視界に入れるのも嫌なのか、彼の方を一切見ずに紅茶を飲みながら一誠の疑問に答えようとはしない。

 一方、ライザーは一誠の無知と言えば良いのか、そんな発言に嘲笑うかのような表情を浮かべている。

 

「おいおいリアス、下僕の教育がなってないんじゃないか? この俺の事を知らないなんて」

「教える必要ないもの」

 

 教える必要は無い。そう思っているのはリアスだけだろう。当然の様に一誠の疑問には傍で見ていたグレイフィアが答えている。

 

「こちらはフェニックス侯爵家の三男であらせられます、上級悪魔のお一人、ライザー・フェニックス様です。将来を有望視されていて、冥界でも屈指の知名度を誇っており、同時に……」

 

 ちらりと、一瞬だけグレイフィアがリアスの方に目を向けたが、直ぐに一誠へと視線を戻し、続きの言葉を口にする。

 

「グレモリー家の次期当主であるリアスお嬢様のご婚約者様でもあります」

 

 空気が凍った、とでも言えば良いのだろう。

 グレイフィアの言葉はまさしくリアスと朱乃、ライザー以外全ての者を驚愕させたのだから。

 

 

 驚愕の事実発覚から少し経ち、ライザーは現在ソファーに我が物顔で座りながら朱乃が淹れた紅茶を飲んでいた。

 

「ふぅ、リアスの女王(クイーン)が淹れた紅茶は美味いなぁ」

「恐れ入りますわ」

 

 いつも穏やかな笑みを絶やさない朱乃が、この時ばかりはその笑顔の質が違った。まるで貼り付けたかのような仮面の笑顔、とでも言うべきか。

 そんな様子を眺めながら、アーチャーは先ほどからそわそわと落ち着きが無いアーシアの後ろに立って何故かアーシアの髪を弄っている。

 三つ編みにしたり、ポニーテールにしたり、ツインテールやサイドポニーなどにして暇つぶしをしながら、事の成り行きを見守っていた。

 

「いい加減にして頂戴ライザー、私は前にも言った筈よ。あなたとは結婚しないし、自分の結婚相手は自分で見つけると」

 

 時折ライザーがリアスの髪や太股に触れていたのが煩わしくなったのか、それとも我が物顔で自身の女王(クイーン)である朱乃にお茶を淹れてもらっているライザーに我慢が出来なくなったからか、リアスが自分の考えを述べてライザーとの婚約関係を拒否した。

 だが、そうもいかないのが悪魔社会の事情だ。ライザーが言うには、先の大戦とやらで純粋な悪魔や72柱の悪魔の大半が滅んでしまった。

 人間など他種族から眷属として悪魔へ転生させる事で増やそうとしてはいるが、悪魔側としては純血の悪魔を何とか増やしたいのが本音だ。

 故に、リアスとライザーの婚約は悪魔側、それもそれぞれの父親であるグレモリー公爵、フェニックス侯爵、それにリアスの兄である魔王ルシファーの総意なのだとか。

 更に付け加えるなら、リアスの実家……つまりはグレモリー公爵家の御家事情もまた、この婚約を簡単に、それこそリアス本人の意思だけで解消出来るほど切羽詰ってないとは言えない状況らしい。

 

「御家潰しなんて、させないし結婚だってちゃんと婿養子を迎えるつもりよ。でもそれはライザー……貴方じゃない、結婚する相手は私が本気で好きになった人とよ」

 

 それはつまり、リアスがライザーを本気で好きになる事は無い。だから結婚するつもりは一切無いという意思表示だ。

 

「チッ……おいリアス、俺もな、フェニックス家の看板背負ってるんだよ。純潔の貴族たるフェニックス家の看板に泥を塗るなんて真似、されるわけにはいかないんだ。もしお前が俺との結婚を拒否するというのなら、俺はお前の眷属全員を消し炭になるまで燃やし尽くして強引に連れて行く事だって出来るんだぜ?」

 

 これ以上リアスが我が侭を言うのであれば即座に実行すると、暗にそう言っていた。

 リアスの頬を掴み、顔を近づけて怒気を孕んだ瞳を彼女に向けるライザーの周囲には熱を持った魔力が収束し、今にも炎となってこの場の全てを燃やし尽くそうとしているのが良い証拠だろう。

 

「おい! 汚い手で部長に触れるんじゃねぇ!!」

 

 その時だった。

 ライザーの言動に我慢の限界を迎えた一誠が飛び出してライザーを指差しながら彼を睨みつける。

 対するライザーはまるで小蝿でも見るかのような目で一誠に目を向けると、少々……否、大分不機嫌そうな表情を見せた。

 

「おい小僧、下級悪魔の分際でこの俺に指図するとは、俺が誰なのか判って言ってるんだろうな?」

「知るか! テメェみたいな下品な焼き鳥野郎が部長に触れるなんて、許せるか!!」

「や、焼き鳥だと!? この、下級の転生悪魔風情が、調子に乗るなぁあああ!!」

 

 即座に顕現した炎がライザーの手から一誠に向けて放たれる。

 このままでは一誠は抵抗する間も無く炎に燃やし尽くされ、その後ろに居るアーシアや小猫、祐斗までもが炎に飲み込まれてしまう。

 流石に止めようとしたグレイフィアだったが、それよりも早く炎は一誠とライザーの間に現れた深紅に染まった槍の穂先に触れた瞬間、跡形も無く消失してしまった。

 

「なっ!?」

「この槍は……」

 

 自分の炎が簡単に消された事にライザーは驚き、一誠は見覚えのある槍に首を傾げたが、直ぐに思い至り、自分の後ろに居る筈の人物へ振り返る。

 

「そこまでにしてもらおうか、先ほどの炎……私のマスターをも巻き込む恐れがあるのでね。これ以上やるというのなら場所を変えたまえ」

 

 槍を消しながらアーチャは先ほどと変わらずアーシアの髪をどこから取り出したのかブラシで梳いて身嗜みを整えていた。

 その視線は一誠にも、そして勿論ライザーにも向けられてはいない。

 

「貴様……何者だ? 悪魔じゃねぇ、人間みたいだが、人間如き下等生物が俺の炎を消せるわけが無い。それに、何で此処にシスターが居る? 教会関係者が来て良い場所じゃないぞ、ここは」

「彼女は訳あって此処に居るのよ。そして彼……アーチャーはアーシアの護衛みたいなものよ」

 

 リアスが簡単に説明した。だが、ライザーに情報を渡すつもりは無いのか、アーチャーが人間ではないという事、そしてアーシアの使い魔的存在だという事は一切説明していない。

 

「これで良し。マスター、今度何か髪に付けるアクセサリーでも作ろうか、君に似合う一品を作ってあげよう」

「本当ですか!? お願いします!」

「うむ」

 

 当のアーチャーとアーシアは、特にライザーを気にした風でも無く、マイペースに自分達の世界を作っていたりする。

 アーチャーは当然として、アーシアもアーチャーと数日共に過ごすだけで随分と図太くなったものだ。

 

「ライザー様、これ以上この場で暴れられるのはお止めください。流石にこれ以上は看過出来かねます」

「……最強の女王(クイーン)にそう言われては、仕方が無いですね」

 

 漸くグレイフィアが出て来た事でライザーも一誠やアーチャーに対する怒りを静めた。

 だが、このままでは話は平行線を辿り、何の解決もしないまま無駄に時間を浪費するだけになってしまう。

 そこで、グレイフィアは一つ解決案を提示した。元々、リアスの性格を把握していたグレイフィアが彼らの両親、それに魔王の許可を得た事で出せる解決策だ。

 

「お嬢様、もしもこれ以上意思を通すと仰るのでしたら、ここは一つ、レーティングゲームで決着を付けては如何でしょう?」

 

 レーティングゲーム。初めて聞く言葉だったため、少しばかりアーチャーの関心がグレイフィアに移った。

 この状況を打開するというたった一つの解決策、そうグレイフィアが口にした以上、ただのゲームではないだろう。

 少しばかり面白い展開になったと思うのと同時に、なにやらこのままでは厄介事に巻き込まれるのではないかという予感が、アーチャーの頭を過ぎるのだった。




入学式を終えたので、少しは執筆の時間がこれからは取れる……と、いいなぁ。

以下、本作のアーシアの設定。ネタバレ含みますので、注意。


名前:アーシア・アルジェント

年齢:16歳

性別:女性

身長:155cm

体重:44kg

スリーサイズ:82/55/81

神器(セイクリッド・ギア)聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)

種族:人間

魔術回路:16本(本人無自覚だがアーチャー召喚時に全て活性化)

魔術属性:癒し

起源:治癒

備考:本人に魔術の素養があるという自覚は無い。アーチャーは気づいているが、あえて教えていないためである。
また、その属性・起源共に癒しに特化しており、アーシアが魔術を習得する場合、治癒魔術に関連するもの以外はエミヤシロウ同様に二流以下になってしまう可能性が高い。しかし、こと治癒魔術に関してだけは一流になれるだけの素養があるものの、魔術回路の本数故に魔力が不足しているので、それを解決しないことには大規模な治癒魔術は行使出来ない。
魔力量が少ないのが原因で現状アーチャーは固有結界の展開は不可能である。否、不可能というわけではないが、仮に展開した場合、アーシアの魔力は1分もしない内に枯渇する。

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