現役生活二十六年。疲れたので、バ美肉して野球解説系Vtuber始めます   作:義藤菊輝@惰眠を貪るの回?

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 ごめんなさい。ちょっと短めです。

 17日と18日は予定があるので更新できないかも。お嬢風に言えば習い事です。
 詳しいことはツイッターに書いていくので、是非チェックして~。
 https://twitter.com/kikuteru_4424


バッティングセンターその2

「どう? 良くなった?」

 

 私の指導を受けてからスマホで自分のスイングを録画し始めたアンディは、打っては動画を見る。を何回か繰り返したあとブースから出てきた。

 彼の顔は少しだけ晴れやかになっており、今のところは順調なのだろう。良いことだ。

 

「津路嶌さん。バットが通過する高さって、どんな感じで考えてますか?」

 

「う~ん。どうだろうな……。私の感覚だと、ホームランを狙う位置と、ファールにする位置って感じで分けてたからね」

 

 キャッチャーによっては、ファールにするゾーンに対して私の苦手な場所だと考えていた人もいるだろう。

 基本的には腰の位置を扇の中心として考えて、アウトハイから右手が伸びきる位置のアウトローまでがホットスポット。それ以外。特にインコースはファールにしていた。

 

「自分が構えた場所から、素振りの時自然にバットが通る位置が中心。そこからアウトハイを上限。どんどん下に下げていって、左手が伸びきる場所までが打ち所」

 

「左手?」

 

「左打者の左手が伸びきる位置だな。私の場合は右手」

 

 私はインコースが打ちづらかった。相手がしつこくインを攻めてくるときは、打席内の立ち位置をホームベースから遠くして、インコースを打ちやすくする工夫もした。

 

「バットを長くしろって言うのは、バットの芯かその付近がアウトだけじゃなくインにも届くするようにって意味だよ」

 

「あっ! ホームベースに近づきすぎないようにってことですか?」

 

 腕が伸びきるときの芯の位置が遠ければ、アウトコースを捌けるようになる。そして、人間の体というのは、伸びきらないときの方が力が出る。自分の狙った位置で、思うように出来る。

 星合さんが言っていた。インコースの球をバンバン流していけば、気づいたらアウトコースに投げられなくなる。と。

 

「バッターって言うのは、成績を残すために手っ取り早く出来ることが1つある。相手キャッチャーを操るのが一番だよ。外国人で初めて2000本安打を打ったヘルススワンズのアレクサンダー・ラミエールも、キャッチャーの研究をしたって言ってたしね」

 

「津路嶌さんもですか?」

 

「流し打ちが多かったのは、単純に力がなかっただけってのもあるけど、ウェイト量増やして筋肉を付けて、バットを送り出すときに使う力を増やしたら面白いくらいホームランが増えた。それまでは、インハイでも何でもとにかく流しのファールにして、手が届かないアウトコースに投げさせなかった」

 

 アンディの高い位置にある肩をぽんと1つ叩く。

 

「せっかく良いプレゼント(からだ)貰ってるんだから。ちゃんと使いこなして父さん達喜ばせてあげて」

 

 打撃は力だけじゃ成立しない。個々が個々に持つ打撃理論を構築している。力と頭。両方を両立した者が打者として成功する。

 

「アンディ、お前をドラフト指名したのは他でもない私だ。自分で言うのは何だが、三冠王の私が信じてる。お前もお前を信じろ」

 

「はい!」

 

 良い返事をしたアンディはもう一度打席に入る。

 さて、問題はアンディだけじゃない。仕事をしながらチラチラとこちらを見てくる女の子。幸田楓花こと西野さんのことも問題だ。

 地上波で敷島洋美の口調をしてしまった私が言うのもなんだが、南川選手と野々村選手が出てくる度にあれじゃやばいだろう。色々と。

 

「言うべきか?」

 

 いや、同じ事務所のVTuber同士だし。どちらにしろ来週顔を合わせる。早いか遅いかの違いになる。

 

 う~ん。と悩み続けた結果思いついたのはマネージャーに聞くというもの。善は急げと電話帳からマネージャーと書かれた欄をタップ。電話をかける。

 数コールもしない内に出たマネージャーに流石だな~。と思いながら用件を伝える。

 

「あの~。恐らく幸田楓花先輩が働いているであろうバッティングセンターにたまたま来ていて、先輩と思われる女の子が仕事をしながらこちらをチラチラと見ているんですけど、挨拶した方が良いでしょうか……」

 

「あー……。ちょっと幸田さんのマネージャーに聞いてみますね」

 

 失礼します。と一言告げて保留にされる。急な用件でもちゃんと対応してくれるんだなー。とかサラリーマンすげー。とか間抜けなことを考えていると、マネージャーとは違う声の男性がすみません。と電話に出た。

 

「お電話変わりました。1期生マネージャーの山内です。津路嶌さんでお間違えないですか?」

 

 6期生のマネージャーはまだ若い声だが、山内と名乗った1期生のマネージャーは渋い声をしていた。多分私よりも年上だと思う。

 山内さんの問いかけに、はい。と短く答えると、今度はバッティングセンターの名前は? と聞かれ、ポートファームだと伝える。

 

「西野というボーイッシュな女性でしたら、幸田で間違いないです。津路嶌さんが宜しければ挨拶してあげて下さい。彼女、あなたが引退したとき泣いて悲しんでいましたから」

 

 引退試合配信もしていましたから。と山内さんに言われた。

 元ではあるが野球選手が、夢を売る立場の者が応援され引退に涙を流してくれたら、感謝を伝えるしかないだろう。

 

「西野さん」

 

「ひゃ! はい! なんですか!!」

 

「もし西野さんが宜しければ西野さん宛にもサインを書きましょうか? 色紙が余っていれば。の話にはなってしまいますが」

 

 良いんですか!! と勢いよく立ち上がった西野さんは、ちょっと待ってて下さいと私に伝え店の奥に消える。少しもしない内にサラの色紙とペンを受け取ると、2枚取り出す。

 

「西野さんの下の名前は?」

 

「マリです! くさかんむりに未だ利かずって書く茉莉です!」

 

 応援ありがとう。と一言を添えてサインを書き、西野茉莉さんへというのもちゃんと入れる。

 ありがとうございます! と言ってくれる彼女に一枚目を渡すと二枚目を書き始める。

 

「えっ? おうえん……よろしく」

 

 書いた言葉は、応援よろしくお願い致しますわ。と、敷島洋美としての言葉。そして、敷島洋美と津路嶌洋弥の二人の名前。敷島洋美の方には中報時代に付けていたことから取った7という背番号を。津路嶌洋弥の方には、球団側が永久欠番にしようかと考えていると水口から聞いた背番号97を。

 宛名はもちろん、幸田楓花と西野茉莉の2つ。

 目が点になってしまっている西野さんへ、どうぞと渡す。

 

「はっ? えっ……。えっ!?」

 

 色紙と私の顔を視線が行ったり来たりする。そんな彼女が面白くて思わず笑ってしまった。

 

「改めて、初めまして幸田楓花先輩。ばーちゃりある6期生、敷島洋美こと、元プロ野球選手の津路嶌洋弥です」

 

「……ひ、ひろみちゃんが……、つじ、しまさん」

 

「津路嶌さん!! 質問がって……ナンパですか?」

 

「もうすぐ45で大学生の女の子捕まえるとか犯罪だろ。アメリカじゃどうか知らないけど」

 

 ちょうど室内に戻ってきたアンディに現状を突っ込まれるがアメリカ人の感覚は知らない。それにコレは先輩への挨拶だ。ナンパじゃない。

 

「来週の顔合わせ、初めてのことばかりなので助けてくださいね。先輩」

 

「はっ、はい」

 

 色々とパンクしている西野さんに、それじゃあと手を振り、アンディのところへむかう。来週の顔合わせは、少し楽しみが増えた。

 

 

 


 

 

 

 今日も来ない。

 

 ばーちゃりあるの事務所入り口が見えるカフェで張り込みを始めてからもう四日が経った。

 なのに、私の目には津路嶌洋弥どころか元野球選手すら写らない。

 

 勇気を出して、私は動き出したのだ。だって彼も、一歩踏み出す勇気が必要だと言ってくれたから。

 今まで動きたくないと、部屋の中にいたいと思っていた感情はどこに行ったのかも分からない。

 それほどまでに私は突き動かされた。

 

 津路嶌洋弥 = 敷島洋美

 

 私の中に出来た答えは絶対的で、間違えようのないもの。

 

「なんで来ないの……」

 

 そんなことを呟いてしまう。別に私は、彼の彼女でも何でもない存在なのに。小学生の頃、一度球場で頭を撫でて貰っただけの存在なのに……。

 カフェ一押しのサンドイッチももう四回目。今自分がいるカフェの隣にも違うカフェがある。明日はそっちで見張ろうかな? なんてぼんやりと思い浮かべる。

 

 張り込み始めた初日は酷かった。

 

 ここ数年間引きこもっていた為に外に着ていけるような服はなく、と言うか、外へ着ていけるような自信が生まれず、やむを得ずボサボサの髪を無理矢理に縛り、化粧の方法なんて知らないのでマスクを付け、黒色のジャージで身を包んだ。

 周りからの視線に耐え家から数分の道のりを自転車で走破し、カフェオレを一杯だけ頼んで窓際の席に座ったが、注文したときの、店員さんの目が怖かった。

 

「なんでこうなったんだろ……」

 

 容姿を馬鹿にされ、性格で弄ばれ、次第に疲れて動けなくなった。あの日、楽しかった日を作ってくれた彼に会えばなにか変われるかも。そう思い、初日の反省を行かした。

 耐えきれなくなったのもあり十六時に張り込みを切り上げた後、ネットで新しい服と化粧を注文し、動画サイトで簡単なメイクの仕方を学んだ。

 届いたスカートはピンク色で、ネットの記事にあった春らしいコーデというものに準えて白色のシャツと合わせる。化粧もよく分からないまま見よう見まねだ。

 くにゃくにゃな髪の毛は三つ編みのお下げにし、お花の髪飾りを付けた。これで少しはマシになったはず。

 

 3日目と今日はズボンだが、それでもネットにある簡単なコーデを真似しているから浮いていないはずだ。

 

「今日もだめなのかなぁ……」

 

 スマホで流れた野球中継は、レッズの南川がダイビングキャッチをしたところだった。




 古畑とか、星合とか、Vのメンバーについても更新していかないと行けないので、物語をかけなかったらそっちをどんどん書いていきます。

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