現役生活二十六年。疲れたので、バ美肉して野球解説系Vtuber始めます 作:義藤菊輝@惰眠を貪るの回?
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なぜこうなった。そう思わずにはいられなかった……。
ことの始まりは今からちょうど3日前。5月24日の日曜日。20時から始まると決まったウィアクラ戦争の準備をしていたタイミングだ。
企画開始から大体20日が過ぎ、牧野くんの『ミルキーウェイ』も、朝比奈さんの『私たちが優勝だよ』も、私たちのチームである『お嬢一行~パンダを添えて~』もおおよその拠点が完成し、作戦のための建築や敵情視察が増えた。
洋民達の悪ふざけによって名付けられた名前に苦笑いしていたワテクシ達だが、企画に参加する以上は勝ちに行く。添えられたパン田先輩だけが大爆笑していたが、準備をしっかりと進めていたのだ。
そんな最中のこと、命先輩が放った一言が現状を作り出した。
◆◇◆
『女子会がしたいのぉ』
ワテクシとしては、いや、津路嶌洋弥としては完全にボール球だった。アウトコースに流れるのが分かりきった右ピッチャーのカーブ。そんな感覚の言葉だった。
だが、これに反応した人が一人いた。
『え? 天才じゃん命様』
同じチームの、香取杏先輩だ。
『じゃろ? んずよ』
『やろやろ!!』
深夜2時だったからこんなノリになったのかは分からないが、それまでうとうと眠たそうな声を出しながら作業をしていた香取先輩が乗り気になり、そのタイミングで偶々ログインしていた女性陣にゲーム内チャットでコラボの誘いが送られた。
那須癒子。歌川鹿子。そして御前巴、香取杏と命菫。さらには、敷島洋美。
「え? ワテクシも入ってますの?」
『いや、入ってないと思ってたの?』
素でなんで? と聞き返してきた香取先輩に頭を抱えたワテクシ、いや、私は悪くない。だって私は男だ。女子会に呼ばれるような存在じゃない。
「ワテクシも女子会に参加して、何を致しますの」
『何ってのぉ? なぁんずよ』
『性癖語ったり、好きな人の話したり……』
「なんで1発目に性癖なんて言葉が出てくるんですの!!」
まあまあまあ、と二人に抑え込まれ丸め込まれた私は、悲しくも女子会に参加することが決定した。それも、敷島洋美のチャンネルで。
◆◇◆
5/11(月)
#那須癒子 #歌川鹿子 # 御前巴 #香取杏 #命菫 #敷島洋美
【本気で】女性コラボらしいですが、ワテクシの中身は男ですわ……【言ってますの?】
って、なんの話ですの」
上位チャット
コメント:まだかな~
コメント:早く早く!
コメント:来たぞ!
コメント:始まった
「ごきげんよう洋民の皆様。なぜか、女子会配信に参加することになってしまった元プロ野球選手の金髪美少女ロリおじさんこと、敷島洋美ですわ」
配信に載せる立ち絵が六人分ともなると、全身なり腰から上を入れると画面がパンパンになってしまうので、いつもの縮尺よりも小さくして並べる。
左から2期生の那須癒子先輩から歴順に並べ、ワテクシの絵が一番右になる。まあ、一番右にワテクシがいる。というのが普段の配信スタイルというだけなのだが……。
「というか、強制的に参加させられた上に司会までさせられるって、かなり酷いことをさせられている気がしますがまあ良いですわ。2期生の那須先輩から自己紹介を」
『はい。どうも皆さんこんいやこ~。2期生で洋美の母、那須癒子です』
『癒子と同じく2期生の歌のお姉さん。健全な配信を目指します!
『嘘ね』
『それは嘘よ』
『え~。ホントですか~?』
『うむ。嘘じゃの』
「まともに出来ますの?」
上位チャット
コメント:どれだけ信用されてないんだよ
コメント:皆否定するじゃんw
コメント:これは草
『え~。健全でしょ? 至ってまともでしょう』
『普通……かしら?』
「歌川先輩が普通じゃないのはいつものことなので、気にせずに次に行きましょう。お願いします御前先輩」
は~い。と気の抜けた声で返事するのは闇のように真っ黒な髪と雪のように白い肌が美しい豊満な体型の女性。
『皆さんこんにちは、皆の女王様御前巴よ。よろしく』
配信中に女性が好きだと発言し、ばーちゃりあるの女性を片っ端からナンパしていったあげく最終的には先輩の那須癒子先輩の包容力に墜ちてしまった残念な女性。
あの、私中身おっさんなので、御前先輩の実年齢は知らないですけど、ほぼほぼアウトな年齢差だと思うので遠慮します。
「はい、スルーします。つぎ、香取先輩」
『ふふっ。やあ、元気してる? ばーちゃりある所属4期生、美少女神聖魔法師の香取杏です』
『童貞陰キャの間違いじゃな』
『どどど、童貞ちゃうわっ! っていうか何言わせるんですか命様!!』
暗い焦げ茶色の短髪である髪形も体形もボーイッシュな女性を、先輩が弄る。どうやらこのメンバーだと彼女が遊ばれる立場らしい。
『うぇ~ん! 助けてよ洋エモン!!』
「洋エモンってなんですの、五右衛門のことですの?」
『え? ゴマえもんって知らない?』
ゴマえもん? ゴマえもん……。だめだ、思い出せない。ただ、聞いたことはある気がする。
「むしろ元プロ野球選手が野球、食事、睡眠以外に時間を使ったと思います?」
上位チャット
コメント:あんず……
コメント:だめだ、噛み合わねえ
スーパーチャット:腹痛い 500円
スーパーチャット:お嬢が50なら連載開始は高校生くらいか? 1,200円
「名前は聞いたことある気がしますが、見たことはありませんわ」
『日本人でゴマえもん見たことない人初めてだ。ゴマフアザラシ型のロボットのことだよ』
『けど、私の旦那高校生の時野球部でしたけど、テレビ見る時間なんてなかったって言ってましたね。あ、大阪松蔭です』
癒子の旦那。つまりは水口だが、あいつもあいつでかなりきつい高校にいる。
『高校野球の練習って、そんなにしんどいものなのか? ワシらはテレビで見るくらいじゃからの、実情はよく知らぬのじゃ』
えっと、これは言って良いのか?
高校の部活というのは、確か三時間か四時間かっていう時間制限がある。が、強豪校は勝つために、あくまでも部員達が
ここ最近は不祥事が続き部の存続が危ぶまれている
「今は松蔭と凛正舎の2強ですが、元々大阪にはCF学園という絶対的な野球部があったんです。そこに在籍していた選手の話を聞くと、やはり凄かったらしいですわ」
全国にある強豪校はそれだけの練習をこなしてきている。1番汗をかき、涙を流し、拳を握り、体をいじめてきたと思っている。
甲子園出場を賭けた地方大会の決勝はその殆どが松蔭との試合だった。世代でもトップクラスのエースがいたが、私たち凛正舎に毎度負けたことで心が折れ、野球をやめたと風の噂で聞いた。
それぐらい、熱の入った3年間を過ごすのだ。
唯一、当時の松蔭と凛正舎にあった違いは、甲子園出場が目的か、その先のプロ野球という世界に鳴り物入りで飛び込むことが目的だったか。の違いだ。私たちは、プロ入りをし、記録に、記憶に残る選手になるために甲子園を踏み台にするつもりだった。
そんな志があったのが私たちの世代だけだったから今は松蔭に負け続けているのだ……。不甲斐ない。
「って、自己紹介が途切れてますわ。脱線するなら自己紹介を終わらせてからにしませんといつまでも終わりませんわ」
『洋美は早く終わらしたいの?』
「ですから! ワテクシは場違いですのよ!!」
ガヤガヤとワテクシを弄る五人。女の子は三人いるだけでも姦しい。なのに今日はそれが五人なのだ。そんなもの、私の力だけじゃどうにもならない。
「後は命先輩だけですわ。早く挨拶してくださいまし。用意したことは……特にありませんが、挨拶だけで10分以上過ぎてますからね!」
『おうおうすまぬすまぬ。愛らしき人らよ、ワシが命菫じゃ。今日は普段のメンバーに洋美が追加されておるのでの、凄く楽しみじゃ』
紫色の綺麗な髪をした1本角の鬼が、挨拶する。
普段は敷島洋美を除いたメンバーでゲームなり企画なりをしている。が、今日は違う。
「ところで、唐突にこの話が決まった訳ですが、台本も何も渡されてないので何をするのか分かっていないのですが?」
この配信のために打ち合わせようのグループチャットを作ったのにもかかわらず、話した内容はただの日常会話だった。
企画についても、特に設けない方が気楽に話せる。と香取先輩に言われてしまい、皆がそれに同調したためにマシュマロを募集することも出来なかった。
「それじゃあこの六人で絡むのは初めてですし、あ、そうですわ。ばーちゃりあるって結構グループ名とかユニット名を作ってますが、五人で配信しているときは名前がついていませんでしたわ」
『それじゃあ名前つけます?』
『そうね~。どうしましょうか』
「とりあえず、ツイッターで募集します? ハッシュタグつけて貰って」
すぐに思いつけない一同に渡し船を出そうと、募集することを提案。歌川先輩がずっと下ネタをグループ名に入れようと必死になっていたので、聞かなかったことにした。乳音頭って、香取先輩を敵に回してます。
「グループ名は一旦……。頭文字取りましょうか、#なうみかみし(仮)で呟いて下さい。どっかでコラボなりなんなりで拾うと思いますわ」
配信画面の左上に急ごしらえで作った#なうみかみし(仮)のテキストを配置する。もしかしたらこの言葉がそのまま使われ続けるかも知れないが、その時はその時だ。
『ここからは台本もないし、ひたすら洋美ちゃんで遊ぼう』
『そうですね。先ずは下の名前で呼んで貰わないと』
『杏の言うとおりね~。お嬢ったら、誰相手にも姓にさんかくん付けでしょう?』
「え? 名前!?」
こっちは全員に対して姓でしか呼んだことない人間だぞ!? 名前呼びとか高校の時までしかしてなかったんだが……。
『ほら、癒子って呼んで?』
『私は、鹿子お姉さんが良いな』
『それなら癒子ママだね』
『私のことは巴よ?』
『杏かんずで良いですよ?』
『ワシのことは菫と呼んで欲しいのぉ……』
この人達頭大丈夫か? 敷島洋美は女の子であるが、声はボイスチェンジャーを使ってバリトンボイスになっているおっさんの声なのだが……。
それに、後輩の嫁にママはダメだろ? 良いのかそれで。
「ワテクシの声で名前を呼んだら犯罪臭しません?」
『気にしちゃダメよ~。ほら、勇気出して?』
上位チャット
コメント:おお?
コメント:確かに犯罪臭い
スーパーチャット:女の子待たせるの? 1000円
〇幸田楓花:私も楓花って呼ばれたい 10000円
「なんで幸田さんがいますの!!」
『え? なになに?』
『楓花先輩が投げ銭したらしいです』
上位チャット
コメント:草
コメント:www
〇幸田楓花:猛獣の巣に妹が行くと聞いて 10000円
コメント:草
「なんで毎回一万円投げますの!」
『あはは、洋美は面白いのぉ』
『ほら、楓花先輩も言ってることですし、さあ! さあ!』
言外に伝わってくる五人からのワクワク感というか期待というかに押された私は、遂に口を開いた。
「……癒子ママ。鹿子お姉さん、ともえ、んず、すみれぇ……。ハズカシイ」
上位チャット
コメント:かわいい(バリトンボイス)
スーパーチャット:ときめきました 120円
スーパーチャット:可愛いんだが! 1,000円
コメント:え? 何この子
コメント:最高
『恥ずかしいついでにお願いしたいんだけど、洋美ちゃん、「鹿子お姉ちゃん、おねし
言うわけないでしょ!!」
口調が乱れたが、反省はしていない。
◆◇◆◇◆
『そう言えば、話変わるんだけどちょっと良い?』
この配信が始まってから大体1時間半。そろそろ終わりに向けて話していかないとなぁ。なんて思いつつ、そんなに上手く進行できないな。なんて考えていた頃、それまでの話をぶった切って鹿子お姉さんが話題を切出した。
良かった、これ以上高校球児の投手と捕手のどっちが攻めでどっちが受けなのかという議論が続いたらどうしようかと思っていた。
「ん? どうしましたの鹿子お姉さん」
『いやね、ウィアクラ戦争の直前くらいから、事務所前のカフェにいっつも同じ女の人がいるんだよね……』
『それってあの子ですか? 三つ編みのお下げで眼鏡かけた女の子ですか?』
そうそう。と鹿子お姉さんと杏が話している。
どうやら、3D配信でのコラボをするために歌子お姉さんがスタジオへ行こうと2、3日続けて事務所へ通ったのだが、その度に居たらしい。
「その子、多分ワテクシが自販機でお水を買ったときに擦れ違った子ですわ。後ろ姿だけだったので眼鏡かけていたかは分かりませんが、特徴は似てますもの」
『え? お嬢って自販機でお水買うの?』
「杏はワテクシをなんだと思ってますの!!」
『けど、洋美は気をつけないといけないよ? 私たちも前世がバレたらやばいけど、それ以上に物議を醸すだろうし』
『え? 洋美ちゃんってそんなに凄い人なの? 私野球全然分からないから……』
『巴。野球知らない巴でも絶対聞いたことある』
「まあ、私の正体を考察する掲示板もありますから」
銭留と濱辰さんの話をしたのは良くなかった。おかげで中報に居たキャッチャーが議論に上がることが多い。
津路嶌? あいつがするわけないでしょ。なんて流れで私の名前はスルーされているが。実際名前として上がるのは
『因みにお水はどのメーカーとかあるの?』
「基本的にはフランスの山のお水分かります? あれを飲んでますわ」
『あのさぁ、前から気になってたんだけど、野球チームのスポンサーに飲料メーカーがいるけど、飲み物の指定とかあるの?』
スポンサー。特に飲料メーカーのスポンサーに選手に対して制限がつく場合がある。多いのは、メーカーの飲み物を飲むように。と言ったもの。
「ワテクシはスポンサーのペットボトルなどの中に普段から飲み続けているものを入れてましたわね」
『ペットボトルはDーカラでも中身はポカウォーターみたいな?』
「正にその通りですわ」
ワテクシの経歴が普通ではないので、基本的には雑談なのだが、プロ野球に関する質問も多い。ただ、彼女たちが気になるように洋民の皆も気になっていることは多いだろう。なんせ、野球が好きで見に来た者はVオタクに比べれば少数だ。
野球を知ってもらえる上にワテクシのことを知ってくれる。この良い機会はまだまだ続きそうだ。
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