現役生活二十六年。疲れたので、バ美肉して野球解説系Vtuber始めます 作:義藤菊輝@惰眠を貪るの回?
追伸、18:00からのバイトだったのに、18:05にアラームで目が覚めた。
それでいいのかアルバイトチーフ……。
6月1日。遂に来た、待ちに待った日。
2月の終わりに初配信を行ってから約4ヶ月。先輩の4・5期生の中にはまだ3Dの体になっていない先輩もいるが、気がつけば凄い数の登録者がいる以上、この話がやってくることに驚きはない。
「ムジカ先輩。スタジオを渡してくださってありがとうございます」
「いえいえ、気にしないで大丈夫ですよ。私も楽しみにしていた側ですし、こうして初3Dのアシスタントをさせて貰えますし」
役得役得! と嬉しそうな表情をするムジカ先輩もとい華鳴さん。
どうやら話を聞くと、彼は彼で千葉京葉シーガルズの大ファンで、その中でもDAICHI選手の大ファンらしい。仕事の合間を縫って、シーガルズの本拠地であるシースタこと幕張銀行シースタジアムに足を運んでいるらしい。
「存分に楽しんで。急遽決まったけど、3Dお披露目はみんな楽しみにしてるから」
交流戦が終わり少しだけプロ野球に休暇が生まれる6月15日から18日。一応、雨天延期などになってもいいようにと設定された17日の水曜日には、インターネット動画配信サービスであるアメーバーテレビの企画がある。
プロ野球界きってのVtuberオタクを自称する水口との対談。
せっかくだから3Dでしませんか? とアメーバの企画担当者からばちゃりあに連絡があったらしく、もう少し後にする予定だった敷島洋美のこの配信が決まった。
「水口選手との対談も気になるけど、それ以上に3Dでレベルアップした洋美を見せてあげて」
「はい。アドバイスありがとうございます」
◆◇◆◇◆
6/1(月)
#洋美のプレイボール #3D化配信! #新衣装配信!
【3D・新衣装】ワテクシの姿を目に焼き付けなさい!【お披露目】
上位チャット
コメント:待機
コメント:早く早く
スーパーチャット:楽しみ 200円
「あれ? これ始まってる?」
上位チャット
コメント:来た!
コメント:ご機嫌様お嬢!
スーパーチャット:おめでとうおじょー 200円
スーパーチャット:素が出てるぞw 120円
「あ、始まってる? んんっ!! SEと背景お願いします」
スタジオで今回の配信を手伝ってくれているスタッフさんに頼み込むと、バシン! バシン! と、ブルペンで投球練習をしている音声が流れ始める。もちろん、配信画面の背景も室内ブルペンに変わる。
「良いですわよ! 球がしっかり走ってますわ!」
予めオープニングを決めていた。
野球をしているという敷島洋美の設定に合わせて、ブルペンで投球練習に付き合っている、というものだ。
オープニングどうするの? とムジカ先輩に問われ、こんな感じでやるつもりです。と、作っていた台本を先輩に見せると、カンペ出すよ。これ最高だから。と悪ノリが始まった。
配信開始20分前に突然予定が変更になった私はもちろん、スタッフさんたちもてんやわんやで、そんな中しっかりと指示出ししているムジカ先輩に、流石だなぁ。と感心してしまった。
というわけで本番の配信だが、私はボールを受けている。
もちろん、私、津路嶌洋弥の捕球体勢はかなり独特なので、バレない様にワタクシ専用の捕球体勢 と言っても、中報時代のまともな構え方だが を取る。
ちなみに、ワタクシはしっかりとキャッチャーミットを持ってきており、ちゃんと映像でも捕球しているようミットに動きを認識させるためのシールを貼っている。これのおかげで、ちゃんとボールを受けているように見えるのだ。
しゃがんでいるワタクシの足元からだんだん上へとカメラが移っていく。そして、ちょうどワテクシの横顔が映ったタイミングで立ち上がり、マスクを外す。
まあ、実際はマスクとして機能しているモーションキャプチャー? とかいうセンサーのついたものを外しただけなのだが。
「あら、見ていらしたんですか? それならもっと早く、声をかけてくだされば良かったのに」
マスクを外したワテクシは、マスクを脇に抱え、手櫛で髪を整えながら言葉を続ける。
「なんで? って……。たまには良いところ見て欲しいじゃありませんの」
先輩の、顔俯かせて! という指示出しのカンペに従い、恥ずかしがってちょっとだけ俯く様な感じを出してみる。
上位チャット
コメント:え? かわいい
スーパーチャット:は? かわいいが? 1,000円
スーパーチャット:ときめいた 300円
○幸田楓花:10,000円
コメント:安定の風タソ
相変わらずの無言スパチャをした幸田先輩に内心呆れてしまうが、まだオープニングは終わらない。
「あ、あの……。良ければですが……」
カンペを出すムジカ先輩は、それはもうとても
パラっとスケッチブックを捲ると、出てきた言葉は「いてもうたれ!!」という言葉。そう言えば畿通のチームスローガンになっていたなぁ。なんてどうでも良いことを思う。ムジカ先輩は関西? というか、大阪出身なのか?
「試合を……。試合を見に来てはいただけませんこと? いや、別に絶対応援しに来て欲しいとかそういうのじゃありませんの」
上位チャット
コメント:行く
○幸田楓花:行くよ 10,000円
コメント:試合見に行くよ
スーパーチャット:行くわー 3,000円
コメント:草
「ただ、少しだけ、少しだけ見に来て頂けると……嬉しいですわ」
ワタクシは、はいそこで上目遣い! ともう完全に大爆笑しながらカンペを出すムジカ先輩のオモチャになっていた。
3Dになって増えた表情を存分に使い、コロコロと顔色を変える。だが自然にセリフを言うことができていない気もする。マネージャーの長谷部さんが、もうすぐボイス販売を行うとも言ってたし練習しないと。
上位チャット
コメント:だめだ、バリトンボイスでも落ちるわ
コメント:かわいいわ
スーパーチャット:洋民でよかったわ。おれ 1,000円
○幸田楓花:お小遣い足りてる? 10,000円
スーパーチャット:ATMになるなよ 3,000円
コメント:草
「はい! と言うわけで、皆様ご機嫌様。ワテクシが、遂に3Dと化した元プロ野球選手の野球解説系Vtuberの金髪美少女ロリおじさんこと、敷島洋美ですわ」
いつもは首から上だけが動く。なので、配信中は頭が左右には揺れ、それに伴って自慢の縦ロール二つが動いている。
だが今日は違う。
「見てくださいまし! さすがにこれは興奮せざるを得ないですわ」
ぴょんぴょんと私が飛び跳ねれば、配信画面内のワテクシが同じように二度跳ねる。私が回ればワタクシもその場で一回転する。
「バッティングフォームもバッチリ! ですわ!」
バットを握っているわけではないので、シャドーになるが、しっかりとバットを振っている様に敷島洋美も動く。もちろん、特徴的すぎる私自身のフォームだとバレてしまうかもしれないないので、全く違う昭和の大スター、元東栄のワンさんのフォームをマネする。構え方? 一本足に決まってんだろ!!
「はじめての3D配信ということで、何をすれば良いのかわかっていません。ですが、この手のプロである先輩が、たまたまアシスタントとして手伝っていただけるということなので、登場して頂きますわ。ワテクシたちのリーダー、ムジカ・ムジーク先輩ですわ!!」
「よー! テメーら待たせたな、この私こそが宵の月奇劇団団長、ムジカ・ムジークである。今日は私がメインじゃなくてな、未来ある6期生筆頭である洋美の初! 3D配信という訳だ」
「初めはワテクシ一人で配信つもりでしたの。でも、せっかくムジカ先輩が手伝ってくださるということで、楽しみですわ」
◆◇◆◇◆
「いや、結構ポージング取りましたわ」
「洋民の本気を見たな。振り返り姿とか、キャッチング中の背中をみたいとか言った奴、洋民じゃなくて特定班だろ」
上位チャット
コメント:そ、そんなことないよ
コメント:背中姿は男だった
「そりゃあバ美肉おじさんですから。ワテクシ」
本当に多くのポージングを撮ってもらった。
ワテクシの通常衣装は、芦屋アナコンダバイスのチームユニフォーム。緑と黄いろ。そして灰色の3色が基調のユニフォームで、2D配信だとヘルメットか帽子かドリル……、いや、縦ロールかの三種類なのだが、3D配信だと違っていて、プロテクターをつけたりだとか、バットを持ったりもできた。
ムジカ先輩を相手に打撃フォームの物真似をしてクイズを出した。やはり、筋金入りのシーガルズファンである。他のチームの選手は有名な人しかわからなかったのに、シーガルズの選手は四人ものまねして三人正解していた。ピッチャーである小宮選手が交流戦で見せた打撃フォームですらわかっていたから驚きだ。悲しいかな、助っ人外国人のベニーとリーのフォームがこんがらがっていたが。
「さて、今日やるのは3Dのお披露目だけではありませんわ。サムネにもある通り、ワテクシの新衣装のお披露目も兼ねておりますの」
投打フォームクイズはまた今度しよう。メンバーもしっかりと野球がわかるメンバーを呼んで。ムジカ先輩と幸田先輩。那須先輩に蔀先輩。朝比奈さんはどうしようか? と頭の中に案が浮かんでくる。
けれど、今はやるべきことをやる。
「今回、ワテクシのママであるニコッ智さんから、新しい衣装をいただきましたわ」
本当は、この3D化の話が上がる前に新しい衣装を頂いていた。だが、ウィアクラ戦争が終わるまではしない方が洋民や視聴者を混乱させないとマネージャーにアドバイスされていた。
「ワテクシもまだ12歳ですので、学校に通っておりますわ」
上位チャット
コメント:と、ということは?
コメント:ゴクリ
「予想がついているとは思いますが、ワテクシが通う私立学校の制服ですわ! 少し失礼して……」
配信画面に映らない場所まで移動してから、スタッフさんに衣装を変更してもらう。配信画面上でナニカが起きてはいけないので慎重に。
ついでに、動き過ぎて熱くなった体を覚ますため、お水をゴクゴクと飲み、準備を整える。
「洋美! 準備できたか?」
準備をしていた数分間、アシスタントで入ってくださってるムジカ先輩がコメント欄の言葉を拾って話していたが、私がペットボトルのキャップを閉めたのを確認して言葉をかけてくれる。
こう言う周りが見えているところがVtuber 間でも人望がある証拠なんだろうなぁ。と返事をしながら思う。
「もう映っても大丈夫ですか?」
「むしろそれが本題だね」
画面向かって右。スタジオ的には奥側だから上座? にいたムジカ先輩がスイーッと私の後ろに行くと、グイッと背中を押して私を真ん中へと連れて行く。
私の身長は大体175。それに比べて洋美の身長は133。華鳴さんも私と少ししか身長が変わらないので、現実だと私の背中を腕を平行に出して押している。しかし、いかんせんキャラクター設定の身長が低いので、体の縮尺を映像処理で小さくされている。
上位チャット
コメント:背中押されてるの可愛い
コメント:しとしとよりパパで草
スーパーチャット:制服! 2000円
○幸田楓花:可愛い、ムジカさんそこ代わって 10000円
「残念だったな楓花! 娘の制服姿を一番に見るのは父親だと相場が決まってんだよ」
「え? そうなの?」
上位チャット
コメント:草
○幸田楓花:ムキーッ!!o(`ω´ )o
コメント:盛大に煽ってんな
コメント:お嬢w
新衣装である制服には触れずに行っていたやりとりに、スタジオのスタッフたちが笑いをこぼす。
ワテクシのママことキャラデザを担当してくださったイラストレーターであるニコッ智さんから頂いた新衣装は先程から言ってある通り制服だ。これには二種類あり、セーラー服タイプとワンピースタイプで変更が可能とのこと。
今回は、少しグレーがかったワンピースタイプだ。
上位チャット
コメント:え? 普通に可愛い
コメント:すげーお嬢様感
○ニコッ智:(^_^)v
コメント:ニコッ智!?
スーパーチャット:お母さん娘さんを私に下さいデュフ 2,160円
「あら、ニコッ智ママ。新衣装ありがとうございます。ほんと、ありがとうございます」
まさかのママ登場にコメント欄がざわつく中、ワテクシは3Dであることの強みを生かし、クルリとその場で一回転する。
私の動きに反応してワンピースの裾がひらりと舞う。映像技術って本当にすごい。
「実はこのワンピース型の制服の他に、冬服用としてセーラー服も頂いております。そちらはまたの機会に致しますが、とても可愛らしいデザインでしてよ?」
今使用しているワンピース型の制服も、セーラー服も、津路嶌洋弥の出身校である凛正舎高校の制服をモチーフにしている。
グレーのワンピースは襟や袖口が白色になっていて、赤色のリボンタイ。
冬服用のセーラー服は、紺が主体だが襟の端などが赤色。こちらは太めのリボンタイ。ちなみに、公式の立ち絵として描かれているワテクシの青と白のブレザーは、彼女曰く式典用の制服とのこと。設定上ワテクシが通う学校の制服は、式典用のブレザー。夏季常用の半袖ワンピース。冬季常用の長袖ワンピース。そして、冬服用としてのセーラー服らしい。ここら辺の設定はニコッ智さんが勝手に決め、ばちゃりあ側が容認したらしい。
制服だけで衣装が4つある。どれだけワテクシに力を入れるのですかニコッ智さん……。
「して欲しいポーズあったらしますよ? ムジカ先輩」
「うーん。何がいいかな。なんか、楓花を煽れるポーズとりたいな」
「幸田さんを弄れるのって、卯月美先輩とムジカ先輩しかいないと思いますわ」
上位チャット
コメント:まさにその通りだな
コメント:まあね。そうなるよね
コメント:あれ? 真凛は?
「あ! 昔使ったスーツの衣装って使えます? 個人勢時代のやつだけど……。行けるの? さっすが兄弟、ありがとう」
スーツ姿に衣装替えしてムジカ先輩が、ワタクシの少し後ろに立ち肩に手を置く。他にも背中に腕を回したり腕を組んだりと、思いつく限りのポージングで大好きな娘の入学式の写真を撮るような状態だ。
「なんだったっけあれ……。麻雀の時のやつ、癒子がママで? 楓花が姉だっけ」
「らしいですわ。それで、蔀先輩はパパ枠らしいですが、お二人に否定されてましたわね」
「ならユニットつくるか。私が父、癒子が母。長女が楓花で長男が慶一。それで末娘が洋美。なんかスタジオでちゃぶ台でも囲みながらコントみたいなことするか?」
新しい企画というかネタを考え始めたムジカさんが、頭を悩まし始め、心ここに在らずのような状態になっていく。
「この状態のムジカ先輩って、どうすればよろしいのですか?」
上位チャット
コメント:いつものやつw
コメント:気にしなくていいぞー
コメント:スルースルー
視聴者たちの慣れ加減に、さすがだなぁ。だなんてふわふわと考えながら、進行を進めていく。
今日の目的は、3D化のお披露目が一つ。新衣装である制服のお披露目が一つ。最後の三つ目が、この3D配信に至る経緯となった企画の宣伝。
「さて皆様、ワテクシの3D化、及び新衣装のお披露目配信はいかがでしたか? ワテクシ自身はとても楽しめましたわ。普段関わることがないムジカ先輩とも関わることができましたので」
「んぁ? あれ? もう締める感じ?」
「はい。それはもうしっかりと」
腕を組み、少し睨みつけるような目線をムジカ先輩に向ける。実際は年上のおっさんに睨まれているだけだというのに、ムジカ先輩はなぜか嬉しそうな顔をする。
それもそのはずで、先輩自体は体をカメラの方へ向け、配信画面が映っているモニターを見ていたから。
ムジカと洋美の状態で言えば、小さな女の子が一生懸命お兄さんに怒っている。という風にしか見えないのだ。なんせ洋美とムジカの身長差は大体50センチ弱。
コメント欄も、可愛いという言葉がほとんどになってしまっている。モニターを見ているスタッフも何人かは笑ってしまった。
「はいはい。これ以上お嬢の機嫌が損なわれると、私とコラボしてくれなくなるからね。あ、切り抜き師の方はよろしくね」
「ムジカさん!」
「ごめんってお嬢。そうだな。ばちゃりあの全体を見ている者として、新人の子でもガツガツと当たってきてくれたのがとても嬉しかったね。初めましての人とコラボする醍醐味だと思う」
ムジカ側の視聴者が洋美の方へ顔を覗かせ、洋美側の視聴者がムジカの方へ。いろんなところへ興味を持ってもらう足がかりはとても重要だ。と、とても真面目なことをいきなり言い始めるムジカ先輩。
やろうと思えばしっかりと話せるのに何故ふざける。やれやれと言った表情を思わず浮かべてしまう。
「洋美に対してどう言ったことをするのかな? って、前世のファンだった身からしてもとても興味が湧くんでね。ゆっくり見守るよ」
「真面目と不真面目な高低差が激しいですわ……」
パン! と一度手を叩き空気を切り替える。
「ムジカ先輩がわちゃわちゃとしていたので言いたいことを言うのに時間がかかってしまいましたわ。私からの報告ですの」
ババーン! っとちょっと大きめな効果音とともにテロップが画面に出される。
プロ×Vtuber プロ野球対談! in アメーバーテレビ
「少し日にちが先ではありますが、ワテクシ、プロ野球選手と対談することになりましたわ。日にちは今月の17日ですわ」
「誰と対談するの?」
「それはですね……。あの人です。名前はまだ二週間以上時間があるので言えませんわね。でも! 洋民に人気の彼の方ですわ。きっと洋民にとって実のある話になると思いますわ」
よし! 告知も言えたので今日のしなければいけないことはこれで終わりだ。追加の告知は一週間前で良いらしいし。それまでは普通にしておこう。
「早速、明日の配信は制服で致しましょうか」
上位チャット
コメント:楽しみにしてる
コメント:待ってる
「それでは皆様、ご機嫌よう」
「じゃあなテメーラ!」
セ・パでどっちが好き?
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セ・リーグだろ!!
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いいやパ・リーグだね!
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12球団箱推し!!
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野球分かんねぇ~