現役生活二十六年。疲れたので、バ美肉して野球解説系Vtuber始めます 作:義藤菊輝@惰眠を貪るの回?
『さて! 始まりましたアメーバーテレビスポーツ専門チャンネルであります、『スポーツ on ドリーム』! 本日も私、田中が司会を務めさせていただきます』
スタジオを映すテレビでは、私……。っではなく、ワテクシ、敷島洋美が出演する番組が始まった。
生放送で配信されるこの番組では、Vtuber という本体の秘匿性を考慮し、ばちゃりあ事務所のAスタジオとアメーバーテレビの収録スタジオを中継する形がとられた。
『今日はスペシャル企画となっていますよ! 皆様も楽しみにしていたのではないでしょうか。ええ、もちろん私も楽しみにしてましたよ』
あちらのスタジオでは、今日の司会進行を務める田中さんが企画を説明していた。ご覧ください! と興奮気味の田中さんが言うと、椅子と対面したかなり大きめのモニターに映った椅子のみが映される。
もちろん、椅子は今日対談する水口が座り、モニターにはワテクシの姿が映されるのだ。
『楽しみですね。プロ野球選手1のVtuberオタクを自称していますプロ野球選手と、女の子として電脳の世界に戦いの場を移した元プロ野球選手の対談。私も、楽しみながら話題の提供などをしていく所存です!』
スタジオが映されているモニターの横、あちらのスタジオと意思疎通をとるためにチャットが映されているモニターでは、オープニング入ります。と短い文章が打ち込まれ、その言葉通り音楽と映像が始まる。
『敷島さん。オープニングが終わり次第対談が始まりますので、田中さんの合図でご登場ください』
指示出しモニターに出た文をみて、ついに始まるのかと緊張する。いやまあ、現役時代も優勝とかすれば地元のテレビ番組に呼ばれたりしていたが、引退後は今日が初めてだ。それも生身じゃない。
昨日電話で水口に、「ポカだけはするなよ?」と釘は刺しておいたが、いったいどうなるか。わたわたと緊張であわてていたら切り抜かれるんだろうなぁ。なんて思えてきたので、多分もう大丈夫だ。とりあえず、素数を数えておこう。
「1,2,3,5,7……。あれ? 1って素数」
「1を素数にすると、すべての数字が1の倍数になってしまうので、1は含みません。それより津路嶌さん、本番が始まりますのでしっかりとお願いします」
Aスタジオにいるスタッフの一人、2期生担当のマネージャーである三宅さんにそう言われ、私は集中しようとモニターを見つめる。
スタッフはほかにも、我らがリーダーであるムジカ先輩こと華鳴さん。彼は、本番が始まってしばらくすると、仕事があるらしくここから出ていく。マネージャーの長谷部さん。逆に彼は今日ずっと一緒にいる。そして、三宅さん。2期生の担当マネージャーではあるが、他企業とコラボ。特に、案件の場合は彼女が窓口をしているらしく、今日はずっと参加となる。他にも、技術的なスタッフが数人おり、アメーバーテレビ側からやってきた番組スタッフが数人。彼らは私の姿をみて驚いていた。というか、一人野球好きらしく、握手した際左腕が千切られるんじゃないかと思うぐらいぶんぶんと振られてしまった。
『さて、告知していた選手は近畿通運パワーブルズの水口選手ということで、次に登場するのはVtuberの方です。彗星のごとく現れ、その勢いは止まることのない、元プロ野球選手の野球解説系Vtuberの金髪美少女ロリおじさんこと、敷島洋美さんです!』
「はいどうも。皆様ごきげんよう」
足元のバミリをチラチラと確認しながら、ワテクシはいつものあいさつで登場する。やめろ水口、そんなキラキラした目でこちらを見るな。あっちのモニターには私とお前が対面になるよう目線カメラが点いているんだから!!
『さあ、両名来ていただいたので、せっかくですから自己紹介をね。していただきましょうか。まずはこちらに座っている水口さんからお願いします』
『はいどうも! プロ野球界1のVオタクを自称しています。絶賛治療中、近畿通運パワーブルズ所属キャッチャー水口良輔です!』
「洋民の皆様、そして、当番組をご覧の皆様ごきげんよう、ワテクシが元プロ野球選手の野球解説系Vtuberの金髪美少女ロリおじさんこと、敷島洋美ですわ」
両スタジオでは、パチパチと拍手が起きる。こちらではスタッフたちの。あちらでは、スタッフだけでなく、スタジオに入っているお客様の拍手だ。
『それでは、お二人の今日の意気込みをお願いいたします』
『はい! なかなか居ない野球を前面に押し出している、更には元プロ野球選手という異色のVtuberが相手ですので、楽しみながらあんな話やこんな話をしていきたいですね』
「ワテクシは、水口選手のように根が明るい性格じゃないので、水口選手の勢いに負けてしまわないよう頑張っていきますので、お手柔らかにお願い致しますわ」
『はい! ありがとうございます!』
早速一つ目のお題を! と行く前に、野球を知らない、Vtuberを知らない人のために私達を簡単にまとめたフリップが出てくる。水口、田中さんの机に『現在故障中』って書かれたでっかい磁石あるぞ。
◆◇◆◇◆
『いやー。お二人の紹介だけで時間を取り過ぎちゃいました。すみません』
「いやいいじゃないですか田中さん。水口さんの好きなタイプがナース服って分かったんですもの」
『ちょっと待ってくださいよ!』
『あれ? 水口選手はご結婚されていましたよね?』
「水口選手のお嫁さーん! 好きなコスプレはナース服らしいですよー!」
絵理香ちゃんに届けこの思い! 水口が本気で慌てているのを見て、私は思わず笑ってしまう。だって面白いから仕方ない。事前アンケートの好きなタイプにナースって書いた水口が悪い。
直接的すぎるだろ。自宅で絵理香ちゃん照れてんじゃないでしょうか! 羨ましい。
「田中さん、これ以上ナース服のお胸の大きい方が好きな水口選手の事を話していると時間が足りなくなりますわ」
『いやいや、お嬢が一番ひどいよ……』
項垂れてしまった水口を弄り続けるのも良くないと、田中さんが一つ目の話題を出してくれる。ただ、大丈夫だろうかワタクシたちの紹介だけで30分以上話しているような気がする。生放送だろ? これ。
『というわけで、一つ目の話題は交流戦。という事ですが……』
「全体的な話をすれば、海洋リーグが列島リーグを大きく勝ち越してますわね」
『畿通はボロボロですけどね』
やはり話は交流戦。ここ近年ではなかった交流戦前後での1位から6位までの転落は、話題になってしまう。
『まあ、怪我して早々に離脱しちゃった俺がいうのもなんですが、何やっとんねん! って感じっすよね』
交流戦の結果は、18戦中6勝11敗1分。最下位は神奈川スターライツの5勝12敗1分だったため、なんとか11位で終えることができたが、海洋の他球団は全チームが6位以内に入っている。
列島で上位に食い込めたのは東栄だけ。その東栄も4位だ。
「なぜ畿通はあそこまで負けたんだと思いますか?」
『うわ、いきなりぶっ込んできたねお嬢』
「いえ、畿通ファンの声を代弁しただけですわ」
そうだなぁ。と手を顎に当てて考え始める水口。怪我で正捕手が離脱した。という話は、この際置いておくとして、今現在畿通でプレーしている彼自身の目線ではどうなのかが気になる。
『畿通は打たれることが多くなり、打てなくなった。そんな印象ですね。他のチームと比べても完封負けが多いし、この交流戦で順位を上げたチームはシーガルズが代表だけど、彼らはミスが少なかった』
確かに、シーガルズはエラーが少なく、バントの失敗なども少ない。それに、四球の数が増え、塁にランナーを貯めることができるようになった。
「どこか、攻め急いでいる印象がありましたわ。今までの畿通は、打ち始めれば勝てない試合はないみたいな様子で、エンジンがかかるのが遅くて負けることはしばしばありましたが、ここ最近は初回や二回に点をとって、前半の得点で逃げ切ろうみたいな」
『なんていうか、どの回でも点を取ろう! って感じだったんすよね。交流戦』
「それは、志島監督の作戦で、ってことですか?」
いや? 自分たちでしてたような……。なんて曖昧な事を言う。
「志島監督の采配は、あまりサインを出していないように感じますわ」
『そうですね。そこの点は津路嶌前監督とおんなじスタンスですよ志島監督は。攻撃については何も言わない感じです。打席に立ってる選手が、その状況下で何をしなきゃいけないのかを考えろ。って言うだけで、ほとんどの選手はサインもらってないです』
ただ、守備はその逆でめちゃくちゃ口を出すようだ。まあ、もともと守備の人だったのだ。長年志島さんはチームの守備走塁コーチをしていたわけだし。
『まあただ、もともとキャッチャーじゃないんだから配球とかリードとかはこっちに任せて欲しいっすね。思ってるリードにならないし、指示された系統の球で仕留めようと思っても、その途中で打たれたら睨まれるし』
「あら、水口選手ほどのキャッチャーが言われるんですの?」
『まあ、俺の前は津路嶌さんでしたから。彼に比べたら全員ひよこですよ。そういうお嬢こそどうなんですか。そういう経験ありました?』
「もちろんありましたわよ。そりゃたくさん」
ベンチで立っていたバッテリーコーチは、かなり的外れなことをサインで出す。半速球が得意な打者に緩急で打ち取れとか、その日のピッチャーのコンディションをちゃんと見ろ。チェンジアップしか緩急使えないのに制球悪かったら使えないだろ!
まあ、そもそもそうなるのは、ピッチャーの調子が悪い球をあまり使わないからなのもある。
「でも、ほとんど無視していましたわ。バッテリーコーチの考えと同じ時な方が少ないですし」
そう言えば、私が監督をしてた時、水口には指示を出さない代わりに、全部お前の責任だからな。と口を酸っぱくして言っていた。ただ、失投など、構えたコースじゃない場所へ投げ込まれたボールが打たれた時はピッチャーのせいだから文句の一つでも言え。なんて言っていたか。
「キャッチャーとして近いのは、有吉選手と成科選手で言えばどちらですの?」
『うーん。有吉かな。あいつは俺と一緒で、ピッチャーとキャッチャー、どっちが悪いか分かってるし。あ、そうだ、中報の谷選手いるでしょ?』
『はい! 居ますね!』
ちょっと、突然顔出さないで田中さん。びっくりしたわ。今まで存在なかったのに。
谷は、失投を打たれたら目に見えてガックシと落ち込むから面白い。水口はそう言った。
「ただ、構えた場所のボールを打たれたときに、自分のせいだからごめんな。って感じじゃなくて、あの配球で打たれたらしゃーない。切り替えてこ。って感じなのは好きじゃないですけど」
それはわかる。打たれた時点で少なからず自分に。キャッチャーに責任はある。なぜそのコースにしたのか、なぜその球にしたのか。例えピッチャーの投げた球が構えたところからずれたとしても、それが疲れなのか、技術的な問題なのか。見抜けなかった時点で自分の罪があるのだ。
私はそう考えるから、私は一度、100パーセント私が悪いと考えるようにした。ただ、それでも、スピンのかかった直球であれば問題なかったはずだ。指にしっかりとかかったスライダーなら空振りだったと思う。ちゃんと抜けているフォークなら手が届かなかった。だから、自分も悪いが、それ以上にピッチャーのレベルが低いから悪いと責任転嫁し始めた。
『ピッチャーが悪いって思ったことあります?』
「毎回打たれるたびに思っていましたわ。だって、どんな球でも三振なり凡打にすることができれば問題ないわけですから、ワテクシに選択肢を選ばせている時点でピッチャーの負けですわ」
え? っと割と本気の顔で驚く水口。口を開くな、金歯がキモい。閉じろ。
『敷島さんはかなり攻撃的なキャッチャーだったわけですね?』
『なんか、話聞くまでのお嬢とだいぶイメージ変わった。もうちょい、成科に近い感じだと思ってた』
おい水口。お前が一番俺の配球見てただろ。一番近いところで。ちゃんと理解しといてくれ。まあ、心構えなんて人それぞれだからいいけど。
『さて、両名のキャッチャーとしての性質は皆様も理解できたでしょうし、元の話の交流戦について話の線を戻していきましょう』
「あ、そうでしたわ。交流戦について話していましたわね。それじゃあ、交流戦が終わって、オールスターに入るまでは海洋リーグの面々と戦うわけですが、交流戦前の勢いは取り戻せますの?」
『それは、ちょっと厳しい気がしますね。それは』
水口自身が畿通を分析した時、三つの弱点があるという。一つ目は、水走が先発に転向したために、中継ぎとして七回を安心して任せられるピッチャーがいないということ。七回からの終盤は、試合が崩れることが多い。そこを締めれる人が今の畿通にはいないのだ。
二つ目、投手の疲れが予想よりも早い段階で現れているということ。
これは、畿通ではよくあることだ。畿通は投手崩壊が多い。いや、完投勝利は度々ある。回数が少ないだけで。畿通は打つチームだ。14点取られたものの17点取り返したこともある。6回時点で14対3から、たった3回で同じ14点をとってしまう。
その分、打たれ続ける投手の疲労は大きい。たとえ、チームが打ち勝ってくれるから。と思っていてもピッチャーの心労は大きいし、自分が抑えれば、打者だって、ほかの投手だって楽になると思うから。
『すごい悪循環なんですよ。これ』
『投手崩壊と言えば、昔の中報や、数年前のヘルスなんかでしょうか』
「そうですね。まあ、畿通と普通のチームが違う点は、チームが打つということですわね」
『津路嶌さんが入る前の中報はひどかったからなぁ。どうでした? ドラフトで決まった時って』
水口は自然な言葉で質問をワテクシに投げかける。確かに、中報はやばかった。だってウォーズと星合さんしか点を取れない……。
ちょっと待って……。あれ? これ、やばくね?
これ、やばくね?
セ・パでどっちが好き?
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セ・リーグだろ!!
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いいやパ・リーグだね!
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12球団箱推し!!
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野球分かんねぇ~