現役生活二十六年。疲れたので、バ美肉して野球解説系Vtuber始めます 作:義藤菊輝@惰眠を貪るの回?
「あぁ……。今日配信したくない」
やらかした。本当にやらかした。
水口があまりにも自然な感じで話しかけてくるから、思わずいつも通りの感覚で話してしまった。
あの後、敷島洋美のことについて話している掲示板を見たが、もうほとんどの人が敷島洋美=津路嶌洋弥と思っているだろう。
「あぁ……。やだぁ」
流石の私でもナーバスだ。あれだけ綺麗に水口のボールを捌いたのに、自分のボールは悪送球だ。盗塁阻止のために二塁に投げた球が、上に行きすぎてセンターの前まで行くようなものだ。
「さすがに昨日休んじゃったしなぁ」
予告はしていなかったものの、本来は昨日、『フィジアド』こと『レッツフィジカルアドベンチャー』をプレイするつもりだった。
だが、現実逃避で飲んだお酒がクリティカルヒットし二日酔い。さらには気分が上がらず、那須癒子こと水口の嫁である絵理香ちゃんにめちゃくちゃ慰められたが、それでも配信をするつもりにはならなかった。
パソコン版のツイッターには、大量のダイレクトメッセージが届いている。
大体の内容は、お前って津路嶌? というやつか、お前みたいなやつが小遣い稼ぎか。という文章。たまに応援しています。とファンレターもどきが届いてくるが、全て無視している。
まえまえから同じようなものは届いていたが、あの対談以降量が増えてしまった。
いや、まあ、全部自分が悪いわけだが。
「純粋な視聴者ってどれくらいだろう……」
きっと、敷島洋美という存在を初めて見る人が、次の配信。というか、今日の配信で来るだろう。ただ、その中には冷やかしじみたものが絶対に紛れている。お前は津路嶌か? とか、決めつけで言ってくる奴とか、ロクな奴がいない。
絶対コメントに溢れる。絶対だ。
「そういえども、動く配信だから気も紛れるかな?」
嫌なことがあればバットを振る。ランニングをする。つまりは体を動かしていた、なら、今日はエクササイズの配信。動き続ける。
敷島洋美ではなく、津路嶌洋弥のゲームアカウントで試しに三十分最高難易度の『ガチンコレベル』を体験してみたが、ちょうどいいくらいだった。長く続ければしんどくはなると思うが、動けなくなるくらいではない。
「とりあえず、服装も運動着に変えたし、問題ないでしょう」
スポーツウェアを着込み、軽く動いていても問題はない。
時計を見れば、予定している配信時間の17時までもう少し。とりあえず終わる時間は未定、疲れるまでやると配信の始まりに宣言しよう。実質の耐久配信だ。
人はどこまで、『レッツフィジカルアドベンチャー』をし続けることができるのか。という趣旨の。
「よし、とりあえずはっちゃけながらやろう。そういえば、ばちゃりあでの最長記録って誰だろう……」
とりあえずは切り抜きを調べればいいだろうと思い、『ばちゃりあ フィジアド 切り抜き』と検索する。すると一覧で動画が出てくる。
刀義先輩は『動けば突き刺さる顎は健康の現れ』というタイトル。那須さんは『適度な運動は健康の薬』と言って、難易度をノーマルに設定して行っていた。他にも、リーゼローズ先輩と香取杏先輩の二人はマルチモードでゲームをしていたが、ヒィヒィ叫びながらゲームを何とかしていた。
「えっと? 一応、ダニー先輩が二時間やってる感じか。なら、二時間以上続けていればばちゃりあ最長」
二時間ならいけるか。星合さんのノックとかに比べれば楽だし、マウンドにボールをバウンドさせるために二塁からノックされた失投処理の練習よりも楽だろう。
そんな経験があるからこそ私は楽観視していたし、あんな結末を迎えるとは思っていなかった。
「そうだ、洋美と洋弥で話せば二人実在してることにならないかなって、長谷部さんに聞いてみたけど、あんまいい感触はなかったし」
うぎゃー! と思わず叫び声を上げながら頭を抱える。正直打つ手が無いのだ。そういや、あの時の三宅さん鬼の形相だったな。水口に対しても、私に対しても。
そんな、現状どうでも良いことを思い浮かべるくらいに、私は参っていた。
◆◇◆◇◆
6/19(金)
#洋美のプレイボール #フィジアド #耐久配信
【ガチンコ?】運動など、元プロに任せなさい【余裕】
「さて、というわけで皆様元気ですの? 本日は『フィジアド』の耐久配信ですわよ」
上位チャット
コメント:よう津路嶌
コメント:こんなところで何してんだよw
コメント:ばっかみてぇ
コメント:マナー悪い
コメント:待機時間からこれ
コメント:何時間するの?
コメント:どうせこの前の対談の奴だろ?
コメント:お嬢はお嬢だ
コメント:気にせず続けて
「さて、元気に荒れていますね。まあ、前々からこう言った方々はいましたが」
さて、と調子の狂う出だしだが、全く気にしてないことを装う。長谷部さんにも、いやなコメントには反応しなくていいと言われている。それにそもそも洋美のキャラクターなら、興味のないことにはノータッチのはずだから、洋美でいる間はあなたは洋美になりましょう。とわかるようなわからないような中途半端なアドバイスをもらった。
そういうものか。と思い、今日は何に対しても関せずを貫く。
「サムネを見てわかると思いますが、少し前に話していた『フィジアド』を今日はプレイ致しますわ。これまではFPSやレースゲームなだけ頭と体を両方使わないといけないゲームでしたが、今日は体ひとつでできるゲーム!」
腕がなる! と自信満々な態度を取って見れば帰ってくる反応はおっさんがはしゃぐな。とか、みっともないとか、どう見ても敷島洋美に対してのコメントではなく、津路嶌洋弥に対してのコメントが多いように見える。
流石に、ムカつく。ただ、ここで切れても意味がない。ここで怒っても、ワテクシが私だと言っているようなものだ。
「一部の人が言っていますが、ワテクシはワテクシです。どれだけこの場で何をコメント欄に打ち込もうと、ワテクシはそのようなコメントとは関わることなどありませんので悪しからず」
早速やるぞー! とゲーム開始画面からスタートボタンを押す。
輪っか状になっているこのゲーム専用のサークルコントローラーを手に持ち、初期設定を始めていく。といっても、身長や体重を打ち込むだけ。といっても、身長と体重が出てくるのはこのタイミングだけであり、体重を初期設定で打ち込まなくても良いらしい。
上位チャット
コメント:133センチ
コメント:チビだな
コメント:嘘だな。詐欺るな
コメント:津路嶌って175とかだろ?
「ワテクシはまだ十二歳ですので、成長期ですわ? 兆リーフさんのイラストを見たことなくて? あんな感じで未来ではバインバインですわ」
上位チャット
コメント:揉ませて
コメント:強がってる
コメント:キモ
スーパーチャット:しんどいわ(最高)100円
コメント:やってて恥ずかしくないの?
「揉ませるのは無理ですわね。あと、強がっていませんわ。ワテクシ的には、大きかろうが小さかろうが気になりませんので。ただ、大きい方が皆様好きでしょう?」
言外に、ニコッ智さん。よろしくお願いします。というのを入れておく。彼女はしれっとワテクシの配信を見ているので、大人バージョンが実装されるのもそう遠くはないだろう。
あ、好き。と言ってくれるコメントが増えたことで、ふふっと笑みが溢れる。まあ、これもこれか。なんて楽しくなる。もともと疑惑が起きることは想定していたし、コネとは言えオーディションの時に社長の方から言われた。
それでもやると言っている以上、私はやり切る。
「身長は……。よし、打ち込めましたわ」
次の画面は体重を打ち込め。というもの。もちろんこれはスルーする。洋民達からはブーブー文句を言われるが問題ない。だって、知ってる人は津路嶌洋弥の身長と体重を知っていてもおかしくない。
「よし。やっと始められますわ。あぁそうでしたわね、次はコントローラーの調整ですのね」
次はコントローラーの調整であり、サークルコントローラーを横から押し込んだり引っ張った時の力の強さを確認する。
そういえば、男性陣の大体は限界である100を出していたな。
「今のところの男性陣で一番数値が低かったのはどなたですの?」
上位チャット
コメント:蔀じゃなかった?
コメント:82
コメント:蔀より弱いやついなかった?
コメント:迫と雷音
スーパーチャット:蔀ー82、迫ー74、雷音ー69 120円
「女性のトップと一番下の数値って」
上位チャット
コメント:いや、男だろ
コメント:バ美肉おじさんだろ?
コメント:お前は男だ
コメント:アラフィフが
「いや、洋民もアンチも初見も解釈一致させすぎてはありません? よもやここまで言われるとは……。中身はおじさんでも、ワテクシは、洋美はまだ十二歳の女の子ですわよ?」
それに対しても、みんな揃って洋美のことをいじり始める。まだ津路嶌がとーだのこーだの言っている奴はいるが、最初に比べたら微妙に少なくなっている。
気がする。うん。あくまでも気がするだけだ。どうかは知らん。
「今日は、なぜかワテクシのことを津路嶌洋弥さんだという方が多いですわ。ただ、それはつまり、今日の視聴者は野球好きが多いということ!!」
少し、マニアックな話も混ぜましょうか。私はそう言い、話題として、『フレーミング』という単語を持ち出した。
上位チャット
コメント:え? なにそれ
コメント:フレーミング?
コメント:フレーミングがどうかした
コメント:わかんねー
コメント:え? フレーミングも知らないのか
コメント:うん。それで?
コメント:置いてけぼり
「フレーミングという単語だけで、視聴者のどれくらいが野球を知ってるかわかるかな? と思いましたが、これは予想以上ですね……。それじゃあ、簡単に説明しましょう」
野球には、ストライクゾーンという場所がある。ざっくり説明すると、ホームベースの上にある空間のことで、高さは打者の膝以上ベルト以下の位置と考えてくれればいい。
「ホームベースは五角形の形をしていて、ピッチャー側はホームプレート。ピッチャーが投げるための位置をプレートで決めていますが、そのプレートと平行になっています」
そこから直角に辺が伸び、ある程度長さで曲がり三角形の頂点を作る。
「形のいい例えは……。そうだ、日曜日の食事時に流れているアニメの……パステルのぶくんじゃなくて」
上位チャット
コメント:アサリさん?
コメント:アサリさんのことかな?
コメント:あー。アサリさんのエンディングの家の形か。ピッチャーから見れば
「そうですそうです。アサリさんのエンディングで流れる映像の、最後にみんなで家に入るでしょう? あの形ですわ。ピッチャーから見れば。なので、あの形が空中にあるんですのよ」
つまりは、ホームベース上にある打者の膝からベルトの位置の間にある長方形の空間がストライクゾーンだ。そこを審判がキャッチャーの後ろから見る。
「フレーミングとは、フレームに入れる。ストライクゾーンに来ず、コースから外れてしまった球を、あたかも最初からストライクゾーン入っていたかのように見せる技術ですね。審判も人間なので、錯覚とかでストライクゾーンに入ってるように見えるのですわ」
具体的なやり方は人それぞれだが、私の場合は体から迎えに行き、手首を立てたり寝かしたりして、ボールの軌道がストライクゾーン内に入っているよう見せていた。
多分、系統的には古畑さんと同じはずだ。自信はないが。
「まあ、というわけで、キャッチャーミットを持ち上げ続けていた私の腕力はなかなかなものです、わっと!」
ギュッとサークルコントローラーを横方向に引っ張れば、計測結果の数字はすぐさま100と限度になる。そして、内側は押し込むのも同様に100。
上位チャット
コメント:やっぱり女の子じゃない
コメント:いや、無理だろ
コメント:十二歳って嘘だよね?
コメント:キャラ守れ
「いや、反応するところそこですの? ってか、キャラ守れって言った人、絶対ワテクシのアンチですわよね!!」
◆◇◆◇◆
上位チャット
コメント:これ、いつまでやるんだ?
コメント:いくら水飲んでるからって……
コメント:三時間半もやってんの?
コメント:あれ、まだやってる
スーパーチャット:きゅうけー 100円
コメント:いや、耐久って言ってたけどさ
スーパーチャット:水代 100円
○那須癒子:いつまで続けるの?
スーパーチャット:休めよー 1000円
コメント:信じられるか? 一日だけでばちゃりあの誰よりもステージ進んでんだぜ?
今日の誕生日パーティー。ワテクシは出席いたしませんわ。
なぜならワテクシ、今、『フィジアド』の耐久配信をしていますの。
すでに三時間と三十七分が過ぎておりますが、とても良いゲームですわ。最近運動不足を感じておりましたが、あまり外へ出ることができませんの。
ですので、一日中運動し、あの頃の体のキレを取り戻そうということですわ。
上位チャット
コメント:いや、それシンガポールのやつか?
コメント:国境横断のやつやろ
コメント:夢を売る仕事してたんだろ。野球選手
コメント:レール作るな
「あら、思っていたよりも手厳しい……」
視聴者のまさかの反応。私は確かに耐久配信をするといったはずだ。たかが三時間半でへばると思われていたのだろうか。
「元プロ野球選手の体力を舐めないでくださいまし。ワテクシ達は、春季キャンプ。オープン戦期間。シーズン142試合。そしてクライマックスシリーズと日本シリーズという一年を過ごすんですのよ? 中には違う人もいますが、ワテクシはシーズンの142試合のすべてでマスクを被り、脱ぎたくないタイプでしたわ。もちろんポストシーズンの試合でも結果を求めますの。試合がある以上100%で向かう体力とコンディションを整えなければいけませんの」
まだまだ行きますわよ!! そういって、ゲームの進行に基づき、ボス戦が始まる。
このゲームは、運動によって消費するカロリーを計算し、敵を倒していくアドベンチャーモード。自身の身体で鍛えたい部分を重点的に鍛えさせてくれるトレーナモードの二つがあり、今私がしているのはもちろんアドベンチャーモード。
簡単に第一ボスを倒し、ばちゃりあのみんなが悲鳴を上げたサークルコントローラーを引っ張りながら上半身を前後左右に動かすことで戦う第二ボスもしっかりと倒した。
そして、三体目のこの面の最終戦。
「見ていなさいな。ワテクシが華麗にこの……。ど、どれい……、ドレイク? オブ? たい……たいらんと? ドレイク・オブ・タイラントを倒して見せますわ」
上位チャット
コメント:すでにかれいではない
コメント:簡単な英語だよ?
コメント:あ、あれ? お嬢?
「うるさい! ですわね! いま戦っている! のですから!」
今回の運動はきつい。
両手を上に挙げた状態で腰を左右に振っているのだが、見事に腰痛に突き刺さっている。
さすがにスクワットなりでは問題がなかったのだが、この腰を振る前は上半身の身を左右に倒す運動と下半身は動かさず、腰を回す運動。見事に腰の運動が3つ続いたのだ。
長年キャッチャーとして座り、盗塁阻止や失投処理、一塁送球のカバーと、座ったと思ったら立ち上がり立ち上がったと思ったら座る。そりゃ腰に爆弾抱えるわ。
「あ、やばい!」
上位チャット
コメント:ん?
コメント:どした?
コメント:素になってるぞ?
「こ、腰が死ぬ! 死にますわ!」
上位チャット
コメント:腰痛……
コメント:そりゃ現役引退してるしな
コメント:キャッチャーと腰痛は夫婦関係
「あっ! あっ! や、やば! もう! 無理っ!」
上位チャット
コメント:バリトンの喘ぎ声いらないんだよな
コメント:喘ぎ声助かります
コメント:えろみ待ったなし
コメント:絵師さん頼むよ!
〇ニコッ智:大人と子供どっちがいい?
コメント:きたねえ
コメント:これはたいじょうしょぶんか?
コメント:ママ?
コメント:ニコッ智?
いや、そんなこと言ってる場合じゃないから。痛いんだよ。じくじくと腰がめちゃくちゃに痛いんだよ!!
だめだ。無理だ。これ以上ゲームを続けるのはやばい。そう判断すると同時に、私は思いっきりコントローラーのポーズボタンを押す。もちろん画面はすぐさま停止し、進行中の状況が黒いフィルタによってぼかされた。
「だめ! 無理! ちょっと腰の状態がよくなるまで配信は中止ですわ! とりあえず、今日はこのまま終わってすぐさまかかりつけ医のところに行きます。この時間で見てくれるかわからないですが」
とりあえず、それではごきげんよう。と、いつものあいさつを苦痛の表情を浮かべながら言う。画面の洋美の口がとても歪んでいたが、もう気にする余裕はない。
配信を切った私は、寝室のベッド横にある引出の中から痛み止めを取り出し、口の中に入れる。水を取りに行くのを忘れていたため、無理やり飲み込んだ。
「動けない。寝よう……。あー、明後日誕生日なのに、動けるかな……」
まあ、予定もないし問題ないか。
セ・パでどっちが好き?
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セ・リーグだろ!!
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いいやパ・リーグだね!
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12球団箱推し!!
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野球分かんねぇ~