現役生活二十六年。疲れたので、バ美肉して野球解説系Vtuber始めます   作:義藤菊輝@惰眠を貪るの回?

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腰痛で撃沈した男

「いや、なんでいるの?」

 

 ピンポーン。とチャイムが鳴らされ、睡眠を邪魔された私は、腰に当てた湿布をさすりながら家のドアを開いた。

 

「昨日の配信で腰痛って言ってたから、マッサージぐらいなら私でも。と」

 

「私は津路嶌さんの家がどんなのか気になって!!」

 

 ドアを開いて出て見れば、そこには巨乳のおねーちゃんと黒髪ボーイッシュな可愛い子がいた。確かこんな時に言うことを洋民に教えてもらった。

 

「……。あ! これなんてギャルゲーですの?」

 

「疑問形なの?」

 

「ギャルゲーじゃないよー。現実だよー」

 

 思い出した言葉を言って見れば、口調に対して突っ込まれ、対応に対して笑われた。

 

「お久しぶりです。直接会うのは」

 

「私なんかウィアクラの打ち合わせ以来だよー。バッセンに来てたらしいけど、ちょうどいなかった時だったらしいし」

 

「そうですね。改めてお久しぶりです。絵理香ちゃん。西野さん。というか、どこでこの家のこと知ったんですか」

 

 それは……。と目線を逸らし静かになる二人。想像するに、長谷部さんあたりから聞いたのだろう。この二人に問い詰められたら言っちゃう気がする。美人の圧ってすごいし。

 そういえば、スポーツニュースのアナウンサーに迫られたことがあったような……。

 

「なに考えてるんですかー?」

 

「いや、今日は腰痛で死んでるつもりだったので、今日の分オフコラボもありかと……。とりあえず中へどうぞ」

 

 那須癒子をしている水口絵理香は、おしとやかに失礼します。と一言言い、靴をしっかりと揃えて部屋の中へと入る。ただ、その隣で幸田楓花をしている西野茉莉は、おっじゃまっしま〜す! と元気よく……。というか、おてんばに靴を脱ぎ、部屋の中へととととっ! と入っていってしまった。

 

「まあ、そういう年頃ですね」

 

「そうですね。それじゃあ私は飲み物注いでくるので、適当に座っていてください。ソファーにでもなんでも。あ、麦茶くらいしかないんですけど……」

 

「こっちは無理に来てますから、気にしないでください。ありがとうございます」

 

 二人がリビングダイニングへ行ったことを確認してから、飲み物を注ぐこと以外にはほとんど使わないキッチンへ向かう。

 人数分のグラスを取り出し、冷蔵庫からペットボトルの麦茶を注ぐ。お盆はないので、両手で無理やり3つグラスを持ち、こぼさないよう二人のところへ向かった。

 

「はいどうぞ」

 

「ありがとうございます。はい、茉莉ちゃん」

 

「はーい。ありがとうございます津路嶌さん、水口さん」

 

 L字型のソファー。長い方に二人が座り、私は小さい方に腰掛ける。一口お茶を飲めば、3人で談笑が始まった。西野さんが出した話題は、部屋の内装についてだった。

 

「まあ、綺麗というより物がないだけですけどね。まあ、グラブはありますけど」

 

「バットもあるんですか?」

 

「いや、バットとかトロフィーとかは全部大阪の家に置いてますよ。最初は振るかな? とか思って持ってこようかなと思いましたけど、振るスペースがないですし」

 

 ミットは、暇な時に弄る。

 ポケットを拳で叩いて音を出したりすると気持ちが引き締まる気がするから、コラボ配信の前とかはミュート状態にして叩いたりしている。

 使わないからこそケアだってしている。

 

「ミットって、触っても良かったりしますか?」

 

 あー。どうしよう……。できれば自分のミットは触って欲しくないな。

 

「茉莉ちゃん、津路嶌さんにとって自分の商売道具だったんですよ? 茉莉ちゃんは自分のマイクの調節機触られたいですか」

 

「それは……。ごめんなさい津路嶌さん」

 

 少し考えた西野さんは、素直に謝ってくれた。

 というか、さすが水口の嫁だな絵理香ちゃん。野球選手が嫌がることをわかってる。さては、学生時代とかに触って怒られたか。

 

「引退前にスポンサーから頂いた練習用のミットがあるはずなので、探してきます。寝室の押し入れに入れてた気がする……。あっ! 手を中に入れなければ触ってていいですから」

 

 えっと、どこだったか……。野球道具はまとめてたはず。と、寝室に入り押し入れを探す。ドアの向こうで、キャッチャーミットに驚いてる声がしている。

 こんなに柔らかいの? とか、ここの色が剥げてるとか。

 

 まあ、何年間も、人によっては十年以上使い続けている道具なわけだし、絵理香ちゃんからすれば、水口のミットっていう比較対象もあるから驚くだろう。

 って、あった。これだこれ。スポンサーの『NOZUMI』さんがもし良ければと渡してくれたミット。多分、二人は私が使ってたミットが気になってるんだと思うけど、申し訳ないけど手を入れるならこっちにしてもらおう。

 

「お二人とも、こっちどうぞ。ブルペンとかで調整用に使ってたミットなので、こっちのなら手を入れても大丈夫ですよ」

 

「ありがとうございます」

 

「おー、これが……」

 

 さっきまで触っていたミットは、黒が基本で指カバーや紐なんかの部分が赤色になっているミット。今渡したのは『NOZUMI』製の紐が赤から白に変わったモデル。

 畿通に移籍してから気持ちを変えるために使いはじめたメーカーのミットで、中報時代は『ハタケザワ』というメーカーのを使っていた。まあ、どちらのメーカーでも形はほとんど変わらない。

 

「最後のシーズンのサブで用意しようと型付けしてただけなので、ほとんど新品なんですよね。それ」

 

 去年のシーズンは監督だったが、監督と兼任で選手としてもちゃんと試合に出ていた。と言っても、142試合中12試合くらいしかマスクは被ってない。

 だから、26年目は黒赤ミットしか使っていなかった。

 

「おっきいですね」

 

 まあ、手はでかいな。ボールを受け過ぎて手が大きくなったと思ってるが、その手に合わせて作っている以上ミットは大きい。

 西野さんの手は一般的な女子大生らしい手の大きさなので、感覚的にはそうなるだろう。

 

「あ、そうだ。マッサージいつします?」

 

「え? そもそもするんですか? てっきり無理やり遊びにくる口実だと思ってたんですけど」

 

 そんなわけないですよ。と、絵理香ちゃんは言う。どうやら水口にもマッサージをしているらしい。看護師時代の伝を頼り、スポーツ医療等に詳しい人から色々と教えてもらったらしい。

 

「昨日かかりつけ医のところに行ったんですよね? なんて言ってました?」

 

「えっと、フィジアドでやらかした。って伝えたら笑われました。ばっかじゃねぇの!? って。それで、湿布渡されてマッサージしとけと」

 

「現役時代から利用してたところですか?」

 

 私が利用しているスポーツトレーナーは二人いて、六角という兄弟だ。確か2歳差? 弟さんの方が同い年だったはず。

 二人とも東京で個人経営の診療所をしているが、私が連絡をすれば二人のうちどっちかが施術を行いに来てくれる。まあ、今は東京にいるので自分から診療所に行くのだが。

 

 そう言った旨を伝えると、絵理香ちゃんはなるほど。と、顎に手を当てて考える。

 

「なら、簡単な腰のマッサージをするだけにしましょう。ちゃんとかかりつけ医がいるならその人の指針をずら  

 

   よし! オフコラボしよう!」

 

 いや、突然すぎるよ。風タソ……。

 

 

 


 

 

 

「どうします。いっそのことバラします?」

 

 ばちゃりあ事務所の会議室。それも、今日は使う予定がなかった一番小さい会議室には、一組の男女がいた。

 一人は、六期生の担当マネージャーである長谷部。もう一人は二期生の担当マネージャーである三宅の二人だ。そして、話の話題は敷島洋美が津路嶌洋弥であるということを公表するかどうか。

 

「津路嶌さんは嫌がってるのよね?」

 

「そうなんですよ。なんでかまではまだ聞いていませんが、隠す方向で彼は動いてますね」

 

 バレたところで何をやってるんだーで終わるでしょ? という彼女は、壁に持たれながら缶コーヒーをぐびっと煽る。

 

「あの時にいたから相談してみましたけど、平行線ですね」

 

「ばちゃりあの企業方針として、ライバーがしたいことをさせる訳だし、私たちは逸脱してないか確認と指導することが基本だからね。華鳴くんも近衛くんも静観派だから」

 

 もう一度煽った彼女は少し缶コーヒーを振って中身がないことを確認すると、凭れるのをやめて歩き出す。

 

「近いうちにメールでもして確認をとったら? どうしたいか」

 

「そうですね。まあ、明日は彼の誕生日ですし、明後日あたりに連絡してみます」

 

 

 


 

 

 

 6/21(土)

 #幸田楓花 #那須癒子 #敷島洋美 #オフコラボ

【唐突な】明日の晩餐は焼肉らしいですわ【オフコラボ】

 

「え? 本当に焼き肉にいきますの?」

 

「いこーよー」

 

「そうよ洋美ちゃん。3人だけで楽しんじゃいましょう」

 

「大阪ならわかりますが、こっちだと重々苑くらいしか知りませんわよ」

 

 上位チャット

 コメント:きた!

 コメント:始まった!

 コメント:開幕の言葉が焼き肉

 コメント:初手重々苑キタコレ

 

「はい、お二人ともはじめますわよ」

 

 一応持っていた予備のマイク二つを無理やりに繋げた私は、リビングダイニングに置いていたソファーを無理やり引っ張ってきて、配信部屋へといれた。

 そこにとりあえず二人座ってもらい、配信画面には残念ながら動かない幸田楓花と那須癒子の立ち絵を載せる。

 

「皆様ご機嫌よう。昨日腰痛で負け、追い討ちをかけるようにかかりつけ医のスポーツトレーナーに大爆笑された敷島洋美ですわ」

 

「はーい! 洋美ちゃんが腰痛で死んだと聞いて様子を見におうちまで突撃しにきてしまった洋美の姉! 幸田楓花でーす!」

 

「自称ね。自称。こんいやこー。母、那須癒子です」

 

「いや、あなたも自称ですわよ?」

 

 上位チャット

 コメント:草

 コメント:www

 コメント:どちらにしろ自称かよ

 

「さて、唐突に始まったオフコラボですが、事情はほとんど自己紹介の時に幸田さんが言ってくれた通りですわ。おそらくマネージャーからだとは思いますが、なぜかワテクシの住所がすでにバレていて突撃され、幸田さんの一言でこのオフコラボが始まってしまいましたわ」

 

「いや、本当は私が洋美ちゃんの腰のマッサージをしてあげようと。私元看護師だったし、洋美ちゃんとは彼女がVtuberになる前からの知り合いですから」

 

「私はほんとについてきただけだよー。用事終わって電車待ってたら偶々癒子せんせーが見えたから、声かけてみたの」

 

 まあそういうことで、ワテクシの家にお二人が来たわけですわ。と言えば、癒子のマッサージという言葉に洋民たちが一斉に反応する。まったく男どもは。いや、私も男だが、多分洋民の男たちは、看護師によるマッサージ=センシティブという構図ができているのだろう。

 残念だったな! 彼女には心に決めた男がいるんだよ!!

 

 いや、まあ私としてはあんまり関係ないけど。

 

「ねえねえ聞いてよ皆! 洋美ちゃんの家すっごくきれいなんだよ!」

 

「いや、最初にも言いましたけどワテクシの場合は物がないだけですわ。必要な服と家具がないだけです。物なんて最低限で十分ですもの」

 

 上位チャット

 コメント:寂しいな

 コメント:きっと飯作ってないぜ

 コメント:ずっとミットぱんぱんしてそう

 〇蔀慶一:てか焼肉とか聞いてない

 コメント:へー汚いと思ってた

 

「あ、蔀さん」

 

「え? 蔀さんは来なくていいですよ?」

 

「今回は女子会ですよ? あれ? そうなるとあの面々を集めないと」

 

 那須さんの一言で、コメント欄にはあの時のメンバーの名前が出てくる。鹿子呼ぼう! とか、菫様と絡んでとか好き勝手言っている。もうあんな配信は嫌だ。ただただ疲れる。特に鹿子さんと菫さんの暴走によって。

 

「ていうより、今日のオフコラボって目的もなく始めましたし、配信の名前も幸田さんが焼肉って連呼するからこの名前にしましたが、何の話いたしますの?」

 

 幸田楓花。那須癒子。敷島洋美。

 仲はいい3人だ。特に、3人とも野球好き。畿通ファンが2人にレッズファン。

 

「やっぱ野球の話になっちゃうのかな?」

 

「まあ、この3人ですもの。そうだ、洋美ちゃん的に最近気になる選手っていますの?」

 

 最近で気になる選手……。いるか? 澤が東栄から京葉に移籍する話。そう言えば、元中報のチュンが大リーグから戻ってきて、これも京葉に入団するとか。まあまだ噂段階だからしっかりとは話せないか。

 

「うーん。なんか話のタネになるようなもの……。ああ、あの選手はどうでしょう。北九州の育成にいるアメリカ人キャッチャー」

 

「それってマッケンジー?」

 

 幸田さんが言う通りマッケンジーのことだ。北九州モバイルホークスの育成ドラフトとして1位入団したジョージ・マッケンジー選手。

 打撃が売りであるが、リードがあまりうまくなく、二軍戦で出場していたけど、これは筋道が見えないな。というリードがたびたびある。

 

 上位チャット

 コメント:マッケンジー来た

 コメント:わい鷹党。歓喜

 コメント:外人キャッチャーってどうなの

 

「彼ってどうなの? 一軍に上がれそう?」

 

「そもそも外人キャッチャーってどういう風に受けとられてるの?」

 

「あー。外人キャッチャーって賛否両論ありますものね」

 

 外人キャッチャーについてよく言われることは、ピッチャーとコミュニケーションが取れない。ということだ。ただ私は思う。外人のキャッチャーなら外人のピッチャーに起用すればよくないですか? と。というか、外人のピッチャーと日本人のキャッチャーで組ませといて逆はできないって思いこみ激しすぎないか?

 私なんか外人ピッチャーとしゃべる時めちゃくちゃな片言だったぞ?

 

「一つ言えることは、サインを出したときに意図がピッチャーに伝わればワテクシはよいと思いますので、言語は必要ないと思いますわ。そりゃあ、日常会話をこなしてピッチャーと親睦を深めることは必要だと思いますけども」

 

「洋美ちゃん的にはそこは問題じゃないんだ。コミュニケーションとか」

 

「ええ」

 

 重要なことはちゃんとピッチャーをリードすることができ、その意図をピッチャーに伝えることができること。私は繰り返すように声に出した。

 

「彼自体の打撃はかなり良いですし、キャッチャーとしての技術がしっかりと上がれば北九州の打撃力は近年まれにみるほど上がりますわ。外川選手、大窪選手、凪多選手、バレンティアーノ選手の重量のある3~6番にさらに力が増すわけです」

 

 考えるとエグいメンバーだな。ヒットメーカーであり首位打者を2度獲得している外川選手。チームの軸としてしっかりと仕事をこなせる上に結果を残せる大窪選手。さらには期待のルーキーでありながら日本人離れした驚異的な身体能力を見せつけて去年トリプルスリーを獲得した凪多選手。さらには、プロ野球史上シーズン最多ホームラン記録を更新したスペイン系アメリカ人のバレンティアーノ。

 

 うわー。海洋のキャッチャー陣がんばれ。来年の優勝は北九州だ。順当に行けば。

 

「ああ、畿通の優勝が遠のく……」

 

「いや、今シーズンは絶望でしょう」

 

「てか、海洋の話じゃなくて列島の話をしましょう!! みんなも列島の方が好きですよね!?」

 

 上位チャット

 コメント:もち列島派!

 コメント:俺海洋の方が好きだわ

 コメント:列島

 コメント:わかんねーわ

 コメント:お嬢にあってから野球見始めた

 コメント:わからん

 

「そうでもない……、だと……」

 

 まあ、みんなVtuberに興味があってワテクシを見に来てくれた方がほとんどである以上、全員が野球好きではないだろう。コメント欄も、野球がわからないって言っている人が多い。その次が列島派か。なんでだろう、配信主が海洋派なのに人気ないな。悲しいわ。

 

「野球がわからない方も問題ありませんわ。ワテクシ達が野球の話を簡単に説明しますし、質問箱代わりのものもツイッターに設置しております。そうですわ。なんなら今から質問コーナーをいたしましょう。ツイッターで『#野球姉妹へ質問』とでもつけてツイートして下さい」

 

「いいね。野球姉妹。どしどし頂戴!!」

 

「さて、どんな質問が来るのか楽しみね」

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