現役生活二十六年。疲れたので、バ美肉して野球解説系Vtuber始めます   作:義藤菊輝@惰眠を貪るの回?

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 やっと書けた。流石に難産だった。


食べ放題コース3名様のご利用で、お代金は……

「おにく! おにく! おにく! おにく!」

 

「茉莉ちゃん! あんまりはしゃがないで! 予約もしているんですから焼肉は逃げませんよ?」

 

 品川駅でタクシーを降りた私たちは、目的地の焼肉向けて歩いていた。

 時刻は17時。夕飯には少し早いが、彼女たちが帰宅するための時間を考えればちょうど良いだろう。

 

「まだ30分も時間あるんですから。それに目的の店舗は目の前ですよ?」

 

 まだ日が登っている時間。学生たちはあと一時間ほどの門限のために道路を早足でかけ、仕事が終わったサラリーマンが死んだ顔でトボトボと信号を渡る。

 

 時間的にも人が増えていく時間帯。

 そんな中明るく楽しそうに、嬉しそうに歩く西野さんは注目の的で、制服を着た高校生や、スーツ姿のサラリーマンが、彼女の動きに合わせて顔を動かしている。

 そして、彼女を追いかける絵理香ちゃんも、街を歩く人々の視線を集めていく。少し薄めのカーディガンは大人びた雰囲気を強め、長い白色のロングスカートが清楚な印象を引き立たせる。

 

 そんな二人と一緒にいるのが私だが、さすがに何一つ変装しないままで街に繰り出せば、すぐに人だかりができると二人に力説され、家のタンスにしまっていた少ない数の服を引っ張り出したことでスーツかポロシャツの二択という普段からは想像できないほどカジュアルな服装をしている。

 

 頭には、水口がかつて誕生日プレゼントとして渡してくれた彼お気に入りのブランドが作っているハット。何かというと麦わら帽をかぶっている。

 上着は、元大阪ストライプチーターズに所属していたが引退し、今はバリ島でモトバイクを趣味にしている新屋選手から頂いた紺色のジャケット。貰ったのはもう20年前だがまだ使えるほどに状態が良いことに二人は驚いていた。

 インナーはシンプルに白いシャツ。少し胸元が開いていて、いつ貰ったか定かではないが、確か落野監督から1試合4ホーマーをした時の監督賞として頂いたと思うネックレスが見える。銀色で派手すぎない控えめな感じのやつ。

 腕時計はスイスのメーカーの時計。スイスのメーカーなのにモナコっていう名前が付いていて面白かったから買った奴だ。別に繁野が入団してすぐの頃に、生意気言われたから買った訳じゃない。言われた次の日にこの腕時計をつけて球場入りしたけど、繁野に言われたからではない。

 

 そしてズボンは淡い色のジーンズ。

 全体的に寒色でまとめるんだ! と主張した絵理香ちゃんと、いいや赤色のチノパンでバッチリ決めた方がカッコいい! と主張した西野さんがジャンケンをした結果、見事絵理香ちゃんが勝ったためにこんな感じの服装になった。

 ちなみに、眼鏡をかけているが西野さんがおしゃれでつけていた伊達眼鏡を無理やりかけられた。ジャンケンに負けたのがよっぽど嫌だったのだろう。

 

「入ったら何食べたいんですか? 二人は」

 

「壺漬けカルビ!!」

 

「上ネギタン塩!!」

 

 良いな。二人とも、食べたいものがあるのか。

 何のメニューがあるのか調べてみるか。『重々苑』でご飯をということになったのは、二人がどうしても行きたいといったからだ。私の誕生日なのに私に選択権はない。なので、私は焼肉屋ということしかまったく知らない状態で店がある品川まで来た。

 

「へえ、焼肉以外にもいっぱい……」

 

「あ、これ気づかれた?」

 

「何も知らない事を良いことに重々苑って言っちゃったしね。私、良ちゃんにすら連れてってもらったことないけど……」

 

 いや、聞こえてますよ全部。というか、びっくりするよ。平均で6,000円って……。まあ、最初っから奢るつもりではあった。誕生日の人が奢ってもらうジャパニーズスタイルの誕生日ではなく、誕生日の人が誕生日を祝ってもらうために客を呼ぶインドスタイルにするつもりだったが。

 

「3人……。まあ、二万半あったらいけるか」

 

 ちらっと財布の中身を見てみれば、中に入っている額はだいたい諭吉が十枚くらい。よゆー。

 

「冷麺食べれるし我慢するか。いい機会だし」

 

 重々苑が入っているホテルへ到着すると、そのまま店舗入り口へと行く。

 

「すみません。三名で予約していた敷島です……」

 

 受付を担当していた従業員に名前を告げた私は、予定の時間より少し前に到着してしまったがちゃんと指定していた通りに個室へと案内される。

 

「とりあえず……生?」

 

「はーい! 私もなまぁ!!」

 

「えっと、それじゃあ梅酒で」

 

「すみません。娘様の年齢が確認できる物は」

 

 ……。あれ? 今店員さん、西野さんのことを娘様って言った?

 

「あれ? 私って津路嶌さんの娘だったの!? あ、学生証です」

 

 西野さんが店員さんに出したのは、彼女が現在通っている大学の学生証。生年月日から計算すれば年齢は21。書かれている学年は4。本当に卒業間近だった。

 記されている名前が西野であり、父だと思った私と西野さんの言葉の掛け合いに店員さんはペコペコと頭を下げる。謝罪の言葉とともにドリンクを持ってくるとだけ言い残した店員は、個室の扉を閉めた。

 

「ドリンクが来るまでにメニュー見ましょうよ!」

 

 机に並べられていたメニューを手に取った西野さんは3人で見れるよう網の上で広げようとするのを、私はひょいっと取り上げる。

 

「お二人は食べたいものを好きなように頼んでください。女性は値段なんて気にしなくていいんですよ。店員さん、壺カルビとネギタン塩。それと……。これとこれとこれを」

 

 そう言えば店員は注文を取り消えていく。そんな姿を見て二人はワタワタと慌て始めた。

 

「どちらにしろ私がお金を出すんです。問題はありませんよね?」

 

「ちょっと、茉莉ちゃんどれだけ持ってる?」

 

「大学生舐めないでくださいよ。一万円ちょっとしかないですし、定期外だから交通費そこから出さないと……」

 

「私も二万弱しかないし……」

 

「どうかしましたか?」

 

「いや、ちょっと」

 

「どうかしましたか?」

 

「私たちがお金だしますから……」

 

「それじゃあ、腹いっぱいまで食えないでしょう?」

 

 この場の主役は私だ。

 

 

 


 

 

 

『でね? その時の晩ご飯の焼肉、洋美ちゃんが全額出してくれたんだけど……。結局さっき言った金額まで膨れたんだよ!? やばいよね!』

 

 上位チャット

 コメント:それはやばい

 コメント:お嬢の財力……

 コメント:いろんな意味で解釈一致なんだよなぁそれ

 

 6/23(火)

 #雑談

【昨日】私とせんせーと洋美ちゃんの話【やばかった】

 

 いやぁ正直なところやりすぎた。いや、もっと凄いことはしたことあるんだけど、ここ最近の食事で一番お金を使ってしまった。

 そんなことを二日酔で痛む頭を無視して、幸田さんの雑談配信を視聴しながら考える。

 ただ、視線は画面を向いているわけじゃない。自分の目は手元の資料を向いている。

 

 先日の配信中に電話をかけてきた中報の谷選手に出した宿題の回答がやってきた。

 

 交流戦全18戦の内、14試合の先発マスクを被った彼だが、中報の成績は8位と鳴かず飛ばずな結果。それでも彼自身はかなり良い打撃成績を残し一定以上の評価をもらっている。

 

 PDFとして送られた資料を印刷した私はそこに書かれた彼の言葉に目を向ける。

 

「内野陣に対して意思の疎通ができない。これはあれか、対打者用のシフト変化の話か。それで? 投手ごとの対応……。間の持たせ方の話か? いや、松原って書いてるから落ち着かせ方か」

 

 試合ごとによくできたことと悪かったことを箇条書きにして、自分なりにポイントになったことを書いているが、基本的にはネガティブな内容が多い。

 

『あれなんだって! 洋美ちゃんってさ、口ではいろんなこと言ってるけど、ちょっと前のことすぐ忘れてるよ! 冷麺食べたいって言ってたのにレシート見てから冷麺食べてなかったって落ち込んでたし』

 

 あ、その話ね?

 通路を通って行った石焼ビビンバのにおいがあまりにもおいしそうで頭の中がビビンバで消えちゃった話。いやでもあれは無理だ。コチュジャンの鼻に来る独特なにおいが絶妙だったし、ゼンマイの甘い香りが最高だった。もちろん味も。

 

 ちょっと恥ずかしいからそれ以上はやめてほしい。

 

『あ、そうそう言ってなかった。洋美ちゃんとね、キャッチボールをする約束したんだー。洋民のみんなはごめんね!! これも洋美ちゃんがお姉ちゃんのことを大好きだからさ』

 

 え? そんな話したか? 頼まれたから良いよって言っただけだった気がする。

 反応しといたほうがいいかな? というか、いつもやられている側だし、やってやろう。

 

「えっと、コメントしよう。別に好きじゃないです。っと」

 

『ひ、洋美ちゃんがコメントくれた!! 好きじゃないとかどうでもいい! 私にコメントくれた!!』

 

 いや、そこは気にしましょうよ西野さん。ほら、コメント欄も呆れてる。

 

「久しぶりにあんな豪遊をしました……。と」

 

『一杯飲んでたもんねビールとか日本酒とか』

 

 幸田さんの言葉でコメント欄には大人バージョンとか、えろみとかひどい言葉が溢れていく。

 

 あまり幸田さんのところに顔を出すのはやめよう。大人バージョンの洋美は非公式だ。好きではあるが、非公式のものについて動画でまで話すのはよくないだろう。大人バージョンを描いたのがママであるニコッ智であれば問題ないが、初めて大人の洋美を描いたのは兆リーフさんらしい。

 

 パソコンを落として、ラジオ感覚で流していた幸田さんの雑談を止め、本格的に谷選手のことを考える。

 

 まずは、バッテリーや内野陣をはじめとした、チームのメンバーをしっかりと観察することだと感じる。

 何が好きなのか。何が嫌いなのか。何が得意なのか。何が苦手なのか。それが重要だ。理論立てた配球を討ち取るためのリードに変えるには。

 

 内野で詰まらせたいか、外野のフライか。ゴロなら、セカンドは逆シングルの正確さはどうだ? 送球の速さと正確さは? パターン別で打球処理の良し悪しも見ていた方がより確実だ。

 インコースのカットボールでプルヒッターをつまらせたら、右バッターならサードに飛ぶ。サードの打球反応の良さはどうだ?

 

 ピッチャーに対してもそうだ。どういうタイプのピッチャーか。自信のある球で三振をとりたい人物なのか、内野を任せてゴロで仕留めるのか。

 どういう球なら気持ちが上がるのか。どういうアウトの取り方が好きなのか。キャッチャーはただ一人だけ8人と顔を合わせるポジションだ。なら、8人の状態を認知した上で守備位置の指示もした方がいい。

 

「打撃のことはかなり良かったのか。打撃でマイナスなことはほとんど書いてないな。ということは、谷選手が指導して欲しいのは、グラウンド内のこと……」

 

 どうしよう。私が知ってる中報と、彼が今戦っている中報は別物だ。私の感覚で教えると、どうしてもあの頃の面々が基準になってしまう。

 

 試合日程を確認してみれば、今日からヘルス、レッズ、神奈川の3チームとの九連戦。九連戦の内容も多分谷選手はまとめてくると思う。なら、良し悪しのことを聞くより、守備時の良かったことと試合中のチームの状態を聞いてくべきか。

 マイナス面を考えることは重要だ。見つめること。そして改善していくことも重要だ。だが、それだけではよくない。悪かったところの中には、切り捨ててもいい部分だってある。努力で改善するものじゃなく注意で気付ける失敗などがそうだ。

 なら、その失敗は前提のものとして、本当にできない部分を詰めていくべきだ。私はそう思う。そんな些細なことを気にする暇があったら、良かった点を思い浮かべてモチベーションを上げ、うまくいかない点の成功例をイメージしている方がいい。

 

「そうだ、中報フェアするか。9連戦全部します。みたいな。実際は8試合だけど」

 

 どんな感じで宣伝するか……。熱心な中報ファンから頼まれた? 的な?

 うーん。と首を捻りながら文章を考えていると、机の上の携帯が震える。

 

「あ、長谷部さん。もしもし、津路嶌ですが」

 

 電話に出てみれば、向こう側では聞き慣れたばちゃりあの社員、長谷部さんの声が聞こえる。

 

『いきなり本題で申し訳ないんですけど……。敷島洋美の身バレって、何がなんでも隠し通したいですか?』

 

「え?」

 

 あれ? 長谷部さん? どういうこと?

 

『三宅さんと相談した上で考えた事なんですが、もし津路嶌さんが何がなんでも身バレを阻止したい。というならその方向で僕たちばちゃりあ社員は動くんですけど、身バレというのを厭わないというなら、いっそのことネタにしませんか?』

 

「ネタに?」

 

『はい。言い換えれば、公然の秘密ですね。前、津路嶌さんと敷島洋美の二人で話をする。それも生配信で。という案がありましたよね?』

 

 確かにあった。それも長谷部さんに相談した。返答は、トラブルを起こせば100パーセントバレるからお勧めできない。というもの。そう言っていた彼がなぜ身バレを勧める?

 

『そうですね。断固たる意思を持って身バレをする気がないのであれば、考えてみてください。現にあの水口さんとの対談でかなり多くの人が洋美の前世に感づいています』

 

「ちなみに、どうする考えですか?」

 

『そうですね。洋美が野球を始めたきっかけを津路嶌さんであることにして、親戚と言い張ればいい。叔父と姪の関係とするのはどうでしょう?』

 

「何か変わりますか?」

 

『敷島洋美としての活動中、津路嶌洋弥とは全くの別の存在である理由ができます。例えば、私を叔父として見ないで欲しいとか。親戚なら丸く収められます。半分認めているようなものですから』

 

「だから公然の秘密と言ったわけですね」

 

 確かにありだ。身バレのことを考えなければ。

 いや、まあ身バレ阻止にこだわる理由って、優勝しといて契約を更新せずにそのまま監督を退任したのに、Vtuberをしているとファンが聞いたらがっかりとするかなって思ったことが理由としては大きい。

 

 そう、がっかりさせるのだけは嫌だ。

 100パーセントの人が私の活動を応援してくれているわけじゃないのはわかっている。それでも、少しでも敷島洋美のことを好きな人のために、中の人とか、前世とか、そういうことを気せず、敷島洋美という存在を愛して欲しい。

 すでに一部の先輩よりチャンネル登録者数がある。それだけ、敷島洋美という存在を見てくれている人がいるのだ。

 

「もう少し、その、考えさせてください」

 

 なんというか、この話は今まで認識していた時よりももっと重要な話である気がして、返答を少しの間保留をさせてもらった。

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  • いいやパ・リーグだね!
  • 12球団箱推し!!
  • 野球分かんねぇ~
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