現役生活二十六年。疲れたので、バ美肉して野球解説系Vtuber始めます 作:義藤菊輝@惰眠を貪るの回?
打ち合わせとか色々
コーヒーを飲む。
今日は7月の頭。1日。梅雨も終わり、交流戦も終わり、前半戦の目処となるオールスターまで選手たちが汗を流す夏が始まる。
故に、アイスコーヒーを飲む。すでに二杯目が終わりそうなアイスコーヒーを、飲む。
別に、これから新しくマネージャーになる三宅さんと改めての顔合わせだから緊張しているわけじゃない。
別に、怖くない。ムジカ先輩に、「三宅さんに怒られるよー。生きて帰ってね」と言われて慄いているわけでは断じてない。
畿通からも直接電話がかかってきたし、電話番号を知ってる人からは連絡があった。なんせ、ネットニュースのトップになっていたし。事務所からも散々言われた。
だから、三宅さんの冷たい視線にも耐えられるはず。そんなことを考えていれば、ズズズと音を立ててストローが液体を吸わなくなった。
三宅さんの分のアイスコーヒーを買うついでに三杯目を頼もうかと店員を呼ぶベルを押そうとした時、ちりりんと喫茶店の扉についているベルが声を出す。
「来た……」
どこからどう見ても彼女だ。三宅葵だ。
短いボブカットの髪に赤縁の眼鏡。体のラインが出るようなピッタリとしたスーツは、慎ましやかな体を際立たせている。おかげで、近くに座るカップルの男が三宅さんに見惚れて、彼女さんに……。足を踏まれている。
店員に事情を話したのか、キョロキョロと店内を見回した彼女と目線が合う。
「隅にいたのね?」
「そりゃまあ……。はい」
カツカツとヒールを鳴らしてやってきた三宅さんは、席に着くと同時に一言そう言い、店員にアイスコーヒーを二つ頼んだ。
「さて、何から話しましょうか。なんせ今日は、話さないといけないことたくさんありますからね」
そう言った彼女は、鞄から黒表紙のファイルを取り出した。
「改めて、昨日からばーちゃりある所属メンバーの敷島洋美、もとい、津路嶌さんの担当マネージャーとなりました三宅葵です。まあ、すでに顔を合わせたこともありますし、簡単に自己紹介を。元一期生のマザー・マリアをしていました。それと、配属が変わるまでは二期生のメンバーを担当するマネージャーでした。何か質問は?」
「な、ないです」
「わかりました。……さて、すでに事務所の方からある程度厳重注意のメールと電話があったと思います。長谷部くんからも」
確かに来た。まず最初に電話をかけて来たのは長谷部さん。長谷部さんからはあの配信の翌日にかかってきた。まず私の話を聞いてもらった上で、なぜあの配信をしたのか、なぜ長谷部さんに相談をしなかったのかの2点の話を行い、これから社長の近衛さんに変わると言われて電話の相手が変わった。
近衛社長はずっと笑いながら私に厳重注意を告げた。笑ってはいたが、あれは口調だけだったと思う。言葉の所々に威圧感を感じた。
そして朝比奈さんと牧野さんの同期二人とグループ通話をし、ムジカ先輩、蔀先輩などからも通話やチャットで怒られた。なぜかウィアクラ戦争の時に絡んだだけの雷音導先輩が一番反応していたが、あれは一度大きく炎上した経験からなのか? よくわからない。
そんなことを考えていると、三宅さんから一枚の用紙が渡された。
「長谷部くんは新人ですし、津路嶌さんはかなり特殊なケースでメンバーとなった方なので、改めて説明します」
渡された用紙は、契約内容について。メンバーとして契約した時にこの書類にサインを書いた記憶がある。
そこには、配信頻度のノルマだったり、どういうことをすれば契約違反なのか。例えば、他のメンバーを陥れるような発言を配信中に行うことや、それに類似することなど。
「事務所が守る1番のことは、メンバー一人一人の個人情報や、個々としての存在です。それは、例え自主退社するメンバーなどでも同様に、最も強く守り、ケアを行うべき部分です」
そう言って、彼女は頭を下げる。
「ちょっと、三宅さん!?」
「まずは、津路嶌様に、身バレという方法を使い敷島洋美と津路嶌洋弥が同一人物である。という事実を広めることになってしまい申し訳ありませんでした」
「いや! 待ってくださいよ三宅さん! 身バレにつながったのは私がうまく動けなかっ
いいえ。その前に、身バレが起こりうる行動がどういうものか先に指導を行うべきでした。これに関しては、前マネージャーである長谷部とも話し合っております。その上で、ですが」
ガバッと顔を上げた三宅さんの目は、睨みつけるようで怖かった。差し詰め、三宅さんが蛇で私がカエル。美人が睨む姿ってすごい怖い。美人に睨まれる経験なんてなかったから知らなかった。マジで怖い。
「なぜ我々事務所側に相談しなかったのでしょうか。先に伝えていただければ、津路嶌さんが行いたいことを理解した上で、配信の前、又は後に公式文として各方面に事務所側から声明を挙げることができます。現に、ばちゃりあ側は多くの電話をもらっており、電話対応の担当者だけでは捌き切れないほど電話が来ています。一番多いのは畿通のファンの方からですよ?」
「は、はい。畿通の選手とか、首脳陣とか、中報時代の知り合いとかからも大量にメールが来てます」
「失礼な言い方は承知の上で言わせていただきますが、もう少し慎重に、十分と考えていただきたいです。運営側の意見としてではなく、津路嶌さんの御身を一番に考えた上で」
もう、私の口からは謝罪の言葉しか出てこない。
すみません。と小さな声で頭を下げながら連呼するしかできることがない。
「とりあえず、今回は厳重注意で済みましたが、下手したら活動休止どころか契約違反と言われても仕方のないことです。そうなると、ばちゃりあ初の契約違反による強制退社者になりますよ? 近衛社長からも言われたと思いますが」
そう。言われた。
今回のことはばちゃりあと契約した時に交わした契約書にある違反事項に触れかねないものだ。
「ばーちゃりある内外問わず、メンバーおよびVtuberの個人情報が公開されるような情報の提示及び示唆は立派な契約違反です。自身の手で自分の情報を公開したためにこの程度で済んでいますが、そもそもわたしたちに連絡を入れてくれていればここまで大きな騒ぎになることではなかったはずです」
これに懲りたらおとなしくしていてください。と、彼女はそう言って提供されたアイスコーヒーを飲む。
「さて、ばーちゃりあるという運営からの指導と教育はこれくらいにして、今後の話をしましょう。敷島洋美の、これからのプランディングです」
◆◇◆◇◆
7/2(水)
#敷島洋美 #ばーちゃりある #記者会見
【記者会見】えーこの度は、ウチの洋美が失礼しました【謝罪】
配信の待機画面には、この動画はネタです。という一文が点滅している。
そんな画面の下のコメント欄では、配信開始を待つ洋民達が好きかって話す。謝罪とは? とか、どんな配信なんだ? とか。
そんな画面を見て、私も覚悟を決める。
「あーあー。音量は……」
上位チャット
コメント:来た!!
コメント:待ってたぞー!
コメント:ご機嫌ようお嬢!
「えっと、良さそう? ですわね」
音量の感じが良さそうだと判断した私は、準備していた音声を流す。
コメント:え?
コメント:なにこれ……
コメント:芝
コメント:これお嬢の声だよな?
コメント:芝生える
流れる音は、カメラのシャッター音。だが、コメントにあるように、パシャパシャと言っているのは私の声だ。
昨日、三宅さんと話した後、一人で虚しく今日の準備をしていた。
「皆様ごきげんよう。ワテクシが元プロ野球選手の野球解説系Vtuberの金髪美少女ロリおじさんこと、敷島洋美ですわ」
パシャパシャ、パシャパシャ。
制服姿の敷島洋美は、マイクが数本立てられてる机に立っている。後ろには、ばーちゃりあるの大きな文字。今までの配信とは全く違う状態に、コメント欄は困惑の声が多い。
「えー。この度はですね。ワテクシが後先考えず行動したために、各方面に大きな迷惑をかけたことをお詫び申し上げます。先ずは、同企業に所属する多くのメンバー。そして、運営人のスタッフの皆様。さらには、ワテクシたちを応援してくださっているファンの皆様にも、深くお詫び申し上げます」
画面内に映るワテクシが頭を下げる。それと同時に、セルフ効果音のシャッター音が鳴り、合わせてフラッシュが焚かれたようなチカチカした画面になる。もちろん、画面の右上には画面加工をしております。の文言。
コメント:芝
コメント:芝しか生えねえ
コメント:芝
コメント:腹いてぇわ
『敷島さんは津路嶌洋弥さんと同一人物であると言うことですが、その点に関してはどうでしょうか』
「はい。その点に関してですが、ワテクシと津路嶌洋弥は、一種の共存関係にあると言えますわ。ですが、あくまでも別の存在として見ていただきたいのですわ」
パシャパシャ、パシャパシャ。
コメント:やべぇ。これはやべぇ。
コメント:これこそ芝
コメント:草越えて芝とはこのことか
『あくまでも別の存在だと』
「そうですわ。捉え方はどう捉えていただいても良いのですわ。例えば、リアルとバーチャル。真面目と不真面目。どんな受け取り方でも良いので、敷島洋美と津路嶌洋弥の間には隔たりがあると」
『二人の関係性は!!』
「彼は私の叔父です。それ以上でもそれ以下でもありません」
コメント:嘘をつけ!
コメント:無理しなくてもいいよ?
コメント:初恋の相手だろ!
『えー。敷島さんが野球を、キャッチャーを始めたきっかけは津路嶌さんの存在が大きいとお聞きしましたが』
「事実ではありませんわ」
パシャパシャ、パシャパシャ、パシャパシャ
パシャパシャ、パシャパシャ、パシャパシャ
コメント:嘘をつくなー!
コメント:事実を話せ
スーパーチャット:さて、真実を話してもらおうか 100円
「えー、真実は私の口から話しましょう」
コメント:え?
コメント:ちょ?
○幸田楓花:あれ? この声
嗚呼絵桃子:ちょつと待ったください?
コメント:なんか来た!
「始めまして皆さん。私の名前は、津路嶌洋弥と申します」
自分が座っている背後にグリーンバックを用意したことで、カメラを切り替えれば、画面の中に私が現れた。もちろんボイスチェンジャーも切って地声に戻す。
コメント:津路嶌ー!
コメント:おじさーん!
コメント:津路嶌が来た!
嗚呼絵桃子:つ、つじしましゃん!!
「えーこの度は、ウチの洋美が失礼しました」
突然現れた私が頭を下げる。モーションキャプチャー用のカメラは接続を一旦切っており、画面内にいる二人のうち、動いているのは私だけ、津路嶌洋弥だけ。
「えっと、なにを話せばいいでしょうか。あのですね。私と洋美の関係性はですね、ただの叔父と姪の関係です。それ以上でも以下でもありません」
よし、洋美の表情を変えよう。そうだな。この前の配信で、洋美は私に恋心があるツンデレになってしまったから、悲しそうな表情をさせるか。
コメント:最高
コメント:まじかー。ここで出てくるかー。
コメント:予想外すぎるわ
コメント:お嬢!頑張って!!
コメント:応援してるから!
「どうしたの洋美」
これ忙しいな。津路嶌洋弥を映しているカメラを止めて画面内の私の姿を静止画にする。そしてモーションキャプチャー用のカメラをつけて、洋美の体を動かす。
コメントを見ようとすれば自然と洋弥から視線を外す感じになるのは計算外だが、それが良いらしくコメント欄はいわゆるフィーバー状態だ。
そうそう、嗚呼絵さんにマークつけとかないと。
「いいえ。なんでもないですわ」
スーパーチャット:これはやばい 120円
スーパーチャット:これでコスメでも買って? 2000円
○幸田楓花:叔父様! 洋美ちゃんをください 10000円
○嗚呼絵桃子:いいえ! 津路嶌さん! 私に! 25000円
コメント:芝
コメント:オコエンそんなキャラじゃなかったろ
コメント:安定のキャラ崩壊
「金で私の姪を買おうと? 出直してきなさい」
コメント:ごもっとも
コメント:当然の対応だな
スーパーチャット:ツンデレ代 300円
コメント:お嬢ちょっと嬉しそう
なるほど、こう言う時に顔を赤らめたりさせると、洋民的には嬉しいのか。これがツンデレ。勉強になる。
てか、カメラだけじゃなくてボイチェンもオンオフスイッチ押しまくるのがめんどくさい。やらなきゃよかったか? これ? まあ、コメント欄が楽しんでくれてるからいいとしよう。
「さて。洋美は私のことが嫌いなようなので、これ以上いても嫌がられるだけでしょう。あとは任せましたよ?」
「あっ……。ほんとメイワクですわね」
コメント:あ、帰った
コメント:帰らないで叔父さん!
コメント:お嬢の気持ち考えろよ!
「いや、皆様そこまで怒らなくても」
コメント:お嬢! 当たって砕けろ
コメント:攻めないと!
コメント:持ち味の強気のリードだよ!
「よく考えてくださいまし皆様、ワテクシ、一人二役ですわよ? 自分とどう接すれば良いか分からなくなりますわよ?」
コメント:え?
コメント:ごめん
コメント:すまん
コメント:一人二役ってなに?
「まあ良いですわ。と言うわけで、これから時々、ネタとして洋美と洋弥で遊ぶと思いますので楽しみにしていてくださいませ。実況洋美解説洋弥とかするかもですわ」
ただ、津路嶌洋弥だけで配信することは絶対にない。
三宅さんと話した上で、あくまでもばーちゃりあるのメンバーなのは洋美だけだから、洋美と洋弥のコラボというのでは許可するが津路嶌洋弥単独での配信は行わないと改めて契約を交わした。
津路嶌洋弥としてチャンネルを作ることも一旦は禁止となっている。
「というわけで、今後はこう言ったネタも行うということを理解していていただければ嬉しいですわ。それではご機嫌よう」
コメント:ご機嫌よう
コメント:またねー
コメント:また明日
「あ、明日は私用がありますので、早くて明後日に配信を致しますわ。そこら辺はツイッターなどで連絡致しますわ」
セ・パでどっちが好き?
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セ・リーグだろ!!
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いいやパ・リーグだね!
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12球団箱推し!!
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野球分かんねぇ~