現役生活二十六年。疲れたので、バ美肉して野球解説系Vtuber始めます 作:義藤菊輝@惰眠を貪るの回?
気が重い。
今の私の心情は、その一言に尽きる。
昨夜、たらふく生ビールを飲み、潰れる直前の一番気持ちがいいところまで酒を浴びた私は、今ずきずきと痛む頭を抱えていた。
時刻は十四時二十分。少し前に始まった北九州対千葉京葉の試合を眺めながら、私は再びため息をつく。
先日の七夕で新衣装のお披露目を行ったがその時の配信を見ていた那須癒子に誘われるという名の強制によって企画に参加することになった。
配信は十七時からであるが、実際はその前に打ち合わせと顔合わせなんかを行うために一時間前の十六時までには事務所に来いと言われている。
「絵里香ちゃんはともかく、他のメンバーって初顔合わせなんだよな……」
実際ウィアクラ戦争のタイミングで謎に女子会をさせられたが、その時は通話アプリで話していただけであるし、特になにか行ったわけではない。
しかし、今日は違う。敷島洋美を含めた七名で企画をするとだけは聞いている。この前と違い司会進行的な役割はしないと保証されたが、実際はどうなるかわからない。みんなが暴走した場合は私が止めにいかなければならないのはわかっているのがとても悲しいが。
「あーあ。初回無死一二塁でゲッツーは最悪だな。しかもランナー一塁だし」
三番の外川の三球目をひっかけた球はサードベースの目の前。絶対進塁しなければならないために二塁ランナーは打球が転がると同時に飛び出すが、DAICHIが捕球と同時に三塁ベースを踏む。そして二塁転送して併殺が完成する。
少なくなっていたカフェオレを飲み干すと十四時半。まだまだ事務所に向うには早すぎるなと考えていると、やっと使い慣れてきたスマホの通知音が鳴る。
「絵里香ちゃん?」
今日ここに来る元凶である彼女からメッセージがやってきたが、その内容は今どこにいますか? というもの。事務所前のカフェにいます。ちょうどいいくらいの時間になれば向かいます。と伝える。
カフェの目の前はちょうど信号もありその向こうに事務所がある。一度来たことがあるとはいえ、流石に我が物顔で入れるほど肝は据わってない。まあ、それもこれもあと二時間くらい後の話だ。そう思って私は再びスマホの野球中継に視線を向けた。
◆◇◆◇◆
「それじゃあ簡単に打ちあわせとか色々を始めましょうか」
この前使用した会議室であるBではなく、少し小さなCの会議室。そこに六人の女性と一人の男性。そして数人の社員が集まっていた。
声を出したのは企画を主催した女性、那須癒子こと水口絵里香。もちろんその場にいた人たちの意識は絵里香ちゃんの方へと向かうが、チラチラとこちらがわに視線を感じる。そりゃあこれだけ女性がいる中不自然に私だけ男がいれば意識もしてしまうだろう。
「とりあえず簡単に今日のメンバーを紹介します。まず……。こっちから順に行こうか。御前巴こと
「初めまして洋美ちゃん。桃子ちゃん。よろしくね」
おっとりした雰囲気の黒髪のお姉さんがぺこりと頭を下げて挨拶をする。
「次に命菫こと
「どうもー。命菫こと寺岡ですー。よろしくー」
この中では一番身長が低い女性が椅子から立ち上がり、手を振りながら挨拶をしてくれる。
「はい。三番目に香取杏こと
「ど、どうも。橘です。よろしくおねがいします」
「相変わらず内弁慶じゃのぉ。ンズは」
「緊張してるんですよ命様!!」
茶化して悪かった。と橘さんに対して寺岡さんは言っていますが、その言葉には笑いの色が見えており、どう考えても遊んでいるようにしか見えない。
「はいはい。二人が仲いいのはわかってますが、次です。歌川鹿子こと
「はい。徳田です。よろしくおねがいします」
続いて水口さんが自分のことを紹介し、先輩たち五人の紹介が終わる。そして次の紹介になる私たち新人二人の内、先に振られたのはもちろんデビューが早かった私の方から。
「敷島洋美こと津路嶌洋弥さん」
「はい。女性がこんなにもいるのに混ざってしまいとても緊張しております。洋民の皆様からは、百合の間に挟まる気分はどう? と聞かれましたが、ノーコメントを貫こうと思っています。津路嶌洋弥です。よろしくおねがいします」
立ち上がり頭を下げると、次はもう一人の新人。嗚呼絵さんの番へと変わる。
「嗚呼絵桃子をしています。吹井兆葉です。あ、あの……よろしくお願いします」
配信の時から思っていたが、どうやら彼女はかなりの緊張しいのようで、先ほどから少し震えているように思える。
「皆様ありがとうございます。ばちゃりあ社員の三宅です。今日はなんというか、監督というか監視というか……。とりあえず、皆様のことがとても不安なので来ています。ほぼほぼ混ざらないと思いますので、自由にのびのびと節度を持って……、『せ・つ・ど』を持って楽しんでください。あと吹井さん。誰もあなたのことを取って食べようとなんてしませんから、ゆっくりと息を整えてみてください。みんなあなたのことが知りたくて注目しているだけです」
「ひゃっ!! は、はい!!」
いい返事です。と一言呟いた三宅さんが絵里香ちゃんに目配せをすると、絵里香ちゃんが企画の趣旨を説明する。
「今日の企画は、私の後ろのホワイトボードにある通り大人やうら若き女性らしく清楚な我々を見せつけましょう! というのが企画の内容です」
企画の内容としては、数種類のミニゲームを行っていくわけだが、その中でお嬢様口調を貫き、下品な行動や発言を行わないということ。簡単に言えば、普段口にしている少し下ネタよりの言葉も使わずきれいな言葉で会話をしながら、適度な会話を楽しみましょう。という企画。になるらしい。
前半戦と後半戦で分かれているらしく、前半戦は口調が乱れやすい対戦ゲームをみんなでするとのこと。後半戦に関しては、お題に沿ったシチュエーションの演技を行い、女性らしさを競い合おうというもの。
企画が始まると同時に七名それぞれに十点の持ち点が割り振られ、言動行動に応じて加減されていくらしい。
らしい。という表現が多いのは単にしっかりとした説明を絵里香ちゃんがしていないというのが理由である。なんというか、何かを隠している感じがする。
「とまあ、そんな感じで進めていきますので、みんなの3D衣装のモーション確認をしたら配信がスタートになります。良いですね?」
◆◇◆◇◆
7/12(日)癒子治療室【ばーちゃりある二期生/那須癒子】
#那須癒子 #歌川鹿子 #御前巴 #香取杏 #命菫 #敷島洋美 #嗚呼絵桃子 #ばーちゃりある #SIS部
【ばちゃりあの】健全を目指す女子会【清楚枠】
コメント:え?
コメント:なにこれ
コメント:きちゃー
コメント:始まった!
コメント:え? え?
「宣誓!! 我々ばーちゃりある
『常日頃の配信により繰り広げられる下品な物言いや』
※例 歌川鹿子「ショタの膝小僧をね、ぺろぺろしたい」
『設定以上の性癖の暴露』
※例 御前巴 「あのね、癒子さんにならナースタイツで顔面踏まれたいのよ」
『その他、これまで積み重ねてきた数多くの品のない行動を反省し、猛省し、我々七名は、ばーちゃりあるの清楚な者達として活動していくことを、ここに宣言します』
画面に並んだワテクシ達。左から順に、赤色の長髪を括っている高身長の香取杏。ピンク色の髪をした眼鏡の女の子である嗚呼絵桃子。黒いボブカットで可愛らしいチューリップ柄のエプロンを身につけた歌川鹿子。
ど真ん中にいて、口上を述べていたのは水色と白色の長髪をハーフアップで括っている那須癒子。かく言うワテクシはその癒子さんの隣で立ち。隣にいる命樣と共にカメラの方を見てる。その横でずっと笑顔を崩していないのが御前巴。
コメント:濃いなー
コメント:開幕から暴れてる
コメント:お嬢が大人バージョンだ
「はい。というわけで始まりました第一回
「イェーイ!」
「い、イェーイ……。って、これあってます?」
「んず、気にしなくていいから」
コメント:のっけからはちゃめちゃだし
コメント:やってんねー
コメント:さすがばちゃりあ
「えー。今回の集会は、ばちゃりあの清楚枠を目指すという内容であり、ここにいるメンバーはなぜ、私に呼ばれたのかわかっていると思います」
「エーナンノコトー?」
「鹿子? いったん静かにしなさい」
コメント:てか、清楚にならないといけないやつ七人もいるのか
コメント:七つの大罪だな
コメント:いや、一人おっさん混じってんぞ
コメント:お嬢?
コメント:鹿子にきまってんだろ
「なかなか激しいコメントになってはいますが、いったんそれは置いといて話を進めましょう。本日の企画は先に言っている通り、我々七名が清楚枠へと至るために競い合うものです」
「清楚と言いながら競い合っている時点で醜いものなのでは? そもそも、ワテクシ……いや、私はこの中に入ったのも強制だったわけでそもそも無理やり参加させられているという状況から考えるに、清楚ではないと集められた他の方々と比べれば清楚枠(笑)という諸先輩……。というより、皆様の部類とは既に隔てられたグループにいるのではないでしょうか……。かくいう私も中身は
スーパーチャット
¥200
のっけからとばしてんな
コメント:草
コメント:お嬢ちゃんとボイチェン機能かかってる
コメント:若干お嬢の地声が聞けると期待したワレ、しゅーりょー
コメント:芝だわ
ぐちぐちと言葉を呪詛のように吐き出している私を、命様がつんつんと突く。それをわかっていても尚、愚痴を続けることで見た目以外清楚でないこと見せる。今回の配信では、
後、私のマイクにだけボイスチェンジャーを通す機能をつけてくださり、スタッフの皆様には感謝しかございません。この空気感で45のおっさん声は辛い。
「怨念は今いいのよ。それよりも企画の話をさせて頂戴。配信の進行が進まないから」
私に注意を入れた那須癒子が進行を行い、今回のルールを伝えている。スタジオに置かれている配信画面が分かるモニターを見れば、我々を隠すようにルールが箇条書きされたスライドが出てきている。
◎企画スタートと同時に、七名にはそれぞれ持ち点10が配られる。
◎企画中、必ずお嬢様言葉――それに準ずる言葉――を使い汚い言葉を使用してはならない。
◎企画中、つつましやかな行動に努め、美しくない行動をしてはならない。
◎前半は対戦ゲームを行い、後半は演技力対決を行う。
◎裁定などは、SIS部部長那須癒子に行ってもらう。
コメント:企画ざっくりだな
コメント:お嬢様言葉ってお嬢の一人勝ちじゃん
「それじゃあ早速やってまいりましょう。すでにお嬢様言葉縛りは始まっていましてよ? いいですわね?」
癒子の言葉にそれぞれがお嬢様言葉で返すことによって企画が始まった。
誰の放送見てみたい?
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