現役生活二十六年。疲れたので、バ美肉して野球解説系Vtuber始めます   作:義藤菊輝@惰眠を貪るの回?

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 おらぁ!! 投げやり


2/21-22(土ー日)【HPBでNPB】オープン戦が始まるので、このワテクシが解説いたしますわ【part 1-2】

 2/21(土)

 

 ♯洋美のプレイボール ♯HPB(洋美プロ野球)NPB(日本プロ野球)

【HPBでNPB】オープン戦が始まるので、このワテクシが解説いたしますわ【part 1 】

 

「ごきげんよう洋民の皆様。ワテクシが元プロ野球選手の野球解説系Vtuberの金髪美少女ロリおじさんこと、敷島洋美ですわ」

 

 昨日の配信と同じように準備を整えた私は、配信画面には映らないようにサブモニター? 何というのか、別の画面で開くと、昨日映して好評だった打席に立つ私を見せる。

 

 上位チャット

 コメント:こんにちは~

 コメント:こんにちは

 コメント:こんにちは

 コメント:庶民から洋民に変わってる!?

 コメント:こんにちゃ~

 

「本日の配信は春期非公式試合こと、オープン戦の第一戦全3試合から、畿内通運パワーブルズ対浪速スカイブルーズの試合解説ですわ」

 

 どの試合を解説するかで悩んだが、とりあえず今日と明日は海洋・列島両リーグの優勝チームが試合をするからその試合を配信で使おう。

 

「自己紹介以外での配信はこれが初めてですので、至らぬ点やトラブルが起きると思いますが、長時間の配信にお付き合い頂きますわ」

 

 頑張ってだとか応援してる! というコメントが流れるのを眺めながら、パワーブルズ対スカイブルーズのことについて触れていく。

 一番最初の話題は昨シーズンの最終戦について。記憶に新しいこともあり、視聴者の反応は上々で、津路嶌洋弥についてのコメントも多い。

 

「プロ20年目に入った選手。特に捕手は体に爆弾を抱えている選手も多いですわ。それでもあのスイングは素晴らしかった」

 

 上位チャット

 コメント:あれはやばかった。牛男でよかった

 コメント:牛男じゃなくてもあれは惚れる。

 

 畿内通運パワーブルズのファンたちの総称である『牛男』や『牛子』という言葉が飛び交うコメント。自分のことだからなおさら嬉しいが、今の私は津路嶌洋弥ではなく敷島洋美。

 早めに話題を変えようと、今シーズンの注目選手を若手・中堅・ベテランと列挙する。

 チームとしてのスタイルが違うため、細かくは言えないが、パワーブルズは代々一発が怖い投低打高のパワーに重きを置くチーム。対するスカイブルーズは単打に小技と足を絡ませるタイプ。

 能力が上がればチームの弱点を埋めることが可能だと考えている選手はそれなりにいる。

 

「それでは、スタメン予想をしてから試合開始までは、マシュマロを焼いていきますわよ」

 

 

 

 ◆◇◆◇◆

 

 

 

「さて、あとアウト二つとなりましたが、ここまでかなり面白い展開になりましたわね」

 

 九回の裏、ワンナウト一塁。打席に立つのは高卒1年目の期待の新人である後藤良平。夏の甲子園で惜しくも準優勝だった大阪にある私立高校出身の外野手。

 ここまでの4打席で3安打と当たりに当たっている。

 

 上位チャット

 コメント:不思議な展開だったな

 コメント:パワーブルズらしくねぇな

 

「志島新監督は元々小技の選手ですし、一発構成の試合展開以外の形を作っておきたかったのでしょう。ワテクシ的にはあまり好みではありませんが……」

 

 コメントの通り、パワーブルズはらしくない戦い方をしている。

 いつもなら超重量打線が火を噴き、やれ二塁打だやれホームランだ。とボールが遠くに行くのに対し、今日はヒットの数が4本。その代わり、四球やバント。盗塁の数がかなり多く、志島新監督の現役時代をみんなが真似している印象を受ける。

 

「パワーブルズの代わりにスカイブルーズはホームラン級の当たりやヒットが続いてますわ。それでも、肝心なところで併殺打や三振が目立っていますが」

 

 これは流石に水口のリードが良いと一概には言えない。コース通りの投球をレフト線ギリギリに落とされる。ライト方向の単打で一塁ランナーが三塁まで行く。

 試合展開的にはピッチャーが悪いとかリードが悪いとか評価しにくい。

 

「後藤選手が四球でワンナウト一・二塁ですわね。投手交代をするようですし、これまでに焼いたマシュマロの確認でもいたしますか」

 

 マシュマロの内容は基本的に野球のことが多かった。野球のことなど興味もない人物が、ワテクシか所属する『ばーちゃりある』の新人だからと先輩方を見るついでに見てくださっている人も居るからだ。

 

 Q、両リーグで好きな球団は? 

 A、海洋ならパワーブルズ。列島なら神奈川スターライツ。

 

 Q、ホームランを打った中で一番嬉しかったのは?

 A、プロ初ホームラン。

 

 Q、何でVTuberになろうと思ったの?

 A、現役生活に疲れ、一度プロ野球から少し離れた場所から眺めようと思ったから。

 

 Q、前世と今の身長差は?

 A、41センチ。12歳にしては身長が低い。

 

 などなど、一部質問は身バレが起きそうだと思い嘘を答えている。ホームランで一番嬉しかったの? そんなの、最後のホームラン以外にないよ……。

 

「そうですわ、放送タグに勝手に♯HPB(洋美プロ野球)NPB(日本プロ野球)というものを付け足しましたが、これからプロ野球解説するときはこのタグを付けますのでご了承願いますわ」

 

 了解! などのコメントが流れていると、選手交代でマウンドに立った今シーズンの新助っ人外国人投手が投球練習を終えた。

 

「メジャーの舞台にもいたリリーフですので、あまりにも酷い投球は……。ホームランですわね。甘く抜けたツーシーム」

 

 マウンドに立ったロナウドが投げたボールは、左バッターの腰元からストライクゾーンに入るか入らないかと言う絶妙なコースに投げられるはずだった。

 メジャーでも多く使っていたリード。それを1球目から行い相手バッターに苦手意識を付けさせるつもりが、ロナウドと水口の共通認識。だが、それはかなわず、インコースからど真ん中の絶好球になる抜けかたをした球は、プロ入り後3本しかホームランを打ったことがないプロ8年目の田中選手によってスタンドへと運び込まれた。

 

    123456789 計

 畿通 001000000 1

 浪速 000000003 3

 

「リード自体は酷いものじゃありませんでしたが……がっかりですね。あ、がっかりですわ……自分にも」

 

 あまりにもな結末。なんとか一点を取って守り続けていたのにも関わらず、一球で試合がひっくり返された。

 さらには素の口調で喋ってしまった。

 勿論コメント欄はワテクシの失敗を拾いまくり遊び始める。一部の人の温かい励ましに頭が下がる。

 

「んんっ! 宜しいですね? 話を続けますわよ」

 

 上位チャット

 コメント:んんっ! 初の失敗ですわよ

 コメント:キャラ守れて偉いねおじさん!

 

「試合も終わったことですし今日の配信はこれぐらいにしましょう。試合中で気になったことなどあれば質問用として作ったツイッターアカウントの『教えて洋美様@Teacher-Hiromi』かマシュマロに書き込むことですわ。それではごきげんよう」

 

 投げやりに配信を切ったのは悪くない。多分。

 

 

 


 

 

 

 2/22(日)

 

 ♯洋美のプレイボール ♯HPB(洋美プロ野球)NPB(日本プロ野球)

【HPBでNPB】オープン戦が始まるので、このワテクシが解説いたしますわ【part 2 】

 

「ごきげんよう洋民の皆様。ワテクシが元プロ野球選手の野球解説系Vtuberの金髪美少女ロリおじさんこと、敷島洋美ですわ」

 

 上位チャット

 コメント:洋美様!!

 コメント:こんにちは! 相変わらす良いロリおじですね!

 コメント:配信の最後の最後でキャラを守れなかった元プロ野球選手がいると聞いてきました

 

「昨日の私のことは良いのですわ」

 

 上位チャット

 コメント:ワテクシが抜けてますわ

 コメント:ワテクシ!

 コメント:ワテクシがないぞ~笑

 

「んんっ! いい加減になさい。流石のワテクシも怒りますわよ!?」

 

 昨日のことを掘り返され、気が動転してしまいどんどんと口調が崩れていく。コメント欄は尚もワテクシのことで遊びまくり、どんどんとその波が視聴者の中で広がってくる。

 しまいには、「お? 乱闘か?」と言い始める者も出てきた。

 

「本日の配信もオープン戦、東京栄読ラビッツ対東京ヘルススワンズの試合を解説いたしますが、その前に! 昨日の振り返りと質問について少し回答していきますわ」

 

 昨日の振り返りと言っても、三回の表にパワーブルズが一点を取ったシーンの解説と、ピッチャーの好投について、最後の失投シーン。質問はリードのことが多かった。

 まあ、リードの質問以上に、昨日のワテクシの失態についての質問が多かった。

 今日も多いんだろうなぁ。なんて死んだ目をしても、画面ないに映る敷島洋美のつり目気味の目はキラキラ輝いている。

 

「さて、改めて今日の試合ですが、昨日は海洋リーグの前年度優勝チームである畿内通運パワーブルズについてしましたので、今回は東京ヘルススワンズの試合を解説いたしましょう」

 

 去年の東京ヘルススワンズの成績をまとめた表が画面に映り、勝ち星が着いたときのパターンや良くあった負けのパターンのおさらい。キャンプ中に起きた外国人エースのライアンに起きた肘の故障と守護神丸山の腰の異常について。

 

「丸山選手は昨シーズンの登板数が72試合。セーブ数が49と、接戦が多かったヘルススワンズの象徴のような成績ですが、1シーズンフル回転で登板しましたし、独特の縦回転させるような腰の使い方ですから致し方ないと言う考えですわ。その分、誰がどう穴を埋めるかが重要ですわ」

 

 上位チャット

 コメント:キャラ守りの解説お疲れさまですお嬢!

 コメント:大卒ドラ1新人の村田君について何か教えて!

 コメント:今日はいつ崩れるかな?

 

「洋民はワテクシの敵なのですか? 味方なのですか? それと面白い質問があったので答えますわ。村田選手はかなり良いと思いますわ。キャンプを視察しましたが、キャンプ初日の彼は肘の使い方がまだ甘かったですが、終盤にはきっちり畳めるようになっていた。これは開幕一軍。下手すればスタメンがありますわ」

 

 ヘルススワンズは戦力が不安なのに対して、ラビッツの編成はかなり良い。元々日本一の購読数を誇る新聞社がバックに着いており歴史も古いため金がある。今年は現役のメジャーリーガーを二人獲得し5年目の外野手の竹井選手の能力がかなり上がってる。

 予想スタメンとしている3番カインズ、4番竹井。そして6番のアイアン。この三人の間に入り前と後ろを繋ぐ5番の孕石という存在も厄介だ。

 

「オープン戦が終わり次第配信しますが、今現在の私の予想ではラビッツが優勝すると考えてますわ」

 

 熱烈なチーターズファンがいるのか、優勝はチーターズと連呼しているリスナーがいるが無視しよう。

 一時期の走攻守がそろった状態のチーターズは勝ち試合負け試合をきっちりすれば優勝するだろうが、何故か長打力を上げるんだと調子の良かった選手の守備位置とだだかぶりの外国人助っ人を連れてきた時点でワテクシの中では優勝がなくなった。

 

「今列島リーグで一番調子の悪いヘルススワンズと一番調子の良いラビッツのオープン戦。楽しみですわ」

 

 上位チャット

 コメント:動き可愛いけど声おっさん

 コメント:律儀にロリをこなそうとするな笑 色物で居ろ

 

「何ですのあなたたちは、ワテクシに喧嘩を売っているんですの? ワテクシ、乱闘を起こしたこともありますが、やります?」

 

 上位チャット

 コメント:結構やんちゃしてた?

 コメント:結構やばいんじゃ……

 

「ワテクシ、1試合に二度死球を頂くと血が騒ぎますわ」

 

 上位チャット

 コメント:チガサワグ……ガクブル

 コメント:球審の黒井です。敷島選手を危険行為の退場といたします

 コメント:乱闘だめ、絶対

 

 

 

 ◆◇◆◇◆

 

 

 

「と言うわけで、序盤から火を噴いたラビッツの勝利ですわね」

 

     123456789 計

 東栄  013020010 7

 ヘルス 001000001 2

 

「ヘルスは三回から登板した2番手の、(こがらし)選手が誤算でしたわね。おととしの怪我による肘の手術。術後復帰直後は制球が定まらなかったのもありますが、昨年後半は状態もかなり良くなってリーグ優勝に貢献した選手でしたが……」

 

 その制球が、今回の登板では全く無かったとしか言い様がない。2回0/3の投球で四死球が四つ。三振はたったの一つで、失点は3。被安打は4つと非常に悪い。

 

 このままだと、配信が暗い感じで終わってしまう。それを避けるために、今度は今日良かったリードを説明する。

 ちなみに、どのシーンが良かったかをコメントで聞いてみると、大体は三振のタイミングを挙げている視聴者が多いが、ワテクシ的には違う。

 

「ワテクシ的に一番良かったリードは、5回の表、東栄の5番バッター孕石選手に対してのヘルスの3番手木暮選手と原田選手のリードですわ」

 

 5回ですでに3打席目になっていた状態で回ってきた孕石の打席。ここまで1打席目がストレート、2打席目がカットボールをレフト方向へ流している。

 このことから恐らく、原田はストレート系の速い球を狙いに来てると考えた。1球目はアウトローのカーブを、2球目はインローに入らなかったサークルチェンジを投げさせている。

 2つとも遅い球で、1球目を見送った孕石は、2球目をライト方向へ引っ張ったファールを打った。

 タイミングがずれてると思ったのは視聴者としても同じだったろう。だからこその3球目をアウトコースのストライクゾーンから落ちていくSFFを要求した。

 

「3球目に対して孕石選手はバットが泳いでいましたが、右肩はあまり開いてなかった。故に、この空振りは次の球に対する演技だとワテクシは思ったのですわ。だからあのタイミングで、サークルチェンジを投げさせると言ったのです」

 

 予想通り、原田選手は木暮選手に対してのサークルチェンジを要求。投球モーションに入った木暮選手を見て、孕石選手はさっきまで振り始めていたタイミングからずらしたタイミングでバットを出し始めた。

 捕手は捕球を行ったとき、大体はピッチャーやマウンド付近。もしくは、ミット付近を見ている。

 あのとき、ワテクシ自身がマスクを被ったときに、スイングの本質を見抜くことが出来たか……。もう一球遅い球を続けられたか。

 

 キャッチャーとして情報収集が足りているかどうかが分かるリード。孕石選手が仕掛けた罠が無ければ、100点満点のリードだ。

 

「と言うわけで、最終的にはあの打席でラビッツに追加点のソロホームランを献上してしまいましたが、あの場面が最も良いリードですわ」

 

 上位チャット

 コメント:なるほど~

 コメント:可愛いだけじゃない

 コメント:元プロをうならせるリード……

 

 洋美ちゃんならホームラン防げた? と言う質問がコメント欄に流れているのを見たので、ワテクシは無理矢理にでも、勿論と返答しておく。

 まあ、今のワテクシは無敵なので。

 

「それじゃあ今日の試合はこのくらいにして、明日ですわ」

 

 明日行われる試合は2試合。

 中部日報コアラーズ対中国東洋レッズの試合。

 北九州モバイルホークス対神奈川スターライツの試合。

 

「どっちの解説をして欲しいか、洋民の皆さんはコメント欄にどっちが良いか書き込みなさい」

 

 上位チャット

 コメント:はーい!

 コメント:中報対東洋かな?

 コメント:ホークス・ライツ戦が良い!

 コメント:ライツファンなので、ライツ戦が知りたいです

 コメント:昨日の配信で洋美ちゃんライツ好きって言ってたし、ライツ戦で良いんじゃないですかねぇ~?

 コメント:岡山在住的には東洋戦が知りたいけど

 

 コメントを流させ、どっちの意見が多いかをざっと見ると、喉が渇いていることに気がつきモニター前に置いていた緑茶を一口煽る。

 キャップを閉めてモニター前に戻すと、コメント欄がざわついていた。

 

「え? どうしたんですの?」

 

 コメント欄は、何で居るの? とか、まさかの登場とか言っているので、有名な人がコメントでもしたのかなと思い、流れてゆくチャットを遡る。

 

 幸田楓花(こうだ ふうか):中国東洋レッズの試合を届けないわけ……、ないよね?

 

「え? 幸田楓花って、あの幸田楓花さん?」

 

 幸田楓花:そうだよ~。あなたの先輩だよ~?

 

 幸田楓花

 VTuberの企業である『ばーちゃりある』の1期生。3人の女子高生というイメージだったはずが、その気性の荒さをいじられ、楓花という名前から風タソと呼ばれるようになった残念な先輩。

 なお、熱狂的な中国東洋レッズファンで、おととしのリーグ優勝時には、【今日】レッズ優勝を見守る【決戦】という配信で叫び続けていた。

 チャンネル登録者数は70万人を超えていて、『ばーちゃりある』の顔の1人である。

 

「あ、ツイッターにDMが……」

 

 幸田楓花:一緒にしましょう?

 

「幸田さんに一緒にやろうと言われましたけど、これは逃げれない奴ですよね?」

 

 視聴者に聞いてみても答えは分かっている。やれ。だとか、当たり前だ。とか……。

 

「配信終わりに打ち合わせしましょう幸田さん。明日は、オープン戦中部日報コアラーズ対中国東洋レッズの試合を、実況幸田・解説敷島でお送りいたしますわ」

 

 それではお楽しみに、ごきげんよう。

 

 〆の挨拶を終わらせると、配信画面を閉じて頭を抱える。

 

「こんなすぐにコラボって……。同期コラボもまだなのに!!」

 

 幸田楓花:よろしくね!

 

 DMで送られてきた先輩の言葉が、私には死刑宣告に思えてしまった。

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