現役生活二十六年。疲れたので、バ美肉して野球解説系Vtuber始めます 作:義藤菊輝@惰眠を貪るの回?
社員になって書く時間がありません。なので短いです。
「いやー。まさか呼ばれるとは思ってなかったっすよ」
「それはこっちもだよ。来てくれると思ってなかったから。いやー。それにしても……、ファン的には嬉しいだろうね。この並び」
都内のスタジオに集まったのは四人の元プロ野球選手。
一人目は、東京ヘルススワンズの黄金時代に正捕手を務め、キャッチャーといえばこの人。とまで称される人物。古畑さん。
二人目は、中報の黄金時代にエースとして活躍し、球界でもトップクラスのカットボールを武器に戦い抜いた河下さん。
三人目は、ヘルスとモバホの二球団で活躍し、最優秀救援投手のタイトルも獲得した木枯良太郎さん。
そして四人目は私。
「中報とヘルスの最優秀バッテリー受賞同士だね」
「そうですね」
あれ? もしかしてこれ始まってる?
スタジオの真ん中でしっかりと立ってる私たち四人だが、ちょっと前からカメラのランプが点いてるんだよなぁ……。
「フルハタ野球大学って、河下さんと津路嶌くんは見たことある?」
「僕はね……。あるね。他の野球選手がしてるYouTube気になって」
「そっか。伸憲もYouTubeやり始めたもんね」
そう。河下さんは自身の名前を使ったYouTubeチャンネル「カットボール河下のYouTubeチャンネル」を始めている。だが、この流れはまずい。絶対私にくる。
「いやぁ、でもねぇ。横にいるおじさんのVtuber? すごいじゃないですか」
「そうそうそう。あれどうしたの。見たよ。敷島洋美」
「僕も見ました。可愛いですね。洋美ちゃん。姪っ子なんでしたっけ」
「アー。ソウデスネ。ハイ」
なんでカタコトなんだよ。と古畑さんに突っ込まれつつ、本題がスタートする。今日は「キャッチャーについての講義その1」ということらしい。
「さあ、早速講義を始めていくわけですけど、先ずは俺と津路嶌のキャッチング姿見比べますか」
「そうですね。あ、古畑さんちゃんとマスク被るんですね。サボりの私とは違う……」
別に練習でもなくただキャッチング取られるだけだからマスクは良いかなと思い、スタジオに造られていたマウンド側に行く横で、メガネの大先輩がちゃんとマスクを被っていた。
「マスクつけないの?」
「変わってから付けます」
相変わらず、小さくまとまった綺麗な捕球体勢を取る古畑さんに惚れ惚れする。
右足を落とした基本の体勢。基本の形と言っていいし、今の球児たちが真似するキャッチャーの体勢だと思う。
パシッ! と気持ちのいい音を立てて捕球した古畑さんが立ち上がり、今度は私が座る。
両膝を前に出した、正座に近い体勢。踵は地面につけず、腿は地面と並行。上半身は少し前に倒し、ランナーが一塁にいる時は右膝の位置が平行より少し高い。球を受ける時はミットを落とさず、腕を上げ続けたまま。受ける瞬間に少し手首を引き、掴むというより収めるイメージの捕球をする。
「やっぱあれだよね。津路嶌は中報の時から取り方変わったよね」
「そうですね。無理矢理行かなくなったんで」
「けど、比較して見るとだいぶ違いますね」
二人ともの映像を横並びにしてスロー再生をすれば、「取る」と「受ける」の違いがよくわかる。
ミットの出し方もそう。私の場合はあまり動かさず、ミットの面を投手に向けたままで捕球するのに対して、古畑さんは一度リズムをとるように落としてから捕球する。
「私の捕球体勢は、古畑さんとか安部さんみたいなオーソドックスとは離れてますけどね」
「ちょうどいいから良太郎投げなよ」
古畑さんの一声でスタッフの方と交代した木枯さんが、私に向かってボールを投げる。まだキャッチボール程度ではあるものの、座ったまま受け、そして彼にボールを返す。
「うわっ! もうこの時点で違いますよ古畑さん!」
どう違うか言いなよ。と冷静に返されつつも、木枯さんはまずミットの面のことを言う。
「投げる体勢に入ったら下げて無いですよね。古畑さんは一回落とすと言うか、リズムが入るんですけど、津路嶌さんはそれが無いので、すごく不思議な感覚です」
「でもね、コントロール良く無い子にはこっちの方が良かったりするんだよ。古畑さんの一回落としたりするのってリズムも取りやすいし、ボールを外から取ったりできるからフレーミングしやすいんだけど、私の場合はミットを動かさない分ね? 構えたミットに一直線で入るわけで? コントロール悪い奴が綺麗に構えたとこ投げれれば、「俺調子良くね?」ってなるでしょ」
「なるほどね。たしかに中報の時からフレーミング少なかったよね」
他に理由を挙げるとすれば、
「それじゃあ津路嶌は実際わざとやってなかった感じなの?」
「そうですね。ここぞって時に下手に誤魔化し続けてると、7回1アウト二塁とかで、今だったら誰だろう……。モバホの外川とかウルフズの村中君とか来たら困るんで」
あとなんだろうなぁ。なんか話せることあるかなぁ。
「捕球の中心はどこ? 肘?」
「いや、肩ですね。指先より手首、より肘、より肩でおっきいところから使うのイメージ。じゃないとミット流れますしね」
「伸憲的に他のキャッチャーと違うなって思うことある?」
「えー。なんだろう。うんこ座りとか? あとはなんだろう。脱力しすぎて両膝地面着けて取ってる時あったくらい? でも大きな違いってそこら辺じゃないですかね?」
まあ確かに。大きな所はそんな感じか。と納得していれば、スタッフに促されて二人並んで捕球体勢を取って撮影する。動画の一つ目はここまでらしい。次は盗塁阻止とか。今日だけで何本撮るのかな……。
「そうだ、今度バッティング講義に呼ぶからよろしくね」
解せぬ……。
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