妖精と白兎の愛育日記   作:護人ベリアス

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プロローグは自分の小説で毎度リュー×ベルに振り回されるポジが定着し始めたシャクティさん視点でお送りします。
半年前から暖めていた構想を方向修正を重ねた末にようやく形にし始める時…!


プロローグー妖精と白兎の秘密ー①

「…何をどうしたらこうなるんだ…?」

 

「「え?」」

 

 私の愕然とした呟きに『二人の男女』が息ピッタリに声を揃え首を傾げて応じてくる。

 

 …本当に何をどうしたらこうなる?

 

 私シャクティ・ヴァルマは治安を司る【ガネーシャ・ファミリア】の団長として、共に治安を維持するために戦ったかつての同志リュー・リオンに密会を依頼していた。

 

 リオンはかつての同志ではあるが、直前まではブラックリストに名を連ね、今は故人と扱われているが故にブラックリストから削除されたという事情を抱えている。よって堂々と会うのは難しいと言わざるを得ない立場の者であった。

 

 だが『とある事情』を聞き出すことを余儀なくされた私はリオンの雇用主である【小巨人(デミ・ユミル)】から許可を貰い、彼女を介してリオンに依頼した。そして今こうしてリオンと密会する場を設けてもらっている。

 

 場所は【小巨人(デミ・ユミル)】が経営しリオンも勤めている『豊穣の女主人』の二階の個室。

 

 床下からは酒場が繁盛しているのがありありと分かる喧騒が聞こえてくる中、私はリオンとの二人だけでの密会を果たし『とある事情』を早々に聞き出せる…はずだった。

 

 だが非常に理解し難いことに私の願望は果たされなかった。

 

 私は確かに『リオンとの二人だけでの密会』を依頼したはずである。

 

 それはリオンと私の密会が行われたという事実を出来るだけ隠蔽したいからでもあり、リオンに迷惑をかけないための配慮でもあることはリオンも理解できるはず。

 

 

 なのになぜここに部外者のはずの【白兎の脚(ラビット・フット)】がいる?

 

 

 …リオンは私の伝えたことの趣旨も理解できないほどのポンコツに成り果てていたのか?

 

 それとも【白兎の脚(ラビット・フット)】が何かしらの事情でこの場にいる必要があるのか?

 

 それはつまり【白兎の脚(ラビット・フット)】が私の聞きたいと欲する『とある事情』に関与しているからなのか?

 

 というかなぜリオンは純白のワンピースというこれまでに一度も見たこともない女性らしい装いをしているのか?…これまでに会う時はいつも『豊穣の女主人』の制服か冒険者の装いであったからどうにも見慣れない…その上リオンは普段ぴっちりとスタイルの良さが分かりやすい服を好んで着ていた記憶があるのに今日は妙にゆったりとした服を着ている気がするのは私の気のせいか?

 

 さらに言うとなぜリオンと【白兎の脚(ラビット・フット)】は肩を寄せ合っていると表現しても良いほど距離を縮めて座っているのか?私と二人の間に置かれたテーブルは二人にとって窮屈とはとても思えないのだが…

 

 疑問が数えきれぬほど生まれてくるが、私の困惑が理解できないとばかりに二人揃って首を傾げているリオンと【白兎の脚(ラビット・フット)】は疑問に答えてくれない。

 

 よって結局はその疑問を解消するには二人から聞き出す他ないと悟った私は、困惑をひとまず脇に置きつつ尋ねた。

 

「リオン…色々聞きたいことがあるのだが、一つずつ聞いていってもいいか?」

 

「もちろんです。シェクティのご期待に添えるならば、答えられる範囲で幾らでも」

 

「なら…聞こう。まず【白兎の脚(ラビット・フット)】はなぜここにいる?」

 

「「…え?」」

 

 私の問いにまたも声を揃え首を傾げるリオンと【白兎の脚(ラビット・フット)】。

 

 …この息ピッタリ具合は何なのだ?

 

 確かにリオンと【白兎の脚(ラビット・フット)】はこれまでに幾度となく共闘していたのは知っており、関係が深いことは理解する。さらに【深層】からたった二人で生還し、それどころかギルドが隠蔽を図るほどの【異常事態(イレギュラー)】にさえ二人のみの力で切り抜けたと言う正直恐ろしい経歴を持っているのも立場上知っている。

 

 …だがこれほどまでの息ピッタリ、以心伝心と言わんばかりの距離感をあのリオンが築くことができると言うのだろうか?数々の苦難がリオンと【白兎の脚(ラビット・フット)】を私には理解し難いほどの絆を生んだとでも言うのか?…それはかつてのリオンを知る身としてにわかに信じ難い。

 

 だがそんな疑問を二人はあっさりと打ち砕いた。

 

「…ベル?シャクティは何を困惑しているのでしょう?」

 

「…うーん。さては僕がいると話しにくいことがあるんですかね?」

 

「そのようなことは恐らくないでしょう。シャクティは信頼のできる方であり、そのような後ろめたいことを話すような方ではありません。まずベルに話せないようなことを私が聞く道理はありません」

 

「確かにそうですよね…本当に何故でしょう…?」

 

 …は?

 

 小声で話し合う二人の会話を聞き取った結果浮かんだ言葉はこれだけであった。

 

 私はこの会話の中からだけでも驚きを禁じ得ない事実を思い知らされた。

 

 まずこの二人、私の困惑の理由を全く理解していない。…冗談抜きでポンコツの称号を進呈したいのだが、問題ないだろうか?

 

 さらに【白兎の脚(ラビット・フット)】に話せないことをリオンが聞く道理がないとは一体どのような道理か?それに【白兎の脚(ラビット・フット)】があっさり同意しているのも理解不能である。

 

 …この二人の間にはまさか互いの知ることは共有していなければならないと言う鉄則でもあるのだろうか?

 

 

 …それではまるで共闘者の域を越えて夫婦のようではないか。

 

 

 いや、夫婦でもそこまでのことはしないし、そこまでするならば余程の信頼関係が構築されているのか?

 

 そんな自分でも理解不能な考えに至り始めた私は意味の分からない思考を打ち切り、このポンコツ達に質問を重ねる。

 

「…リオン。一応言うが、私はリオンとの二人だけでの密会を依頼していたはずだ。なのになぜ【白兎の脚(ラビット・フット)】がいるのかを聞いている。この質問の意味が分からないのか?」

 

「それは…記憶しています。ですが私への話は当然ベルも聞いておくべきことです。シャクティからのお話であれば、私の今後に関わることである可能性が高い以上尚更。どちらにせよ私はベルに話す以上、ベルの意見もお聞きしベルにもう一度話す手間を省くのは何らおかしいことではないのではないですか?そもそもそれができないような後ろめたい話を私はあなたの口から聞くのは気が進みませんし…」

 

「なぜそこで『当然』【白兎の脚(ラビット・フット)】が聞くことになっていて、【白兎の脚(ラビット・フット)】が聞けないことはリオンも聞けないことになっているんだ?私は全く理解できないのだが…」

 

「…ベル?私は何か妙なことを言っていますか?」

 

「まさか!僕だってリューに隠し事はしないし、聞いたことはみんなリューに話すからリューは普通だと思いますよ?僕だってリューにファミリアの今後についてを話す時にちゃんとお呼びしましたし。リューの今後に関わることを話す場に僕がいるのはおかしいことではないと思います」

 

「ですよね…そうなれば…」

 

 そう言いつつリオンと【白兎の脚(ラビット・フット)】は私に疑いの視線を向け始める。…まるで私の言い分が異常であるかと言うかのように。

 

 …その視線にはどうして自分達を無理にでも引き離そうとするのか?という怒りと悲しみも篭っているようにも感じられる辺り私の感覚は本当に異常になってきているのではと疑いたくもなる。

 

 だが異常なのは二人の方だと疑いようもないと考える私は、その視線に抗議をぶつける。

 

「待て。私はそのお前達の距離の近さも理解できない。なぜそうまでして情報を共有したがる?」

 

「なぜと言われましても…」

 

「それは…」

 

 抗議とともに尋ねた私の問いにリオンと【白兎の脚(ラビット・フット)】は呟きと共に一度顔を見合わせると、私の方に向き直ると思わぬことを口にし始めた。

 

 

「「私(僕)達は一心同体ですから」」

 

 

「…は?」

 

 いくら私でも流石に愕然とするあまり漏れる呟きを我慢できなかった。

 

 ただの共闘者のはずの二人が一心同体?

 

 これまで絆が深い冒険者の男女は幾度となく見てきたが、ここまで言い切る上に距離が近すぎる者達など見たこともない。

 

 この二人にここまで言わせるのは何だ?

 

 理解が全く追いつかない私であったが、話は進めなければならない。…というか今の説明では全く説明になっていない。よって二人の答えにとりあえず確認を取っていく。

 

「…なるほど。お前達が一心同体と自称するほど親しいことはよく分かった。つまりお前達は心も身体も一つだから、私の話も二人で聞かなければならない。そう言いたいのだな?」

 

「そういうことです。やっとシャクティは理解してくださいましたね」

 

「じゃあ僕も同席しても大丈夫ということですね?」

 

 私の確認に二人はようやくかと言わんばかりに息を吐く。

 

 だが説明になっていないものは説明になっていないのである。

 

「いや…全く理解していない。そもそも一心同体など空想の概念ではないか?それではリオンのみに話したいことを【白兎の脚(ラビット・フット)】も聞かなければならない根拠にはならないのではないか?」

 

 私はそう淡々と二人の述べたことが根拠にならないことを告げていく。

 

 その言葉はあくまで私の疑問を解消するためのものだった。

 

 だがリオンはそうは理解してくれなかった。

 

 

「シャクティ!!それは流石に聞き捨てなりません!!」

 

 

 怒号と共にヒビが入るほどの強い力でテーブルを叩き、その勢いのまま立ち上がるリオン。

 

 思わぬ反応に私はビクリと驚きを隠せぬまま立ち上がったリオンを思わず見つめると、リオンの表情は怒りで顔が真っ赤になりかけていた。

 

「私とベルが一心同体ではない…?それはどういう意味です?私のベルへの愛が足りていないとでも言うつもりですか!」

 

 …ベルへの…愛?

 

「それは私への侮辱ですよ。シャクティ…いくらあなたでもそれだけは許しません。私は誰よりもベルのことを愛している!それは誰にも否定させはしない!」

 

 …ベルを…愛している?

 

「ちょ…リュー!落ち着いてください!そんなに怒ったら身体に悪いですよ…!というかそれだけじゃなくて…」

 

 私がリオンの怒号への理解が追いつかない一方【白兎の脚(ラビット・フット)】がリオンの怒りを収めるべくリオンの手を握り、諫める声を掛ける。

 

 …待て?

 

『リオンの手を握り』?

 

 なぜあのエルフで潔癖なリオンが【白兎の脚(ラビット・フット)】の手を即座に振り払おうとしない?

 

 それどころかリオンは思わぬ行動まで取り始める。

 

「ベル。止めないでください。シャクティは私達が一心同体であることを否定し、私達の愛を汚しました。これは絶対に許してはならないことです」

 

 またもやリオンの口から飛び出したとは全く考えることもできない『愛』という言葉に驚きつつ私はそれ以上に自身の目を疑う。

 

 

 リオンは【白兎の脚(ラビット・フット)】の手を振り払うどころか両手で握り締めたのである。

 

 

 …もはや現状を全く理解できない。私は呆然と二人を眺めることしかできなくなってくる。

 

 そんな私を放置して、私に怒りを露わにするリオンとその怒りを収めようとする【白兎の脚(ラビット・フット)】の会話は続いていく。

 

「シャクティさんにそんなつもりはないですよ。だからリューは落ち着いて席に座りましょう?」

 

「しかしっ…」

 

「大丈夫。リューが僕のことをすっごく愛してくれてるのは僕が一番分かってますし、僕もリューのことを誰よりも愛してます。でもそれは僕とリューだけに分かることであって、シャクティさんにも他の誰にも分からないことだと思います。だからリューはそんな他人の言うことなんかで一々怒る必要はないと思いますよ?」

 

「それも…確かにそうです」

 

白兎の脚(ラビット・フット)】の説得にリオンは段々と怒りを収め始めていく。その証に勢いのままに立ち上がったはずのリオンは段々と腰を椅子に戻し始めまでしているのである。

 

 … 【白兎の脚(ラビット・フット)】の説得力とリオンへの影響力には驚く他ない。

 

 だがそれ以上に二人の会話を聞く中でようやく見えてきた答え、一度は勘違いだと切り捨てた答えが再び心に浮かぶ。

 

 あの潔癖だったリオンが【白兎の脚(ラビット・フット)】とごく普通に手を握り合っていると言う事実。

 

 あの人との距離を常に取りたがるリオンが【白兎の脚(ラビット・フット)】と至近距離で顔を見合わせ、若干頰を赤く染めていると言う事実。

 

 恋愛とは無縁だと思っていたリオンが『愛』という言葉を連呼していると言う事実。

 

 まさか…

 

 

「…お前達…まさか交際してたりするのか?所謂…恋人という…」

 

 

「なっ…シャクティ!見誤らないでください!私達は恋人ではなく添い遂げることを誓い合った婚約者です!」

 

「だからリューはそれ以上自爆しないでぇ!絶対に後で後悔するから!!」

 

 私の推測はまさかの正解だった。

 

 それが私の言葉に応じたリオンの怒号とそれを止めようとする本音の漏れ出した【白兎の脚(ラビット・フット)】の悲鳴からはっきりと分かった。

 

 これでようやく一つの謎が解けた。

 

 リオンと【白兎の脚(ラビット・フット)】の距離が近過ぎるという謎。

 

 

 それはこの二人が交際していたからだったのである。

 

 

 …正直に言おう。

 

 それを早く言ってくれれば、もっと早く私も理解を示すことができたであろう、と。




リュー×ベル子育て物語開幕です!
今作のリュー×ベルは初期で二人で一緒にいるのも距離が近いのもイチャイチャするのも二人は一心同体という理想を抱くのも『当たり前』なので交際を知らない周囲の疑問を全く理解できないポンコツになってます。…あ、元々ポンコツでしたね。
まぁリューさんの激昂は妊娠中の情緒不安定に一因があると一応記しておきます。
現状のリュー×ベルは付き合ってるけど、結婚はまだって感じです。結婚式は…以前描いたので検討中です。
まぁリューさんの暴走癖は過去最高(?)なのでこれまでで一番過程を吹っ飛ばしてますがね!(ちゃんと過去編を描いて過程もしっかり描く予定ですが)

シャクティさんのようなリューさんの潔癖症を知る人物からすれば交際自体が衝撃ですからね…これに加えて子供ができたという事実まで…となった結果、プロローグは一話で終わらせるるつもりが、 1万文字を越えたので二話に分割しました。近いうちに投稿します。

あ、一応この作者イチャイチャと子育てだけなんて書けるの?+投稿頻度遅い…と思った方のために少々参考+お茶濁しとなるものを…

リューさんとベル君がイチャイチャするだけのお話。
① 『リオン様はおねだりしたい』https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=11530667
②『リュー殿はお料理したい』https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=11661090

リュー×ベルの子供を描いたお話。
 『夢見る乙女は妖精と白兎の背を追う』https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=11857567

宜しければ今作の今後がどうなっていくかを想像するためにも是非…

内容を一番厚くした方が良い時期ってどの時期ですか?話を進める上で長期的に参考にしたいです。(アンケートで表記した子供と言うには第一子のことであり、何人子供が登場するかは検討中です。)

  • リュー×ベルが付き合うまで
  • リュー×ベルの子供ができるまで
  • リュー×ベルの子供の幼少期
  • リュー×ベルの子供の思春期
  • リュー×ベルの子供の青年期
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