妖精と白兎の愛育日記   作:護人ベリアス

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絶賛先の方まで書き進めてますが、いつ子供が出てくるかそろそろ分からなくなってきましたねぇ…(白目)
山積みの問題を半分ぐらい始末したら発覚イベントを挟んでさらに問題が増えて…
あれ?子供さんのお顔を拝めるのはいつになるんだ?(白目)
…となりつつある作者でした。

とりあえず第一の問題、シルさんとの問題は今回で解決です


親友と恋人の狭間で

「…一体どういう状況ですか?リューさん?シルさん?」

 

 殺意も篭っているのではと思えてしまうほどの鋭い視線を私とシルに突き立てるベル。

 

 ベルの言う状況とは、私がシルの前に跪きシルがその私に剣を突き付けているという状況。

 

 周囲から、ベルから見ればあまりに異常な状況。

 

 ベルが不快感を露わにし、説明を求めてくるのは当然ではあったのかもしれない。

 

「…どうとは一体どういうこと?ベルさん?」

 

 シルはベルから視線を外し、ベルの剣幕にも動ぜず平然とベルに聞き返す。

 

 だがそのシルの態度はベルの逆鱗に触れた。

 

「何を意味の分からないことを言ってるんですか!?シルさんがリューさんに剣先を向けていることがあくまで何らおかしくないことだとでも言うんですか?ふざけないでください!?今すぐその剣を鞘に戻してください!」

 

 ベルはそう声を荒らげる。

 

 もしシルがベルの求めに応じなければ、シルから無理矢理でも双葉を奪いとらんとしそうなほどの勢いだ。

 

 私の安全を気にかけてのことだろう。

 

 私の身を守るためだろう。

 

 だが…

 

「ねぇ?リュー?ベルさんはこう言ってるけど、私はどうすればいいかな?」

 

「そんなことっ…!」

 

 ベルの求めに対し、シルはベルに答えるのではなく私にシルがどうすべきかを問う。

 

 それにベルは『そんなこと言うまでもない。』と言いかける。

 

 その続きには恐らく『僕の求め通りにすべきです』。

 

 そんな言葉が続くのかもしれない。

 

 だが私はそのベルの紡ぎかけた言葉を遮っていた。

 

「…ベル」

 

「なっ…なんでしょう!?リューさん!?」

 

 私が呼んだベルの名前にベルは身を乗り出さんばかりの勢いで応じてくる。

 

 恐らくベルは私の安全を確保せんと逸っているのだろう。

 

 恐らくベルはこの状況に冷静さを欠きつつあるのだろう。

 

 

 なぜならなぜこのような状況になったかの原因も聞きもせずこの状況を『異常』だと即断しているから。

 

 

 なぜならこの状況が私とシルの意によって生み出された可能性を考慮しようともしないのだから。

 

 

 だから私はそんなベルの浅慮を断じなければならないと思った。

 

 私とシルの今後の関係に決着を付けるための機会を潰すかのような愚行が許せなかったから。

 

 ベルの介入で一時凌ぎをしても私とシルの関係は本当に壊れてしまうだけだと私は直感で分かっていたから。

 

 私はベルから視線を背け、ベルに言い放った。

 

 ベルの浅慮に対する抑えきれぬ怒りと共に。

 

「控えなさい。ベル。これは何らおかしくないことです。これは私とシルの合意の上で生み出された状況。ベルの介入は不要です」

 

「なっ…何を言っているんですか!?リューさん!?この状況を僕が見過ごせるわけ…」

 

 私の反応が完全に想定外だったとばかりに動揺を見せるベル。

 

 そう。

 

 ベルは恐らくこの状況を見過ごせない。

 

 私が傷つけられようとしていること自体も本来親友であるはずの私とシルがこんな状況にあることも見過ごせない。

 

 

 だがベルはもっとも肝心なことを見過ごしていた。

 

 

「ベル?まずなぜここにいるのですか?」

 

「…え?それはミアさんにリューさんとしるさんの居場所を聞いて…」

 

「違う。そんなことを聞いているのではない。なぜベルの本拠に帰っていないのかと聞いているのです。ベルと別れてから時がほとんど経っていない以上ベルは本拠に戻らず直接ここに来た…違いますか?」

 

「…その…通りです…」

 

「なぜです?私とベルの話ではベルはファミリアの方々に私とのことを話すことが急務ということになっていました。そして私もまた『豊穣の女主人』に戻って、解決しなければならないことがあると言いました。それがシルとのことです。シルとこれからどのように向き合うか決着を付けることです。私は今まさにそのすべきと事前に話していたことを解決しようとしています。その結果辿り着いたのがこの状況。ただの解決に至るまでの過程であり、『異常』などではない。…そもそもベルはなぜ自らの役割を放棄してここに来たのですか?」

 

「それは…リューさんのことが…心配だからで…」

 

「それが自らの役割よりも重要だったと?私が解決できぬとでも?解決できずにベルへの愛とベルの信頼を裏切るとでも?私はその程度しか信頼されていなかったのですか?」

 

 矢継ぎ早に吐き出される詰問と共に噴き出すのは怒りと失望。

 

 今ここにベルがいることの意味。

 

 

 それはファミリアの方々へ私達の関係を説明し認めてもらうように尽力する役割を先送りにしたということ。

 

 私は即座にシルへの説明を果たし私とシルとベルの関係の更新のために覚悟を決めたにも関わらず。

 

 

 それは私が『豊穣の女主人』における問題を解決できないと思われたということ。

 

 即ち私はベルに信じて任せてもらえなかったのである。

 

 

 ベルがこの場にいることが示す二つの意味は私に自制を忘れさせた。

 

 その二つの意味はベルの私に向ける愛と信頼が私の思い込んでいたよりも軽かったと証明しているに他ならないと思えたから。

 

 だから私はベルの顔を見る気にもならず噴き出す失望を垂れ流し続けた。

 

「これはシルと私の問題です。ベルが介入しても解決するどころか話が歪むだけ。今すぐ立ち去りなさい。そしてベルはベルの役割を果たしなさい」

 

「でもっ…!」

 

「これ以上時間を無駄にしないでください。ベル。今私とベルが話している時間は明らかに無駄です。私とシルのために全くならない。ベルが早急にこの場を立ち去ることこそ私とシルのためになる。そんなことも理解できないのですか?」

 

「ぐっ…!」

 

 ベルはもはや反論の言葉も紡げない。

 

 そしてそんなベルに私は視線を向けさえしない。

 

 一瞬の静寂が部屋に訪れた末にベルは叫んだ。

 

 

「…分かりました。もうリューさんの勝手にしてください!僕はもう知りません!」

 

 

 捨て台詞と戸が勢いよく閉まる音だけが残される。

 

 ようやくシルとの決着に話を戻せる。

 

 そう息を吐き、ひとまず少しずつ落ち着きを取り戻し始めた私にシルは呟いた。

 

 そしてその呟きは…未だ怒りを収められていない私に冷水を浴びせるものであった。

 

「…いいの?ベルさんどう考えても怒っちゃったよ?それこそリューのことを嫌いになるくらい」

 

「…ぇ?」

 

 シルの指摘に急速に怒りが消えていく私。

 

 

 そして怒りに代わって私の頭を占め始めたのは怒りに我を忘れていてすっかり鳴りを潜めていた恐怖であった。

 

 

「…ぁぇ?わたっ…私は…ベルに…ベルに何を言った?」

 

 ベルを罵倒した。

 

 ベルの心配など不要でベルに目の前から消えるように宣告した。

 

 ベルとの会話自体が無駄だと吐いた。

 

 

 私は…なんてことをしたのだ…

 

 

「…そんなショックを受けるくらいならベルさんの言葉を受け入れてれば良かったのに…まぁリューがそれだけ私のことを大事に思ってるって分かったのは決して悪いことだとは思わないけど。リューはベルさんに解決してもらうんじゃなくて自分の力で納得する形で解決したかったんでしょ?」

 

「そうっ…ですがっ…」

 

 ベルを傷つけてしまったらなんの意味もない。

 

 私は自らの短気を呪った。

 

 私はどうしてこうも怒りに我を忘れやすいのか…

 

 私はこんな愚かな私自身を許せなくなる。

 

 そしてそんな私の心境を見透かしたようにシルは言った。

 

「確かにね。今のは私はベルさんが悪いと思う。ベルさんはリューの言ってたことから考えると、全く期待に沿ってなかった。ベルさんはリューが如何なる形であれ私とのことをきちんと解決するのを黙って待っていた方が良かった。そうじゃないとリューは納得できない。そして私も納得できない。だってリューの言う通りこれはリューと私の問題。二人で解決できないと絶対後悔する。でもベルさんに怒りに任せて追い払うのは流石にまずかったと思う。取り敢えずベルさんとのことは後でゆっくり向き合うとして…リュー?今更自分の作った現実に向き合ってショックなのは分かるけど私の話を聞いて?」

 

 放心しかける私を前にシルは剣先を私の目の前から動かすことなくしゃがみ込むと、私の目をじっと見つめる。

 

 それに私も応えぬ訳にもいかず動揺を何とか押さえ込んでシルの目を見つめ返した。

 

「じゃあベルさんのせいで話そびれた答えを話すね?心と体の準備は大丈夫?」

 

「…少々時間をくださいませんか?」

 

「もちろん。リューの準備が整うまで待つよ?だってリューと私のこれからが本当の意味で決まるんだもん。リューが正面から向き合うと決めたなら私も卑怯な真似はできないよね」

 

「ありがとう…シル」

 

 シルから許可をもらい私はひとまずベルとのことは頭から消し去り、何度も深呼吸を重ねて気持ちを整える。

 

 …今だけはベルに犯した愚行を忘れなければ、シルと向き合うことさえ出来なくなる。

 

 それではベルに対して罪を犯してまでしてシルとの決着を追い求めた意味がなくなる。

 

 なんとか落ち着きを取り戻した私はコクリと頷いてシルに準備が整ったことを伝えた。

 

 それを見て、シルは自身の覚悟を決めるかのように小さく息を吐く。

 

 それと同時に振り上げられる双葉。

 

 

 …やはり私をシルは許せないのか?

 

 

 時間が引き延ばされているような感覚を覚えながら私はそうぼんやりと考える。

 

 そうして私の視界にゆっくりと振り下ろされていく双葉が映る。

 

 …反射的に私は双葉を避けるか?

 

 …その刃を自らの身に受け入れるか?

 

 その判断を私は直感に任せる。

 

 私自身瞬時の思考ではその直感がどう出るか分からなかった。

 

 そして双葉を見上げていた視界から双葉が姿を消した時。

 

 その直感の答えは出た。

 

 感じるのは痛みではなかった。

 

 感じるのは避けた時に生じる僅かな風でもなかった。

 

 

 代わって私の身に届いたのはガキッという鈍い音だった。

 

 

「…はい。これでもう私の知るリューはいなくなった」

 

 シルのその静かな呟きを聞くと共に気付いたのは、シルが双葉を振り下ろしたのは私の身体ではなく床板だったという事実。

 

 

 双葉は私とシルの間に突き立てられていたのだ。

 

 

 そしてシルの言う『私の知るリューはいなくなった』というのは…

 

「…命を奪うのに代わって私とシルの間に双葉を突き立てた…これで私とシルの関係は終わり。私はもうあなたの知る親友ではない…という理解で良いのでしょうか?」

 

 私はシルの反応をこう解釈した。

 

 だがその解釈にシルは首を振る。

 

「そうじゃないよ。確かに今までの関係を続けるのは無理だと思った。でも私はこれから新しい関係を築いていけたらなって思ってる。『親友』として、ね?だって私はリューの口から私のことを『親友』だって思ってくれているのが分かったのが嬉しいから。そしてベルさんと同じくらい私のことを大事に思ってくれてるのが分かったから。…とは言ってもリュー的にはかなり不本意だったかもだけど」

 

「えっと…あぁ…それは…つまり…私はシルの親友のままでいい…と?」

 

「そうだよ。リューと私の関係をこれからは本当の意味で『親友』にしていけたらなって思ってる。その意味がリューには分かる?」

 

 シルの問いに私は考える。

 

 …つまり私とシルは本当の意味で『親友』では今までなかった…ということか?

 

 私としては密かにシルをそう見做していたが、シルとしては違った…と?

 

 そう考え込むが、私はシルの意図までは図れず首を傾げることで答えとする他なかった。

 

「リューってさ。ずっと前に私に恩を返すために『豊穣の女主人』に残るって言ったじゃん?そしてリューはずっと私のわがままを聞いてくれた。私の要望でベルさんを何度も助けてくれた。でもこれって友達としてどうなんだろう?私はいつもリューにわがままを聞いてもらってる感じでちょっと不本意だったかな」

 

「…とは言え私はシルに私の心を苦しみから救ってくれた恩が…」

 

「だからそういう恩とかで結ばれた関係は終わりってこと。リューは自分の意志で行動すればいい。ベルさんを助けるのにも私のためじゃなくてリュー自身のためにすればいい。これからは私のことは強く意識せずに自分の意志に従って?リュー?私は今回私に話に来てくれたことがその第一歩だと考えてる。私は私の意志に従って、リューはリューの意志に従う。私の意志に従う必要なんて全くないんだから。そうでしょ?リュー?」

 

「それも…そうです」

 

 …シルの指摘は的確だった。

 

 これまで私はシルへの恩返しを『豊穣の女主人』に留まる理由とし、ベルを助けるのもシルのためを理由としてきた。

 

 だがベルを助けることの意味が変わった瞬間が確かに存在した。

 

 シルのために助けるのではなく私自身のために変わった瞬間があった。

 

 それは【深層】でのこと。

 

 …今考えればベルへの思いからシルのことが完全に抜け落ちるなど本来は考えられない。あの時の私はシルのことをすっかり忘れ、私自身のためのみに行動した。

 

 そして想いを告げることを決意し、ベルと結ばれた。明らかにあの時の私は私自身の抑えられない意志に従っていた。

 

 その延長線として私とシルは今こうして向き合い、決着を付けようとしていた。

 

 そんな私の意志の発露をシルは望んでいた…とでも言うのか?

 

 そんな疑問が浮かぶ中シルは続ける。

 

「それでね?リュー?リューが私の思いを尊重してくれたように私はリューの思いを尊重する。だからリューのベルさんへの愛には一切異を唱えたりなんかしない。私はリューに幸せになって欲しいと最初から思ってた。私からリューを奪ったベルさんにはナイフを突き立ててもいいけど、リューに突き立てようだなんて私は全く思わないよ?」

 

「え?あ…はぁ…それでつまり先程までの言葉は…」

 

 …一瞬聞こえた不穏な発言は聞かなかったことにしよう。

 

 そう心に決めつつテヘッと舌を出して笑ったシルを見て、ぼんやりと察した私は呆れ顔をついつい浮かべてしまう。

 

 もしかして先程までのシルの剣幕は…

 

「そう。リューの本心を引き出すための演技。私はリューとベルさんのことを応援するし、リューのことをこれっぽっちも恨んでないんだから!全部リューの本心を引き出すための演技!どう?私中々の演技派でしょ?もしかしたら演劇の役者さんになれるかもーなーんて!」

 

「はは…ははは…そう…だったんですか…」

 

 私はそのシルの言葉に思わず深々と息を吐いてしまった。

 

 先程までのシルの言葉は単なる脅し。本心からではなかったということになる。

 

 それに思わず安心してしまい、吐息が漏れてしまったのだ。

 

 それくらい私はシルを失うのが怖かった。…つまりはそういうことだ。

 

 …ただ結局シルがベルのことをどう思っていたかは話すことなく私とのことばかり話すので若干の違和感は拭えない。

 

 その違和感を念のため拭おうと尋ねようと口を開きかけた私。

 

 だがその言葉を発する前にシルが言葉を紡ぎ始めていた。

 

 それも先程までの悪戯っ子のような笑みでも感情の起伏のない冷徹な表情でもなく。

 

 その表情は不安と心配で満ちているかのようだった。

 

「ただ…ね?リュー?私から言いたいことがある…かな?」

 

「…何でしょう?」

 

 シルの表情に私はシルの提案を受け入れずにはいられなかった。

 

 一瞬間を置きながらも私がシルの提案を承諾するとシルは表情を変えぬまま言った。

 

「…確かにリューが私と真摯に向き合ってくれたのは嬉しい。命を賭けてでも私との関係に決着を付けたいと思ったんだよね?そして同時にベルさんへの想いの強さも見せてくれた。その想いが見れたからこそ私はリューの思いを受け入れたというのは少しあるかな。…もしリューが私とベルさんに生半可な気持ちで向き合っているようだったら正直私はどう反応してたか分からない、ね」

 

 その言葉に私は苦笑いで応じるしかない。…一応は私は最善策を取れた…ということでいいのだろうか?

 

 …もちろんベルの介入は完全な想定外でだからこそ最悪の失敗を犯してしまったのだが…

 

 そう考えると私の気は急速に重くなってくる。

 

 そしてシルが触れ始めたのもまさにベルとのことであった。

 

「ただ言えることはね…安易に命を賭けるのは決していいことではないってこと。確かにリューは今までそうやって自分の信じる正義(希望)をそうやって守ってきたのかもしれない。でも本当にその方法でこれからも守れるのかな?そのやり方が誰かを傷つけてしまうこともあるんじゃないのかな?」

 

「…っ。…その通りです。…私はシルと向き合うために命を賭けた結果…ベルに心配をかけ、心配してくださったベルに非道な言葉をぶつけてしまいました…」

 

「そうだよね。もしベルさんとの愛を重視するなら私を無視しても良かった。それをできないのがリューの優しさでもある。でもベルさんとの関係という意味ではかなり問題があった。だってもし私はリューの命を奪おうとしてリューが私への罪悪感で避けようとしなかったらどうなったの?ベルさんはどんな気持ちになった?リューは私のことをたくさん気にかけてくれたことの引き換えにベルさんのことを考えられなかった。リューの正義(希望)がどこにあるのか考えれば…その判断は本当に正しかったのかな?」

 

「…」

 

 返す言葉もなかった。

 

 私は確かにベルに私の今の正義(希望)はベルへの愛だと言った。

 

 その正義(希望)を最優先するならば私は確かにシルのことを気にかける必要はなかった。

 

 ベルに不安と心配を与える必要など寸分もなかった。

 

 私の判断が間違っていたとは思いたくない。

 

 シルとの友情もまた私にとっては大切であったから。

 

 問いかけるシルも私を非難しているというよりは心配しているようにも見える。

 

 シルがこの指摘を以て何を私に伝えようとしているのか…それが私には分からなかった。

 

「今は相手が私だったから良かった。でもリューはもっと難しい選択に迫られることもあるんじゃないのかな?そしてその時リューに宿る正義(希望)以外に気を取られていたら、判断を間違えてしまうかもしれない。…そうなればリューは確実に後悔することになる。そうならないためにはリューはリューに宿る正義(希望)以外は気にする必要もないのかもしれない」

 

「…ベルを愛することだけを気にかけ、なりふり構う必要などない…と?…流石に人として問題があるのではないですか…?それは…」

 

「そこはリューの判断次第、かな?…の前にリューの今の正義(希望)はベルさんを愛することなんだーふーん。リューはもう既になりふり構わなくなりつつあるんじゃないかな?普通人前で愛とか小恥ずかしいことを言ったりしないと思うよ?」

 

「なっ…!?しっ…失言です!忘れてください!」

 

「じゃあリューはベルさんのこと愛してないの?」

 

「…愛してます」

 

「じゃあベルさんを愛することはリューの正義(希望)で決定だね!」

 

 シルは悪戯っ子のような笑みでそう宣言する。

 

 …私の心の中ではそう思っているとは言え、他人の口から聞かされるのは逃げたくなるくらい恥ずかしい。

 

 恥ずかしさから私はシルからとうとう視線を外してしまう。

 

 だが視線を外してもシルがぽそりと漏らした言葉を聞き逃すことはなかった。

 

「…リューの正義(希望)はそれだけじゃないと思うけど…早めに気付いてくれるといいんだけどなぁ…」

 

 …私の正義(希望)はベルを愛することだけではない…?

 

 そのシルの小言の意味を図りかねた私は考えを巡らそうとする。

 

 だがそれもまたシルの重ねた言葉によって途切れることになった。

 

「さて…私とリューは親友のままでいよう!ってことになったからいいとして…問題はリューがボコボコに論破しちゃったベルさんの方なんだよねー」

 

「うぐっ…」

 

 シルの言葉によって思い出される思わず忘れたくなる事実。

 

 …つい先程私が引き起こした失敗だとは言えなぜあんなことをしたのか自分でも分からない。

 

 怒りで我を忘れるのがどれだけ恐ろしいのか改めて思い知り、戦々恐々といった気分だ。

 

 そしてシルに言われても私はベルにどのような声をかければいいのかどう謝ればいいのかさえ全く分からない。

 

 

 なぜならシルとこうして親友のままでいられるのもシルと覚悟をもって真摯に向き合ったから。

 

 

 それは私自身の考えとシルの言葉から考えるに確実。

 

 …私はベルの介入が不要でベルの言い分を飲んでいれば取り返しがつかないことになっていたと確信している。

 

 だからこそ尚更ベルにどのような声をかけ、どう謝ればいいか分からない。

 

 早々に息詰まる私の思考。

 

 その思考はベルに嫌われたかもしれないという恐怖で尚更機能不全に陥る。

 

 そんな私にシルはニタニタと笑いながら言った。

 

「リュー?どう?私に考えがあるんだけど、聞いてみる?」

 

「何ですか!?シル!?」

 

 シルの言葉に飛びつかんばかりに聞き返してしまう私。

 

 考えの行き詰まった私にとってシルのその言葉は救いのようにまで聞こえていた。

 

 そして一瞬で食いついた私に驚くを見せつつもシルはその『救い』を言葉に変えて私に告げた。

 

 

「リュー?ベルさんにお詫びのご飯を作ってあげよう!」




リューさんがベル君を罵倒した挙げ句追い出すという唐突に乱れ始める展開…
リューさんやりすぎです…
まぁ二人の問題に介入したベル君が悪いという個人的所感で描いてますがね!
それにしてもこういう時って男が『この女性が好きだからあなたには興味ない。』の一言で解決できるんですかね?そういう形で解決したら女性同士の関係は崩れ、フラれた側の恨みが募るような気がするんですよね。男の一言で簡単に解決するようだったら数多のドロドロな男女関係のもつれは起きないと思います。
ベル君の介入を排除したことでリューさんとシルさんはきちんと誠意をもって向き合い、一応は二人の間の遺恨は表面上解決…ということに。一応はリューさんの判断は対シルさんとしては悪くなかった訳です。…まぁシルさんの真意がそこにあるかは知りませんが。
…さらに深刻な問題が発生しましたが。

シルさんは結局リューさんの考えを問い続けただけで自らのベル君への想いには触れないまま終わりました。結局ベル君への思い入れは何だったのか分からないようなミステリアス具合がシルさん向けな気もします。
そしてしっかりリューさんに迫る危機を暗示していくシルさん。シルさんはこういう不思議めいた役回りをしてもらうのが個人的好み。

そして始まってしまった初の夫婦(仮)喧嘩…
…リューさんって仲間の輝夜さんとかにあれだけ怒鳴り散らしていた辺り相手が親しかろうと疎遠であろうと考えが合わないと正面から反論しちゃうタイプな気がするんですよね…(その割に否定されると凄く弱い)そのため考えの合わないベル君は一刀両断されました。怒鳴らずに話せただけ成長してる…と思います。
リューさんみたいな堅物は相手に盲信でもしてない限り(相手を信頼するとすぐ盲信してる気もしますが…)考えを曲げられないのではないですかね?
さて論破して泣かせた(?)ベル君とどう和解するか…
その打開策はもう示されてます。

…そこ。詰んでるとか言わない。リューさん、料理できますから。…黒いブツを。
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