妖精と白兎の愛育日記   作:護人ベリアス

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見事に料理回第一弾をご臨終したリューさんは置いておいて、今回はベル君回です。

あと一応訂正に関して。
時系列の整理をした所、ここ数話が1日単位で進んでいることもあり、退院とプロローグの期間の間に謎の空白の一週間が誕生するような気がしました。
よって入院期間が一週間延長で三週間に訂正しました。…実際問題重要度低いでしょうけど、念のため記しておきます。


募る動揺と揺るがぬ覚悟

「それで?僕だけに話したいことって何だい?ベル君?さっきまで以上に衝撃的なことを僕に話そうってのかい?」

 

「…はい。その通りです。神様」

 

 神様の指摘に僕は素直に頷いた。

 

 言うまでもなく神様に隠し事をしてもすぐにバレてしまうからであり、何よりこれからどうせ話すことだから隠す意味もないからでもある。

 

 その話すこととは当然リューさんの関わる話であった…

 

 

 

 ⭐︎

 

 

 

 リューさんとシルさんの修羅場に踏み入ってから、半日。

 

 僕はリューさんに有無を言わさず部屋から追い出された。

 

 …いや、僕の方から部屋を飛び出したという方が正しい。

 

 

 要は僕は逃げ出したのだ。

 

 

 リューさんの言葉に応じるという形は取っても実質は逃亡と同じ。

 

 捨て台詞を残して尻尾を巻いて逃げ出した。

 

 リューさんの元に赴いた目的を果たすこともなく、である。

 

 …それでも部屋を飛び出した後『豊穣の女主人』の離れの前を右往左往してしまった僕。

 

 その時はリューさんが『何か』を万が一起こしはしないかと後ろ髪を引かれていたのだ。

 

 だがそんな僕の優柔不断を終わらせたのも他ならないリューさんだった。

 

 あの時のリューさんの表情が今でも僕の脳裏から消えない。

 

 僕への怒りを隠しきれずに怒りに打ち震え、低い声色で僕を問い詰めたリューさん。

 

 …途中からリューさんは僕の顔を見ることさえなくなった。

 

 

 それはリューさんに信じて任せようとしなかった僕に失望したから。

 

 それはリューさんが僕の愚行を自身への愛が欠如している証と見てしまったから。

 

 

 …その結果僕はリューさんの怒りを買い、リューさんの表情を歪めた。

 

 僕はリューさんに絶対してはならないことをした。

 

 リューさんを笑顔にするどころか怒らせてしまった。

 

 …僕は取り返しのつかないことをしてしまった。

 

 その決して消せない厳然たる事実に僕は心を折られそうになった。

 

 だが僕はリューさんに役割を果たすように強く求められていたことを思い出す。

 

 

 それはファミリアのみんなにリューさんと僕の関係を伝え、二人の関係を認めてもらうこと。

 

 

 …せめてこれだけは果たさなければ。

 

 僕は動揺を打ち消せぬままそう心に決めた。

 

 せめてもの贖罪になるように。

 

 リューさんに決して不安を与えないように。

 

『何か』が起きてしまう恐怖を無理矢理心の奥底に追いやり、リューさんを信じようと心に言い聞かせた。

 

 僕の犯してしまった罪は消えない。

 

 だが罪を償うことはできる。

 

 …僕の心をリューさんに嫌悪され失望されたという絶望が巣食っていたが、その絶望に囚われ惑ってばかりはいられない。

 

 そんなことをしてリューさんに求められた役割を果たさなかったらリューさんに本当に見限られてしまうから。

 

 リューさんのあの時僕に視線を向けさえもしなかったという事実は僕の心で生まれたその可能性に現実味を与えた。

 

 …そんなことが起きては僕はどうなってしまうか分からない。

 

 それだけは絶対に避けなければならない。

 

 例えもう手遅れだったとしても。

 

『何か』が起きてしまい全てが泡沫の如く消えてしまっていたとしても。

 

 僕はリューさんに求められた役割を果たさなければならなかった。

 

 そんな退路を絶たれたに程近い覚悟共に僕はリューさんの言付け通り『竃火の館』に戻っていた。

 

 そして帰ったことをみんなに報告すると共にリューさんと恋人になったことを話した後、僕はこっそりと神様と二人だけで話す機会を設けてもらった。

 

 それから他のみんなが寝静まり、月明かりだけが部屋を照らす中。

 

 僕と神様は神様の部屋で二人だけで向き合っていた。

 

 神様にあることの許可をもらうために…

 

 

 

 ⭐︎

 

 

 

「まぁねぇ…」

 

 僕が目を逸らさずに答えたのを見て、神様は小さく溜息を吐く。

 

 そして神様は諦観を醸し出しているかにも見える表情で呟いた。

 

「…ベル君の表情を見ればよーく分かるよ。君が今何を感じているのかよーく分かる。それこそさっきまでサポーター君達を交えて話した時以上に、ね?君がさっきまで話していたこと以上のことを話そうとしているのは明らかだ。エルフ君と恋人になった以上のこと…ということだね?ベル君?」

 

「…その通りです」

 

 再び僕は神様の確認に頷いて応じた。

 

 神様の言う通り僕はリリ達にも伝えた『リューさんと恋人になった』ということ以上のことを話そうとしていた。

 

 僕は一度深呼吸をすると神様がどう反応するかに不安を抱きながらもリューさんとの未来のために覚悟を決めて話し始めた。

 

 

「僕は…『竈火の館』を出てリューさんと二人で暮らしたいと思っています」

 

 

 僕ははっきりとそう言い切った。

 

 これが僕の答えだった。

 

 そしてその答えの意味は…

 

「つまり…ベル君は万が一の時はファミリアを出て、迷惑をかけないようにするつもり…ということだね?ベル君?」

 

「…はい。できれば万が一がないことを願いたいですが、万全を期すためにそうしなければならないと考えています」

 

「うぅぅーん…」

 

 そう答えると神様は腕を組んで低い声で唸る。

 

 …つまりは神様としては賛成し難いという意思表示。

 

 …この反応は想定内だった。

 

 リュー案と恋人になったということだけでもさっき神様もリリも思いっきり顔を顰めた。

 

 それにリューさんと二人で暮らしたいと付け加えれば神様の態度が硬化してしまうのももはや必然だった。

 

 そしてそうまでして伝えたのには当然理由があるわけでそれを神様は既に見通していた。

 

「…君の表情にはまず焦りが全く隠しきれていない。まるで一刻も早く僕から許可をもらって、すぐにでもエルフ君に会いたいっていう気持ちが溢れ出ている。それはどうしてなんだい?」

 

「…えっと…実は帰ってくる前にリューさんと喧嘩してしまって…」

 

「はぁぁ…つまりこれはエルフ君の御機嫌を取るための手土産って訳かい?」

 

「…はい」

 

 神様の大きな溜息と共に見せられた盛大な呆れ顔に僕は碌な言い訳もできない。

 

 すると神様はぼそりと言う。

 

「まーさ。ベル君がそうすべきだと思うならいいかもしれないけど、ちゃんとエルフ君にこのことを相談したのかい?エルフ君はベル君と二人で暮らすことを承諾したのかい?あの堅物のエルフ君がそう簡単に雇われてる『豊穣の女主人』を辞めるとは思えないけど…」

 

「…相談は…してないです。リューさんには神様達にリューさんと僕の関係を認めてもらえるように話をすることを頼まれただけで…『竈火の館』で一緒に暮らすことは一度お話しして断られてますし…」

 

「つまりベル君は断られた『竈火の館』で一緒に暮らすことの代案としてベル君もこれまで暮らしてた『竈火の館』を出て二人で新居に住むことを僕に許可を取ると思ったということだね?ただそれをエルフ君に確認もしていないし承諾ももらってない…それが実はエルフ君と喧嘩になった理由だったりするんじゃなのかな?ベル君?」

 

「…」

 

 神様に本当に痛い所を突かれて僕は言葉を失う。

 

 …神様の言う通りだ。

 

 リューさんがあの時怒りを露わにしたのは、僕が独断でリューさんとシルさんの話し合う場に割り込んだから。…完全に相談していなかったことが原因。

 

 神様は仮に自分が許可を与えてもご機嫌取りの手土産になるどころか火に油を注ぐことになる…そう暗に言おうとしているのは僕でも分かった。

 

 それでも…僕は…

 

 

「…どうしても許可が欲しいのかい?なら僕は止めないよ。君が望むなら僕はもう何も言わない」

 

 

「…え?」

 

 神様が告げたのはあまりにも呆気ない許可。

 

 …神様はかなり反対すると思っていた僕からすれば完全に拍子抜け。

 

 僕は思わずポカーンとした表情を浮かべてしまった。

 

 そんな僕に神様が告げたのは呆気なく許可を与えた理由であった。

 

「…これまでも無茶なことをしようとするベル君を僕やサポーター君だったりが止めようとして…でも結局ベル君の意志を尊重した…なんてことは多かった。でも今のベル君はこれまでとかなり違う」

 

「…どういうことですか?」

 

「だって君は周りの誰が止めようと聞くつもりはないんだろう?君の頭はエルフ君のことでいっぱいだ。これまでもサポーター君や春姫君、ウィーネ君だったりを助けようとする時、君は周りの静止にも関わらず助けようと頑張った。でも一人で助けようだなんて思わなかったはず。君はエルフ君を自分の力だけで守ろうとしているんだ。…君は明らかにエルフ君に独占欲を抱いてる」

 

「…独占欲…ですか?」

 

 僕が気付きもしなかった事実を告げた神様。

 

 だがその事実は考えれば考えるほど僕の心に染みわたっていく。

 

 

 独占欲

 

 

 その言葉は僕のリューさんに抱く思いを一番うまく表しているのではないか?

 

 そしてそれを証明するかのように神様はその証拠を並べ始めた。

 

「まず君は絶対にエルフ君を自分のそばに置こうと考えている。どうしてだい?エルフ君にはエルフ君の生活があるんじゃないのかい?いつかはベル君と結婚して二人で暮らす…なんてことを考えているのかもしれないけど、そう急ぐことじゃないんじゃないのかい?」

 

「…それは…リューさんを一人にしたくないからで…一人にしてしまうと危険だからで…」

 

「ならどうして君はその危険を僕達に話さないんだい?それは君が一人でエルフ君を守ろうとしている意志の現われなんじゃないのかい?」

 

「…ぁ」

 

 …その通りだ。

 

 リューさんにだって自分の生活がある。

 

『豊穣の女主人』での生活がある。

 

 なのに僕はリューさんがそれを捨てることを勧めた。

 

 …これはリューさんと僕の一緒にいたいという望みを叶えるためという名目を立てていたとしてもあまりに一方的。

 

 …神様の言う通り僕はリューさんを『豊穣の女主人』から引き離してでも独占しようと考えていたのではないか?

 

 その証としてリューさんとシルさんの接触を防ごうとしたのではないか?

 

「まぁ話したくないならそれでもいい。話せないこともあるのは分かってる。エルフ君はすごく複雑な事情を抱えているようだからね。だから僕は無理に詮索したりはしない。僕が無理に介入しても話がおかしくなるだけかもしれないからね」

 

「…神様」

 

「さらに言うと君の表情には恐怖と不安が見え隠れしている。エルフ君を失うかもしれないという恐怖。エルフ君に嫌われるかもしれないという不安。…恐らく色々ある。それはきっとあのエルフ君の置かれている立場とかベル君との今後の向き合い方とかが関係しているんだろう?ただ大きな枠で括るならその感情はエルフ君を独り占めしていたいという独占欲から来るとも考えられるんじゃないかな?」

 

「そうかも…しれません」

 

 静かに神様の告げる指摘は一つ一つが僕の心に突き刺さった。

 

 考えれば考えるほど神様の言う僕の独占欲の存在に心を乱されていく。

 

 その結果漏れたのは一つの不安であった。

 

「…僕はおかしいんでしょうか?神様の言う通り僕はリューさんに独占欲を持っているのかもしれません。…この気持ちはリューさんには迷惑ですかね?リューさんに余計な負担を与えるだけですかね?…僕はこのリューさんへの想いを抑えられる気がしません。抑えられたら、するはずもないことを僕はたくさん既にしてきてるので…僕は…」

 

 僕は神様に救いを求めるように見つめる。

 

 現に僕はリューさんと喧嘩をしている。リューさんを怒らしてしまっている。

 

 …もしそれが僕の独占欲によって引き起こされているなら僕の気持ちはリューさんにとって邪魔でしかないことになる。

 

 そう思うと僕の胸が痛くなってくる。

 

 僕自身がリューさんを苦しめる存在だなんてあってはならない。

 

 僕はリューさんを守り愛する唯一の人でありたいのだから…

 

 そんな風に心揺らぐ僕に神様は言った。

 

 小さな笑みを浮かべゆっくりと首を振りながら。

 

「いいや。僕はおかしいとは思わないぜ?凶と出るか吉と出るかはベル君次第だけど、決しておかしい訳ではないと思う。…これは愛を司るフレイヤにでも聞かないとはっきりしたことは分からないけど、ベル君とエルフ君が恋人で愛で結ばれていると言うなら…独占欲も立派な愛を形作る要素の一つだと思う」

 

「そう…でしょうか?」

 

「そうだとも!制御は必要だとは思うけど、あっても問題ないと思うぜ?というか僕がエルフ君だったらあって欲しいと思うなぁ。だってそうだろう?ベル君だってエルフ君に『ベルは誰にも渡さない!キリッ!』って言われたらすっごく嬉しいんじゃないかい?」

 

「…えぇ…もちろんです」

 

 嬉しいんですけど…リューさんは『キリッ!』だなんて言わない気が…

 

 なんて余計なことを考える余裕があるだけ僕の不安が和らいでいるというのもまた事実であった。

 

 すると神様は笑みを消して静かに言った。

 

「…要はベル君がそこまでの感情を向けたのはエルフ君が初めてだった。だから制御もできないし、その感情に不安と恐怖を抱きもする…ということだと思う。君はこれまでかなり無茶をして僕を含めてたくさんの女の子を助けてきたけど、何かがエルフ君だけ違った。その何かが生まれたきっかけが恐らく【深層】の出来事にあって、そこで君はエルフ君と誰よりも絆を強くした。その何かが君のエルフ君への独占欲に繋がった。…だからエルフ君と恋人になった…といった所かな?その何かを…聞いてみてもいいかい?」

 

 神様は興味…というにはあまりに無に近い表情でそう尋ねてくる。

 

 そして神様の質問に答えないわけにはいかない僕はしばらく考えてみる。

 

 これまで助けてきたみんなとリューさんの違い…

 

 つまりは僕が向ける感情はこれまでのみんなとリューさんでは違う何かがあるということ?

 

 それも愛してるとか好きとかよりも前の段階で。リューさんを愛していると気付く前の段階で。

 

 そうして気付いたのは【深層】で下した一つの決断であった。

 

 

「…リューさんのためなら死んでもいいと思いました。ずっと誰かの戦って傷ついてきたリューさんとその痛みを分かち合えるなら、この命を捨ててもいいと思いました。リューさんと運命を共にできると考えると、なぜか心が躍りました。それが…多分リューさんだけに向けた初めての感情だと…思います」

 

 

 思い返されるのは【深層】でリューさんが闘技場(コロシアム)で橋を落とした時のこと。

 

 リューさんは僕一人を逃がすべく橋を落としてモンスターの追手が来れないように魔法を使った。

 

 そしてリューさんは僕の盾となって死のうとしていた。

 

 そんなリューさんを僕は救うべく闘技場(コロシアム)へと舞い戻った。

 

 成算があったはずもない。

 

 リューさんの指摘通り闘技場(コロシアム)の下に空間があるなど知るはずもなかった。

 

 だがそれでも僕はリューさんの元へと向かった。

 

 リューさんを死なせたくなかった。

 

 リューさんを一人にしたくなかった。

 

 リューさんを守りたかった。

 

 この気持ちは嘘ではない。

 

 そして実際にその気持ちを僕は幸運にも成就させることができていた。

 

 

 だがそれはあくまで結果を見れば、の話。

 

 

 僕は絶対にリューさんを守れるという確証など持っていなかった。

 

 …あったのはもっと後ろ向きな感情。

 

 リューさんを僕のせいで死なせずに済む。

 

 リューさんと一緒に死ぬことができる。

 

 リューさんのために命を捨てられる。

 

 リューさんにせめてもの恩返しができる。

 

 そんなリューさんが望みもしないし、繋がる結末が全く幸福にならない感情。

 

 だがそれでもあの時僕の心を占めていたのはこんな感情達であった。

 

 僕はリューさんのために死ねることを。

 

 リューさんと一緒に死ねることを。

 

 確かに嬉しく光栄に思っていた。

 

 リューさんと運命を共にできているという事実が僕の心を躍らせた。

 

 僕はリューさんにとってただ一人の最期を共にした者になれた、と。

 

 …恐らくこれが今抱いている僕のリューさんに向けられる独占欲の原点なのだろう…そう僕は頭の中で結論付けた。

 

「なるほどね…確かにベル君はいつも生き残って助ける相手を笑顔にすることばかり考えていた…その時のベル君には成功するための自信があった…でもエルフ君の時は違った。エルフ君の時は本当に窮地で…だからこそ他の女の子の時を越えた感情が芽生えた…そういうことなのかな?」

 

「多分…そうだと思います」

 

 神様は僕の説明に納得したように頷く。そうして神様は付け加えた。

 

「…僕はその本質までは見抜けなかったんだけど、ベル君のエルフ君への強い感情を感じ取った。それこそ今までに見たこともないベル君の覚悟を感じた。それがエルフ君のためなら死さえも厭わないという感情だったなら…僕は納得かな。そのエルフ君のみに向ける感情は制御がすごく難しいと思う。そのエルフ君を守るための強い覚悟になると同時にエルフ君を傷つけかねない危険な感情だ。制御に気を付けることを忘れないようにね?ベル君?」

 

「…はい。肝に銘じます」

 

 神様の助言を僕は強い決意を込めて力強く頷く。

 

 そうすると神様は大きく息を吐くと、雰囲気を変えるように表情を変えて語り始めた。

 

「さて…話をまとめようか。まずベル君が『竈火の館』を出て、エルフ君と二人暮らしのための準備を進めることは認めよう。そしてその間はダンジョン探索は中止。そして二人暮らしの準備が整った後のことは追って相談ということでいいね?」

 

「はい。そういう形でお願いします」

 

「それで二人暮らし云々の前に話忘れてたんだけど、ヘルメスからなんかベル君に話したいことがあると聞いてたんだけど…エルフ君のことを考えると…」

 

「…今はリューさんのことで頭がいっぱいなのでヘルメス様には忙しいと伝えておいてください。ヘルメス様に構っている暇はありません」

 

「だよねぇ…じゃあベル君が『竈火の館』を出ることはサポーター君達ファミリアの仲間だけに僕から説明しておこう。下手に知っている人が増えるとエルフ君にも迷惑が掛かる。…それにサポーター君の説得だけでも骨が折れそうだからね。…もしベル君に任せるといつぞやの騒動の時と同じようなことになりそうだし…エルフ君との間に火種をこれ以上作らないためにも説明の方は僕が引き受ける」

 

「その…すみません…」

 

 いつぞやの騒動…それはフィンさんがリリに結婚を申し込んだときの話で…

 

 あの時も僕の中途半端な態度がリリを苦しめて、話が望ましくない方向に進みかけた…

 

 …今も同じようなまずい展開を起こしていると考えると、頭が痛くなる…

 

 それが謝罪となって僕の口から洩れると、神様は僅かに微笑んで言ってくれた。

 

「いいさ。僕にとってはベル君の幸せが一番大事だからね。ベル君のためだったら何でもしようじゃないか!」

 

「神様…」

 

 神様の快活で力強い言葉に僕は思わず僕は感極まりそうになる。

 

 だがそんな僕に神様は笑みを消したうえで警告するように言った。

 

「…だけどエルフ君との問題を解決できるのはベル君だけだ。まずはどうするかきちんと話し合うんだ。そうしないと恐らくエルフ君の機嫌をさらに損ねると思うぜ?何を話すかはベル君の自由だ。だけど少なくとも今のベル君はエルフ君に話すべきことを話していないんじゃないかな?」

 

「…神様の言う通りです。きちんとリューさんとお話しします」

 

「困ったことがあればいつでも僕達に相談してくれよ?エルフ君をベル君は自分の力で守りたいっていう気持ちは分かるけど、力を借りなければならない時は自分の感情に流されないこと。いいね?ベル君?」

 

「…はい!」

 

 神様の警告と戒めを心に刻み、力強く返事をする僕。

 

 そんな僕に神様は再び笑みを浮かべて言った。

 

「さぁ行ってくるんだ。ベル君。エルフ君の元に、ね」

 

「…っ!はい!」

 

 神様の送り出しの言葉に僕は威勢よく返事をして勢いよく立ち上がる。

 

 当然向かうのはリューさんのいる『豊穣の女主人』である。

 

 僕は背を翻してその勢いのまま部屋を飛び出そうと動き始める。

 

「…あぁ。ベル君の心はエルフ君の元に行っちゃったかぁ…」

 

 …神様の寂しげな呟きを僕は聞き逃せなかった。

 

 横目に見てしまった神様の寂しさの隠しきれていない笑顔を見落とすことはできなかった。

 

 …それでも僕は後ろ髪惹かれるわけにはいかなかった。

 

 

 今の僕にとってリューさん以上に大事な存在はいないのだから。

 

 

 僕は振り向くのをぐっと堪えながら部屋を飛び出していった。

 

 …ただしその直後に神様に大声で呼び止められることになったが。

 

 何せ神様と話していたのは深夜。

 

 …僕はリューさんと今すぐお話ししないといけないという焦りにあまり今頃リューさんも寝てしまっているだろうということをすっかり忘れてしまっていたのだ。

 

 こうしてリューさんとのお話と仲直りは翌日へと延期になり、神様にはその盲目っぷりを散々に呆れられることになった…




ベル君はベル君で暴走してますねー
まさに恋が盲目状態でファミリアのことよりリューさんが大事という異様な暴走を始めてます。

…が。
原作的にもこの傾向あると思うんですよねー(半分言い訳)
ベル君ってヘスティアに始まり、リリ、春姫、ウィーネ…と色んな女の子を助けてきたわけですが、一点個人的に奇妙だと思う点があるんです。

それは助ける対象が変わると平気でこれまで助けてきた女の子を危険に巻き込むこと。

…彼女達の同意の上とは言えどうなんでしょう?救済という行いは即時的なものではなく継続的なものだと思うんですよねぇ…
だからダンジョン探索を主眼としたファミリアと距離を取り始めました。リューさんを一人にしないという目的のためにダンジョン探索を控える方向に進み始めています。
ついでに言うとこれまで助けてきた女の子をリューさんの関わる危険に巻き込まないための処置でもあります。…一応ベル君が中途半端なことをすることに対する筋を通したということで。
結局ここまで行くとベル君はハーレム(それも全員の女の子の恨みを買わない愛の注ぎ方が必須)でもないと誰かを確実に不幸に追い込むという典型的なクズ男なんですよねぇ…
だからうちのベル君はリューさん一筋という設定に常に改変されている、とも考えられます。

尚他の女の子とリューさんへ向けるベル君の感情の違いは個人的解釈であり、原作を参考に創出できる一番大きな違いだと思ってます。
本文中で大体は語りましたが、他の女の子相手だと失敗確実とは考えずある程度希望がある状態で状況を整えて救出に挑んでいる一面があると思ってます。
が、コロシアムでは流石にそうは思えなかった。衝動的に動いている感じでしたが、少なくとも希望があったとは流石に言い難い。
それでも身体はリューさん救出に動いていた。成功の見込みがないのに。なぜ?
…の疑問を後に振り返った結果リューさんと運命を共にすることを受け入れてもいいと思ったからだ、としました。
他の女の子では生還が前提。生きて帰って笑顔にするのが前提。
しかしリューさん相手には苦しめないことが優先で生還を前提にしていないようなベル君の考えが原作中で垣間見えていた…気がします。

リューさんとなら死んでもいい。
これが今作におけるベル君がリューさんを愛した理由の一つ…と設定。
リューさんもベル君のためなら死ねると思ってるわけでここで感情が共有されている訳です。
ただその感情が二人の愛の一つの証明にはなっても正しいかは話が別で…


あと宣伝です
作者の中では現在リュー×ベルからリュー×アリーゼへの転向が進んでおり、勢いでリュー×アリーゼの短編を仕上げてしまいました。以下のリンクです。

https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=13679176

宜しければお読みを〜
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