励みになってます!
この度はリューさんをこのような罪作りな女性としてしまい、心よりお詫び申し上げます。
ただリューさんは周囲に心配をかけまくるという観点では3周年の頃より常習犯的だと勝手に考えております。
そして今話と二話後の事後処理を越えれば、イチャイチャ度が徐々に増し、序盤のポンコツなノリに戻っていくかと思います。
なのでどうかそれまでお付き合いください。リューさんが変わるために必要な過程だったのです…
「診察は以上ですが…診察結果は後でお話ししましょう。今は…まずお二人の間で話を済ませてください」
「お気遣いありがとうございます。10分程で話をするのでその後にお越し頂けると嬉しいです」
「分かりました。クラネルさんのご希望通りに致します。それでは」
診察を終えた【
残されたのは私とベルだけ。
…今の私はベルへの後ろめたさで一杯で目を合わせられないような心境になっていた。
⭐︎
遡れば早朝のこと。
いつも通りベルと共に調査に出向こうとした私は実は寝起きすぐから気怠さを感じていた。
…連日の調査で疲労が溜まっているのは自分自身知っていた。実際の所は今日だけでなく数日前から気怠さぐらいは感じていた。
ただここ数日の中で際立ってその気怠さが酷かったのもまた事実。疲労の蓄積が原因、なんて言葉では流石に許容できないような気怠さだったのは自分自身の身体なので流石に分かる。
だがそんなことで私が調査をやめるなど考えるはずもなく。
私はその体調の不調をベルに隠して調査に向かおうとした。
だが唐突に催してしまった原因不明の吐き気はそんな私の目論見を見事に打ち壊した。
今までは気怠かろうと催すことなどなかった吐き気。
それは私の身体に限界が訪れていたことへの警告だったのかもしれない。
結果その吐き気は私の体調不良をベルに気付かせ、ベルに心配をかけてしまった。
その挙げ句私はそれでも尚調査にこだわり続けたためベルとの押し問答に発展し…
そうして招いてしまったのはベルの怒り。
…今まで見た中で一番激しい怒りだった。
ベルが私に有無も言わせずに自らの意見を突き通すことは滅多にない。
そんなベルを引き出してしまうほど私は身勝手な行動を重ねていた…ということはもはや愚かな私の中でも理解できることであった。
何よりベルのぶつけてくれた言葉は…私の心に強く響いた。…私の愚かさをきちんと指摘してくれた。
ベルは私にあまりに大きすぎる一つの過ちを気付かせてくれたのだ。
それは私が一つの
…私はベルの言う通り【深層】で確かに言った。
私達の
なのに…私は何をした?
ベルに心配をかけた挙げ句、ベルの忠告を無視しようとした。
…何も…変われなかった…
シルと向き合った時に抱いた後悔と反省を寸分たりとも生かすことはできていなかったのだ。
私は何をしている?
私はなぜこうも愚かなのだ?
私は私自身の愚かさを呪う。
だがその一方でベルのある一言には未だ納得できていなかった。
私が体調の不調にも構わず無理をした。それがベルに心配をかけた。それは私の犯してはならなかった過ちだと理解し、反省している。
だが…『人助け』には私の
『人助け』は…アリーゼ達と共に長きに渡り取り組み、もはや私の一部を形作っていると言っても過言ではない。
…『人助け』はアリーゼ達の遺した
私は確かに夢の中で輝夜とライラに言われたのだ。
私の幸せを体現するもの。
彼女達が手にすることができなかった幸せ。
それを私が手に入れることができる、と。
…私のもう一つの
『人助け』の先には人々の笑顔が。
人々の笑顔の先には平和と秩序が。
彼女達の求めた未来が…そこにはある。
彼女達が遺したこの
私が『愛』という私とベルを結ぶ
…だが私は『人助け』というもう一つの
これを
彼女達の分まで幸せになることができない。
アリーゼ達とベル。
人助けと愛。
両立が難しい私の二つの
私には…この二つの
今回のように『人助け』ばかりに意識を向け、ベルに心配をかけるなど論外だ。
かと言って…今は『人助け』に全意識を注いでいたお陰で溺れないようにしていたベルとの二人での生活に意識を向けるようになれば…私はどうなる?
恐らくベルと過ごす一瞬一瞬が幸せで一杯で…この幸せを失いたくなくなる。
例え立場が悪かろうとこの一瞬を共に過ごせればいいと甘えてしまう。
『人助け』をしようと思いもしなくなる。
それが私自身を腐らせ、万が一の時は私達を破滅に追い込む。
『人助け』をしなくなるということはアリーゼ達の
それに今行う人助けは私が功績を立てることで私の立場を回復することも目的としている。…その目的を忘れる訳にはいかない。
そう考えざるを得ないほど私の今の立場は危険をもたらすかねないと…言わざるを得ない。
ベルは確かに私とならどんな苦難でも立ち向かうと言ってくれた。
私自身もベルを苦難の道へと巻き込む覚悟を決めた。
だから私はこんなことしなくてもいい。そのはずだ。私はベルを苦しめるくらいならやめるべきだ。
だが…私はアリーゼ達の
だから…私はベルの望みに完全に応えることはできなかった。
『人助け』は…私のもう一つの
とは言ってもその譲れない点は脇に置いてもベルに言わなければならないことがある。
そんなことは流石に頭の固い私でも分かっていた。
⭐︎
「…すみません…なんて言葉ではとてもではないですが、謝罪になりませんよね…ベル」
「…そうですね。謝罪には…ならないです…」
私は真っ先に謝罪になるとも思えない謝罪を口にした。ベルに目さえも合わせることもできずに謝罪した。
ベルの表情は見たくても見れない。だからベルがどんな表情で今の言葉を口にしたのか分からない。
だが私の愚かしさに呆れ果て、怒りまで抱かせてしまっている…ということは言うまでもない。
だからベルに少しでも怒りを収めてもらえるよう私なりに言葉を重ねた。
「…ベルを前にして体調が悪いことを隠したこと。実は朝から気分が優れませんでした…いえ、数日前から体調は万全とは言い難かったです」
「…そうですよね。そう…ですよね…」
「…にも関わらず私は調査を強行しようとし、ベルに心配をかけ…」
ベルに心配をかけた。
それが私の第一の罪。第一に謝罪すべき事柄。
私は自らの罪を懺悔し、ベルに反省し今度こそ改善することを誓わなければならない。そう考え言葉を紡ぎ続けようとした。
だがベルによって途切れさせられた。
「すみません!!」
「…っ?ベッ…ベル?」
私の言葉を途切れさせたのはベルの謝罪。
その謝罪があまりに唐突で私の理解の範疇を越えたものだったので私は思わず顔を上げて、ベルの方に視線を向けていた。
そのベルは私に向かって深々と頭を下げ謝罪の姿勢を見せている。
…どうして?
どうしてベルが謝る?
悪いのは私だ。
ベルに心配をかけた私だ。
ベルの恋人失格な私だ。
どうして?
どうしてベルが涙を流して謝罪している?
「僕が…僕が悪いんです…リューさんの体調が悪いのに…僕は…気付いていたのに…リューさんを…お止めできませんでした…その結果…リューさんの体調をここまで悪化させてしまって…」
「違うっ…違うっ!どうしてベルが謝るのですか?どうして?どうして!?悪いのは私です!私がベルを振り回して、私が勝手に体調を崩して…なのにどうして…」
「だって僕はリューを守るって約束したから!!」
「ぁ…あぁぁ…」
「…敵だろうと病気だろうと何だろうと関係ありません…僕はリューさんを守れなかった…僕はリューさんの恋人失格です…僕は…リューさんを守れなかった…」
私がベルに涙を流させている。
私がベルに責任を感じさせている。
私がベルを苦しめている。
…私は何をしている?
…私は何がしたい?
私の『人助け』というその
愛する人を傷つけるのが
違う…あり得ない。あり得ない。
これは…本当に私の
この相反する二つの
そんな今更の事実に私は愕然とする。
そんな今更の事実を突き付けられただけなのに私は思考停止に陥る。
そうして紡ぐべき言葉さえ失ってしまった私はベルの話をただ聞くことしかできなくなっていた。
「ねぇ…リューさん…?教えてください…リューさんの
「…」
ベルは尋ねてくる。
ベルは顔を上げ、涙をポロポロと流しながら尋ねてくる。
悲しみと恐怖のもたらす涙でくしゃくしゃになった顔でベルは尋ねてくる。
そんなベルを前にして私は動揺のあまり言葉を詰まらせた。
即答できなかった。
今尚罪を重ねる私に私自身許せなくなる。
そんな私が私とベルを繋ぐ愛という
結果ベルに返すことができた答えは恐る恐る縦に首を振ることだけになってしまった。
その答えにベルは続ける。
「そう…ですよね?僕達の
「ベ…ル…」
「でも僕はリューさんにお聞きしたいんです…確かにリューさんは最近とても充実しているように見えました…最近のリューさんは『人助け』をしようと一生懸命頑張る姿が…とても輝いてるんです…でも…でも…その代わりにリューさんの体調はどんどん悪くなっていって…リューさんは今こうして体調が凄く悪化してしまっています…仲間の方々は…本当にそれを望むのでしょうか?」
「…ぁ」
「リューさんが命を危険に晒してまで…幸せを失う危険を犯してまで…努力することを仲間の方々が本当に望むのでしょうか?僕には…分かりません。分からないんです。リューさんの夢がどんな意味があるかも…僕には分からないんです。だから僕は…リューさんをお止めするための言葉を今の今まで持つことさえできませんでした…」
ベルはそう言うと鼻を啜りつつ涙の溜まる目を腕で擦る。
そして大きく深呼吸をして覚悟を決めるように目を閉じると、静かに言った。
「…すみません。こんな情けない姿でリューさんの考えに文句まで付けてしまって…もう僕は我が儘を言いません。全てリューさん次第です。リューさんのお考えをお聞かせください」
ベルはそう言ったきり目を閉じたまま沈黙を保った。
私がどう反応するかに委ねてくれた…ということ?
ベルがそれ以上何も言ってくれないので言葉に窮する。
だが悪いのが私であり、ベルをここまで追い込んだ私の罪を考えれば…
何も言わないなど言語道断であった。
「私にとって…愛が私とベルを繋ぐ
深々と頭を下げて謝る。
…こんなことでベルに犯した罪を償える訳がない。
それは分かっている。
だとしても…謝らずにいることは論外だと考えての行動であった。
そんな私の謝罪にベルは一瞬の間を置いて答えてくれた。
「…お止めできなかった僕にも責任があります。なので謝らないでください。それより…これからどうなさるんですか?そしてもう一つの
ベルは言葉短かに私の謝罪を受け取ると、話を今後と…私のもう一つの
それに私は顔を上げつつ私の考えを話し始めた。
もちろん今回の反省を生かした考えを、である。
「…まず… 【
「分かりました。僕もそのお考えには賛成です。…リューさんはもっとご自分の体調を気にするべきだと思います」
「…肝に銘じます。そしてもう一つの
今後の対応はもはや言うまでもなかった。だが…もう一つの
かと言っていつまでも考え込むのは論外であり、私はその迷い全てをベルに打ち明けるのが最善だと判断した。
「…愚かな私でも流石に『人助け』のためにベルを傷つけるのは論外だと分かります。私はその論外な行いをしてしまった訳です。なので今後はベルを傷つける形でその『人助け』をすることがないように心掛けなければならないと思います。ですが…私にはどう両立すればいいのか分からないのです。私の能力と性格では…両立は多分できません。恐らく今回のようなことを繰り返すかもしくはベルとの幸せな生活に浸り『人助け』をしなくなるかの…どちらかです」
「…その
「…私には…それさえも分かりません。輝夜とライラが手に入れることのできなかった幸せ…それが今の私は『人助け』を行った先にある平和にあると思っています。そこを目指すために『人助け』を続ける…それが私のもう一つの
私自身考えて。ベルの話を聞いて。その結果至ったのがこの結論。
『分からない』
アリーゼ達と共有した
どれだけ迷おうとも大枠の形として『人助け』を貫いてきたのは間違いない。
だが…今の私にはそれが
なぜなら現にベルを傷つけている。
なぜなら現に私自身の身体を蝕んでいる。
なぜなら過去にアリーゼ達の命を奪っている。
『人助け』は…正しいはずなのだ。
私もアリーゼ達も…そしてベルも恐らくそう信じていたはず。そうでなければ説明できない行動は多々ある。
その『人助け』が私を救いベルを救い数多の人を救ってきたことも確実だ。
だがその正しさは揺らいでいた。
私を心配するベルの中で。
ベルを苦しめてしまった私の中で。
その正しさは揺らいでいる。
だから『分からない』。
…『分からない』のだ。
そして『分からない』中でも迷い続ける中でも私が少しずつ寄りつつある結論は…確かに存在していた。
それもまたベルに伝えなければならなかった。
「…ただここまで間違いを繰り返す中で私は流石に気付きました。『人助け』は…絶対的に正しい訳ではない。アリーゼ達の
「リューさん…」
「…まだ考える時間を頂きたいです。まだアリーゼ達の
「…っっ!リューさん!」
私がそう言い終えると、ベルは勢い良く抱きついてくる。
私はそれにどう反応すればいいか、抱き締めていいかさえ迷ってしまう。
だが私を離さないと言わんばかりに私を抱き締めるベルによって。
ベルの口から嗚咽と共に溢れ出した言葉によって。
気付けば私のすべき反応は自ずと定められていた。
「もぅ…僕に心配をかけないでください…!リューさんがいなくならないか…本当に…本当に心配で…僕は…僕は…!」
「すみません…っっ…すみませんっ…」
ベルの声に混じる嗚咽。
ベルは私の背をポコポコと叩きながら私を責める。
だがその責める言葉には力がなく。
かと言って私の心に対しては何物よりも力があって。
私にはそんな資格はないのに。
ベルの背を撫でながら呟いた謝罪と共に溢れ出してしまう涙。
私には涙を流してしまう資格なんてないのに。
ベルをこんなにも悲しませてしまったことに。
ベルをこんなにも不安にさせてしまったことに。
私は私自身への怒りの涙を抑えられない。
「リューさん…愛してます…だから…だから…僕達の愛を…僕達の
「…っ!!…分かってます。…もう二度と見失いません…私だってベルを愛しています。…もう絶対に私は…私達の愛を…私達の
今更の誓いを行う。
決して流させてはいけなかったベルの涙に。
その涙を流させた自分自身への怒りの籠った私自身の涙に。
私はもう二度と私とベルを繋ぐ『愛』という
そう私達の涙に誓う。
その誓いのお陰で私はようやくベルの背を抱き締めることができ、同時にその背を優しく撫でる。
…今の抱擁は今までで一番温もりを感じられないような気がした。
それは恐らく涙によって温もりが奪われてしまっているから。
温もりが感じられない。
それは何よりも辛いことで。
それは私の罪を心でも肌でも感じている証と言えるかもしれない。
それでも私は抱擁をやめなかった。
ベルを泣かせてしまったせめてもの罪滅ぼしにベルとの距離をできるだけ縮め、泣き止んでもらえるように。
私の罪が生み出した温もりの感じられない抱擁が突きつける痛みを私の心に刻み込むために。
私の犯してしまった罪は消えない。
だが未来ならば変えられる。過ちを繰り返さないことはできる。
そう私は心に言い聞かせながらベルの背を撫でた。
私が私とベルに降らせてしまった雨が止むにはしばらく時が必要であった。
*ベル君のリューさん呼びは誤字ではなく、落ち着いたことによって元に戻っただけです。次で正式にリュー呼びに昇格(?)します。
『人助け』はリューさんのもう一つの
読者の方々は既にご存知…
ち・が・い・ま・す
リューさんは【深層】で立ち直り自らの正義が希望だと見出した。そしてその希望がベル君との愛であると気づいたと同時にアリーゼさん達と共に背負った正義に回帰しています。
その正義は3周年1部で語っていた『無償に基づく善行』…だとお堅い上に今回は特に無償ではない。ということで『人助け』と表現しています。
アンナさんもベル君もみんなこの『人助け』というリューさんの正義によって救われた。
よってこれこそ正統派リューさんの正義だと思ってます。第一作でも第二作でもこの正義を貫くリューさんを描いてきました。
この『人助け』精神はリューさんの性格的ものでもあり、取り除くのは容易ではない。そしてその原因としてアリーゼさん達と経験を重ね、『正しい』と確信しているからです。
ただそれは本当に『正しい』の?
いや、一般的には『正しい』に決まってるんです。作者自身『正しい』と思ってます。
ですがそこを敢えてベル君を通して『正しい』のかを問うています。リューさんの中でその『正しい』という価値観が崩れ始めています。
ベル君を傷つける正義が
そして何より読者の方々はもう既にその答えを知っている訳です。
リューさんの真のもう一つの
作者の諫言役ベル君は大体は機能しませんが、今回ばかりはバッチリ働いてもらってます。ご本人は無意識ですが、今回は本当に大手柄です!
だってその『正しい』はずの正義がもう一つの
そこに指摘を入れるための前章、この連続窃盗犯(名前さえ登場予定なし)の事件だったという訳です。
そしてここまでリューさんが身勝手な行動を繰り返すとこれを許すベル君すごい器が大きいなって思ってしまいました。
…うーん。やってることは本当は原作と大して変わらないのにどうしてこんなにも重くなってしまったのか…やっぱり優先課題が原作と違うから…ですね。そのお陰で行動への評価が激変してしまっています。本来リューさんが『人助け』をするならベル君は手助けをして共闘で解決、で終わりですからね。ここまで拗れません…
本当に大変…このCP…
さて次回は久しぶり感満載のイチャイチャ回に繋がりうる回ですね。…ここまでが長かった…お詫び申し上げます…