妖精と白兎の愛育日記   作:護人ベリアス

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ようやくプロローグの時系列に戻ってきました!長かったですね!()

あと一応時系列無視のお買い物番外編はこの前の話になるので順番を差し替えるつもりです。


〈懐妊編〉第五章 希望の守り方を手探る中で
秘密を明かして


「なるほど…な。…リオンも【白兎の脚(ラビット・フット)】も色々苦労が絶えなかったということはよく分かった。…まぁなぜその流れで子供ができるのかだけはさっぱり分からないが…」

 

「だからシャクティ!私達が子宝に恵まれたということは私とベルの愛が如何に強固なものかを証明する証だと…!」

 

「お願いだからリュー!?それ以上勢い任せに愛という言葉を連呼しないでください!!周囲の視線がぁぁ!!」

 

「リオン…分かった…分かった。リオンの【白兎の脚(ラビット・フット)】への愛は誰よりも深い。分かったから頼むから落ち着いてくれないか?」

 

「…ようやくお分かり頂けたようで何よりです。シャクティ」

 

 リューと僕の間に大切な子宝が恵まれるまでの経緯を話し終えた後のこと。

 

 シャクティさんは頷いて納得したと言葉にしつつもその表情からはやっぱり理解不能という雰囲気が抜けきっていない。

 

 …それだけ【深層】での出来事が子供を授かるのに繋がったという経緯が衝撃的なのだろうなぁ…と僕は思いはするも。

 

 未だにシャクティさんにリューと僕の愛を否定されたことへの憤りが拭いきれないのか…

 

 それとも経緯をシャクティさんに結果的に話す羽目になったことによる恥ずかしさを隠すためなのか…

 

 そこら辺のリューの考えまでは読めないものの、少なくとも言えることはリューが暴走のあまり自爆発言を連発しているということは考えるまでもなく分かる。

 

 お陰で僕はリューの暴走を抑えるために奔走し続ける羽目になっていた。

 

 そうしてシャクティさんが半分投げやりにリューと僕の愛を認めたことでリューの暴走は収束し…話はようやく次の段階へと進んだ。

 

「それで…結局その連続窃盗犯の犯行が止まったということは本当に二人が更生させてしまった…そういうことなのか?」

 

「ええ。居場所はお伝え出来ませんが、今は職を手に入れ普通の生活を送り窃盗には一切携わっていません。再開されれば話は考え物ですが…恐らく大丈夫であろうと、ベルは仰っています」

 

 シャクティさんの質問にリューは僕に代わって答える。

 

 ちなみに言うとその連続窃盗犯だった例の女性は今はミアハ様の『青の薬舗』にお手伝いとして雇い入れてもらっている。

 

【ミアハ・ファミリア】の懐事情の影響で収入は決して良くはないけど窃盗をして稼ぐよりは余程生活は安定しているらしい。何より善神と呼ばれているミアハ様がお優しくしてくれるだろうから、僕としては不安はない。

 

 色々とナァーザさんからは小言を聞かされる羽目になったけど…ともかく彼女に関しては問題なさそう。

 

 こうして連続窃盗犯に関わる一件は無事解決した…と言う訳には残念なことにシャクティさんの怪訝そうな表情を見るに進みそうになかった。

 

「…それは理解した。私達としては本当は裁きを受けさせる必要もあるのではと思いはするが…再犯がないなら一応良しとしよう。だがその代わりに連続窃盗犯の逮捕に協力したという事実自体も消えるぞ?名誉回復の手配が難しくなるが…それでも構わないのか?」

 

 シャクティさんの言う通りだった。

 

 元々連続窃盗犯の逮捕に協力しようという話に進んだきっかけの一つは協力の功績でリューの名誉回復をしてもらおうという算段だった。

 

 にもかかわらず逮捕自体が行われなかったということはリューがその機会を喪失したことと同義。

 

 そういう意味では僕達が連続窃盗犯の調査に費やした労力は全て無駄になる…そうシャクティさんは言いたいのだと思う。

 

 無駄骨にしないためにもここは彼女をシャクティさんに引き渡すのが僕達にとって本来は最善なの…だろう。

 

 だがリューと僕の場合はそういう判断に至ることは決してなかった。

 

「…構いません。この汚名は元々私の過去の過ちが生んだものであり自業自得。それにベルも受け入れてくださった以上私はもう名誉など意に介しません。ただ私とベルと我が子の三人でこれからも暮らしていくことができればそれでいいです。彼女達の生活より私の名誉などが重要などとは到底考えられません。シャクティに配慮をお頼みしておきながら申し訳ありません。そして…連続窃盗犯であった彼女へも情状酌量の余地をご検討頂きたいです」

 

「…彼女も進んで犯罪を犯したかった訳ではなかったようですし…窃盗の被害はなくなって、彼女は犯罪に手を染めずに済んだ…その成果だけで僕達は十分です。…それに誰かの犠牲で僕達の幸せは成り立つとは思えませんから。このような形でこの一件は終わり…にしたいです。シャクティさんにはご迷惑をおかけします。申し訳ありません」

 

 リューと僕はシャクティさんに名誉回復の話は立ち消えにさせてもいいという形で考えが一致していた。

 

 その時点でわざわざ配慮をしてくれたシャクティさんには無駄な骨折りをしてもらったことになってしまった。だから二人で率直に頭を下げて謝る。

 

 同時にリューと僕は連続窃盗犯であった女性達一家の生活も壊したくないと願っていた。

 

 リューの言うように名誉よりも彼女達の生活を守ることの方が優先…ただその僕達の願いはシャクティさんにさらなる配慮を求めると同義であるため、そういう意味でも僕達は二人で頭を下げていた。

 

 僕達二人の言葉にシャクティさんは腕を組んで考え込むことしばらく。

 

 僕達の要望に小声で応じた。

 

「…分かった。配慮するように手配しよう。本当は私としては見知らぬ犯罪者よりもリオン達の安全を盤石にしたいと切に思うのだが…まぁ仕方ない。リオン達がそう言うならもう私はこれ以上何も言うまい。その者に関してはこれで一件落着としよう。このことはくれぐれも内密に頼むぞ?見逃すという意味では特例中の特例だからな」

 

「ええ。承知しています。ご配慮感謝します。シャクティ」

 

「僕からもお礼を。ありがとうございます」

 

「別にいいさ。私としては犯罪が減ってくれるなら何の文句もない。それに…リオンが犯罪者を許し、助けるために奔走する…そうか。ふっ…巡り巡って…か」

 

 シャクティさんは特例であることを強調しつつも僕達の要望を快諾してくれる。それにリューと僕は間を置かず感謝の意を伝える。

 

 そして何やら微笑みと共に感慨深げにシャクティさんが呟いた僕には理解できないことの意味を僕は考えていると、話が途切れたのを機としてリューが別の話題を切り出した。

 

「あの…シャクティ?それで一つ相談があるのですが、よろしいでしょうか?」

 

「ん?なんだ?私が役に立てるのであれば、何でも相談に乗るが…」

 

「是非お頼みします。実は神ヘルメスに関してなのですが…」

 

「…神ヘルメス?」

 

 リューの言葉にシャクティさんは訝しむように目を細める。

 

 リューの切り出した話題とはヘルメス様…いや、邪神ヘルメスに関して。

 

 あの邪神はリューと淫らに距離を縮めただけでなくリューと僕の愛に火種を撒こうとするというやってはならないことに手を染めた。

 

 その時はリューが僕達の愛の強さをダイダロス通り中に響かせんばかりに熱弁してあの邪神だけでなく僕まで危うく撃沈されそうになったのだが…

 

 問題はあれだけでは終わらずこれからの僕達の生活に支障をもたらしかねないことは明白。

 

 よってシャクティさんに一度相談してみようと僕達の間で結論を出していたのである。

 

 リューが一通り邪神ヘルメスの関わるこれまでの経緯を話し終えると、シャクティさんは腕を組みなおしつつ唸った。

 

「…なるほど。要は神ヘルメスは【白兎の脚(ラビット・フット)】がダンジョン探索を怠るようになったのをよく思っていない…そしてその原因がリオンにあると考えている…と。それは事実だとして…一番の解決策は【白兎の脚(ラビット・フット)】がダンジョン探索を再開することにあるが…」

 

「どうしてリューのそばから離れないといけないんですか?僕は大好きなリューといつまでもずっとそばにいます。離れてる時間は最小限にするならダンジョン探索する暇なんてあるわけないじゃないですか」

 

「…っ!ベルッ!私も同じ気持ちです!ずっと一緒にいましょうね?ベル?」

 

「もちろんですよ!リュー!僕達はずっと一緒です!」

 

「…という調子なので神ヘルメスの要望は叶う余地は全くない。だから不穏な動きを起こしかねない…そういうことか。よく分かった。分かったからそれ以上イチャつくな。いい加減話が進まん」

 

 改めてリューと僕がいつまでも一緒にいることを確認し合った僕達は互いの顔を見合わせて微笑み合う。

 

 そしてもう一度肩を寄せ合って互いの距離をさっきまでと同じように縮めるのだが…シャクティさんは完全に呆れ顔。

 

 …僕達は何か問題のあることをしただろうか?

 

 と思っていると、シャクティさんはその場の雰囲気を一新しようとするかのように咳払いをした後に話を続けた。

 

「…ともかく。神ヘルメスは掴みどころがない神で若干の不安があるが、神ヘルメスのそばには常識人でリオンとも親しいアンドロメダがいる。だから私は特に不測の事態が起こるとは考えられないが…」

 

「私達も一応シャクティと同じように思ってはいます。とは言え警戒は必要かと思ってしまって…なぜ神ヘルメスが私とベルとあとはごく数人しか知らないはずのダイダロス通りにある私達だけの愛の巣に現れることができたのか見当がつかず…」

 

「当然誰もあの邪神に僕達の愛の巣の場所は伝えてないはずなのに…ですよ?これだけでもどれだけリューと僕の愛で結ばれた仲を引き裂きたいかの執念が分かる気がして…」

 

「…愛の巣?じゃ…邪神?愛の巣?は?待て。頭の中を整理する。妙な言葉を口走るな。むず痒くて考えがまとまらん」

 

 シャクティさんは僕達の説明が途中なのにも関わらず手を小さく挙げて話を打ち切るように求めてくる。

 

 …どうしてシャクティさんは身震いまでして僕の話を止めたのだろうか…?

 

 ともかくシャクティさんに静寂を求められたお陰で手持無沙汰になったリューと僕。

 

 僕達は繋いだままになっていた手で指を絡め合ったり互いの温もりを堪能したり等々とシャクティさんに見えないようにじゃれ合う。

 

 衆目の前で堂々とリューとイチャイチャするのは恥ずかしさで死にそうになるけど、人前でこっそりリューとイチャイチャすることには楽しさを見出し始めた僕。

 

 どうやら治療院でアミッドさんの目から逃れながらリューとイチャイチャして以来僕はその楽しさと興奮が忘れられなかったらしい。

 

 それに加えて最近リューが積極的にイチャイチャするという宣言してくれたこともあって、時折こうして隠れてリューと秘め事のようイチャイチャしている。

 

 リューも自らの宣言のこともあってか結構積極的に応じてくれて、リューの表情をこっそり伺えばとても幸せそうに惚けているように見える。

 

 そんな感じに互いに良いことずくめということでこっそり手持無沙汰にイチャイチャしていると、シャクティさんが窺うようにこちらを見てくる。

 

 …シャクティさんの考え事は終わったのだろうか?

 

 そんな風にぼんやり考えつつリューの手の柔らかさを堪能していると、シャクティさんがぼそりと呟いた。

 

「…幸せ一杯の恋人同士の時間を堪能中の所非常に申し訳ないが、一つ気づいたことを話してもいいか?」

 

「「…え?」」

 

「…その表情気付いてなかったとでも言わんばかりなのは気のせいか?」

 

 …どうやらシャクティさんに気付かれていたらしい。

 

 ただリューも僕も気づかれずにやっていた『つもり』だったので、ついついシャクティさんになぜ気付けたのか尋ねてしまうが…

 

「あの…シャクティ?どうして私達が幸せ一杯の時間を過ごしてると…」

 

「まずはリオンの今まで見たことのない頬を赤く染めてデレデレしている様子から。…というか何の躊躇もなく今が幸せ一杯だと認めるのだな。…まぁそれは当然いいこと、か」

 

「デッ…デデデ…デレデレ!?」

 

「確かに今のリューは特に可愛いというのは納得ですね…じゃあシャクティさんはリューの表情から…」

 

「それだけの訳がないだろう?【白兎の脚(ラビット・フット)】の鼻の下を伸ばしたかのような表情で一目瞭然だが…まさか自覚なしか?かなりだらしなかったぞ?」

 

「ごふっ…!?」

 

「ベべべ…ベルがだらしないなどっ!シャクティ!流石に失礼ですよ!確かに鼻の下を伸ばしたかのような表情という表現は的を射ている気もしなくもないですが…」

 

 …シャクティさんの真っ当な観察報告にリューも僕も見事に撃沈された。

 

 そのせいで僕達は多分シャクティさんにも気づかれているであろうが、こっそり互いの手を離し肩と肩の距離も作り直してシャクティさんの話を真面目に聞く姿勢を作り出すことになった。

 

 そんな僕達の態度に何をシャクティさんが考えているのか…というのはもう僕は考えたくもない。

 

 するとシャクティさんはまた咳払いをした上で本題に入った。

 

「それで…だ。リオン?さっきダイダロス通りに今住む家があると言ったな?聞き違いではないな?」

 

「えっ…ええ。場所はお教えするのは気が進みませんが、確かにダイダロス通りだと言いました」

 

「そうか…なら残念だが地区までなら私も目星が付いた」

 

「…目星?」

 

「つまり…場所が大体分かった…ということですか?」

 

 リューと僕の恐る恐る紡がれた確認にシャクティさんは無言で頷く。

 

 ただリューも僕もシャクティさんには居場所をダイダロス通りだという手掛かり以外提供していない以上、具体的な場所がシャクティさんには分かるはずはない。そう思った僕達はシャクティさんの言葉に半信半疑だった。

 

 だが半信半疑になった原因は単にリューと僕の認識が甘かっただけのこと。

 

 そう…僕達がシャクティさんに提供していた手掛かりはそれだけではなかったのだ…

 

「気付くわけないだろう…噂としては知っていた最近市場などに出没し、ダイダロス通りの西の方の地区に戻っていくというエルフとヒューマンの新婚夫婦…その周囲の視線も気にせずべたべたして顰蹙を買う者達がリオンと【白兎の脚(ラビット・フット)】だと誰が気付くか…」

 

「…しっ…新婚夫婦…ちっ…違いますよ?そんな…まだ私達は結婚して…あぁでも結婚ですか…確かに私とベルは婚約者ですし、いつ結婚しても問題は一切ない…ならばそろそろ結婚を検討するのも…」

 

「…リュー?確かに夫婦と勘違いされるのは悪い気は全くしませんし、結婚は是非ともしたいですが…そういう呑気な話じゃない気が…」

 

 リューはシャクティさんに夫婦と勘違いされた噂が流れていることに頬を赤らめ腰をくねくねさせて嬉しそうにしている。

 

 …が、シャクティさんの表情からしてとてもではないが良い話とは思えない。

 

 確かにリューと同じように僕もリューと早く結婚したいし、リューがこれほど結婚式を幸せそうな表情で語ってくれるなら是非とも結婚式は盛大にリューが喜んでくれるようにしないとと心に決める。

 

 だが今はそんな呑気なことを考えている場合ではない。

 

 そしてその危惧が正しいと証明するようにシャクティさんは言葉を連ねた。

 

「リオン。【白兎の脚(ラビット・フット)】の言う通りそんな呑気に考えている場合ではないぞ。…私がこうもあっさり気付けたということはリオンが生存しているという事実が公然化する日はそう遠くないと考えて間違いないと思う」

 

「…え?…え?私の生存が公然化する…?つまり…」

 

 シャクティさんの言葉によって結婚という幸せな未来に吸い寄せられて没入していたリューだけの世界から現実世界に意識を引き戻されたリュー。

 

 そのリューはようやくシャクティさんの言葉の意味を理解し、顔を青ざめさせる。

 

 言うまでもなく僕もシャクティさんの言いたいことは分かっている。

 

 …僕達の前途には未だに厄介な問題が存在していたのだ。

 

 

 

「…場合によっては再びリオンの身に危険が迫る可能性がある…早急に対策が必要だぞ?何か考えはあるのか?リオン?【白兎の脚(ラビット・フット)】?」

 

 

 …この後神様と話し合っても対策をほとんど打ち出せなかったリューも僕も無言になるしかなかった。

 

 この時シャクティさんに相談して良かったと思うのは、これからもう少し後の話。

 

 結果的にこの日がリューと僕の生活に新たな転機をもたらすことになるのである。




プロローグと同じくポンコツCPリュー×ベルに振り回されるシャクティさん()
姉御のリュー×ベルに対するこの立ち位置が私的には好き。(?)

そしてイチャイチャし過ぎて生存がばれてしまうリューさん(白目)
だからあなた現在はこの世にいないはずの人ですからね?何外で目立ちまくってるんですか?

ということでこれからリュー×ベルは対策に追われることになります。
ついでに結婚式も検討を始めることになります。
二人にとってどちらが優先事項か?
…多分結婚式の方でしょうねぇ…(やっぱりアホ)
今作では邪神ヘルメスに関しては触れた割には添え物状態になると思います。

ここまでデレさせるともうリュー×ベルに見えないというのが書いてる作者自身の本音。
…これでいいんですかねぇ。まぁ序盤でこう規定した以上手遅れなんですが!!(疑問を抱きつつも変える気が言うほどない作者)
子供ができたらきっと落ち着きますよ…きっと(尚いつ子供が産まれるか未だに作者も分からない模様)
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