励みになってます!
プロポーズの言葉と誓いのキスを交わして、ようやく眠りに就いたはずの私。
けれど唐突に瞼を照らす光のお陰で無理矢理目を覚まされてしまう。
テントの中のはずである以上このような眩しい光が差し込むはずがないのに…
「だってこれ夢だもの。何でもありな訳よ!リオン!」
「…アリー…ゼ?」
唐突に響いた明るい声に導かれて目を開けてみれば、そこには…
満面の笑みを浮かべるアリーゼがいた。
そうか…夢なのか。
そうあっさりとアリーゼの言葉を受け入れた私は今の状況を飲み込む。
ただ一つだけこの状況に疑問を抱いたので、その点だけはアリーゼに尋ねることにした。
「今回の夢は…アリーゼだけなのですか?」
「ん?あっそうよ?一つは所謂夢によくあるご都合主義ね!あっ…でもこれ神様達の言う『めたい』話だから言わない方がいいのかしら?」
「…アリーゼは何を言っているのですか?」
ただその疑問にアリーゼは得意顔でよく分からないことを宣い、私はアリーゼの説明が正直全く理解できない。
それが思わず表情に出たのかアリーゼは真剣な表情に切り替えた上で話を続けた。
「…という裏事情もあるんだけど、本題はこっちね。リオンが色々私達の前で報告してくれたこと。リオンのこれから。それをリオンに話すためにみんなを代表して私が夢に出てきた…といった所かしら?あとは私だからこそ…という意味もあるわね」
「…?アリーゼ…私に分かるように話してください…つまりは私がアリーゼ達に報告したことへの返答…的な形ということですか?」
「そうそう!流石リオン!話が早くて助かるわ!」
「そういうことなら最初から単純明快に話してください…」
…とは言えアリーゼは真面目にそうに語りつつも話がイマイチきちんと進まなかったのだが。
ともかくようやく私とアリーゼの会話は本題へと入り始めた。
「それにしても最後に夢で会ってからリオンったら六週間しか経ってないのに色々暴走してるお陰でどれから触れればいいか分からないのよね~」
「ぼっ…暴走!?それほどのことを私は為した記憶は…」
「…私達の前であれだけ激しいキスをしておいてよくそんなこと言えるわね。輝夜は言葉を失って愕然としてたし、ライラとかもう笑い転げてたわよ?まぁそれ以上に耐性がないから見るに堪えなかったというか何と言うか…」
「…」
アリーゼの指摘に私は見事に反論できなくなった。
…確かに暴走した自覚がないかと言われれば…嘘になる。
そうして黙り込んだ私を前にアリーゼは言った。
「まぁ白兎君関連のことは今は置いておくわ。それよりあんたの悩み。とっとと解消しないとね」
「私の…悩み?」
「何もとぼける必要ないでしょう?あんたの考えは私達に筒抜け。ダンギクを選んで私達に贈ってくれた理由もみんな知ってるんだから」
「…そうでした。アリーゼ…あなたはどうお考えで私は…どうすべきなのでしょうか?」
私はアリーゼに即座に尋ねていた。
ダンギクの花言葉は『忘れ得ぬ思い』と『悩み』。
…私は未だに『人助け』というアリーゼ達と共に背負ってきた
できることならその
アリーゼの言葉が何かの鍵になると私は思い、ついつい尋ねていたのだ。
だが…アリーゼが腕を組みつつ告げた言葉は私の求めるようなものではなかった。
「それこそ私達に頼りつつ出して良い答えではないわ」
「それ…は…」
「あんたには答えが分かっているはず。いいえ。分からないといけないはず。リオン?今のあんたはどういう存在?教えて?」
「ベルの婚約者で…お腹にいる我が子の母親です…しかし私はっ…あなた達の
分かってはいる。私の立場は。
私の立場を考えれば、アリーゼ達と共に背負った
それは分かっている。分かっているはずなのに…
捨てられない。
捨ててしまうと、アリーゼ達を忘れることになりそうで…
私は大切なかけがえのない友であったアリーゼ達を忘れたくなくて…
だから…私は…
「それが今のリオンにとっての唯一無二の回答。あんたは白兎君の婚約者で母親でもある。白兎君とお腹にいる赤ちゃんへの『愛』という
けれどもアリーゼは鋭い視線と共に私に決然とそんな迷いは捨てるように宣告した。
予想の範疇の言葉ではある。
アリーゼが私でも気付けるようなことを気付けないなど考えにくいから。
アリーゼに言われるまでもなくベルとお腹の中にいる我が子への『愛』という
だが…そう簡単に受け入れて過去の
それにアリーゼは正義とは何かを…
「そうよ。リオン。確かに唯一無二の正義は存在しないと私達は知っている。唯一無二の正義が存在しない以上私達は迷い続け、そして進み続けながら答えを探さないといけない。そういう意味では二つ
「それは分かっていますっ!しかしっ…私はっ!」
「だから『今は』忘れなさい。リオン。永遠に両立できないわけでもないし、どちらにせよ迷わざるを得なくなる日は必ずやってくる。だからこそ今は悩む必要も迷う必要もない。捨てろとは言わないけど、『今は』忘れるべきよ。ただ二人との『愛』を育み、二人へ『愛』を注ぐことのみに全意識を集中させないと。今がその『愛』にとって一番大切な時期なのだから。その邪魔になるなら『人助け』という
「アッ…アリーゼ!?いっ…嫌です!それだけは嫌です!!私は何があろうともあなた達のことを忘れたりはしない!!」
アリーゼは果てにベルと我が子への『愛』の邪魔になるなら自分達の存在さえも忘れるべきだと説く。
アリーゼ達を忘れることなど到底できず、それをアリーゼの口から言われるのはとても残酷で辛いことで。
私は首を何度も横に振りながら悲鳴に程近い声で反論を叫ぶ。
そんな私の反論にアリーゼは意も介さず説得を続けてくると思いきや…
アリーゼはこめかみに指を当てつつわざとらしい溜息を吐いて、説得とは違う話を始めた。
「はぁ…どーしてそんなにリオンは私達のことが大好きなのかしらねぇ…私的には凄く嬉しいというか『白兎君どーだ!私とリオンの絆は突然現れた男などの介入だけでは切れないんだぞ!』…って感じだけど…余計な気を散らすことに繋がるなら話は別。割と本気でリオン大好き白兎君にリオンを解放しろとそろそろ恨まれかねないし…」
「アリーゼは何を言って…」
「結局またお節介が必要…かしらね。輝夜とライラじゃないけど、ほんと手がかかるわよね…私達のリオンは…」
「おっ…お節介?」
「ということでリオン?私から一つ提案があるの?聞く気はあるかしら?リオンにとっても悪い話じゃないと思うわ」
「てっ…提案?」
話を完全に逸らしたかに見えるアリーゼは何か提案を持ち出してくる。
私は思わず身構えるもアリーゼ自身が私にとって悪い話ではないと言っているのだ。
なら…ということで私は頷いてアリーゼの提案を聞くことにした。
「で…まず提案の導入の話として言わないとね。改めてだけど、妊娠おめでと。あんたと白兎君が子宝に恵まれたこととても嬉しく思うわ」
「あっ…ありがとうございます」
提案を話す前に、とアリーゼが持ち出した話は私の妊娠に関して。
今更ながらさらりとアリーゼは私のお腹に子供がいることには触れていたものの、妊娠自体に関することは何も言っていなかったと気付かされる。
そうしてアリーゼの祝福の言葉に恥ずかしさを覚えつつも微笑みと共にお礼を返す私。
そんな私を見てかアリーゼはクスクスと笑いつつ言った。
「それにしても本当によく笑うようになったわね。最近のリオンは。これも白兎君とお腹にいる赤ちゃんパワーなのかしら?」
「え?それは…そうだと思います。ベルと過ごす毎日はとても幸せで…そして遠くないうちに我が子に会えると思うと待ち遠しくて仕方がありませんから。そのお陰で思わず零れてしまうのだと…思います」
「そう…そんなに今のリオンは幸せなんだ。うん。良かった!良かった!今のリオンの幸せは仮に私がそばにいてもあげられた幸せじゃないし、私達結構こういう色恋沙汰と無縁だったからな~でも輝夜もライラも一つの幸せの形でリオンの
「アリーゼ…」
「で・も?リオンったら輝夜とライラの忠告を見事に生かしそびれかけたわよね?」
「うぐっ…」
ジト目で詰問してくるアリーゼに私は言葉を詰まらす。
…輝夜とライラが【深層】での夢の中でもう一つの
もう一つの
本物のもう一つの
それに気付かずに私は『人助け』に総力を投じ、私は危うく我が子を危険に晒すリスクまで犯した。
…アリーゼの言う通り私は輝夜とライラの事前の忠告を全く生かせていなかった。
今でこそ自制した行動ができているから忠告を生かせているとも言えるとはいえ、大失態は大失態だった。
「ほんと輝夜もライラも呆れ返ってたわよ?ポンコツエルフどころか超糞雑魚愚昧妖精だって」
「…返す言葉もありません」
「そしてこれだけのことがあっても私達との
「…」
アリーゼの詰問に私は黙り込むことしかできなくなる。
するとアリーゼは一度咳払いをして雰囲気の一新を図ったかと思えば、話を最初に話し出した提案へと戻した。
「ということで清く正しく聡明な私からの提案があります。リオンが
「そっ…その提案とは…?」
似合わないと言っても過言ではない妙な畏まり具合で提案へと話を進めるアリーゼ。
私が問い返した後、飛び出した次の一言はこれまたアリーゼらしい突拍子もない発言であった。
「リオン!お腹の中にいる赤ちゃんの名前を『アリーゼ』にしなさい!」
「…は?」
お腹にいる我が子の名前を『アリーゼ』にすべき。
人差し指でビシッと私のお腹を指さしたアリーゼ。
ただアリーゼの提案はあまりにも脈絡がないために私の理解は全く及ばない。
お陰で私はポカンと口を呆けてアリーゼを見つめることしかできない。
一方のアリーゼもどうして私がそんな表情をするのか分からないとばかりに首を傾げつつ言う。
「…あれ?ダメだったかしら?だってまだお腹にいる赤ちゃんの名前決めてないでしょ?」
「それはそうですが…あまりに突拍子もないですし、まず私達の子供の名前はベルと決めるつもりだったんです!」
「うわっ…唐突に溢れ出す夫婦愛!?何よ!?私にはリオンの子供に名付ける権利がないって言うの!?ひどい!ひどいわ!リオン!!」
「うっ…しかしっ…私とベルの子供である以上、ベルの意見をお聞きするのは当然のことです!」
私の我が子の名前はベルと二人で決めるという発言にアリーゼは不満を顕わにしてごねる。
そんな理不尽な不平を宣うアリーゼに心を抉られつつも私はベルと二人で我が子の名前を決めるという考えは譲るつもりはなく。
私の強固な決意を見てかアリーゼは攻め口を変えるように言った。
「というかリオンのお腹にいる子供自身が私と言うか何と言うか…」
「…何を言っているのですか?」
「そっ…それはともかく私の提案には利点があるわ!まずリオンの赤ちゃんに私の名前を付けて毎日のように呼ぶことになれば、リオンは私達のことを忘れたんじゃないかっていう不安に襲われずに済むわ!」
「はっ…それは確かに…」
「さらにさらにリオンの赤ちゃんの名前を『アリーゼ』にすれば、『アリーゼ』という名前はこれまでの
「そうすればこれまでの
私とベルの子供に『アリーゼ』と名付ける意味をアリーゼは語る。
私がアリーゼ達を忘れていない証明とすると同時に意識的に『アリーゼ』と呼ぶことで私の中の
アリーゼの提案は…確かに私の中の
とは言えその
「リオン?そうごちゃごちゃ考える必要は正直ないわよ?さっきも言ったけど、今でないだけでどちらにせよ再びこれまでの
「…私とベルの子供が?」
「そう。リオンが悩んだようにこの子もきっと同じ悩みを抱く。何せリオンと白兎君の子供よ?『人助け』に無関心でいられると思う?」
「それは…その通りです。私とベルの子供ですから…きっと…困っている人を見過ごせない」
「だからこの子が悩みをもたらすその日まではリオンは忘れても問題ない。その時私達と共に戦った『正義の使徒』として、白兎君と共に生きていく『妻』として、この子の『母親』として、リオンは答えを見つけるために迷えばいい。もちろん白兎君とこの子と一緒に、ね?」
しゃがみ込み私の腹部近くに顔を近づけつつアリーゼはそう語る。
今のアリーゼの話はなぜかスッと私は飲み込むことができた。
理由は分からないが、不思議な説得力の強さを感じたのだ。
迷うのは今ではなく未来。
迷うのは私とベル二人だけではなく私とベルと我が子の三人で。
それなら…いいかもしれない。
完全にアリーゼ達と背負った
いつか三人で向き合い、アリーゼ達のことを三人で思い出す。
もしかしたら我が子にアリーゼ達のことを語る日も来るのかもしれない。
もしかしたら再び我が子とアリーゼ達の
そう考えると、辛さを感じずにはいられずとも楽しみにも思えなくもない。
そんな未来の日常を得るためにも今はかつての
アリーゼの言うように永遠にではない。いつか思い出さざるを得ない日が来る。
その日を私がどう受け止めるのかは未来の私にしか分からない。
だが…
今の私はその日がいつか来るならば、かつての
「…分かりました。アリーゼのお陰でようやくキッパリと心の中が整理できた気がします。捨てるのではなく一時的に忘れるだけ。いつか来るであろうその日まではベルと我が子への『愛』を何物よりも大切にし、生きていくことにします」
「そう。それが一番だわ。それでお腹にいる子供の名前は『アリーゼ』で決定?」
「それはベルと話し合った上で決めます」
「そこにはこだわるのね!?」
「当然です。ベルとの『愛』を何物よりも大切にするなら、ここでアリーゼの提案に闇雲に従ってはならないと思うので」
「それはそうだけど~まぁそれはいいわ。リオンの言い分はきっと正しいと言うべきだろうから」
私の決意を聞いて、アリーゼは満足そうに頷く。
そうして改めて我が子に付ける名前を『アリーゼ』にするのか尋ねてくる。
だが私はやはりと言うか私はベルに聞いた上でという考えを貫く。これはアリーゼの話を聞いたからこそ尚のこと貫くべき考えのように思えた。
ただ私はアリーゼの言葉を全く無視するというつもりはなかった。
「ですが…ベルに聞いてみます。実際問題私は我が子に相応しい名前というものは正直分かりません。『アリーゼ』なら…私の慕うヒューマンの名前なら我が子の名前に相応しいに違いありませんから。ベルと考えが一致したら、採用するかもしれません」
「そう。ありがとう。リオンにそう思ってもらえるのはとっても光栄ね。ま、清く正しく聡明な私なら当然かしらね?どちらにせよどんな名前をもらえるか期待して待ってるわ」
ベルと考えが一致すれば、『アリーゼ』と名付けるかもしれない。それは本心からの言葉であった。
アリーゼが私にとって大切で今でも尊敬しているヒューマンだということは全く揺らがないから。
私の本心を込めた言葉にアリーゼはいつも通りの冗談交じりに答えながらも嬉しそうに微笑む。
するとアリーゼは唐突に私のお腹に近づいてくる。
「…ってアリーゼはいきなり何をっ…!」
「せっかくだからこの子にも意見を聞いてみるのもありかなって。どう?あなたはどんな名前がいい?」
「アリーゼ!?お腹の子に話しかけても答えてはくれませんよ!!それにっ…私のお腹に頬をすりすりしないでください!?くっ…くすぐったいです!」
「え?そうなの?じゃあ遠慮なくもっと…」
「ひゃうっ!?アッ…アリーゼ!?」
アリーゼは何を始めるかと思えば、私のお腹に頬を擦り付け始め、私はくすぐったさに悶える。
これ以上好きにはさせまいと動きたいも、アリーゼはやめるどころかさらに妙なことを口走った。
「え?何々?アリーゼお姉さんみたいになるために私もアリーゼっていう名前がいい?流石リオンの子供ね!よく分かってるわ。私の名前を名乗ればもれなく清く正しく聡明になれるから、是非そうすべきね!」
「なっ…何を言っているのですか!?お腹が勝手に話し出す訳っ…ベルと同じことをしないでください!?」
「…え?白兎君私と同じことをやったの?もちろんジョークとして…よね?」
「…」
「あーリオンがこのタイミングで黙り込むってことは真面目にやっちゃったのねぇ…白兎君も面白い所あるのね。流石はポンコツのリューの彼氏だとも言えるけど…ちょっと驚き」
…すみません。ベル。思わず胸の内に封印していたはずのベルの黒歴史をアリーゼに口走ってしまいました…
そう後悔しつつもアリーゼg私のお腹にもたらす温もりに私は意識が朦朧としてくる。
段々とぼやけてくる視界。
そうか…そろそろ夢が終わるのか…
そう私は直感しつつも、私は夢の中のアリーゼの姿を目に焼き付けようと、必死に目を凝らす。
するとなぜかアリーゼの姿が吸い込まれるように私のお腹に消えていって。
私の視界は真っ暗になった。
何度目か分からぬ過去の
リューさんの場合アリーゼさん達のことを思い出すたびに悩む傾向を作ってあります。簡単に切り捨てられる思いな訳がないですからね。
ただ一時的な終止符は何とか打たせてもらいました。(以前も作者的には終止符を打ったつもりだったものの、話を進めるうちに復活していました…)
『アリーゼ』という名前を通じた
効果があるかは正直分かりません。ただ模倣したエピソードが存在するので効果はあるんじゃないですかね?きっと
今作では
夢なのでお告げなのかリューさん自身の深層心理の主張なのか微妙ですけどねー
まぁともかくベル君が受け入れるか否かが意外と大事な焦点となります。
ということで次回はベル君&アリーゼさん回です!