励みになってます!
「…兎くーん。白兎くーん」
妙に快活な声が聞こえてくる。
その声に招き寄せられるように僕は目を開くと、僕の目の前に向き合うように立っていたのは一人の女性。
「おっ…目覚めたようね。おはよう!白兎君!そして初めまして、ね」
赤髪に緑色の瞳を持つ目の前の女性は挨拶と共に眩しいと表現したくなるほどの明るい笑顔を浮かべる。
この特徴を持つ人物を僕は知っている…ような気がした。
もしかして…
状況を分析した結果一つの結論に至った僕は即座に尋ねていた。
「あなたは…リューのお仲間のアリーゼ・ローヴェルさんだったり…します?」
「あら、勘が鋭いわね。そうよ!清く正しく聡明な美少女冒険者アリーゼ・ローヴェルとは私のことよ!」
「…これ夢ですか?」
「それもご明察…なんだけど、なんか反応が鈍いわね?まるで美少女冒険者を名乗れるのはリオンだけと言わんばかりに」
「アリーゼさんがどうかはともかくリューが美少女で僕の愛する婚約者なのは今更じゃないですか」
「そ・く・と・う!?がはっ…流石はリオンの選んだ殿方…暴走具合が尋常じゃないわ…」
夢ならば何を言っても問題ないだろうとばかりに僕はリューへの愛を語る。
なぜか僕の愛を語りたくて仕方なくなったのだ。
…相手がリューのお仲間で未だにリューの話に定期的に出てくるアリーゼさんを前にしたからだろうか?
よく分からないけど、僕の中では変な対抗心みたいな物が湧き上がってきているかのように思える。
そして一方のアリーゼさんは僕のリューへの愛を証明する言葉に大袈裟な言葉遣いとリアクションで驚きを見せる。
…こんな調子の女性だとリューは相当振り回されていたのではと、若干ブーメラン気味なことを考える僕。
するとアリーゼさんは大袈裟な身ぶりに一区切り付けるように大きく息を吐いて言った。
「さて…あなたのリオンへの愛情の深さを早速見せつけられた訳だけど、まずは私から一言。あなたリオンと付き合ってるらしいわね?」
「はい!というか先程プロポーズもしたので名実ともに婚約者になりましたが…」
「知ってるわ。色々見せつけられたというかあなたの記憶は大体筒抜けだからほぼ私は知ってる。あんたがリオンにこれまで何をしてきたかも…」
「…え?」
アリーゼさんはわなわなと肩を震わせ、まるで僕がリューに悪事を働いたかを糾弾しようとしているかのようで…
…まずい。この夢の中のアリーゼさんは明らかにリューと僕のことを祝福してくれなさそう。
そう嫌な予感がした時にはもう手遅れだった。
「まず白兎君は告白前にも関わらずリオンが求めてきたからってリオンの初めてを奪った!まずこれ自体私は許せないわ!」
「ぐふっ…!それは確かにお互いの想いを確かめる前でしたけど…でも後でお互い両想いだと分かったのだから何も問題ないじゃないですか!」
「そういうことじゃないのよ!そういうことじゃ!私だってリオンと何度も添い寝したし、リオンの秘密の場所をお触りしたこともある!でもあなたと同じ段階までは男の子じゃないからできなかったのよ!というか私が男の子じゃリオンに近づけたかもよく分からないし!」
「添い寝!?僕が初めてじゃなかったんですか…って!?リューの秘密の場所をお触りってなんですか!?僕もあの時はたくさん触りましたけどぉ!とっても綺麗でまた見たいですし、リューをあの時みたいに気持ちよくさせてあげたいと思いますけど!どうしてアリーゼさんの方が先なんですか!?」
「ふふーん!いいでしょう!私を舐めてもらっては困るわ!でも私はリオンのあそこをあなたほどトロトロにしたことはないのよ!だからあなたにだいぶ後れを取ってる!?どーしてあなたなら問題なかったのかしら!?」
「それはリューと僕が愛という
最初にアリーゼさんが追及を開始したのは【深層】でのリューと僕の告白…ではなくまさかの情事に関して。
思わず勢いのまま反論していたが、リューにはとてもではないが聞かれたくないような下品な話に発展していたことに気付かされる。
そのため僕は我に返って話を打ち切ろうとする。
だがアリーゼさんは僕の言葉を見事にスルーした。
「まだ言いたいことは終わってないから!諸々不満はあるけど、あれは白兎君アウトよ!アウト!私達の前でリオンと一杯激しくてあつーいキスしたの!絶対わざとでしょ!わざと私達に見せびらかそうとしたんでしょ!?それにリオンはすっかり色ボケてポンコツになってるからあなたの誘導に引っかかって…」
「だったらどうなんですか!?もし僕があそこでリューと愛の溢れるキスをしたのが、これからのリューはあなた達と背負っていた『人助け』という
「どうもしないし、文句もないわ!私達が願うのはただリオンが幸せであることだけなんだから!リオンの選んだ
「じゃあどうしてアリーゼさんは僕に文句を言うように突っかかってくるんですか!?」
「それは個人的に白兎君のことが羨ましいからに決まってるじゃない!
「えええええええ!?アリーゼさんまさかリューのこと好きだったとかそういう感じなんですか!?」
アリーゼさんと僕の間で白熱する論戦。
次にアリーゼさんが追及し始めたのはアリーゼさん達のお墓の前でリューと激しい激しいキスを交わしたこと。
実際の所アリーゼさんの指摘が図星だった僕は逆ギレ気味に何の問題があるのかと開き直るように応じる。
その結果発覚したのは今までのアリーゼさんの追及の根本にあったのは、アリーゼさんのリューへの愛情。
まさかのアリーゼさんの爆弾発言に僕は衝撃のあまり叫ぶ。
…リュ―の話からは明らかにそういう雰囲気はなかった。
つまりリューは鈍感でアリーゼさんの想いに気付いてなかったとか…そういうこと?
なら逆にリューに僕の想いを気付いてもらえて、伝えることができた僕は間違いなくアリーゼさんよりもリュ―の中で存在が大きくなったも同然で…
つまりアリーゼさんよりも僕の方が凄い?
そう確信した僕は優越感に浸りつつアリーゼさんに反攻とばかりに追及を始めようとするも。
…アリーゼさんの勢いに合わせて声を張り上げていたせいか息切れを起こしてしまい、続きの言葉を発せず。
そしてアリーゼさんも同じような状況に陥ったようで、二人して息を整えるという一時休戦を経た上で先程までよりは落ち着いた雰囲気で話は再開されることになった。
「ともかく…私個人としてはリオンを白兎君にとられたことは極めて遺憾よ…でも個人的な想いを抜きにすれば、私達はこれからのリオンはあなたの言うようにあなた達三人の間で育む『愛』という
「それは…気付いてます。何度もリューは僕の前では捨てる忘れると言ってくれてますが、どこか完全にはできていないみたいで…僕としては今すぐにでも忘れて今一番大切な
「私達もそうして欲しいのは山々よ?でもリオンが頑として忘れられないのは多分私達のせい…そしてリオン自身の性格のせいでもある…から」
「簡単にはやっぱり捨てることはできないのでしょう…ね」
先程までの応酬の時とは打って変わってアリーゼさんと僕の間では考えが一致する。
アリーゼさん達が過去のアリーゼさん達と共有した
恐らくアリーゼさん達の願いをリューは無視できないだろうから。
そういう意味ではリューの枷になり得る要素が一つ減ったと言っていいかもしれない。
だがそんなアリーゼさん達の思いをリューは恐らく知ることはできないはず。
その上そもそもの話リューは困っている人を見過ごすことができない性格だ。
だから『人助け』という
…このような形で懸念点までアリーゼさんと一致してしまったのは僕的にはあまり喜ばしいことではなかった。
「どうにかして僕と僕達の子供のことだけを考えるようになってくれれば嬉しいんですけど…僕に思い浮かぶ方法と言えば、リューにとにかく幸せを感じてもらえるように頑張るくらいしか思い浮かばなくて…」
「それがあお激しい激しいキスだったのね!?…っていうのはともかく。私的にはそれが一番地道で確実な方法だと思うわよ?時間をかけて少しずつ…そうやってリオンの潔癖な所も変わってきた。ならこれからも同じように時間をかけてリオンが過去の私達と共有してきた
「でも少し前の時の連続窃盗犯の調査の時みたいに時間に任せていたら手遅れになる可能性もある気がして…」
「…焦ってる?白兎君?」
「…はい」
先程までは散々ふざけているように見えたアリーゼさんが心配するように目を細めて尋ねてきた問いは凄く的確だった。
その鋭い指摘に僕は素直に首を縦に振らざるを得ない。
アリーゼさんの言う通り僕は焦りを覚えている。
一刻も早くリューには僕と僕達の子供への『愛』だけを考えて欲しい。
そして少しでもたくさん幸せをリューには感じて欲しい。
そのためには正直言って『人助け』という過去の
だから僕はその
その手がリューとできる限りイチャイチャすることで。
これはリュー自身も僕達の『愛』という
だから僕もリューの想いに応えるという意味でも僕独自の考えという意味でもリューとイチャイチャして温もりを交換し合うことには積極的に動こうと頑張っている。
…色々と恥ずかしいことをやってしまったり、お互いに限度を忘れて後々後悔することも少なくないけど。
それでもリューと僕が得る羞恥心や後悔は決して気分の悪いものではなくて。むしろ…幸せのスパイスになるというか何と言うか。
ともかく今だって僕なりにリューの頭の中を僕達の『愛』という
ただこの方法の決定的な問題は時間がかかることと成果が出ているのか明白には分からないこと。
これまで長い間リューの
そしてリューは『人助け』に取り組む時と僕とイチャイチャする時ではまるで雰囲気が違う。
…これはリュ―の中でこの二つの
この二つの問題がもたらすのはリューが再び『人助け』という過去の
その懸念が僕の焦りに繋がっていたのだ。
懸念を解消する決定的な手立てが見つからないという事実は僕に解決できぬ悩みを与えていた。
「白兎君の気持ちは分かるわ。ただやっぱり時間をかけて解決するしかないとも言える。だからいくら焦って行動しても空回るだけかもしれない」
「だとしても何かあってからでは遅い訳で…!」
「そう。だから清く正しく聡明なアリーゼお姉さんからとっておきの提案があります!どう?聞く?聞いてみる?」
「きっ…聞いてみます」
焦る僕に食い気味に提案があると言ってくるアリーゼさん。
妙にテンションが高くニマニマと笑っている所から見て、嫌な予感しかしないけど…それでも僕だけでは解決策も見出せない訳で。
リューのために。
僕達の『愛』という
僕は悪魔の囁きかもしれないアリーゼさんの提案を聞くことにした。
そうして僕の若干息を飲みつつ告げた承諾の言葉にアリーゼさんは胸を張りながらその提案を高々と宣言した。
「リオンのお腹の中にいる赤ちゃんの名前を『アリーゼ』にしなさい!それがリオンの
「…僕達の子供の名前を…『アリーゼ』…に…?」
僕はアリーゼさんの提案に思わず首を傾げる。
僕達の子供の名前を決めるとどうしてリューの
そう疑問を当初は抱くもふと気づく。
…そうすればこれからのリューがまず思い出す『アリーゼ』は目の前にいる仲間の『アリーゼ』ではなく僕達の子供の『アリーゼ』になるのでは…と。
そうして段々とリュ―の中の大切な『アリーゼ』は仲間から僕達の子供に代わって…
最終的にはリュ―の中の大切な
しばらく思考を巡らせた末に僕はそんな結論を見出し、アリーゼさんの提案への賛成に傾きかけるも。
…アリーゼさんのこれまでのリューへの振る舞いから直前の嫌な予感は一つの予測に辿り着いた。
「…実は僕達の子供に『アリーゼ』という名前を付けて、形は違えどリューの愛をアリーゼさんのものにしようとかそういうこと考えてません?」
「なっ…なななな何のことかしら!?アリーゼお姉さんさっぱり分からないなー」
「…図星ですよね。絶対図星ですよね!?」
僕の指摘にあからさまに挙動不審になり、吹けもしない口笛まで吹こうとするアリーゼさんを見て、僕の予測は確信に変わった。
リューを愛してるのは僕だけ!
リューの愛をアリーゼさんに渡すなど以ての外だ!
そう思いアリーゼさんの提案を即座に拒絶しようとするも…
僕には決定的な弱みがあることをすっかり忘れていた。
「でも白兎君は私の提案を受け入れるしかないわよね?だってあなた自身その効果を理解してるし、他の手立てもないもの」
「うぐっ…」
「心配はいらないわ。効果は確実。一時的になら私達と担った
「…え?それはどういう意味ですか?それじゃあ最初から打つ手がないとでも…」
アリーゼさんの言葉に疑念を抱く僕。
結局はリューがアリーゼさん達と担った
そう思うもアリーゼさんは僕が全く考えもしていなかったことについて触れた。
「考えてみなさいよ?リオンと白兎君の子供よ?困ってる人を見過ごせると思う?『人助け』に無関心でいられると思う?」
「つまり…僕達の子供がリューに再び同じ悩みを呼び起こす…ということですか?」
「そういうこと。ある意味これは宿命みたいなもの。逃れることはできない。だとしても…『アリーゼ』という名前を付けることでその宿命を一時的には遠ざけられる。少しでもリオンが平穏に暮らせる日々を作り出すことはできる。そして私も二人の子供を介して力を貸すこともできるかもしれない。どうする?私の提案受け入れる?それとも断る?私的には白兎君敵には悪くはないと思うんだけど?」
アリーゼさんはそう言う終えると、僕の判断を待つとばかりに口を閉ざした。
ただ考えるための時間は僕には必要なかった。
リューさんの事を想えば、答えは一つだったからである。
「…分かりました。僕達の子供の名前は『アリーゼ』にしないかとリューに提案してみます。もちろんリューの考え次第ですけど、少なくとも僕は『アリーゼ』という名前を付けることに賛成します。…リュ―の平穏な生活のためなら如何なる小さなことであろうとすべきですから。アリーゼさんもお力を貸してくださるなら、ぜひお願いしたいです」
「そう。なら契約成立ね」
僕の言葉にアリーゼさんは満足そうに頷くと、僕の前に手をそっと差し出してくる。
契約という言葉から僕とアリーゼさんのリューのために協力する約束の証のためだろうと察した僕。
僕はアリーゼさんの意図をくみ取って、アリーゼさんの手を取った。
「全てはリューの幸せのために。これからお願いします。アリーゼさん」
「全てはリオンの幸せのために。これからよろしくね?白兎君」
リューの幸せのため僕とアリーゼさんは固い握手を交わして、協力を誓い合う。
リューと共に背負ってきた
けれどリューのことを大切に想う気持ちは同じ。
リューのことを第一に考えてくれるシルさんへの信頼と同じ信頼をアリーゼさんには早々に抱くことができていた。
ただ…リューのことを『僕と同じように』大切に想っているというのがシルさんとは違って少々厄介な点だった。
「さて…白兎君?リオンの幸せのために協力するのは確定だけど、近いうちにリオンの愛は私が独り占めするつもりだから、そこら辺のとこよろしくね?」
「…はい?何言ってるんですか!?リューの愛は僕のものですよ!」
「でも子供ができた女性って言うのはね?旦那さんよりも大体子供の方が大事になるものなのよ。大丈夫!多分旦那さんへの愛と可愛い可愛い子供への愛は別よ?だから心配せずリオンとイチャイチャする私を羨ましそうに指を咥えてみてればいいのよ!今の私がどれだけ辛いか実感すればいいんだわ!」
「いやいや、確かにリューが他の人とイチャイチャしてるのを見るのは死ぬほど辛いっていうのは分かります。ただだからこそリューを渡す訳ないじゃないですか!リューが愛してるのは何があろうと僕ですよ?だって僕達の子供はあくまでリューと僕の愛の結晶なんですから。つまりはリューは僕のことを一番愛してるんです!相手が僕の子供であると、絶対リューの愛を独占させたりはしません!!」
「あーリオンの旦那さんの愛がおーもーい!こんな旦那さんじゃリオンが可哀そうだわ!」
「天界から帰ってきて、僕達の子供に乗り移ってリューの愛を得ようとするあなたの言うことですか!?僕のリューは絶対に渡しません!」
「何をぉ~!リオンは元々私のリオンだったのよ!白兎君は大人しく私にリオンを返しなさい!!」
「嫌です!あなたこそ大人しく僕達のそばでリューと僕がイチャイチャするのを指を咥えて見てればいいんです!」
…という感じに協力関係を築いたはずが、早々にリューを巡ってギャーギャーと口論を開始する僕とアリーゼさん。
夢の中でもこの調子だと僕達の子供が成長したらどうなることやら…
そう思いつつ意味があるのかよく分からない口論を続けるうちに僕の意識は段々と遠のいていったのであった。
ごく普通にアリーゼさんの転生を受け入れてるベル君は事実上ご都合主義です。まぁ夢の中で会話してる時点でお察しですが。
こうしてベル君とアリーゼさんの間でリューさんを守るための秘密協定が成立しました。
…最初から内紛の種はあるようですけどね!
3周年第二部でアリーゼさん言ってましたもんね?
『もし私が先に死んじゃったら、うじうじしてる貴方達の背中を天界から戻ってきて、どついてあげる!』と。
有言実行のアリーゼさん。本当に下界に帰ってきます。
これが定められた運命なのかそれともリューさんとベル君が事実上『アリーゼ』という名前を付けた結果招き寄せる偶然なのかはともかく、ですけど。
アリーゼさんマジカッコいい!()
そしてベル君vsアリーゼさんによるリューさん愛争奪戦第二幕の幕開けです!()
第一幕はアリーゼさんの落命とベル君のプロポーズによってベル君の完全勝利に終わりました。その結果
だがまだ第一幕!アリーゼさんがリューさんのお腹の中を通じて下界に帰ってきたことで第二幕が始まる!
第二幕はどう展開するんでしょうね。そこにリューさんの
まぁまずは出産しないとなんですけど!!!