妖精と白兎の愛育日記   作:護人ベリアス

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結果は1位が子供ができるまで、2位が付き合うまで、3位は子供の幼少期でした〜
…それ以後の票数が少なかったのは、続かないと思われてるからでしょうか?…なら出来るだけ意地でも続けます(笑)

それはともかく今回は夢の中でのお話。夢と言えばあの方々ですよね!


妖精が温もりから得たものは

 温かい。

 

 ずっとこの温もりに包まれたまま眠りに就いていたい…そうまで思えてしまうほどに。

 

 だが私の閉じられていた瞳は唐突に周囲が明るく照らされたことで否応がなく開かれる羽目になる。

 

 そうして見開いた私の視界に入ってきたのは、純白の世界。

 

 私はどうしてこんな所にいる?

 

 そんな当然の疑問を抱きつつ辺りを見渡してみる。

 

 そうしてぐるりと見渡して、私の背を見た時。

 

 

 そこには今は亡き私の大切な大切な仲間達がいた。

 

 

「久しぶりね。リオン」

 

「アリー…ゼ…?」

 

 アリーゼだけではない。

 

 輝夜もライラも…みんなそこにいた。

 

 私の大切な大切な仲間達が。

 

 けれど彼女達は皆本来現世では出会えるはずのない者達であって。

 

 私は彼女達にようやく会えたことに深い喜びを感じる。

 

 だがそれと同時にふと思い浮かんだことにより私は思わずあることを疑い始める。

 

「私は…まさか死んだのですか?」

 

 今は現世では会えるはずのない彼女達と私はこうして向き合っている…

 

 それはつまり私が彼女達と同じ場所に辿り着いてしまったということになりうる。

 

 それは私が死を迎えたということ。

 

 私は早々に不安が積もり始めるその疑問を解決すべくすぐさま彼女達にこうして尋ねたのであった。

 

 そうして私の質問に彼女達は互いに顔を見合わせて何か小声で話し合ったかと思えば、アリーゼが二カリと笑って思わぬことを言った。

 

「何?リオン?あんた死にたくない…そう思えてるの?」

 

「…え?なぜそのように思うのですか?アリーゼ?」

 

「…相変わらず自分の顔に出てるのが分からんのだなぁ…このポンコツエルフは。はっきり顔に書いてあるぞぉ?『私は死ぬ訳にはいかない』、とな」

 

「…本当ですか?輝夜?」

 

 アリーゼの確認に私自身が驚かされる。それこそ輝夜のポンコツエルフ呼ばわりをスルーできるほどに。

 

 私はずっと彼女達と同じ場所(黄泉)に逝きたい。そう思っていたはず。

 

 なのに彼女達は私の表情を見て、『死にたくない』という私の感情が読み取れると言う。

 

 私は今この瞬間彼女達と巡り合えたことに喜びを感じているはずなのに、である。

 

 何故?

 

 そう思いかけたが、私はぼんやりと気付き始める。

 

 私は…何か大切なものを手に入れた気がするのだ。

 

 失う訳にはいかない。決して手放したくない。

 

 そんな大切なもの。

 

 私はそれが何なのか具体的にはよく分からない。

 

 だがぼんやりと察するのだ。

 

 その大切なものは今まさに私の身体だけでなく心まで温めてくれているものと繋がりがあるもので。

 

 今まさに私を包み込んでくれているこの正体の分からぬ温もりに答えに繋がるヒントが隠されているのでは、と。

 

 私がそう推測を立てていく中、アリーゼは先程までの笑みを崩さず言う。

 

「そう。リオン。あんたが『死にたくない』って思えているのは、あんたを優しく抱いてるこの温もりのお陰」

 

「このあっつ苦しい温もりの、な?全くあたしらまで暑くて上せちまうよ」

 

 アリーゼはその私の推測が肯定すると共にヘラヘラと笑ってライラがよく分からないことを口走る。

 

 ただアリーゼに肯定されても、この温もりの正体を掴めなければ、私が彼女達の元に逝きたくないと考えるようになりつつある理由は説明できない。そのため私はこの温もりの正体を彼女達に尋ねてみる。

 

「その…このとても温かくずっと包まれていたくなるようなこの温もりは一体なんですか?」

 

「ずっ…ずっと包まれていたくなる…だと…」

 

「あちゃーこのポンコツはそこまで末期だったかぁ…」

 

「あらあら。リオンったらサラッと爆弾発言しちゃって。流石リオンね!」

 

「…あの…まず私の質問に答えて頂けませんか?」

 

 私の質問に輝夜は衝撃を受けたような表情を浮かべ、ライラはケラケラと笑い、アリーゼは揶揄っているのか褒めているのか分かりにくいことを親指を立てつつ宣う。

 

 …結局三者三様に答えになってないので私は早く教えて欲しいとばかりに苦言を漏らすと、小さく溜息を吐いて答えてくれたのはアリーゼであった。

 

「いい?リオン?あんたはここがあの世なんじゃないかって疑ったけど、ここはあんたの夢の中なの。つまりあんたはまだ生きてて心と身体は繋がったまま。だからあんたが今感じて私達まで巻き添いを食らってるこの暑苦しい温もりはあんたの身体が感じているものなの」

 

「私の身体が感じているもの…というかそんなに暑苦しいですか?私的にはとても心地よいのですが…」

 

「暑苦しいわ。どうせこの色ボケには分からんのだろう…」

 

「あたしもちょっとご遠慮かなーあたしはここまで色ボケてないというかそこまでやらかす度胸はないと言うか」

 

「いっ…色ボケ?一体何のことです?」

 

 私がまだ死んでいないとアリーゼが答えてくれたことに安堵を覚えつつもライラと輝夜の言ったことの意味を理解できない私。

 

 …私はいつの間に死に急がなくなっていたのだろうか?

 

 そんなことを思いつつも、この温もりが私の現実の感覚と繋がっているというヒントを与えられる。…それに加えて輝夜とライラによって『色ボケ』というよく分からない称号も。

 

 与えられた称号の意味を図りかねたが、そんなことよりもこの温もりの正体を知りたい。そう思った私は何か思い当たることがないかと考え込む。

 

 するとアリーゼは考え込む私を見かねてかもう一度溜息を吐くとさらにヒントを与えてくれた。

 

「…はぁ。まだ分からないの?リオン?あんたが夢を見始める前、何をしてたの?それくらい覚えているでしょ?」

 

「何をしてた、というか何をヤってたの?、だな。アリーゼ?」

 

「…エルフの癖になんて破廉恥な…」

 

 何やらライラと輝夜がまたも余計なことを言った気がしたが、私の意識はさらにアリーゼの与えてくれたヒントの方に向いていた。

 

 私が夢を見始める前、何をしていたか。

 

 それは【深層】を彷徨い、九死に一生を得てそれで…

 

 待て。

 

 私は今までどうしてこんな大事なことを忘れていた?

 

 そうだ。

 

 私はこの【深層】でベルと共に死闘を潜り抜けてきたのだ。

 

 

 そして私はベルの温もりを求めた。

 

 

 私はもう二度と一人になりたくなったから。

 

 私はもう二度とこの温もりを手放したくなかったから。

 

 そうか…だから私は『死にたくない』という感情が表情に現れていたのか。

 

 ベルの温もりを肌で感じることができたから。

 

 そして今この瞬間私を包み込むこの温もり。これはきっとベルのものだろう。

 

 今こうして私はベルの温もりを感じ続けることができている。

 

 それがきっと私に…

 

「そうよ。リオン。あんたのお察しの通りこれはあんたの大好きな白兎君の温もり。気づくの遅すぎないかしら?」

 

「だだだ…大好きな!?」

 

「…なんだ。このポンコツエルフは相変わらず自分の感情も碌に把握できていないのか?」

 

「かっ…輝夜!?だから私のことをポンコツとは呼ぶなと…!」

 

「いや…割と真面目にポンコツじゃね?あんなことヤらかしておいて、自分がどうしてあんな素っ頓狂なことをやらかしたのか分からないなんて…」

 

「ライラ…!?あなたまで便乗して…!」

 

 アリーゼのお陰で私の予想通り私を包み込んでいるのがベルの温もりだと分かる。だがアリーゼの爆弾発言に加えてお決まりのように輝夜とライラがツッコミを入れてきて、私は顔を真っ赤にして反論する。

 

 私が…ベルのことが大好き?それは一体どういうことで…

 

「リオンねぇ…あんた、自分がどうして白兎君の温もりが欲しいって思ったのか分かってないの?」

 

「…え?それはベルが私のそばからいなくなってしまうのが嫌だからで…」

 

「…まず私はそのベルという呼び方自体にツッコミを入れたいんだが、いいか?」

 

「そうそれ。今までのリオンだったら限界で名字か二つ名で呼ぶぐらいだったよな。特に男には」

 

「はい。清く正しく聡明な私がいつも通り真面目な話をしようとしてる時はちょっと静かにしなさいね?輝夜。ライラ」

 

「…どこがどういつも通りなのですか?アリーゼはいつも適当に話してばかりで…」

 

「はい。リオン。あんたまで愚痴らずに私の質問の意味をちゃんと考えなさいね。要はね。なぜリオンがその白兎君の温もりを感じることによって一人にならないという証を欲したか…挙げ句あんな血迷ったことまでやらかしたか…その答えをあんたはきちんと考える必要がある」

 

「ちっ…血迷った?」

 

 輝夜とライラの度重なるツッコミをとうとう黙らせたアリーゼは私にアリーゼの質問の意味を考えることを求めてくる。

 

 何を『血迷った』などという形で表現されたか分からない私であったが、それよりもアリーゼに求められたことを考えるべきだと結論を出す。

 

 そうして考えるのはなぜ私はベルの温もりを欲し、なぜベルがそばに居続け、私を一人にしないという証を欲したか。

 

 それを考える中私が辿り着いたのは一つの暗い事実。

 

 今まさに私とアリーゼ達の間に横たわっている距離。

 

 こんなことは言ってはいけないのは分かっている。

 

 それでも…

 

 

 私はアリーゼ達にただ一人遺され、絶望しかない孤独へと突き落とされた。その事実は消えない。

 

 

 だから私は彼女達と同じ場所に逝こうと、何度も死に急いだ。

 

 だから私は生きるための正義(希望)を見失っていた。

 

 でも…

 

 今は違う。私はもう死に急ごうなどという気はない。

 

 正義(希望)が私の中にあるのではないか。それをベルの言葉からも私自身の中でもぼんやりと思うことができている。

 

 だって今も私を包み込むこの温もりが正義(希望)の存在を教えてくれている気がするから。

 

 そしてこの温もりを私に与えてくれるのは今はベルだけで…

 

 だから私はベルにそばにいて欲しいと思った。

 

 つまり…

 

 

「あんたは正義(希望)を見出した。ベル・クラネルという正義(希望)を。結局リオンにとっての正義(希望)はリオンのすべてを受け入れて、温もりを与えてくれる存在のことなのよね。それがその白兎君に代わった…そういうことなのよ」

 

 

「…ぁ」

 

 アリーゼの言葉はなぜか私の心にすんなりと入ってきた。

 

 よく考えればそうかもしれない。

 

 私が気を許すのは私の手を握ることのできた人だけ。

 

 私に温もりを与えてくれる人だけ。

 

 私に正義(希望)があると教えてくれた人だけ。

 

 その一人目がアリーゼで。

 

 その二人目がシルで。

 

 その三人目がベルだった。

 

 アリーゼの言う通り私にとっての正義(希望)とはそういうものなのかもしれない。

 

 口では色々御託を並べようと、結局は私にとってそういうものなのだろう。それはこれまで私が続けてきた努力と繰り返された過ちの数々が証明しているように思える。私は納得せざるを得ない。

 

 だがそこでふと疑問を抱く。

 

 それはなぜベルに私にとっての正義(希望)が代わった…そうアリーゼが断言した理由である。

 

 すると…

 

「なぜその白兎君に代わったかって?それはね。さっきも言ったけど、そもそもリオンはずっとずっとあんたの全てを受け入れてくれる存在を求めてたからよ。リオンが嫌ってる自分の性格とか表面上美しいだけと思ってる容姿とか犯してしまったと思い込んでる罪とか諸々全てをずっと重荷と思ってた。だからそれを一緒に背負ってくれる人を求めていた。違う?」

 

「それは…」

 

 否定できない。

 

 アリーゼは私が偏屈なエルフであろうと友人として受け入れてくれt。

 

 シルは私が多くの方を苦しめた罪人であろうと友人として受け入れてくれた。

 

 そしてベルは…

 

「白兎君はリオンの過去も性格も全て知った上で今こうして受け入れてる。それができたのは疑いようもなく白兎君だけ。正直言ってリオンにとって白兎君は私達以上の存在になったってことよ」

 

「もっとも私達がその少年の領域に至るのは絶対に無理だった気もするがな」

 

「それな。あたし達はリオンを友人として受け入れることまではできてもそいつ並みは流石に…」

 

「何言ってるの!私はリオンとお風呂も入ったし、一緒に寝たのよ!私はリオンの身体の隅々まで知ってるのよ!だから白兎君の領域まであと一歩手前まで来てるじゃない!きっと惜しかったのよ!ね?リオン!」

 

「なっ…私のかっ…体の隅々まで!?アリーゼは一体何を言っているのですか!?」

 

 アリーゼの意味の分からない発言に私は羞恥心を覚えさせられ思わず叫ぶ。

 

 ベルがアリーゼ達以上の存在になり、私の生きるための正義(希望)となった。その意味はすんなりと理解できる。

 

 ただそのアリーゼやシル以上の存在になったその理由は分からないまま。輝夜とライラが苦笑い気味でぼそりと漏らし、アリーゼが羞恥心しか生まない摩訶不思議なことを言ったのを聞いても全く私には分からない。

 

 すると私の恥ずかしがる様子をアリーゼは面白がりつつも言う。

 

「まぁつまりね。リオン。私達はあんたにとっての友人にしかなれなかった。だからリオンが望むほどの温もりをあげられなかった」

 

「私達が既に温もりを持つ存在ではないから、という意味でもな」

 

「そうそう。リオンがどれだけあたし達に温もりを求めようともあたし達は絶対に応えられない」

 

「それも…そうです」

 

 言う通りだ。彼女達と私ではもう生きる世界が違う。だから私は生きること自体を止めればいいという判断に至っていた訳で。

 

「だけど白兎君は違う。あんたが望む分どころかそれ以上の温もりで今もこうしてあんたを満たしてくれている。白兎君はリオンの望みにようやく応えてくれた人。だから白兎君はリオンにとって友人以上の存在になった」

 

「リオンがそんな温もりを求めるような淫乱だったとはな…」

 

「リオンの欲しかった温もりってのが温かいそいつの体液だったとか真面目に笑えねぇ…」

 

「輝夜。多分このポンコツエルフちゃんはそんなことしたつもり全くないから言っても意味ないわ。あとライラ。乙女がそれ言ったら流石に下品すぎ」

 

 …ライラと輝夜が『いんらん』だの『たいえき』だのよく分からないことを言い、アリーゼがそれを窘めているのを首を傾げて眺めつつ私は考えを整理しようとする。

 

 ベルが私にとって友人以上の存在になった…

 

 確かにそれもそうだ。

 

 私がここまで触れ合った相手なんてベルしかいない。そして私を温もりで満たしてくれた相手も。

 

 今の私にとってベルが何物よりも大きな存在になっていることは疑いようもない。

 

 そしてそれをアリーゼは…

 

「…だからアリーゼは『大好き』と評した…ということですか?私がベルに温もりを求めたのはベルを愛していて恋人になりたいと心のどこかで思っていたから…なのですか?」

 

「んーそういうことだと私は思うわよ?リオンは白兎君と恋人になってイチャイチャしたいのよ!あー私もリオンとイチャイチャしたかった!白兎君ズルい!」

 

「今更気付いたのか…待て。さり気なく愛を表現する言葉が重くなってるのは気のせいではないよな?ついでに言うと団長は一体何を言っている?」

 

「というかアリーゼと輝夜は順序を色々吹き飛ばしてるこのポンコツエルフの暴走っぷりを突っ込んだ方がいいとあたしは思うんだが?」

 

 色々余計なことも言われた気がするが、私がベルのことが好きだという感情が存在しているということを確認した私。

 

 そうか…

 

 

 私はベルの事を愛しているのか…

 

 

 そう考えると心がさらに温かくなった気がした。

 

 何故だろう?

 

 ベルを愛しているというこの気持ちは私にとってとても尊く正しく正義(希望)であるとまで思えてきた。

 

 私はベルを愛している。

 

 私はベルを愛しているのか。

 

 ふふ…ふふふ…

 

 

「…なんかリオンがニヤケ出した…」

 

「まぁ幸せそうで何よりじゃない!リオンのこんな笑顔初めて見たわ!」

 

「…好敵手のこんなだらけた情けない表情…そう言いたいところだが、私は何も言うまい…」

 

「…というかあたし達ってリオンがこっちに来ないように励ます役割じゃなかったか?」

 

「そういえばそうね…本当はあのモンスターの恐怖と自分の抱いちゃった恋の感情に憶病になったリオンを励まして、白兎君の手を離すな~とか逃がしちゃダメ~とかいうつもりだったんだけど…」

 

「このポンコツはもう完全にその少年を愛することに躊躇がない上に手に入れた温もりを手放さないために死に急ぐ感情を完全に捨て去り、生きることに向き合えるようになっているように見える…」

 

「それな。もうリオンは大丈夫そうだな。ちょっと安心した。…っていうのはともかくさ。手を離すというかさ。咥えこんじゃったと言うか何と言うか…」

 

「はい。ライラはせっかくいいこと言いかけていたのにそれ以上品のないことを言わないの。あとなんかリオンのニヤケ顔見てると、こんな表情にさせてる白兎君が無性にムカつくわね。リオンの心も身体もずっと私の物だったのに」

 

「…だからさっきから団長は何を言っているのだ?」

 

 

 なんて会話が行われていることを知りもしない私は始めて抱いた感情に幸福を感じ、一人だけの世界に浸っていると…

 

「さぁリオン!最後にほんの少し私の話を聞きなさい!」

 

「えっ…あっ…はい!」

 

 唐突に上げられたアリーゼの声に私はびくりとしつつ応じる。そして私がきちんと反応したことを確認したアリーゼは笑みを絶やさないまま言う。

 

「いい?リオン?あんたはようやくあんたがずっと求め続けたものをくれる存在に出会えた。あんたはようやく正義(希望)を見出したの。だからあんたはその正義(希望)を失っちゃダメ。一応それを念押しておく。いい?」

 

「…はい。分かってます。だから私は…アリーゼ達の元に逝きたいとはもう考えません」

 

「それでいいわ。リオン。これで私達のリオンを見守る役割はもう終わり。これからはすっごく不本意だけど、白兎君に任せるとするわ!リオンの正義(希望)になるのもリオンを守る役割もみんな、ね」

 

「え…」

 

 アリーゼ達が私を見守る役割はもう終わり…

 

 

 つまり私は夢の中でもアリーゼ達に会うことができない…そういうこと?

 

 

「ちょっとリオン!そんな悲しそうな表情しないの!えーと何と言うか…ね?」

 

「リオンがそんな表情をするとは…あれだけいがみ合っていてもそれなりに親愛の情を抱きあっていられたのだな…私達は…」

 

「おい。輝夜。さらっと実はリオンの事が好きなツンデレでしただなんて暴露してないでなんかリオンを慰める方法を考えろ!その…あたしもリオンのこんな表情は見たくない!」

 

「そっ…そうだ!あんな大事なことを伝え忘れてたわ!」

 

 

 茫然とする私を前に大慌てで話し合う何かを話し合うアリーゼ達。

 

 そうして何か閃いたような表情をしたアリーゼは私に指を突きつけながら叫ぶ。

 

 

「大丈夫!私達は近いうちにあんたに会いに行くわ!多分!恐らく!この中の誰かが!きっと!できれば私が!」

 

 

「…え?」

 

「…団長?そんな不確かなことをリオンに伝えていいのか?違ったらリオンは途方もなくショックを受けるぞ?」

 

「ついでに言うとアリーゼの欲が駄々洩れだし」

 

「うっ…うるさいわね!輝夜!ライラ!多分大丈夫よ!多分!」

 

 アリーゼの叫びに輝夜は不安そうな表情をライラは呆れ顔を浮かべる。確かにアリーゼは不確かだと強調するかのように『多分』等々を連呼していて、相変わらずのアリーゼの適当さにそんな表情を浮かべるのは納得だが…

 

 アリーゼ達が私に会いに来る?それは一体どういう意味か?

 

 そしてその疑問に答えたのは輝夜とライラであった。

 

「えっと…な?貴様は先程まで何をやらかしていたのか分かっていないようだから、具体的なことは私には伝えられない。だがリオンに覚えておいて欲しいのは、今のリオンは二つの正義(希望)を手に入れることができているということだ」

 

「二つの…正義(希望)?つまりベルの存在だけではなく…ということですか?」

 

「そうだぜ。リオンが気付くのはもっと先になるだろうけど、リオンはそいつのお陰でもう一つ正義(希望)を手に入れた」

 

「そして貴様にとってその正義(希望)はその少年以上に大切になる。だから今のうちから自分の身体には気を遣え。そしてもう少しその短絡的に行動する所を直せ」

 

「そうそう。意味の分からないところで暴走して、その正義(希望)を失うなんて馬鹿のやることだぜ?リオンはもっと慎重さを持つべきだ」

 

「輝夜とライラの戒めは肝に銘じますが…私の…もう一つの…正義(希望)…?それは一体何です?」

 

 輝夜とライラは漠然とした言葉を並べるばかりでその正義(希望)の正体を掴めない。それで私はその正体を尋ねてみる。

 

 私の質問に輝夜とライラは一度顔を見合わせたかと思えば、静かに言った。

 

 

「言うなればリオンの幸せを体現する何か。少なくない奴がその何かを見て幸せだって思える。幸せってものには色んな形があるだろうけど、それは代表的な一つの形だと思うぜ?」

 

「そして私達がとうとう手にすることのできなかった幸せでもある。オラリオにいる冒険者のほとんどが手に入れることのできない幸せ。それを偶然か必然かリオンは手に入れた」

 

 

「輝夜達が手に入れることのできなかった…幸せ?輝夜、ライラ…?それでは私には意味が分かり…」

 

 私はその意味を理解できず、質問を重ねようとする。

 

 だがなぜか目の前のアリーゼ達の姿が次第に霞んでいく。

 

 まるでアリーゼ達と話せる時間はもう本当に終わり…そうとでも言うかのように。

 

「みんなっ…!待って!私にその意味を教えて…!」

 

 私は彼女達を引き留めようと叫ぶ。

 

 だが彼女達は笑みを浮かべながら首を振る。

 

「ごめん!リオン!時間がもうないの!だからその答えは白兎君と見つけて!」

 

「団長も私達も適当なことばかりして本当にすまない…!今も…これまでも…だが私達がリオンの幸せを願っているというのは本心からだ!それは疑わないで欲しい!」

 

「そう!だからリオン!あたし達の分も幸せになれよ!今のリオンは本当に一人じゃないんだからさ!」

 

 申し訳なさも含ませつつ首を振る彼女達。

 

 もう引き留めることはできない。アリーゼの言ったことの意味は分からないが、もう夢の中でも会うことができないかもしれないということは伝えられた通り。

 

 なら私は霞に消えていこうとする彼女達に何を伝えればいいか?

 

 それは私の中で明白だった。

 

 せめて最後にそれを伝えなければ、私は絶対後悔する。

 

 そう思った私は純白の光に向かって叫んだ。

 

「アリーゼ!輝夜!ライラ!みんな!あなた達はずっと私にとっての正義(希望)でした!ずっと守り抜き、共に生き、温もりを感じていたい…そう心から思える正義(希望)でした!今は確かに私の正義(希望)はベルかもしれない!でも私は決してあなた達に私の心が救われたことを忘れません!そして過去の過ちを決して繰り返しません!ベルの事も…そしてあなた達の話す『もう一つの正義(希望)』のことも!だからたとえこれから会えなくとも幸せを掴むために生きる私の事をどうか見守っていてください!これまで私の正義(希望)として支えてくださり本当にありがとうございました!私の…!大切な愛する人達!」

 

 私の言葉に返事は返ってこない。もうアリーゼ達の姿も見えなくなっていた。

 

 だが私を包み込む温もりと純白の光が優しく受け止めてくれた…そんな気がした。

 

 それに安心した私は温もりに再び身を委ね、瞳を閉じた。




自分のイメージでライラって品がないんですよね…(中々に好きなキャラなのに)
気付いたら下ネタ連呼してた…これは仕方ないんです。何せ下ネタの出所はリューさんで誰かがボンヤリと触れなきゃいけない。…でそれをアリーゼさんと輝夜さんに言わせたくなかっただけで。

尚リューさんの正義は独自解釈を取りつつも原作で事実上語られてたものだと思ってます。
それがアリーゼさんとシルさんからベル君に決定的に移行するきっかけが前話のリューさんとベル君が一つになるシーンにあった訳です。
…この解釈だとアリーゼさんとシルさんが不動の地位に立つには百合を確立すれば良かったという訳です。二人とも余裕でいけそう!

アリーゼさんはそこら辺分かって行動していたのかも?シルさん以上に接触してますからね。
正直に言うと、アリーゼさんは適当で元気溌剌能天気!…みたいに描かれてますけど、高確率でその顔は仮面だと思ってます。もしくはリューさんがポンコツなので本性を見抜けていないのか。何せほぼリューさん視点でしかアリーゼさん達は描かれてないので、リューさんの思い込みに沿ってしか描かれてません。
ですが少なくとも言えることは、【ジャガーノート】戦での一連の判断を見るに少々一般に見られる人物像からは考えられない判断が多いように思えます。(まぁ深くはここでは語りませんが)

それはともかくアリーゼさんはベル君からリューさんを奪還しに再来する予定の模様!方法?どうやるんでしょうねー(すっとぼけ)

〈おまけ〉
今作は週一投稿ですので間が空いてリュー×ベルを補給できない!
…とお困りの方のために一作紹介を。(作者様からは許可を頂きました)
Hydrogenさんのpixivで連載なされていた『正義に生きた妖精は』という作品です。既に完結されている作品です。

https://www.pixiv.net/novel/series/1246433

今作と同じ14巻以降を扱った作品で、今作とは違って()リューさんが変化していく経緯を丁寧に描かれています。
是非お読みください!
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