励みになってます!
いよいよと言えばいよいよの【厄災】戦です。
書き終わって気付くのは自分の作品の主役はリューさんであって、ベル君はシルさんなどと同格の脇役に過ぎないという点ですね。ある意味ベル君でないといけない理由はリューさんが恋に落ちたから、という以上の理由はないような…(ということで絶賛リュー×ベル派からリュー×アリーゼ派に転向しかけていますね!)
尚原作改変は原作と常に比較されるので今までは原則避けてきましたが、今作はリューさんが正義=希望であると見出すのが14巻である以上取り入れざるを得ませんでした。避けたかったのが本音…
ただ今作の趣旨をはっきり示す形で【厄災】戦を描けたと個人的には思っています。
さて正義(希望)を明確にを見出したリューさんはどのように動くのか…
「…」
「…」
音一つない暗闇の中。
私とベルは無言で迷宮を進んでいく。
二人並んで周囲を警戒しつつ進んでいく私達の距離は心も身体もここに辿り着くまでより何倍も縮まっていたのは気のせいではない。
場所は未だに37階層。
ただし水源らしき場所は既に後にして、今は37階層の正規ルートに入った。
長い長い休憩をようやく終えた私達は決死行を再開していたのだ。
気の休まる時間をあまりに長く過ごしてしまったせいかイマイチ緊張感が戻っていないかもしれないというベルからの指摘通りの不安もあったが、私達は何事もなく進み続けることができている。
…そもそも緊張感が足りないのは私だけの話ではない。ベルもだ…そう言いたい。
お互いの想いを確かめ合ったことが原因で思わず想いが昂り、キスの雨を降らせまくって出発時間をさらに遅らせるという盛大なハプニングに見舞われたのは私とベル二人の責任。
二人揃ってお互いの温もりに溺れかけたのは緊張感を欠いていたことを何よりも証明していた。
…そのお陰で余計に気持ちを昂らせないようにということで私とベルの間ではあの後不用意な会話を避けるようにと取り決めをする羽目になった。
ただベルだって緊張感を欠いているという点では私と大して変わらないのではないか?
その理由としても私とベルは身体だけでなく心も繋がっているから当然とあっさりと納得をする私。
それにしてもベルの苦言はともかくベルと触れ合ったことで心も身体も温まり、私に宿る
これなら私は絶対に生きて帰ることができる。
この
…こんなにもベルが近くにいるのに温もりを感じられないのは何ともじれったい。せめて手くらい握ってくれてもいいのに…
と考えたところで私はそのお気楽な思考を遮断した。
…今はダンジョンの中。モンスターの蠢く死地にいる。
にもかかわらず武器を握らないといけない片手を拘束するとは何事か?
ただ私がベルを守れば何ら問題ないのでは?と生まれてくる余計な考えを抑えつつ意識を周囲への警戒に私が注ごうとしていると、ベルがピタリと立ち止まると呟く。
「…リューさん?ここはどこか分かりますか?」
「恐らくは第四円壁です。この先が【下層】への連絡路ですが…」
そう答えつつ私は何か不穏な空気を感じ取り、言葉を切る。
その正体はその瞬間までの私には判然としなかった。
そして円壁を潜り抜けたその時。
私とベルに突き刺さった殺意の籠った眼差し。
私からかつての
そして今まさに私とベルから
『ジャガーノート』が私とベルの頭上に現れていた。
「ォォォォォ!!」
「…っ!リューさんっ!」
威嚇のつもりか騒々しい雄たけびと共に降下してきた影が爪を突き立てんと突貫してくる。
その爪の向く先は私。
顔を振り上げその影を認めたベルが悲鳴に程近い声色で私の名を呼ぶ。
だが殺意を向けられた私自身は動じなかった。
私には
だから私は動じない。
だから私は揺らがない。
「…ふっ」
小さく息を吐くと共に腰に差した双葉を引き抜く。
私は『ジャガーノート』の姿を直接見なかった。
もう『ジャガーノート』の行動パターンは掴んでいる。
風の動きが奴の動きを教えてくれる。
殺意の籠った『ジャガーノート』の視線が私の身体のどこを狙っているか知らせてくる。
そして私の
だから負けようはずもない。
ベルの不安に満ちた視線と『ジャガーノート』の殺意の籠った視線が私に刺さる中。
私の双葉の一双と『ジャガーノート』の必殺の爪が交わった。
だが必殺など私の恐怖が生み出した幻想でしかなかった。
冷静に向き合えば。
ただ
必殺の武器など容易に慢心を呼び起こす無用の長物と化すのである。
恐ろしいほどに速い速度に乗せられて突き付けられた暴力。
真正面から受け止めては私などの力では到底敵わない。
だが私はその暴力による衝撃を双葉の一双に込める力の調整と背を反らせていくだけで受け流して見せた。
ただ私に蓄えられた直感と経験にこの身を委ねて。
こんなこと私が生き残ることに絶対的な自信を抱いていなければできないことであっただろうと、実践しながらぼんやりと考える。
そしてその結果その勢い任せの暴力は私に突き立てられることなく私の背を任せていた壁面に轟音と共に突き立てられた。
それにより深々とその爪は容易に抜けぬほど壁面に突き刺さる。
その隙を私は見逃しはしない。
瞬時に奴の爪を受け止めていないもう一双の双葉でその爪を根元から両断する。
そうして突き刺さった爪によって何とか一瞬だけ浮いていた身体を落下させ始めた『ジャガーノート』に私は回し蹴りを馳走した。
私の力はそれほど強くないが、受け身を取れていない油断多き『ジャガーノート』相手に無力な訳もなく。
『ジャガーノート』はいとも簡単に広間の中央へと吹き飛ばされた。
「なっ…なっ!?」
私によってあっさりとあしらわれた『ジャガーノート』の姿に驚きを隠せない様子のベル。
だが私はそう奇妙な光景ではないと考える。
なぜならこれまで『ジャガーノート』と向き合ってきた私には
だが今の私は違う。私には
だからこの展開は私にとって何ら奇妙ではなかった。
一方の吹き飛ばされた『ジャガーノート』も流石にこんなに簡単に敗れるほど弱くはない。
籠る殺意を何倍にもしながらむくりと身体を起こしたかと思えば、残された右腕から尖った白骨の槍を打ち出した。
「あれはっ…!『スカル・シープ』のっ!」
ベルは動揺を隠せぬまま飛んできた白槍に回避行動を取ろうとする。
だが私はベルと同じ行動を取らなかった。
私に向けられる白槍をある時は身体を反らせて避け、ある時は双葉で軌道を変えて。
私は『ジャガーノート』相手に逃げ回るのではなく正面から睨み合った。
その私の動じぬ動きに『ジャガーノート』は闇雲さを感じるほど白槍を連射してきたが、それでも私は動じない。
私は飛んでくる白槍に注意を払いながらも一歩また一歩と『ジャガーノート』との距離を縮めていったのだ。
そして一方の『ジャガーノート』相手にすっかり弱腰に回避行動を繰り返すベルに喝を入れる。
例えベルが速度頼りの戦法が得意としても守勢ばかりでは勝てない。そう改めて伝える必要を感じたのである。
「ベルッ!なぜそうも弱気なのです!気を引き締めなさいっ!」
「でもっ!『ジャガーノート』があんな姿でっ…!」
私の喝にベルは恐怖でひきつった表情のまま応じてくる。
確かにベルの恐怖は分からなくもない。
目の前の『ジャガーノート』は前に向き合った時とはまるで違う形相。何をしたらこんな醜悪な姿になるのか理解できない。
もしかしたら私達の予想を越える卑劣な罠を仕掛けてくるかもしれない。そうも考えられる。
だがそんなことなど今はどうでもよかった。
「だからなんですか!?私達には
「…っ!」
私の言葉にベルが大きく目を見開く。その様子に私は畳みかけるように言葉を連ねる。
「私は確かに伝えました!ベルも確かに同意したはず!私達には
「…ぁ」
「だからベル。何の迷いも憂いもいらない。前に進みなさい。
「もしあなたに本当に
そうベルに告げると共に私は白刃を煌めかせ駆け始める。
ベルの返事はもう待たなかった。
なぜならベルは間違いなく私に続いてくれる。
共に私達の
そう信じていたから。
そしてベルは…
「ぐっ…!その通りです!リューさんっっ!!僕も共に戦います!僕達の
それでいい。ベル。
恐怖を吹き飛ばし、声を張り上げたベルは私に呼応して駆け出す。
忌避行動を繰り返し奇しくも私から離れた場所に移動していたベルとほぼ移動をしていなかった私は『ジャガーノート』を挟撃する位置取りを取ることに成功する。
偶然だとしても有利な位置取り。これを生かさぬ手はない。
こんなモンスター如きに時間など使うにも値しない。
仲間の仇。
そんなものには早々に消えてもらおう。
私は短期決戦を心に決めて、ベルと目配せで連携を心掛けながら『ジャガーノート』と白刃と爪を交わす。
『ジャガーノート』得意の一撃離脱などさせるはずもない。恐ろしく速い速度さえ相手にせずに済むならこんなモンスター敵ではない。
逆に私の方が速度を生かして『ジャガーノート』を翻弄していく。一撃離脱戦法はもはや『ジャガーノート』の領分ではなく私の領分だった。
ベルが押されれば、私がカバーに入り。
私が押されれば、ベルがカバーに入る。
心の繋がった私とベルにとってもはや連携など余裕。
速度が上がれば上がるほど力を増幅させていく私に押され続ける『ジャガーノート』。
速度を保ち続けるために疾走距離を確保しようと、時折『ジャガーノート』相手に距離を取るという隙が生まれるが当然その隙を利用させはしない。
私が距離を取れば、ベルが代わりに『ジャガーノート』を相手取る。私と同じく速度を生かした戦いを得意とするベルもまた長所を生かせずもがく『ジャガーノート』を翻弄し続けた。ベルも先程までの及び腰から打って変わり積極的に攻勢に打って出ていた。
『ジャガーノート』は常に飛び回り纏わりつく私とベルに闇雲に蛮勇を振るい続けたが、そんなものに私達を傷つけられるはずもなく。
逆に『ジャガーノート』の方が長所を奪われ続けながら私達二人掛かりの攻勢に鱗を少しずつ削ぎ落されていく。
そして何分続いたか分からない命のやり取りを繰り広げた末に。
もう白槍は打ち尽くされ、全て壁に突き立ったまま。
身を守っていた鱗も削りつくされた。
『ジャガーノート』を守る武器はもはや消え去った。
一方の私とベルは数えきれない擦り傷を作り、疲労が身体を蝕みはしたものの、致命傷は負わないまま。
これで終わりだ。
視線を交わし連携を示し合わせた私とベルは一度『ジャガーノート』と距離を取る。
その唐突な私達の動きに態勢を整えようと試み始める『ジャガーノート』であったが、そんなことなどさせる意図は毛頭ない。
『ジャガーノート』は気付いていないのかもしれないが、私とベルは対角線上に陣取っている。先程までの入れ替わりながらの一撃離脱を狙っての位置取りでは当然ない。
殺気の篭った視線を私に向け、私の動きに対応しようとする『ジャガーノート』。
だが私が見ていたのはその先にいたベル。
もう私に見えるのは絶望とトラウマではなく
示し合わせて、再び挟撃の態勢を整えた私達は声を揃え、動きを合わせて、突貫した。
「「はぁぁぁぁ!!」」
私の動きに対応しようとする『ジャガーノート』であったが、後方より迫るベルの動きに気を取られる。だがそんなよそ見をしている余裕をこの私が与えるはずもなく。
結果私にもベルにも対応し損ねた『ジャガーノート』の腹と背には二振りの白刃が深々と突き立てられた。
そして間髪を入れずに叩き込まれる私とベルの横蹴りをまともに受けた『ジャガーノート』はとうとうビキビキと音を立てて白骨を砕かれた。
速度のお陰で増幅した私とベル二人分の蹴りの力を受け流せなかった『ジャガーノート』は砕けた白骨の粉を振り撒きながらはるか遠くへ吹き飛び、壁面にめり込む。
ミシミシと音を立てて、めり込んだ壁面から抜け出そうとするも、突き立てられたままの二振りの白刃がその足掻きを妨げる。
『ジャガーノート』にはもはや抵抗する余力も失い抜け出すこともできない様子。
その様子に私とベルは自然と近寄りつつ『ジャガーノート』に視線を釘付けにしたまま並び立つ。
そして私達は呼吸を整えながらもゆっくりと顔を見合わせた。
「勝ったん…ですか?リューさん?」
「…ええ。
そう言うと私はベルを抱き寄せて、ベルの腰にそっと腕を回した。
それはベルの温もりを再び肌で感じるためで。
ベルが左腕に怪我を負っているために手を繋ぐことができないことによる少々不本意さの残る身振りで。
そして私とベルが二人で協力して『ジャガーノート』という
ただ…
「共に
「…っ!はっ…はい!そそ…そうですね!『ジャガーノート』にとどめを刺さないとですね!」
…ベルはただ私が距離を縮めただけなのに顔を真っ赤にして私を凝視するばかり。
ベルは私の名前を呼ぶと動揺を全く隠せていない反応を返し、大慌てで視線を背けた。
…どうかしたのだろうか?私は何か問題のあることをしてしまった?
そう疑問を抱くが、少なくともベルはこれから為すことを理解してくれているということは分かった。
よって私はベルから『ジャガーノート』に視線を移す。
そして私はポツリと呟いた。
「…私達が両想いだと分かってから、初めての共同作業ですね?ベル?」
「え?…確かに。もうちょっと僕的には楽しい共同作業が良かったというか何と言うか…まぁいいです。リューさんも僕もこうして生き残ることができているので」
「私達二人での楽しい共同作業は後々の楽しみに取っておきましょう。私達にはこれからいくらでも時間はあります。その時間を二人でゆっくり楽しんでいけばいい…そうでしょう?」
「それもそうです。リューさんと僕はこれからずっと一緒ですから、ね?」
「その通りです。私とベルはずっと一緒です」
『ジャガーノート』から一度視線を外し、互いの笑顔を確認しあいながら語り合う私とベル。
改めてお互いを一人にしないという決意を固めると、私達は視線を絡めて頷き合う。
そして再び『ジャガーノート』に視線を向け直すと共に私達はこの忌まわしき戦いにようやく終止符を打つ時だと心に決める。
私達は空いたままの方の手を『ジャガーノート』に向ける。
ベルは魔力の
そして私は歌を紡ぎ始めた。
「【今は遠き森の空。無窮の夜天に鏤む無限の星々】」
この歌は私にとって忌まわしき過去を思い出させるもの。
だがそれは違った。
私がただ
私に
だからこの歌もまた力を失ってしまっていたのだ。
だが今は違う。
私は
だからこの歌はもう無力などではない。
私達の
「【愚かな我が声に応じ、今一度星火の加護を。汝を見捨てし者に光の慈悲を】」
ベルの生み出した光と私が生み出した風が私達を包み始める。
ベルの温もりを感じたままだからだろうか?
私を包み込む光と風はとても暖かく感じる。
この光と風が私達の
この光と風が私達の
「【来れ、さすらう風、流浪の旅人。空を渡り荒野を駆け、何物よりも疾く走れ】」
そうして忌まわしき仇敵を前に思い出すのは、仲間達の存在。
無慈悲な仇敵のせいで。
無力だった私のせいで。
彼女達は無念の死を遂げてしまった。
彼女達はもう戻ってこない。
あの時私が今のように戦えていれば…なんてことは考えない。
あの時の私は何があろうと立つことはできなかった。
今のような揺るがぬ生きるための
これは手の施しようもない後悔で一生私は心のどこかをこの後悔に蝕まれ続けることになるに違いない。
だがこの後悔があるからこそ強く心に誓える。
この心に
私はもう過去に囚われない。
過去を言い訳に逃げ回ることはしない。
私は今この心に宿る
かつて
その最初を飾るのは目の前の仇敵『ジャガーノート』を撃ち滅ぼすこと。
ベルの示す光と一つになって。
かつて星屑の下に集った光にその背を支えられて。
私を取り巻く風は未来へと歩む。
「【星屑の光を宿し敵を討て】」
ベルが小さく息を吐く。それは
私もまた一息置く。それは詠唱が完成する直前であることの合図。
そして私達はようやく悪夢に終わりを告げさせた。
「【ファイアボルト】!!」
「【ルミノス・ウィンド】!!」
放出される風に包まれた光弾達は迷うことなく『ジャガーノート』へと殺到する。
その光弾達に呼応するように熱気と共に直進していく光に包まれた炎。
それを正面から受ける羽目になった『ジャガーノート』はもはや断末魔も上げることさえできなかった。
壁面の砕ける轟音が響き、土煙が立った先には『ジャガーノート』を思い起こさせる遺物は何も残されていなかった。
その事実を噛み締める私とベルが顔を見合わせた時にはもう我慢ができなかった。
互いに飛びつくように抱きしめ合う私達に言葉はもういらなかった。
助け合い共に戦い守り抜いた互いの温もりを感じあうだけで私達は心を通わせられる。
そして悪夢からようやく脱却し、未来を掴み取った私はベルの温もりに再び包まれたら感情が抑えれなかった。
喜びとも安心とも表しようがないこみ上げる感情。
それは私の許容量を遥かに超え、涙になって溢れ出していた。
「…っっ。ベルゥ…よかったっ…!本当によかったぁ!
「…ええ。そうです。リューさんは
「ベルゥ…!!」
抑えが効かず涙をポロポロと流しながら鼻声で言葉を紡ぐ私。
そんな私をベルは背中を優しく撫でながら褒めてくださる。
その抱擁は私にとって何よりも温もりを感じさせてくれるもので。
その言葉は私にとって何よりも心を温かくしてくれた。
悪夢は打ち払った。
夢から覚めれば次に訪れるのは、私達を照らし目覚めへと導いてくれる朝日の光であって。
その光が
「ベル様ぁ!!」
「リュー!」
この耳に届く友人達の声。
その声に私とベルは顔を見合わせて呟いた。
「「私達は生きて帰れる」」
正義を心に宿すリューさんは誰よりも強い。(精神論)
よって【厄災】さんはあっさりとリュー×ベルの前に粉砕されました。
この原作改変から作者が何を考えているか分かる…かもしれませんね。
これで原作改変部分は終了なので今後は少し気楽に進められそうです。
まぁ取り敢えず乗り越えなきゃいけない事項は多々ありますが…(それに関してポンコツ夫婦は現状気付けてない模様。)