Re:Demonslayer 両断から始まる鬼食い転生記 作:砂漠谷
《一日目》
六道輪廻、という言葉がある。仏教用語だ。俺は学がないので詳しくは知らないが、六つの世界を生死を通してぐるぐる回る、という意味らしい。
鬼とは言え、元人間の身体を食ったのだ。流石に極楽浄土には行けないだろうと思ったが、どうやら俺はその、輪廻転生という奴をしたらしい。それも、同じ時代の同じ人間に。つまりは、過去の自分に。
鬼、それは鬼舞辻無惨の血液によって人間から変化させられた怪物であり、人を主食とする存在だ。日輪刀で頸を断つか、日光に当てて燃やすかしか対処法が存在しない。
そして俺は強靭な顎と消化器、特異体質によって鬼を喰いその力を我が物とすることができる。完全な鬼化は食った直後、一時的にしかできないが、完全な鬼化状態でなくとも死ににくくなったり、今まで食った鬼の血鬼術を出力は落ちるが振るえたりする。血鬼術に関しては経験が少ないので推測と勘だが。
俺は不死川玄弥、鬼滅隊の隊士だ。だった、というべきか。それとも、なる予定だ、というべきか。
上弦の壱の血鬼術で身体を両断された後、上弦の肆から食らった血鬼術で上弦の壱を妨害した後は意識が混濁していてよく覚えていないが、兄に看取られた記憶はあるのできっと倒せたのだろう。
そうだ、俺は兄に看取られたのだ。あの迷惑ばかり掛けてしまった兄に。守ってくれた兄に。強く、優しい兄に。クソッタレな人生だったが、あの兄に看取られたことは数少ない素晴らしい出来事だった。
輪廻転生、と言っても生まれたばかりの赤ん坊に転生したわけじゃない。今、俺がいるのは藤襲山の中腹から少し上ったところ、の木の上だ。どうやら俺は眠っており、目が覚めた頭に未来からやってきた俺の人格と記憶が流れ込んできたようだ。今も少し頭痛がする。
記憶を、「この世界線の俺の記憶」を辿ってみる。どうやらこの世界も、前の世界と大した違いのない歴史をたどっているようだ。つまり、鬼舞辻無惨が生まれ、鬼のせいで多くの人が死に、そして、俺の母親が無惨に鬼にさせられて兄・実弥に討伐された世界である。家族との会話の内容など、小さい部分は異なっているが、そこは残酷なまでに同じだ。
俺の記憶がもっと早く戻っていれば。強くなって家族を守れたかもしれない。母が人食い鬼になんかならなかったかもしれない。兄貴が鬼になった母を手に掛けずに済んだかもしれない。
違う世界線の俺の記憶だが、それも俺の記憶であることに変わりはない。無限城にいたあの時の俺と、最終選抜試験を受けている俺とが一つになっているのだ。
「もしも」それを夢想せずにはいられない。
何故今なんだ。天を呪わずにはいられない。
だが、それは過去だ。無限城にいた俺にとっても、最終選抜試験を受けている俺にとっても過去なんだ。
だけど今からは変えられる。より少ない人死にで鬼を狩るのだ。無惨を殺すのだ。胡蝶さんも、煉獄さんも、隊士の仲間も死なせない。俺がもっと強くなれば、多くの人食い鬼を殺せばその分助かる人が、命を落とさずに済む仲間が増えるのだ。
柱を目指して焦り、他者との軋轢を増やすような無駄なことはしない。効率よく、多くの人の命を助ける。そのためには仲間との協力が必要だから。全員は不可能かもしれない。だが、できるだけ多くの人の命を守り、できるだけ悲劇を減らす。そのために。
頭を冷やし、今現在のことについて考える。今は最終選抜試験の一日目の夕方だ。鬼は日中には姿を表さないため、太陽が照っている中に睡眠を取った。その時に俺の未来の記憶が甦ったわけだ。
兎にも角にも鬼を食わなければならない。鬼を食えば一時的にしろ半不死になれるし、恒久的にも死ににくくなる。何より身体能力や体の丈夫さも向上する。呼吸による身体強化を使えない俺が鬼と戦うには必須だ。
まあ最初の一匹はその鬼食いによる強化無しで鬼を狩らなければいけない訳だが。
自分を囮にして罠にでもかけるとしよう。多少の危険は伴うが、手鬼は既に炭治郎が倒した筈だし、おそらく大丈夫だろう…
念のため逃走経路を幾つか見積もっておくことにした。
罠は昔ながらの竹槍落とし穴だ。深く掘った穴に竹槍を刺し、穴に枝と土で蓋をする。いくつか罠を作っているうちに日が沈んでしまった。夜は鬼の時間だ。だが、俺は自らを囮にしている。警戒しながら、警戒していないような挙動をしなければいけない。武装も解除している。ここで不意打ちを食らったらおしまいだ。
そうこうしていると、鬼がやってきた。どうやら釣れたようだ。
「ウィヒヒ、トロそうなガキがいるじゃない。良い狩場は手鬼の奴に取られちまって…飢えて死んでしまうところだったが、私にもツキが回ってきたようだ。ティヒヒ」
どうやら、こちらが気付いていることに気づいていないようだ。
女の鬼か… 正直食うのは気が引けるが、手段を選んではいられない。何よりこいつも数人とは言え人を殺して喰っている。同情の余地はない。
「いぃただぁきまァアッ!?」
鬼が罠に落ちた。藤襲山にいるのは手鬼を除けば下級の鬼だ、再生速度も大したことはないだろう。落とし穴の中に腕を入れ、日輪刀で四肢を削いでおく。
「おまぇえ…ハメやがったなぁ!?」
「ハメたが。食った後は殺すから、今までの人生、いや鬼生でも振り返ってろ」
「食う!?お前鬼食いか?気違いが…」
「それを言える鬼は禰豆子だけだろう。ごちゃごちゃ喚くな」
喉笛を切り付けて黙らせる。鬼の体を切り刻み、再生した片端から、くう、食う、喰う。決して美味くはないが、奇妙な、喉にへばりつく触感だ。
[
[能力名【臓器欠損耐性】のラーニング完了]
[能力名【断頸脆弱】のラーニング完了]
[能力名【陽光ダメージ致命】のラーニング完了]
・・・・・・は?
《二日目》
再生しなくなった鬼を喰い終わり、日輪刀で首を斬ると、もう夜が明けて朝日が射していた。
昨日起こった謎の現象を振り返ってみる。
まず、喰った能力の名前が脳裏に響いた。ここからまず意味不明だ。
そして、能力はオンオフが可能なようだ。能力については【治癒加速】で実験した。【陽光ダメージ致命】で実験しようとも思ったが、流石に危険そうなのでやめた。
俺の体質…というより、「この世界」そのものが、もしくはそれに対する俺の認識が変わっているようだ。
一時的な鬼化は変わっていないようだ。らぁにんぐ――――――後で知ったが、習得という意味の英語らしい――――――した能力が一時的に強化されていた。
鬼化が終わってもある程度の能力は保持したままのようだ。これも変わっていない。鬼化状態が終了しても、再生速度は遅いが、一応は目に見える速度で再生していっている。
鬼化状態で【陽光ダメージ致命】を切って日光に当たるとどうなるのかと思い、指を日光に当ててみたが普通に燃えた。しかし、普通の鬼より燃える速度は遅い、気がした。あくまで気だ。
つまり、前の世界では鬼食いによって何となく強化されていたが、それが「アビリティ」という形で明確化されたのだ。それに一時的な鬼化による強化も乗る。
これは、すごい。明確な能力がわかるということは、自分の手札を確実に把握できるということだ、アビリティだけが手札であるという誤った考えに陥らないようにはすべきだが、そうした勘違いを仮にしたとしても、戦闘を有利にすすめることができるだろう。
とりあえず、当然のものとして【断頸脆弱】と【陽光ダメージ致命】はオフにしておく。はたして鬼化していない状態で【断頸脆弱】をオフにして意味があるのかは疑問だが…
実験を一通り終えて、日もかなり高くなってきた。俺は最初の鬼を喰らってそれなりに強くなっているだろうし、手鬼以外の鬼なら喰い漁ってもいいところだろう。他の隊士候補生の命も助けられる。
と思っていたが、日中なのもあり、中々鬼が見つからない。木の洞や土の中に隠れているのだとは思うが… 鼻の利く炭治郎と合流した方が良さそうだ。口が堅い炭治郎なら鬼食いも黙っていてくれるだろう。隊律違反で鬼殺隊を辞めさせられると色々と支障をきたす。
炭治郎を探しているうちに夜になってしまった。昨日のように警戒していないフリをしつつ鬼を誘ってみる。
しばらくすると、鬼が釣れた。
「おい、あのガキトロそうだぞ」
「仲良く二人で別けようじぇ~あにきぃ」
「てめぇの兄貴は俺が食ったつったろ、いい加減現実を直視しやがれ!」
そこにいたのは、異様に腕だけがでかく、足が小さい鬼と、そいつを
まずは走って相手の視界から外れる。その後、迂回して相手の後ろから忍び寄る。
「あのガキ!気付いて逃げやがった!どこ行きやがった、追うぞ!」
「えぇ~あにき背負って走るのつかれるからやだぁ」
「馬鹿が、今晩の飯を逃したいのかッ」
忍び寄り、足鬼の小さい右腕を切り落とす。そして右腕を持ち去って逃げる!
足鬼の小さい腕で支えられていた腕鬼は、ぐらぐらとバランスを崩した。
「うお、うわ、ぐぅうッ!こうなりゃ!おら口開けろ!」
「やだぁ、それだけはングッ」
隠れて切り落とした足鬼の腕を喰らい、肉体を強化した後に隠していた日輪刀を拾って鬼に相対する。
[能力名【怪力】のラーニング完了]
「ぎひひ、やっと目の前に表れたなクソガキ、喰い殺してやる。」
「・・・・・・」
腕鬼は、細長い、まるで足のない百足のような尾を足鬼の口に突っ込んでいた。そして足鬼は、それに抵抗するそぶりも見せずに白目を剥いている。気絶しているようだが、足は動いているし、再生した腕は腕鬼を支えている。
「邪悪だな。兄弟の兄を食い殺し、弟が鬼になっているとはいえ、その兄になりすますとは。強さはともかく下衆さは鬼の中でも上位に入るだろう」
「はぁあ?なりすましたんじゃねぇよ、勝手にこいつが勘違いしているだけだぜ。それに、強さはともかくぅ?とかほざきやがったな?それはこの足野郎が文字通り足を引っ張っていた時の話だろ?今の俺は一味違うぜ。おめぇに今みせてやらぁ」
「・・・・・・」
鬼が拳を振りかぶり、殴りかかってくる。
早い。肩車とは思えないほど予備動作が短い。鬼化状態でなければ避けられなかったかもしれない。
肩車の状態で、二人分の体格と巨大な四肢を持っており、まるで体長四メートルの一人の巨人のようだ。一般人であれば一瞬で挽肉だろう。
しかし、今の俺の身体能力は常人の比ではない。
避け続け、隙を見せるのを待つ。巨大な四肢を持つ巨体の鬼だ。攻撃範囲がかなり広く、避け切れない時もあるが、多少の掠り傷は鬼化状態で強化された【治癒加速】で誤魔化す。
「見えたッ」
相手が隙を見せたその瞬間に、足鬼の口に突っ込まれた腕鬼の尾を断ち切る。
「うわッ、ぐうぅわッッ!」
「う~む、ごもごも…むぐ?」
腕鬼の尾を斬り落としたところで、バランスが崩れ、気絶した足鬼が腕鬼を支えることもなく、腕鬼は足鬼の肩から落っこちた。
およそ一メートル半上から、頭からの落下。鬼の身では首も折れないだろうが、それでもその衝撃は腕鬼をふらつかせるに十分だった。
そこに、鬼化し【怪力】もラーニングした俺が蹴撃をかまし、首を両手で引き千切る。
「グギャガガァ、足ィ、助けろぉ!お兄ちゃんが死にそうだぞぉ!」
しかし、それを聞いた混乱状態の足鬼は、頭の無くなった腕鬼の体を蹴っていた。
「よくぼ、よくぼおにいぢゃんを!!!おもいだしたぞ!!!おまえはおにいちゃんじゃない!!!」
腕鬼の首を体がいる方向とは反対方向に放り投げ、蹴り続けている足鬼に相対する。
「同情はするが、お前ももう鬼だ。黙って食われてくれ」
自分に注意を向けていない足鬼に、不意を突いて捩じ切り、引っこ抜く。
「う、ぐぅううぅ」
足鬼の体から首を遠ざけて、足鬼と腕鬼の体を切り刻み、再生を妨害する。その後足鬼と腕鬼を地面に埋めてから鬼食いに入る。鬼食いは安全を確保した後にしなければ。
[能力名【巨大腕】のラーニング完了]
[能力名【巨大脚】のラーニング完了]
[能力名【肉体操作権奪取】のラーニング完了]
二匹の頭を掘り起こし、それも食らう。鬼共は体から伝わってくる激痛で、息も絶え絶えのようだ。
[能力名【悪鬼の尽きぬ体力】のラーニング完了]
・・・疲れた。
文才がない。時制に自信がない。
改稿 欠損耐性→臓器欠損耐性
疲労耐性→悪鬼の尽きぬ体力