Re:Demonslayer 両断から始まる鬼食い転生記   作:砂漠谷

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《七日目》

《七日目》

 

 山を下りる。鬼殺隊最終選抜試験会場である、この藤襲山を下りる。つまり、最終選抜試験もようやく終了であるということだ。ようやく終わるという思いと共に、まだ足りないという気持ちもある。足りないというのはつまり、鬼喰いが足りないということだ。

 

 最後の一回、あの鬼樹に腹を刺された時を除き、大した負傷も無く鬼を喰らえた。ローリスクでハイリターン。楽にアビリティを強化できた七日間だった。記憶が目覚めたのは一日目の夜なので六日間と言った方が正確かもしれないが、とにかくそういった期間だったということだ。数人しか人を喰っていない脆弱な鬼、しかし無惨から一応血を分け与えられてはいるのでそこそこのアビリティ強化源にはなるという食料が大量にいたあの山はボーナスステージのようなものだったのだろう。

 

 しかし、今からはまともに人を喰っているーーーーーー人喰いがまともな行為という意味ではないーーーーーー鬼と戦わねばならない。鬼は基本的に人を喰うほど強くなるため、藤襲山の鬼のように「飼われ」ていない野生の鬼との戦いはそんなに易しいものではないだろう。鬼と遭遇する回数は減るだろうが鬼の質は飛躍的に上がる。

 

 まあ、だからというわけではないが、今まで以上に集中しなければいけない、ということだ。

 そんなことを考えながら鬼樹の枝葉を食べている、というかスルメのようにしゃぶっている。

 

 いやそれにしてもこれ美味いな・・・・・・程良い歯応えの木の繊維と肉のうま味が絡み合っている。鬼の肉というのはアクが強すぎて美味いとはとてもではないが言えないのだが、鬼樹の枝の味はだいぶさっぱりした風味だ。霊樹と合一して肉の部分も変化したことが反映されたのだろう。葉の部分は肉の味が染みているが食感はパリパリしており、スナックのようだ。

 

[アビリティ【肉木融合】のラーニング完了]

 

 このアビリティを使うと、適当な普通の木の枝に指を絡めると枝と指の肉がベタっと張り付いて一つになった。【枝葉操作】を併用すると普通に指を動かすこともできた。アビリティを再度そこに使用すると、指の肉との張り付きは無くなったが枝の形は元に戻らなかった。

 

 あ、そういえば。

 

「おーい、炭治郎」

 

「な、ん!?顔に、木がくっついた!?敵の攻撃か?」

 

「いやすまん、俺のいたずらだ。今外すから」

 

 振り向いた炭治郎の顔面に枝を乗せてアビリティを使用したのだ。これで同意の無い他者にも【肉木融合】のスキルが使用できることが明らかになった。おそらく人間以外の生物にも使用可能だろう。色々な応用が頭の中を巡るが取り敢えず炭治郎の顔から木の枝を外す。

 

「最初に聞いた時は半信半疑だったし、肉体の変化や怪我の癒える早さは呼吸で再現できそうだからそこまで異常だとは思わなかったけど、こうして肌でその能力を実感するとやっぱり人には真似できない異能だと思う。ああ、もちろん悪い意味はないけれど」

 

「悪い意味を込めずにいてくれてありがたいもんだが、鬼のような再生速度や骨格レベルの肉体変化はさすがに全集中の呼吸じゃ再現できないと思うぞ。くっつくのは糊と変わらないし、異能というほどじゃない」

 

 もちろん剥がれにくさは糊の比ではないが。文字通り一体化しているのだ。剥がすとすると肉の部分ごと剥がれ、それはそれは酷いことになるだろう。

 

 そんなことを話している内に。

 

「お、広場が見えてきた」

 

 山の麓、集合場所の目印である広場だ。そこにはもう何人か集まっていた。8人ほどに見える、前の世界よりは生き残ったようだ。

 目立つのは黄髪の何かぶつぶつ呟いている少年である。そう、みなさんご存じ我妻善逸くんだ。いや、みなさんとは言ってもこの時、顔は知ってるが名前は知らない、という程度の仲なのだが。

 

「おい、善逸」

 

 呼びかけてみる。

 

「え、俺!?何か身長六尺半はありそうな顔付きが凶悪な大男かっこ極太丸太持ちかっことじるに話しかけられてるんだけど!しかも下の名前で!教えた覚えないのに!ヤバいよこいつなんなんだよ明らかにヤバいのに目を付けられちゃったよ!」

 

「どうもかっこ極太丸太持ちかっことじるだ。よろしくな」

 

「ノリは良さそう!」

 

 前は「巨大脚」のアビリティを使っても六尺(182cmほど)の身長しか無かったのだが、ずっと使い続けてる内に伸びたようだ。このまま伸び続けて天を突く巨人になっても困るので、六尺半程で留められるようにコントロールを習得したいものだ。

 

「極太丸太持ちこと不死川玄弥だ、みんな、よろしく」

 

 他の隊士候補にも向けて自己紹介したが、疲労して声も出せなかったり、憔悴した表情で反応がなかったり。つまり大した返事は無かった。

 極太丸太ネタも通用しなかったので、鬼樹の丸太を地面に下ろす。

 

「これで全員のようですね。皆様、お疲れさまでした。これで鬼殺隊最終選抜試験は終了です。あなたたちは正式に隊士となりました」

 

 黒髪おかっぱの少女、否、女の装いをした少年・産屋敷輝利哉が感情のない笑みでそう言った。

 少年の隣にいた、全く同じ格好の白髪の少女が続けて言う。産屋敷輝利哉の娘の四人は区別がつかないので誰かはわからない。

 

「正式な隊士として必要なものは、階級の入れ墨、鎹鴉、隊服、そして個人の日輪刀です」

「すべてこちらで用意いたします。ただし隊服は採寸、そして日輪刀は鋼を個人で選んでもらう必要があります」

「入れ墨は特殊な彫りをしており、通常は目に見えません。拳を握りしめ、筋肉を膨張させながら「階級を示せ」と言うと今の自分の階級が浮き出ます。つまり、階級が上がると自動で入れ墨も変化します。階級は癸から甲の十干で表されます」

「鎹鴉は連絡用の鴉です。知能が高く、人の言葉を覚え、話します。あなた方の相棒でもあります」

「隊服は戦闘服も兼ねています。耐刃耐火防水通気性に優れていますが、上級の鬼はそれを難なく貫きます。決して過信なさらぬように」

「日輪刀は色変わりの刀の異名を持ち、最初に鞘から抜いて握った人に合わせて色と性質が変わります。色は呼吸の適正に合わせて変わると言われます。どの呼吸がどの色になるかはご自分の育手にお聞きください」

 

 少年と少女が質問を挟む間もなく交互にそう言った。言い切った。

 だが、俺と炭治郎以外の人間は耳を少しも傾けていなさそうだった。善逸は俺を無駄に怖がってぶつぶつ言ってるし、カナヲーーー蝶の髪留めをした生存者唯一の女子ーーーは事前に聞いてた風で全く気にも留めていない。残りの四人、前の世界では死亡していた奴らは前述の通り耳に入っていない。

 

 流石にそれはマズいだろう、ということで。精神的・肉体的に疲労して座り込んでいたり地面に突っ伏してたりしている四人を一つの場所に引きずって運ぶ。

 

「お、おい、何すんだよ・・・・・・」

 

 口では抵抗しても体は大して抵抗しない。やはり疲れているのだろう。

 

「ふう、良し。復唱!」

 

「な、何のことだよ」

 

 四人の内の一人、長髪を後ろに纏めている男が尋ねる。他の三人は口を閉ざしたままだ。

 

「今産屋敷家の方が仰った隊士に必要なものについてだ!この知識の有無で命に関わるかもしれないんだぞ。きちんと聞け!まずお前!階級の入れ墨とは何だ!」

 

 尋ねてきた長髪の男を指さす。

 

「か、階級の入れ墨とは、階級を十干で表す入れ墨で、相言葉と握り拳で浮き上がる」

 

「良し!次、鎹鴉とは!」

 

 右顎に傷のある丸刈りの男の方を向く。

 

「鎹鴉とは、えっと・・・・・・」

 

「鎹鴉とは、連絡用の鴉であり、人間の言葉を話す、我々の相棒である!復唱!」

 

「鎹鴉は、連絡用の鴉で人語を話す、俺たちの相棒・・・・・・」

 

「良し、次!隊服とは!」

 

 縮れ毛の背の高い(今の俺よりは低いが六尺、180cmほどある)男に聞く。

 

「色々性能の高い戦闘服?」

 

「まあ良し、次、日輪刀とは」

 

 最後に肌が浅黒く彫りの深い、印度人風の男に聞く。

 

「コ、コレのこと」

 

 印度人風の男が腰に差している刀を指さす。

 

「良し、まあいいだろう」

 

 流石にやりすぎたか、とは思ったが、これはちゃんと覚えないといけない事項だろう。彼らのためだ。

 そして、こういった形で教師役をすることで主導権も握れた。四人が疲労で異議や疑問を呈し辛かったこともそれに一役買っているだろう。

 

「玄弥、流石にやりすぎじゃないか?後で育手の人に訊ねればわかることだろう」

 

「いや、情報共有ができていないかもしれないし、そもそもこいつらに必要なことを訊ねる頭があるかも怪しい。ここで頭にたたき込んでおいた方がいいだろう」

 

 主導権を握ること、つまりマウントを取ることが主目的だったなんて、炭治郎に言ったら叱られるだろう。

 

 主導権を取るのに必死になって、産屋敷家の二人を待たせてしまった。鴉を顔合わせをし、鋼を選ばねばならない。採寸は「巨大脚」と「巨大腕」があるのでコントロールができるまで待ってもらうことにする。

 

「失礼しました。聞いてない奴らに言い聞かせるためですので、どうかお目こぼし下さい」

 

「お話は終わったようですね。それでは、まず鎹鴉を配布いたします」

 

 肩に鴉が乗る。"ヨロシクナ、ヨロシクナ"と喚いている。羽根を一本抜いて食ってみるがアビリティは得られない。黄色い髪の誰かさんがスズメだのなんだのと五月蠅い。睨みつけると声が小さくなった。

 

「次に、日輪刀の鋼を選んで頂きます」

 

「あの、余った鋼は貰ってもいいですかね?」

 

 食べたら何らかのアビリティが手に入るかもしれない。無機物から手に入るかはまだ明確ではないが、試してみる価値はある。

 

「余ったものは次の最終選抜試験のために使うのですが・・・・・・そうですね、一つならば良いでしょう」

 

 やったぜ。

 

 そしてここが要の刀選びだが、呼吸が使えずアビリティを駆使して今後も戦うだろう俺に日輪刀は大して重要ではない。せいぜいが止め用だ。なので適当に選ぶ。本気で選ぶならば五感の優れた炭治郎と善逸、そしてカナヲに頼んで選んで貰うのだが。まあその場合、カナヲは頼みを受けてくれるかわからないのだが。善逸?適当に脅せば問題はないだろう。

 

 その後、小さい方の鬼樹を何かに役立ててくれ、と産屋敷輝利哉に渡した。俺(と炭治郎)では活用できないと判断したのだ。殺して食べるより有効な使い道を鬼殺隊研究部は見出してくれるだろう。

 残りの四人に名前を聞いた。長髪は永井妙次郎、顎傷の丸刈りは濁沼同胞丸、縮れ毛の長身は尾頭震司、印度風の男はシャラク・アートマナンダと言うのだという。シャラクは、生まれはインドだがその後すぐに日本に来てそこで育ったので、インドのことはほとんど知らないしインドの言葉も話せない、ということらしい。

 鎹鴉に顔合わせをさせて連絡が取れるようにしておく。

 善逸を含めた五人に、"全集中の呼吸・常中を鍛えろ。詳しくは育手に聞け"と言い含めて俺は悲鳴嶋さんのところに、炭治郎は鱗滝さんのところに帰ることにした。炭治郎に持ってもらっていた鬼樹の切り株も貰う。

 

 帰り道に鬼樹の丸太の木材部分の栄養を【養分吸収】で吸い取りつつ、【枝葉操作】で形状を操作し(枝葉を操作するためのアビリティで幹の部分を操作したのがいけなかったのか、非常に操作しにくかった)、普通の樹木における心材の位置にある肉の部分をひねり出して啜り喰った。味は渋くてあまり旨くはなかった。

 

 

[能力名【融合(フュージョン)】のラーニング完了]

[能力名【霊樹の旧世界智】のラーニング完了]

[能力名【一代進化(ワンジェネレーションエヴォルヴ)】のラーニング完了]

 

 歩きながら【巨大腕】のコントロール訓練も行う。鬼樹の丸太は搾り滓になったので道端に捨てた。切り株は夜弁として食べた。

 

[能力名【根幹操作】のラーニング完了]

 




だんだん投稿の感覚がわかってきた
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