Re:Demonslayer 両断から始まる鬼食い転生記   作:砂漠谷

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説明会です
史実の人間が出ます(性格捏造)


《十八日目》

《十八日目》

 

 今日はちゅうごうさいばんの日、楽しみだなぁ。

 

 ・・・・・・現実逃避をしても仕方がない。俺は隠に背負ってもらって産屋敷邸まで行く。基螺もついて行くと行っていたが、無惨に産屋敷邸の場所がバレる可能性があるということらしいので、藤の家紋の家に置いておく。

 

 産屋敷邸に着いた時には、俺の師(正確には今世ではまだ正式な弟子ではない)、岩柱・悲鳴嶼行冥と恋柱・甘露寺蜜璃、そして蟲柱・胡蝶しのぶの三名が来ていた。

 

「南無阿弥陀仏・・・・・・玄弥よ、柱でもないのにまた産屋敷邸に着ているとは。何かやらかした訳ではあるまい」

「あなたが不死川さんの弟さん?初めまして、私は甘露寺蜜璃、恋柱をやらせてもらっているわ。その髪型、凄く素敵ね、私も真似しようかしら?」

「甘露寺さん、それは流石に冗談・・・・・・ですよね?」

「冗談よ、しのぶちゃん!」

 

 恋柱と岩柱に話しかけられる。特に恋柱は中々濃い。肌の露出も含め、前世でも今世でも少し苦手な人だ。そして俺の髪型を真似した甘露寺さんを想像してしまい、笑うのを堪える。

 

「っ・・・・・・、悲鳴嶼さん、俺は真面目に鬼殺を遂行してましたが、ちょっと特殊な事情がありまして。そして初めまして・・・・・・甘露寺さん」

「ふふ、初めましてではないみたいな反応ね。普通の人は私の髪色を見て驚くのに・・・・・・可愛い!」

 

 初めましてではないといわれて少しギクリ、とする。前世で俺はこの人と既に会っているからだ。しかし彼女は別世界線の人間であり俺のことも当然覚えていない筈だ。しかし、普通の人は髪の色よりもその露出度に驚くのではないだろうか・・・・・・まあ言及もしにくいのだろう。

 そんなこんなで自己紹介やら事情の説明やらで時間を喰っていると、他の柱もやって来た。

 

 炎柱、煉獄杏寿郎。生きている煉獄さんに会うのはこれが初めてだろうか。煉獄さんについては、炭治郎から間接的にしか聞いていないが、素晴らしい人物ということだけが炭治郎からは伝わってきた。

 水柱、富岡義勇。炭治郎を鬼殺隊に連れてきた張本人であり、禰豆子の為に腹を切るとまで言った男だ。

 霞柱、時透無一郎。無限城で俺と一緒に戦った少年だ。時透さんは無限城で上弦の壱に殺され死んだ。何度も言うが彼とこの少年は同一人物だが別人でもある。だがそれでも命を懸けて共闘した相手ともう一度会えたのは嬉しい。嬉しさを、流す涙をバレないように堪える。

 そして蛇柱、音柱、ここらへんは正直ぴんと来ない。前世でも生死が不明な人物だ。陰湿と派手という印象だ。

 最後は俺の兄貴、風柱、不死川実弥だ・・・・・・が、待っていても一行に来ない。

 

「あれ?不死川さん、どうしたのかしら・・・・・・もしかして弟さんに恥ずかしくて会えないとか?」

 恋柱が言う。いや、あの兄貴はそんなタマじゃな・・・・・・

「あ、見えたわよ、不死川さん!おーい!」

 

 振り返ると、そこには走ってこちらに来ている兄貴がいた。何故か抜刀している。近くに鬼はいない筈だが、修羅の表情で全速力でこちらに・・・・・・いや、俺に近づいてくる。

 

[不死川実弥は戦技【初烈風斬り】を繰り出した]

 

 あ、これマズい奴だ。と思った瞬間には俺はすれ違いざまに足首を切断されていた。

 

「あ、ッグアァ」

 【治癒加速】と【再生加速】の重ね掛けで咄嗟の止血は出来た、が鬼化していないのでまだ再生は出来ない。

「兄貴ィ、何をォ・・・・・・」

「俺に弟なんていねェんだよォ。聞いたぞ、鬼喰いをやったってなァ。鬼喰いなんて俺の家族にも鬼殺隊にもいねェし要らねェ。今カタワ(・・・)にしたんだからさっさと鬼殺隊引退して隠居でもしてろォ!」

「兄貴、俺は鬼を倒そうとして必死で・・・・・・」

 と思って言ったが言葉に詰まる。確かに一度死んで転生した今、自分や他者の命への執着が薄くなっている気がする。二度目があるなら三度目もあるだろう、と思っている訳ではないが、一度目の人生よりも必死さが足りていないのは確かだ。

「必死で、何だ、あァ!?」

「いきなり兄弟喧嘩とは、派手派手だな!だが・・・・・・お館様の前だ、地味に平伏してろ」

 俺は音柱に、兄貴は岩柱に鎮圧された。兄貴は大した抵抗もせずに黙って組み伏せられたようだ。俺の足を斬って目的は果たしたということか。

「玄弥、足が・・・・・・すぐに縫合を!」

 岩柱は俺の身を案じ、隠に呼びかける。

「だ、大丈夫です、多分・・・・・・宇髄さん、少し離して下さい」

「おゥ」

 首は掴まれたままだが力を緩められた。俺は斬られた足を拾い、傷口に強く押しつける。【治癒加速】と【再生加速】を出力最大にし、なんとか足首を繋げることが出来た。傷は少し残るが、それもいずれ消えるだろう。

 兄貴がその光景を目を見開いて凝視する。

「お前ェ、それってもう殆ど鬼じゃねェかァ。これ以上鬼喰いするなら・・・・・・マジで殺すぞォ」

「やめるんだ、実弥」

 その時、屋敷の奥から制止の声がした。産屋敷耀哉、お館様だ。

「鬼喰いに関しては私が許可を出している。鬼喰いが隊律違反なのは、鬼の血肉を耐性を持たない人間が摂取することへの危惧が理由だ。だから、耐性を持っていると思われる君の弟に特例として鬼喰いの許可を出すことは吝かではない。今までにも鬼喰いの隊士は鬼殺隊の歴史上何人かいたことだしね」

「しかし、お館様・・・・・・」

「他の柱からは賛同を得ているよ。実弥、どうか納得してくれないかい?」

 炎柱と水柱が口を挟む。

「うむ!お館様の仰る通りだ!鬼を喰って鬼を殺せるなら正に一石二鳥!確かに鬼の血肉を体内に入れるというのは理解し難いが、より多くの人の命を助けられるというのなら、是非も無い!」

「・・・・・・俺も賛成だ」

「煉獄ッ・・・・・・分かりました。お館様の仰る通り、殺しはしません。ですが、玄弥隊士の除籍処分についてはこれからも嘆願させて頂きます」

 助かった・・・・・・せっかく生まれ変わった命を今度は兄貴に奪われちゃたまらない。俺が真っ当なままならそんなことはしないと信じているが、俺が鬼喰いで鬼も同然になったと判断したら頸を斬りに来るという信頼もしている。

「うん、玄弥隊士の件については一段落ついたようだね。で、今日の本題はそれではないんだ。『鬼ではなく人が人を喰ったらどうするか』今までは机上の空論として放置してきたけれど、この度でそうではなくなった。鴉に聞いているとは思う、この斉藤捻子が人を殺して喰った。鬼が関わっているとはいえ一四の人間をだ。この女性をどう処分するかについて話し合ってもらいたいと思っている」

 というと、隠が縛られた鬼の母親を背負って持ってくる。

 

 その後は侃々諤々の議論だった。主に炎柱、岩柱が警察に引き渡すべきと主張し、音柱、蛇柱が鬼殺隊内で処分すべきだと主張した。蟲柱は意外にも中立の立場というか司会や論点整理を担当していた。兄貴は俺のことについて考えているのか押し黙り、恋柱と水柱は口を挟む隙間が無さそうだった。霞柱は普段の通りボーっとしていた。ちなみに俺は裁判の証人としての発言はしたが柱ではないので議論に入ることは出来なかった。

 

 議論の詳細は省くが、結果として『鬼舞辻の情報を可能な限り抜き取る(人間のため呪いが掛かっていない)』と『鬼殺隊のことについて警察に証言しないと約束させ、その約束が信頼出来る(今回は基螺という人質がいるため信頼出来る)』という二つの条件を満たす者のみ警察に引き渡すことになった。引き渡し論者の部分的勝利と言っていいだろう。良かった。

 

 その後鬼舞辻の情報を斉藤から抜く、という作業に移ったのだが、基螺が人質にいるので躊躇せずほいほい喋ってくれた。

 まず鬼舞辻無惨は老人の男として現れ、亡くなった夫の父親を名乗ったということ。当時夫を亡くして未亡人の妊婦状態だった斉藤は無惨を家に招き入れ、そこで腹に血液を注入されて胎児のみ鬼にされたということだ。胎児は人間の血肉を栄養として与えなければ腹を食いちぎって外に出る、とだけ言い残し姿を消したらしい。

 無惨からしたら日光を克服する鬼を作る為の実験のようなものだったのだろう。妊婦は多くいるだろうになぜ彼女を選んだのかと言うと、恐らく郊外に住んでいることと、彼女の夫が特殊な職業をしていたからだ。(【職業】ではない)

 

 『解術屋』、語弊を恐れずに言うと、“異能”ーーー鬼で言う血鬼術、人間で言う呪術や陰陽術などだーーーを持つ人間の犯罪者や悪人に苦しめられている人々を助ける職業らしい。その血を引く息子(今や鬼の娘だが)を鬼化すれば何か特殊な鬼が作れるかもしれないと無惨は思ったのだろう。

 事実、基螺は特殊な鬼だ。死後発動し、復活する血鬼術など俺は知らない。正確には復活ではなく記憶を持った同一個体の生成のため、死を克服した訳ではないが、それでも・・・・・・だ。

 人間の異能使いなど鬼殺隊である俺たちには関係ないということで、柱や上位の隊士でもないと人間の異能については知らされていない。無駄に下位の隊士が鬼狩りに役に立たない力を身につけても暴走するだけだ、とのことだ。

 前々から思っていたが、鬼殺隊には秘密主義の気がある。お館様の声に蕩かされて忘れかけたが、解術屋のことを聞いて思い出した。昔からの方針らしいが、転生して客観的な視点を少しは身につけられた俺からすると、もう少し情報公開をしても良いのではないかと思う。情報公開をすると無惨のスパイとか入り込んでくるのだろうか。お館様ならそれも見抜けそうな気もするが。

 そう進言すると柱全員から、新人隊士如きが何を・・・・・・という目線で見られた。だが、お館様はこう答えた。

「うん。その通りだよ、玄弥。だから、上位の隊士や柱にはこれから魔術・・・・・・西洋魔術を学んでもらおうと思っている」

「「「!!!」」」

 柱も、そして隠も、当然俺も全員驚く。柱については人間の異能についても知ってはいたのだろうが、それでも自分がそれを体得出来るとなると驚きが勝る。俺はそもそも前世では無かった技術の登場になんと言ったら良いか、困惑している。

「僭越ながら・・・・・・お館様、鬼に呪術の類は効果が薄いとのことでは?」

 岩柱が代表して質問する。

「うん、呪術“は”ね。呪術とはそもそも“生命の支配”に属性として偏っている異能だ。言霊で他者を直接操る。木を支配して間接的に敵を攻撃するなど・・・・・・だけれども、無惨は呪術の玄人だ。見たことがあるだろう?無惨の名前を口にして細胞を破壊され、死んでいった鬼を。あれは血鬼術じゃない。純粋な“呪い”、技術だ。無惨は呪術で今まで生んだすべての鬼を支配している。普段は操作を放棄しているが、条件で自動的に呪術を発動出来るようにしているようだね。既に支配された者を支配することは難しい。およそ千年研鑽を積んだと思われる呪術の怪物に、我々が今から追いつけるとも思えない」

「でしたら・・・・・・陰陽術とか・・・・・・伝奇小説で読むし・・・・・・」

 霞柱がぽつりと呟く。それにお館様が返す。

「体系的な陰陽術は平安の時代に最盛期を迎え、鬼殺隊でも今の呼吸法のような立場にあったようだね。だが陰陽術は学問だったんだよ。無惨に書を焼かれ、本拠地を焼かれてその殆どが失伝してしまった。最近は神祇省で復古の動きがあったんだけれど、無惨が裏から手を回したんだろう、神祇省そのものが廃止されてしまった。単純に学問としての継承がなされていないんだよ」

「お館様の意見もごもっともだが!そういう邪な技術に現を抜かしてしまうと、剣術の研鑽が疎かになるのではないかとの懸念があり!やはり鬼の頸を斬って殺すのには剣術が肝要ではないかと考える!」

 炎柱だ。炎柱は異能の体得に反対の様子。

「・・・・・・」「火薬の何が邪だって?派手でいいだろうが、あ?」

 蟲柱が微妙な表情をし、音柱が文句を言う。

「君たちは特別だろう!やはり一般の隊士にとっては肉体と剣技の鍛錬こそ最優先の課題だ!」

「あのー・・・・・・さっきから話を聞いてて疑問に思ったんですけど、西洋魔術って、一体誰から学ぶんですか?もしかして、お館様?そうだとしたら私、嬉しいです!」

 恋柱が手を挙げて質問する。

「私は簡単な呪術しか扱えないからね。教えるのは別の人にしてもらうことにしたんだ。あまね」

「はい」

 お館様の妻である産屋敷あまねさんが部屋から退出し、しばらくしてある髭の生えた外国人を連れて出て来た。

 何か分からない言葉を喋っている、外国語だろうか。あまねさんが通訳を務めるようだ。

『私はグレゴリー・E・ラスプーチン。ロシアから亡命してこの国に来た。今は産屋敷家に客人として世話になっている』

「彼はラスプーチン。ロシアで怪僧と呼ばれている有名な祈祷師だ。前からロシア皇室に繋がる人脈の一人として知り合ってはいたんだけれど、暗殺されるかもと連絡があってね。日本に亡命してもらっているんだ。やっと魔術講師の伝手が出来たんだ、これを利用しない機会はない」

「か、怪僧・・・・・・」

 驚く恋柱、少し引いているようだ。

「では、西洋魔術を披露してもらおうか。ラスプーチン、頼む」

『ああ。これは少し高等な術式だが、魔術の神秘を体感してもらうためには良いかもしれない。深淵系統第三階梯魔術・・・・・・【不可視の亡霊】』

 その瞬間、ラスプーチンの姿が、まるで元からその場にいなかったかのように掻き消えた。

「え・・・・・・嘘・・・・・・」「これは・・・・・・」「あーなるほどな、クソ親父がやってた奴か」「特に変わった様子は無いが・・・・・・?」

 前者二人は恋柱と蟲柱、後者二人は音柱と岩柱だ。音柱は忍の家系、忍にもこういった技術があるということだろうか。岩柱は反響定位で周囲の状況を把握しているため、視覚的な作用が効かないのだろう。岩柱は何が起こったのか隠に尋ねている。

 

 数十秒して再度姿を表したラスプーチンは言った。

『これで、魔術の神秘が理解出来たかね?』

「うむ!似たような血鬼術の鬼と対峙したことはあるが、これを人間が使うのは鬼殺の効率上昇に繋がるだろう!しかしその程度の術であれば、やはり剣術や呼吸の鍛錬に時間を費やした方が良いと思われるが、いかがだろうか!」

 炎柱が反論する。あまねさんが通訳し、ラスプーチンにそれを伝えた。

『魔術の神秘を理解しないとは・・・・・・ならばこれはどうだ。炎熱系統第一階梯、【炎禍】』

 ラスプーチンは庭に降り、庭の池に向けて渦を巻く球状の炎を放つ。球は人間の頭部大だ。

 炎球は池の水に直撃し、爆発。蒸発と爆発の勢いにより池の水位を大きく減らした。飛び散った池の水は俺たちにも降りかかる。

 庭を破壊したことで柱の雰囲気が剣呑になる。特に兄貴は、宙に彷徨っていた視線を、その衝撃によって唐突に現実に引き戻した。俺が鬼染みた回復力を示した事件についての思考からようやく我に返ったようだ。

「いきなりお館様の庭を穢しやがって・・・・・・何モンだァ、テメェ?」

「あの方はラスプーチン氏と言って・・・・・・話、聞いてました?かくかくしかじかで・・・・・・」

 どうやら話を聞いていなかった兄貴と、それについて説明する蟲柱。その間に、ラスプーチンと柱たちの雰囲気はどんどん危険なものになっていく。

「ああ、お魚さん達が、可哀想」「直すのに・・・・・・時間がかかりそうだね・・・・・・」「なんと・・・・・・愚かな・・・・・・」「グチャグチャと魔術の神秘だのなんだのほざきやがって鬱陶しい。庭だけならともかく、池に鯉が棲んでいるのが見えなかったのか?ぶつぶつ・・・・・・」

 最後は蛇柱だ。生き物の大切さには一家言あるらしい。

『これで魔術の威力について理解したかね?』

「ああ、派手に理解させられたぜ、お前が恩人の庭先をグチャグチャにして顔色一つ変えない奴だってことがな。お館様!こいつを雇うくらいなら俺の親父を雇ってください!俺は異能の才はからきしだったが、クソ親父ならこいつ程じゃねぇが似たような術は使えたし教えられた!」

「しかし、天元。君は殺人集団が鬼殺隊に入るのは鬼殺の本分に反すると以前・・・・・・」

「こんな得体の知れない奴を師として仰ぐくらいならどんな屑でも身内の方がマシです!もちろん、修行と称した虐待は音柱の名に掛けて行わせません」

『何・・・・・・?我が秘儀を極東の島国の人間如きが真似できると・・・・・・?ああこれは通訳しないでくれ』

 あまねさんも不快感を隠せない目線でラスプーチンの方を見る。通訳にも心なしか悪意があるようだ。

「では、こうしようか。まずラスプーチン、彼は祈祷師として有名でね、むしろそちらの方が本分だと言っても良い。医学の知識もある。教師ではなく、蝶屋敷で蟲柱の部下として働いてもらおう。しのぶ、良いかい?」

「御意」

『な・・・・・・人の下に付くとは私は聞いていないぞ・・・・・・産屋敷!どういうことだ!』

「ラスプーチン。君は何か勘違いをしているようだけれどね。彼ら柱は、君のような政治的嗅覚や特殊な異能は持っていないけれど、人型の生命体の頸を斬る、という一点に関して言えば、世界でも有数の人間の九人だ。皆、私の誇らしい子供達だよ。そうだね・・・・・・たとえば彼、炎柱・煉獄杏寿郎に関して言えば、彼の奥義は、君達の尺度で言えば“第五”に相当する。君の上司として相応しいだろう?」

『だ、第五だと・・・・・・?そんな馬鹿な、迷宮にも潜ったこともない人間が・・・・・・だから通訳するなと言っているだろうが!』

 あまねの迫真の通訳に、柱からの失笑が漏れる。ラスプーチンは恥辱で顔を赤くした。白人なのでより一層顔の赤みが目立つ。

「それと、音柱の父親も教師として雇用する。異能を含む忍者の技能については、炎柱の意見も取り入れ、隠のみに教育することとする。危険な修行などは、これを行わせない。二人とも、いいね?」

「「御意(!)」」

「ではラスプーチン。もう下がって良いよ。では柱合裁判は終了、解散だ。皆、忙しいところすまなかった」

『ムゥ・・・・・・わかった』

 ラスプーチンが屋敷の奥に下がる。

 待て俺。柱が集合していて、俺がその場所にいるのは今この時だけだ。このままでいいのか?俺はこの大切な機会を逃してもいいのか?産屋敷耀哉が信頼出来ないとか、未来の情報を漏らすのは危険だとか、そういう俺の小賢しい考えでこの機会を逃しても良いのか?

 駄目だろう。今はここに柱と一部の隠そしてお館様一家しかいないから情報の秘匿は問題無い。お館様はあの残酷な最終選抜を主宰しているから信頼出来ないとは言ったが、それは人道面の配慮の話であって鬼殺に関しては信用出来る。ここでぶっちゃけるしかないだろう。

「待ってください!」

「だから地味に平伏してろって言ったろう、鬼喰いの隊士。お前に発言は許可されてねぇ」

「俺は・・・・・・未来から来ました!」

「は?兄貴に嫌われてついに頭がおかしくなったか?それとも鬼の喰い過ぎか?」

「待ちなさい、天元・・・・・・これを聞き逃すと不味いという予感が強くする。玄弥、言ってみなさい。他の柱も皆聞きなさい」

 お館様に発言を許可されたので、前世での鬼が関わる主な事件について時系列順に列挙していく。呼吸の痣については省く。柱の皆の寿命を減らしてほしくないからだ。

「浅草で無惨が炭治郎に・・・・・・その後珠世という特殊な鬼が・・・・・・」

「那田蜘蛛山で下弦の伍が・・・・・・」

「無限列車で下弦の壱が・・・・・・その後上弦の参に煉獄さんが・・・・・・」

「吉原で上弦の陸が・・・・・・」

「刀鍛冶の宿で上弦の肆と伍が・・・・・・」

「無限城で俺は上弦の壱と交戦し・・・・・・」

「その後過去に戻り、前世と今世では少し世界の仕組みが違うようで・・・・・・」

 そんな感じで語った。質問攻めも多くあったため、一時間程話は掛かった。

「なるほど!乗客全員を上弦の参から守りきり、死亡!鬼殺を完遂出来なかったことを除けば、我ながら天晴れだ!」

「上弦の陸ってのは頸を同時に斬らなきゃ殺せねぇのか。なら対策すれば人死にも少なくなるかも知れねぇ」

「呼吸を使う鬼・・・・・・南無阿弥陀仏。上弦の壱は昔の鬼だから無理だが・・・・・・獪岳は拘束すべきだろう」

「珠世とかいう鬼の頸は後回しでいいだろォ」

「そして、この中でもっとも重要な情報は、浅草に現れる鬼舞辻無惨について・・・・・・そうですね?お館様」

 全員がお館様の方を向く。お館様は少しの間目を瞑り、そして見開いた。

「そうだね、しのぶ。・・・・・・浅草で、無惨を攻撃する」

 柱はそれを聞き、各々表情を浮かべた。それに共通しているのは、押さえ切れぬ歓喜と憎悪だ。

「無惨が浅草に現れるのは八日後。それまで無惨には少しも異変を悟られてはならない。柱の皆は通常の任務を遂行して欲しい。竈門炭治郎には前日まで伝えず、通常の任務として浅草に来てもらう。浅草の雑踏ということで、民間人への被害が出るのは避けられないが、なるべく減らすように努力しよう・・・・・・そして、おそらく今回の作戦では無惨を殺すことは出来ない」

 柱の表情が困惑に変わる。炎柱がその困惑を代表するように口を開いた。

「僭越ながらお館様!どのような鬼であろうとも、柱九人が集まって斬れない鬼の頸などないでしょう!」

「そうだとも、杏寿郎・・・・・・だが、おそらく無惨は頸を斬っても殺せない。再生力もどの鬼よりも高いだろう。無惨を殺せるのは日の光のみではないだろうか。鬼殺隊の文献を漁らせてみたが、戦国期にそのような記述が僅かにあった。・・・・・・今回では鬼殺隊の脅威を知らしめ、活動させにくくするために、そして将来殺すための布石として、無惨に攻撃を行う。だから、今回の攻撃で誰も死んではならないよ」

「「「御意」」」

 柱全員、納得した顔で頭を垂れた。

「では、詳しい話は明日にしようか。ああ、玄弥は基螺を連れて炭治郎と鱗滝左近次の所に行ってくれ。左近次は暗示の玄人だ。人を喰わないように基螺に暗示を掛けてもらうと良い」

 そうしてお館様は、長時間話して病気の体に堪えたのか、屋敷の奥に姿を消した。柱も解散した。兄貴は、俺に一言も声を掛けずに隠に連れられて屋敷を出て行った。

 

 




なんでラスプーチンなんか出したんだ(1917に死ぬと知って鬼滅ぴったしやん!と確信して出した)

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