深淵の狩人   作:宮条

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続き


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結果から言って、リコからの申し出は断った。しかしとりあえず事情を聞くとあの時背負っていた人(?)を孤児院の自室に運びたかったのだが、入口で待ち構えているであろう院長の目を掻い潜る手段がない為に相談しにきたらしい。

 

「あはは……やっぱり急にそんなこと言われても…」

「いや、もっと良い方法がある」

「え?」

 

断ったのは面倒だとか厄介な事に関わりたくないだとかそういう理由からではない、単純に人の目を逃れて自室に辿り着く方法に心当たりがあった。

不思議そうな顔をしているリコを差し置いて、古臭いチェストを開けてガサゴソと漁り出す。

 

「えっと、良い方法って…?」

「どこにやったかなぁ、確かここら辺に……おっあったあった!」

「?」

 

いよいよもって怪訝な顔を隠さないリコの目の前に、惜しげなくその髑髏を見せつける。

 

「これを使えばその子をバレ」

「うわぁぁぁ!!?」

 

ここで自身のミスに気付く、狩人だった時の名残りで思わず人間の髑髏を当たり前の様に手渡そうとしたが、そんな物騒な物を普通は所持しているはずがない。

 

「あっごめん!急にこんなの見せて…」

「いえ……ちょっとビックリしただけなんで」

 

突然の頭蓋に尻餅をついていたリコだったが、肝が相当に据わっているのかすぐに頭蓋に興味を示した。

 

「それでこれは何なんですか?」

「まあ……遺物みたいなものだよ」

 

そう言って店の隅で静かに眠る子供(?)の方を近付き、頭蓋を見つめてこう告げた。

 

「久しぶりの仕事だ、上手くやってくれよ」

 

すると微動だにしなかった子供が一瞬にして霧に包まれる。その光景を見てリコが驚きの声を上げたが、次の瞬間それを上回る驚きがリコを襲った。

 

「きっ消えた!?」

「やっぱり」

「え?」

「いや、なんでも」

 

霧が晴れた先には、何も無かった。

少なくともリコの目にはそう見えるだろう、そうでなければ久方振りにこんな頓痴気な道具は使わない。

 

「あの、レグは……レグはどこに行ったんですか!?」

「レグ?」

「あっ……あの子の名前!レグって呼ぶことにしたんです」

「レグ………レグ?」

 

何処かで聞き覚えがあった、それもそこまで古くない記憶がある。

 

「もしかしてその名前って前に内緒で飼ってた……」

「はい、あのレグです!」

(犬と同等なのか……)

 

未だ目覚めぬ少年に少しばかりの同情の念を感じつつ、リコの質問に答える。

 

「えっとね、そのレグ…君はどこかに行ったわけじゃないんだ」

「え、でもそこにレグは…」

「見えないだけなんだよ」

「見えない?」

 

先程までレグがいたであろう場所に手を伸ばす、すると途中で何かにぶつかりその先の空間に手が届かない。

その様子を見て恐る恐ると言った様子でリコも手を伸ばす。

 

「あっ本当だ、見えないけど……確かにここにいる」

「あんまり派手に動くと効果がないんだけどね、さっきみたいにおぶって移動する位なら大丈夫だよ」

「これが……その骸骨の力なんですか?」

「……まあね」

 

その瞬間、頭蓋を見つめつつも少し違う位置に目を向けていた事にリコは気付いていただろうか。

 

「とにかくありがとうございました、これなら院長にバレないで孤児院に入れます!」

「うん、力になれて良かったよ」

 

また今度ー!!と元気良く手を振って帰路に着くリコを見送る。そして姿が見えなくなった所でその手に持つ頭蓋を再び見つめ、突然に語りかける。

 

「すまんな、もう狩人ではない私に付き合ってくれて」

 

より正確には、その頭蓋から這い出ている奇妙な小人に。

 

「ウォォォォオオ……」

 

喜怒哀楽、その全てが読み取れない鳴き声で小人は言葉に反応する。

しかし様子を見る限り久々の仕事に満足した様で、どこか誇らしげな表情をしていた。

 

使者の贈り物。

 

狩人時代に於いては滅多に使う機会が無かった狩道具。本来は使者の姿に化けて奇襲を狙うという用途なのだが、先程も言ったように派手に動き回れば効果が無くなってしまうが故に長らく倉庫の肥やしになっていた。

しかしここに来て役に立つとは思いもよらなかった。そもそも使者は狩人にしか見えない存在、啓蒙を得た者も視認は出来るかもしれないがここにそんな存在はいないだろう。

要はアメンドーズと同じ理由だ、ある程度の啓蒙を得ていなければ奴は視認すら出来ないように、使者もまた狩人で無ければ視認出来ないのだ。ただ狩道具で真似た使者も狩人にしか見えないのか、そも他人にこの神秘を付与する事が出来るのかという心配があった為、成功した時内心ヒヤヒヤしながら胸を撫で下ろしていた。

次があればよろしく頼むと使者に告げて頭蓋をチェストの中に戻す。

 

「さて、片付けの続きだな」

 

リコの訪問で多少時間を食ってしまったが仕方ない。それに人助けをした後はどうにも気分が良い、ヤーナムでは味わえなかった新鮮な感情だ。そう思いながら柄にも無く鼻歌を歌い店の奥へと消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし忘れることなかれ、未だ使者が見えているという事が何を意味するか。

 




とりあえずここまでです
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