とある科学の因果律   作:oh!お茶

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連投。


2話「アイテム」

 

第十九学区。

開発に失敗し、寂れたこの学区に二人の少年が対峙していた。

一人はLEVEL5の第一位、一方通行。

一人はLEVEL5の第八位、鵠沼恭弥。

二人の間に流れるのは殺気に満ちた空気。

そんな中、先ほどの一方通行の言葉にニヤリと嗤い、鵠沼恭弥は言葉を返す。

 

「ご名答。ま、コッチとしては分かりやすい能力の使い方して貰ってたから第一位だって確信はあったね。ま、白髪モヤシとも聞いてたしね」

 

「ハッ、言うじゃねェか。

腐った魚みてェな目してっからまさか第八位とは思わなかったぜ」

 

今度こそ心の底から獰猛に笑い演算を開始する一方通行。

そこにあるのは歓喜。

第八位と言えどレベル5。

故にそこらのゴミ虫より遥かに骨のある相手。

自分の能力の可能性を今まで以上に存分に引き出せるであろうこの相手にひたすら歓喜した。

 

だが、恭弥は、

 

「あー、パスパス。お前とやっても勝負つかないし疲れるだけだから。そんなにやりてえなら部屋の隅で一人で擦ってろ」

 

一方通行の尋常でない殺気を受けても一切戦闘体勢に入らず、あまつさえ背を向けて歩き始めた。

 

「オイ、どォいうつもりだ?」

 

一気に興が冷め、不快感を露わにしながらそう尋ねる。

レベル5との戦闘が有用となるのは相手が全身全霊で向かってくるからであり、レベル5だからではない。

例え相手が同じレベル5だったとしても、一方通行はその頂点なのだ。彼の勝ちは揺るがない。自分の負けなど一切考えない。

結局、レベル5は自分の能力を存分に引き出してくれるツールでしかなく彼らが全力であればあるほど喜ばしい、程度の認識だ。

故に闘う気の無い恭弥は最早ゴミ同然。

いくらレベル5と言えどここまで無防備だと低能力者にも劣る。最早手を出す価値はない。

そう考える一方通行に対して恭弥は応える。

 

「どうもこうもねぇよ。誰も彼もが順列に興味があると思ったら大間違いだ。

言っとくが、俺はお前とタイマン張れるぜ?」

 

立ち止まり、顔だけ一方通行に向けて不気味に嗤う恭弥。

一方通行が眉をひそめたのを見て言葉を紡ぐ。

 

「そう怪訝な顔すんな。そうだな……あんま情報を垂れ流すのは好みじゃねぇが、教えてやるよ。

俺の能力は『エネルギー変換』だ。

これがどういう事かをしっかり理解できれば俺の言い分も分かるはずだぜ?

ま、なんでもかんでも反射しちまうお前に勝てるとは思ってないよ。だが、お前に負ける事は無いって言ってんだ。

だからお前とは闘いたくない。

逃げ口上だと捉えてくれても構わないさ。

とりあえず近くにある美味い喫茶店教えてやるから戦闘だけは勘弁してくれや」

 

未だに闘う素振りを見せない恭弥に一方通行も諦め溜息を吐く。

手招きする恭弥に従いスーパーの屋上を飛び降りて第十九学区を出る為に歩を進める。そして一方通行は当然の疑問を投げかけた。

 

「分からねェな。それでどォしてオマエが俺とタイマン張れンだ?」

 

「オッケー、教えてやるからメアド交換な」

 

「やっぱいいわ」

 

「お前に拒否権なんざねーよ」

 

「クーリングオフは「ねぇよ」………チッ…好きにしろ」

 

恭弥にいいように遊ばれているが、やはり気になるのだろう。ベクトルパンチを放ちたい衝動を抑え話を促す。

 

「何度も言うが、俺の能力は『エネルギー変換』。それはつまり、ありとあらゆるエネルギーを他のあらゆるエネルギーへと変えるモンだ。

お前も分かっているように、さっき鉄骨でやったことだが、熱エネルギーへの運動エネルギーの変換。光エネルギーへの熱エネルギーの変換。電気エネルギーへの光エネルギーの変換。

幾らでも変換可能だ。

 

……面倒になってきた。もういい?」

 

「そこでやめンじゃねェ!!

その程度説明なら聞くまでもねェンだよ!!」

 

「あー、ハイハイ。ま、要はアレだ。ある一つのピースを嵌めるだけで、お前に誰も触れられない様に、俺にも誰も触れられなくなるんだよ」

 

「……どォいう事だァ?」

 

「こういう事だ」

 

その言葉と共に恭弥は近くの錆び付いた看板を蹴りつける。

 

「!?」

 

すると一瞬にして看板が消えた。

まるで『空間移動(テレポート)』を用いたかのように一瞬で。だが、先ほど目の前の少年が言ったばかりだ。自分の能力は『エネルギー変換』だと。

様々な考えが一方通行の頭に浮かんでは消えて行く。

 

「ほれ、あそこ」

 

そして恭弥は空の一点を指差し、驚愕に染まる一方通行に視線を上げるよう促す。

その先には、空中を落下する先ほど消えた筈の看板が。

 

「ま、もう分かると思うが、位置エネルギー…これを変換公式にぶち込むだけでエネルギーを持って俺に触れたものは一瞬にして高所へ移る、って寸法よ。瞬間移動とかにちょっと似てるね。

そんな訳でぶっちゃけ俺も核撃たれても大丈夫って訳だ」

 

合点がいった、と言うかのように頷きつつも一方通行は疑問を口にする。

 

「ほォ……確かに厄介そォだな。

だがその程度のチンケな手品で俺と互角だァ?

舐めてンのか?」

 

「ハハハ、自惚れも大概にしとけよ。こんなん氷山の一角に過ぎないに決まってんだろ。

これ以上は割に合わんから言わねぇよ。

けどもう少し考えてもの言えや。

 

ま、ザックリ言うと………

この世の全ての物質、現象はエネルギーを持ってんだぜ?

つまりどんな物も俺の手の中にあるって言っても過言じゃねぇんだよ」

 

それにな、と恭弥は続ける。

 

「言っただろ?順列には興味無い、って。上位にいたら血の気の多い奴に喧嘩ふっかけられそうだし面倒だからな。

つまりは俺は自分の能力を誤魔化してるって訳だ」

 

その言葉に一方通行はハッとする。

定期的にある検査では数多くの機械の下、厳密に行われる。

どんなに能力を手加減して行使したところで脳波や体温などからどの程度制御しているかなどすぐに明らかになるのだ。

そんな中で自分の能力を誤魔化すなど不可能に近い。

恭弥が嘘を付いている可能性は排除できないが、腐っても学園都市の頂点のレベル5だ。

しかも『エネルギー変換』という能力を考えると、実際に出来るかどうかは別として、幾つか策が浮かんでくるのは否定できない。

 

「ま、こんなん出来たところで何の自慢にもなんねぇけどな。

そうだねぇ……一発だけなら攻撃受けてやるよ。それでお前が見極めろ」

 

いつの間にか一方通行の携帯を奪って勝手にアドレス交換を始める恭弥はヤレヤレ、という風にそう言った。

操作を終えた恭弥から携帯を受け取りつつ一方通行は答える。

 

「……チッ…人のモン勝手に弄くり回してンじゃねェよ。

まァいい。興が削がれた。今回は勘弁してやるよ」

 

そして、踵を返えし別方向へ向かう一方通行に恭弥は呼びかけた。

 

「ん?おい、喫茶店行かないのか?」

 

「興味ねェ。一人で行ってろ」

 

 

ーーーーーーーー

ーーー

 

 

 

 

「……お前友達いる?」

 

「なンなンだ?急に」

 

「いや、お前と最初に会った時のこと思い出してな……

ああ、こいつは可哀想な奴だったって事まで思い出した」

 

「よし、血液逆流させてやるから右手だせ」

 

「ハハハ、勘弁。じゃ、俺コッチに用があるから」

 

「おォ、そォか。またな」

 

「バイビ〜」

 

気の許せる間柄でのみ可能となるくだらないやり取り。

そんな穏やかな会話を終えて恭弥は一方通行と別れ、銭湯へ向かう。

ちなみに一方通行の財布はしっかりと掏っていた。

 

(ひい…ふう…みい…………うわぁ、二十万とかよく財布に入れてんな……馬鹿だろアイツ)

 

財布に入っていた額にドン引きしつつも回収した握り飯を囓っていると携帯が鳴った。

非通知。

怪訝な顔をして握り飯を飲み込み、電話に出る。

 

「……もォしもォしィ?こちらアクセラレータァ!世界一のアクセラレータァでェすよォ!これから銭湯行くンですけどォ!電話掛けてくンじゃねェ、三下ァ!俺のベクトルパンチが火を吹くぜェ!!」

 

ふざけたが後悔はしていない、と言わんばかりの清々しい笑顔である。

 

『相変わらずだな、因果律(アーセナル)。私だ』

 

聞き覚えのある声にピクリと片眉を上げるが、構わず続ける事を選んだ。

 

「あン?校長先生が学園都市の頂ォオオオ点ンンッッ、レベル5の第一位ィイイイの俺様になンの用ォだァ?」

 

『私を校長先生と呼ぶのは君だけだ。下らない三文芝居はやめたまえ』

 

相変わらず気持ち悪いほど捉えどころのない学園理事長の声に、恭弥はウェーと顔を顰めてふざけるのをやめる。

 

「あーハイハイ。で、何?」

 

『そうだな、本題に入ろう。

実は君には暗部に入って貰いたいのだ。

君のあまりに自由な行動には目を瞑って来た。それもあくまで想定内であるからプランに問題はない。

 

だが、少し裏が騒がしくなって来てね、君の助力を借りようと言う訳だ』

 

「………本音を言え。

勝手に学園都市を抜け出されるのが嫌だから暗部に入れて出来る限り縛りつけたい、だろ?

 

アンタの事だ。俺の行動も、学園都市内の事も全部想定内なんだろ?」

 

『……ふむ、やはり取って付けたような理由では駄目か。

その通りだ。

二日前にオーストラリア、その三日前にはアマゾン、その前日にはイギリス、さらにその二日前にはイタリアにいたな?こちらの許可も受けずに』

 

「お土産なんざねーよ」

 

『そうか。それはそれで構わない。

ただ、プランに支障は出ないのだがな、こうも自由に動き回られては気が気でない。

大きな力を持つ犬の手綱を握っていたい、という事だ』

 

「なるほどね。

まぁいいよ。

正直に言ってくれたしね。それに俺もアンタの言うプランとやらに興味があった。

暗部とやらに入ってやるよ」

 

『話が分かるようでなにより。

相手側にも君の加入は伝えてある。詳細は自動消去されるメールで送るから確認してくれ』

 

「はいよ。じゃ、またな」

 

『ああ』

 

とても携帯を通してなされるとは思えないほどの重大な会話の後、携帯を切って恭弥は虚空に呟く。

 

「校長先生……名前なんだっけ?」

 

ピリリリ

 

ピッ「もしもし」

 

『アレイスターだ』

 

「サンキュッ

略してアイターwwwな」

 

『おい、ちょーーー』ピッ

 

 

 

 

****

 

翌日、鵠沼恭弥はコンビニで購入した缶コーヒーを片手に指定された集合場所へと向かっていた。

携帯片手に缶コーヒーを飲み干して一言。

 

「………ゲロ不味…」

 

あのモヤシこんなん買い込んでアホちゃうか?と一方通行の味覚を疑いつつ、凄まじい速さで携帯を操作していく。

映し出される画面は瞬時に切り替わっていき、並大抵の動体視力では内容を理解することはおろか文字を把握することすら難しいだろう。

そんな携帯を操作していく彼が今している事は、ハッキングしての機密事項の閲覧である。

 

(おー出た出た。ハック完了〜。

えーっと…『アイテム』……うわっ女ばっかやん。

はぁ?第四位?

………校長にプラスチック爆弾(おみやげ)贈っとくか)

 

自分が所属することになる『アイテム』というグループが全員女であるだけでなく、第四位がいるという事を知り、僅かに辟易する。

集合場所であるファミレスが視界に入ったところで、まあいいかと気を取り直して空になった缶を道端に放り投げてファミレスに入った。

 

待ち合わせしていた旨を店員に告げ、『アイテム』のメンバーが揃っているテーブルにつく。

四人の少女が座る席で、皆の様子を伺うが、全員顔を見てくるだけで話し出そうとしない。

どうしようかと考えた後、店員を呼び止めシーザーサラダとパスタ、ドリンクバーを注文し、ドリンクを取りに行く。

 

まずはメロンソーダ。

合成着色料をふんだんに使用した甘ったるい飲み物を持って席に戻り、数秒で飲み干す。

 

ドリンクを取りに行く。

次にコカコーラ。

ふんだんに砂糖をぶち込んだ炭酸水を持って席に戻り、数秒で飲み干す。

 

ドリンクを取りに行く。

お次はカルピスソーダ。

よくわからない白濁色の液体を持って席に戻り、数秒で飲み干ーーー

 

「いつまでその超不可解な行動をとり続けるのでしょう!?」

 

「お前等が俺に話し掛けるまでだバカヤロー。

俺は新入りだぞ。どう話題を出せばいいかなんて知るかボケ」

 

見ているだけで胸焼けしそうなその行動を見かねた少女、絹旗最愛が突っ込むと、恭弥は、いやいや頑張れよと言いたくなるような返答をする。

そんな突然の罵倒に一人を除いて全員が頬を引き攣らせたが、それを気にした風もなく恭弥は話し始める。

 

「ま、いいか。取り敢えず突っ込んでくれて有難う。

………胸焼けヤバいけど自己紹介でもしておこうか」

 

やはり胸焼けはしていたようだ。

早くも出されたシーザーサラダを隣に座る絹旗の前に押しやり自己紹介を始める。

 

「あの、…シーザーサラダ超いらないんですけど」

 

「遠慮するな。

俺は鵠沼恭弥だ。ま、一つよろしく」

 

「わかったわ。恭弥ね。

麦野沈利よ。よろしく」

 

目の前に座る茶髪で長髪が特徴のグラマラスな少女がそんな恭弥の挨拶に応えた。

 

「………滝壺理后…よろしく」

 

続いて斜め前に座るジャージを着た眠たそうな少女がそう言う。

そして今度は恭弥の隣の隣、つまり絹旗の隣に座るベレー帽が特徴の金髪の少女が口を開く。

 

「私はフレンダ。よろしく」

 

最後に隣のオレンジのパーカーを着た小柄な少女が自己紹介をした。

 

「絹旗最愛です。超よろしくお願いします」

 

「はいよ。よろしくね。

で? どうすんの?」

 

恭弥は暗部に入ってもらう、そしてここが集合場所、という事しか聞いていないのだ。

故に当然の疑問を抱くが、それに麦野が答えた。

 

「この後仕事が入ってるわ。だから今の内に打ち合わせをしとこうと思うの」

 

「なるほどね。うーん……連携とかやっぱ必要だよね。

じゃ、まずは俺の事でも話そうか」

 

早速仕事があるというなら残された時間は有効活用しなくてはならない。

従って恭弥は上手く連携を取れるようにリーダーである麦野沈利に自分の能力について軽く話し始めるのだった。

 

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