俺だけレベルアップの仕方が違うのは間違っているだろうか 作:超高校級の切望
ヘスティアが友人が開いたというパーティーから帰って来ずに二日目の朝。今日はベルの探索に旬もついていくことにした。
爆発的な【ステイタス】の上昇が行われるベルは、他の冒険者に比べ感覚を慣らす回数が多い。旬も最初は己の能力値に振り回されたものだ。
先日調整は完了したと言うので、今回はベルの戦いぶりを見てアドバイス出来るならアドバイスするつもりだ。人類最弱兵器と呼ばれていた頃の旬は金がないのもあるが安く済む短剣をその頃から使っていた。まあ何度か折れるうちに買うのをやめたが、その頃は足りない身体能力を補おうと技術を磨こうとしていた。まあモンスター相手に小手先の技術など役に立たなかったが。
それでも、プレイヤーになってからは短剣が主武装になったし、それを使い強敵とも戦った。我流ではあるが素人に毛が生えた程度のベルに教える事はできる。
とりあえずダンジョンに潜る事をギルドに報告しに行く。ダンジョン内での死者、行方不明者を調べるための手続きだ。前回ベルはそれを怠りダンジョンに飛び込んだが………。
「あ、ベルく……クラネル氏、水篠氏、丁度良かった」
「? どうかしたんですか、エイナさん」
「うんと、実はね。【ヘスティア・ファミリア】に会いたいって人がいるんだけど、今日空いてる?」
その言葉にベルと旬は顔を見合わせる。ギルドが仲介するなら滅多な事はないだろうが、今はヘスティアも居ない状況だ。【ヘスティア・ファミリア】として会いたがっているならヘスティアも居るべきだと思うが、向こうも本来多忙の相手。出来ることなら今日会って欲しいとのことだ。
「えっと、じゃあ夕刻には戻るので、その時に」
「解りました。そう伝えておきます………あ、でも会う前にシャワーを浴びてね? だからちょっと早く帰ってきてくれると助かるな」
「わかりました」
ギルドからダンジョンに向かう途中、ベル達は『豊饒の女主人』による。何でもベルはここの店員のシルから弁当を貰っているらしい。
「弁当を? そうか、優しい子なんだな」
「ですね!」
店の奥から数人が転ぶような音が聞こえてきた。テーブルを拭いていた猫人はすっ転んで額を机にゴン! とぶつける。
「水篠さん………」
と、不意にエルフの店員が旬に声をかける。確か、リューと呼ばれていた女性だ。
「ここ最近、クラネルさんはソロで潜っていたようですが、貴方は手を貸さないのですか?」
公式的には旬はLv.4。リューもそう思っているので、ベルと足並みを揃えるのは旬にとっても、ベルにとってもキツイと解る。それでも、安全を考えてともに潜ってほしい。
「心配してくれているのか? 優しいやつだ」
「………私は、優しくなどありませんよ」
と、どこか自虐するように言うリュー。過去に何かあったのかもしれない。旬はリューの頭を手を置く。
「心配するな。俺は死なないし、ベルだって生きて戻ってくる……死んだらもう強くなれないからな」
「強くなるより、生きることの方が大切です。冒険者はそれこそ予期せぬ怪我で、冒険者生命を絶たれることがあるのですから」
経験則なのだろう。彼女は明らかにB級覚醒者と同等。その中でも道門に近い実力者。こちらの世界でその強さを手にするという事はそれだけ経験を積んできた証拠。きっと様々なものを見てきたのだろう。
「またここの飯を食いに来る。それでいいか?」
「そうですね。ここ、少し高いけど、その分美味しいですから何度だってきますよ」
その言葉にシルは微笑み、リューは身長差から上目遣いで旬を見つめた。
「…………では、またのご来店をお待ちしています」
「ああ」
「旬さんって、彼女さんがいたことあるんですか?」
ダンジョンでシルから渡された弁当を食べながら、不意にベルが訪ねてくる。旬は居たことないが、なぜそんな事をと問返す。
「いや、ほら、リューさんの頭撫でたり、あんまり女の人との距離感を開けないから女の人に慣れてるのかなあ、って」
「……………」
そういうものなのだろうか?
旬は意外と、女性に対して距離が近い。妹の同級生の頭を撫でたり出会ったばかりの悪魔の娘を案内役として借りる際、娘の父親の前で肩を抱いたり平然と行う。
「うーん、そんな事無いと思うけどなあ。俺彼女居たこと無いし、女の人の知り合いだって、普通に仕事仲間ぐらいだしなあ。あ、でも妹がいるから、それで距離感が違うのかも」
「妹さんがいらっしゃったんですね」
「ああ、オラリオには居ないけどね………と、追加だ」
ダンジョンは自動修復までするが、修復中はモンスターが生まれない。故に破壊しておいた周囲の壁が、直る。そして、再び亀裂が走る。
「ベル君、闇雲に振り回さないように。短剣は深い傷を与えるには向いてない。浅くとも、数を当てることを優先するために腕は短く構えろ」
「はい!」
旬の支持にベルは短剣を構え、モンスターに向かって駆け出した。
「………あれ?」
ダンジョンから地上に向かう途中、ベルは妙なもの見つける。巨大なカーゴだ。
「モンスターが入ってるな………強くてC……Lv.3って所かな」
「え、モンスター!?」
旬の何気ない言葉に驚くベル。バベルとは、冒険者とはモンスターが地上に出ぬようにする為の存在だ。そんなモンスターを、わざわざ地上に?
それも、こんなに堂々と………と、よく見ればギルド職員もいる。と言うことは、モンスターの運搬は冒険者を管理するギルド公認?
「研究でもするのかな……」
「ああ、そういう………ことなんですかね?」
「さあ? でも、ギルドが関係してるなら俺達が口出しできる事じゃないよ」
二人はシャワーを浴びて、ギルドに向かった。
「おかえりなさいベル君、旬さん………あちらの談話室でお待ちです」
と、エイナに案内されギルドの中を歩く。換金以外でギルドに来たことがないベルは少し落ち着かない様子だ。
エイナが扉をノックすると、入れと返事が帰ってきた。どうやら女性のようだ。扉が開けられ、二人の女性が姿を表す。片方は緑の髪の美しいエルフ。もう一人は、金色髪をした少女。
リヴェリア・リヨス・アールヴと、アイズ・ヴァレンシュタインだ。話とは酒場かミノタウロスの件のことだったのだろう。
「…………あ」
「ん? ベル君……?」
と、ベルから絞り出すような声が聞こえた。振り返るとアイズを見て、顔を真っ赤にして固まっている。アイズがベルを見て、あ、と声を漏らし立ち上がる。
「あの………」
「───う」
「う?」
「うひあああああああああああっ!?」
ベルは逃げ出した!
ポカンと固まる一同。Lv.1とは思えぬ速度で駆け出したベルの叫び声はだんだんと小さくなりやがて消えた。最初に状況を理解したのはアイズだった。
少年が、逃げた。自分を見て。アイズは逃げられたのだ、顔を合わせただけで!
ガーン、と言う声が聞こえてきそうな顔をするアイズ。エイナも正気を取り戻しベル君!? と叫び、リヴェリア達に一礼して駆け出す。
「……………わ、私………怖がられてる?」
「…………っく」
「………ふ、ふふ」
「!!」
リヴェリアがたまらないと言うように吹き出し、旬も釣られて笑い出す。アイズはそんな二人の反応に目を見開いた後、リヴェリアをドン! と突き飛ばし旬を睨むが、二人の笑い声は止まらずむー、と頬を膨らませる。
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