俺だけレベルアップの仕方が違うのは間違っているだろうか 作:超高校級の切望
「すまないな、うちのベル君が……」
「気にしないでくれ。しかし、ふふ………」
旬の謝罪に別に良いと返すリヴェリア。部屋の隅で膝を抱えて落ち込むアイズを見て再び吹き出すと、アイズがジロリと睨んでくる。が、微笑ましいというように笑うばかりだ。睨んでも意味がない、むしろ笑われるばかりと悟ったのかアイズはプイ、と顔をそむける。
「ハハ、すまんアイズ。拗ねるな拗ねるな………まあ、残念だったな。次の機会に謝れるといいな。さて……」
と、リヴェリアは旬に向き直り、頭を下げた。
「ミノタウロスの件と、酒場の件、貴方の仲間を危険にさらし、傷つけた。謝罪しよう」
「俺は別に………ベル君も気にしてないよ」
「でも、私のこと怖がってた………」
アイズは自分の言葉にさらに落ち込む。リヴェリアはハァ、とため息を吐く。
「本来なら、本人に主神を含めた謝罪をしたいところだったのだが」
「ベル君はあの調子だし、神ヘスティアは今留守にしてる。悪いな、大手ファミリア、暇ではないだろうに」
「構わんさ。責があるのはこちらだからな………本来なら武器か防具などで、謝罪しようと思っていたのだが」
「ああ、それは多分、ベル君が受け取らないかなあ」
「そうなのか? となると、どうするか…………」
「俺もベル君も、ダンジョンに関しては素人だし、戦闘に関しては俺も経験があるが人に教えられる程じゃないから、それを教えてもらえると助かるかな」
「むぅ、中々難しい注文だな………」
知識も技術も、ダンジョンに潜る者たちにとっては黄金に等しい財産だ。それを他派閥に教えるとなると………。
「取り敢えず、フィン達にも相談はしてみるが………とはいえ肝心な本人があれではな」
「まあいずれ落ち着く………と、思う」
「そうなってくれると助かる」
ベルに逃げられ落ち込み床に指で円を描くアイズを見て、肩をすくめるリヴェリア。エルフと言えば旬の世界においてはダンジョンモンスターの一種で、残虐な性格をしている。特にアイスエルフなどは人間にとって過酷な環境で襲撃してくる故に
「場を設けてもらったのにすまないが、今日は解散するとしよう。肝心の本人が逃げてしまってはな」
「いや、ベル君には俺から言っておこう」
「ああ、頼む。ほら、アイズ元気を出せ。明日はロキと
「モンスターフィリア?」
聞き覚えがない単語に旬は首を傾げる。リヴェリアはおや? と反応した。
「ああ、そういえば都市に来たばかりだったか。オラリオの行事の一つだ。ギルド主催の【ガネーシャ・ファミリア】が執り行う………」
ギルドとガネーシャ………この2つの関わりとなると、旬に頼むかもしれないと言っていた表向きには出来ない任務などに関係する裏の事情があるのだろうか?
「簡単に言えば、モンスターを
「テイム?」
モンスターを手懐けるということだろうか? そんな事が可能なのか?
旬の世界では、まず不可能だ。非難殺到間違いなしだし、そもそも死体が消えない旬の世界では殺して素材を剥ぎ取ったほうが効率的。ふとある男との会話を思い出す。
旬の世界においてはダンジョンに住まう者は例え理性があろうとモンスターで、そんなモンスターの言っていた言葉。
『我々には声が聞こえる。人間を殺せと』
おそらく旬の世界のダンジョンのモンスターは全てその命令を受けているのだろう。故に人が手懐けるなどまず不可能。召喚獣などはいるが、あれはそもそもダンジョンモンスターではない。
てっきりコチラのモンスターも似たようなものだと思っていたが、手懐ける事が出きるのなら違うのだろう。
(いや、でも………)
この世界のモンスターが人間に敵意を持ってるのは間違いないと思う。なにせ、旬の世界のダンジョンではモンスター同士殺し合いなどをして縄張りを確保したり食料にするのに対し、この世界のモンスター達は種類関係なく
因みに旬は縄張りに入らない限り襲いかかられたことはない。ベルといる時などは人間の仲間と判断されるようだが生まれたてはチラリと一瞥したあと何処かに行った。この世界のダンジョンもまた旬を人間と認識していないのだろう。プレイヤーであることが影響しているとは思うが………。
「難しい顔をしてるな。確かに、モンスターを
命令を超える恐怖を植え付けるということだろうか? この世界のダンジョンによる支配力は、意外と弱いのだろう。それこそ案外、モンスター達は母の命令としか認識していないのかもしれない。
「興味あるのなら、案内しようか?」
「良いのか? 騒がしいのは嫌いなんだろう?」
「現状【ヘスティア・ファミリア】に返せる謝罪が存在しない以上、その程度で誠意を示せるなら安いものだ」
「……………」
旬としては別に良いのだが、向こうとしても形だけでも示しておきたいのだろう。
モンスターの調教………あまり興味は無い。そもそも旬は使えそうなモンスターが欲しいと思えば
外国の祭りでさえテレビで放送されれば何となく見る気になる。文化どころか世界の異なるこの地で行われる祭り。
「そうだな、ならオラリオの特産品なんかを頼む」
「ジャガ丸くん、小豆クリーム味」
「…………ん?」
「美味しい………」
旬の言葉に何故か答えたのは、アイズだった。
「ジャガ丸くん、好きなんでしょ?」
そういえば旬はジャガ丸くんの味に感銘を受けヘスティアの眷属になったという設定だった。
翌日、祭りが始まる。
可愛らしい白兎に逃げられ落ち込んでいたアイズも何とか元気を取り戻し、ロキに連れられある店による。不思議な雰囲気だ。時が止まったかのような静けさ。
それはこの店に物静かな者達が集まる、という訳ではなく、たった一人の存在に空気を支配されているから。
いや、たった一
「よぉー、待たせたか?」
「いえ少し前に来たばかり。あら、そちらは…」
初めて聞く声だ。ロキが挨拶するように行ってきたので、軽く挨拶をする。そして相手の顔を見て、目を奪われた。同性のアイズすら魅了しかねない美貌を持った女神………衰えぬ容姿を持った神々の中でも殊更美しさを持つ『美の神』がそこに居た。
噂で知っていたが、それ以上だ。これが、【ロキ・ファミリア】に並ぶ最大派閥が一つ【フレイヤ・ファミリア】主神、美の女神フレイヤ。
神も人も関係なく、彼女こそ一番の美貌の持ち主だと言う。とある女神はそれを認めていないが……、少なくともアイズは己の記憶している容姿で一番の美貌であると断言する。
「これからアイズたんとデートするんや。時間が惜しいから率直に聞くで? 最近自分、妙に動き回っとるようやけど…………男か」
まあこの女神が動くとしたらそれぐらいしかないだろう、とロキは確信していた。もちろん、僅かだが女の可能性もあるがようは
フレイヤは気に入った下界の子供達を見つければすぐにでもアプローチをかけ
今回フレイヤが目をつけたのは、恐らく別の【ファミリア】。実は先日の神々の宴、滅多に参加しないフレイヤが来ていた。目的はたまたま見つけたその子供がどこのファミリアか調べるためだったのだろう。
「で、どんな奴や今度自分の目にとまった子供ってのは?」
「どっちも素敵な子よ」
「なんや、しかも二人なんか………」
けっ、とロキは喉を鳴らす。男癖の悪さは知っていたがまさか二人同時に狙うとは。
「片方は、とてもとても真っ黒な色をしていたわ」
「なんや、お前綺麗なのが好きなんやなかったんか」
「汚れている訳じゃないわ」
自分が見初めた相手を馬鹿にされたと思ったのか、むっと可愛らしく顔を歪めるフレイヤは、しかし恋する乙女のようなとろけた表情を浮かべ虚空を見つめる。
「黒いというよりは、暗い、かしら。果てのない闇が広がっていた……その闇の中で、必死に手を伸ばすの。光を求めて、光り輝く場所に、居場所を求めて。もうとっくに、闇の一部に、闇を己の一部にしてしまっているのに」
闇と聞くとなんとなくマイナスなイメージを持つが、果たしてどんな人間なのか。
「もう一人は、その子の側にいた子よ。強くはないわね、貴方や私の【ファミリア】の子と比べても今はまだとても頼りない。少しの事で傷付いて、簡単に泣いてしまう………そんな子。でも綺麗だった、透き通っていた」
先程もそうだが、目をつけたという人物の話をする時この女神は慈しむような声から、段々と熱を孕む。
美しい笑みを浮かべながら、外を見つめる。
「窓の外を見つけたのは偶然、さっきの子を見てたら、たまたま視界に………」
その一瞬、銀瞳が驚いたようにある一点で止まる。
「ごめんなさい、急用ができたわ」
「はぁっ?」
「また今度会いましょう」
フレイヤはそれだけいうと立ち上がり、店から去っていった。
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