俺だけレベルアップの仕方が違うのは間違っているだろうか 作:超高校級の切望
「黒い騎士を影から呼び出す、か………アイズ、その騎士達はLv.4程度だったんだよね?」
「最後の以外は………」
「そしてリヴェリア、その騎士達は【ヘスティア・ファミリア】の水篠旬が呼び出していたんだね」
「ああ、『出て来い』という号令に従うように、9体影から現れた」
ふむ、とフィンは考え込む。
「その9体の中に、アイズの言う個体は居なかったが、彼等が闘技場に登った後影が2つ飛び出した、と………間違いなくアイズが見た個体だね。アイズ、その強さは?」
「本気を出してなかったと思う。けど、私より強いかもしれない」
ザワ、っと会議室に集まった僅かな団員達がざわつく。特にレフィーヤなどそんなことありません! と叫び出した。
「ロキ、神の目線から見て、どうだい? 自分と同レベルの分身を複数生み出した上で、上のレベルを生み出す。そんな事が可能な【ステイタス】なんてあるのかな?」
「ない、とは言い切れんなあ。せやけどあるとはもっと言えん。リヴェリア見たいな魔法特化やったら自分とおんなじレベルか少し超えた前衛を魔法で生み出すことは出来るかもしれへんが、身体能力はベートを圧倒………まずありえんわな」
「………けっ」
苦い思い出があるベートはロキの言葉に喉を鳴らす。酔っていたとは言え殴り飛ばされ、酔が冷めた後も勝負にもならなかった。身体能力が少なくともフィン以上で、未知の魔法により第1級、第2級冒険者相当の戦力を生み出す。
たった一人で今のオラリオの勢力図を書き換えかねない。
「でもさあ、モンスターから街の人守ってくれたわけだし、この前のだってベートが悪いんだし悪い人じゃないんじゃない?」
「まあガネーシャんとこは把握しとるみたいやしなあ」
ティオナの言葉にロキもうーむ、と唸る。【ガネーシャ・ファミリア】全体かどうかは知らないが、少なくとも団長であるシャクティが知っていることから主神であるガネーシャも知っていると見ていいだろう。
その上で都市に入れたならまあ、悪人ではないのだろう。所属は【ヘスティア・ファミリア】だし………。
だが、そこが一番謎だ。何故【ヘスティア・ファミリア】なのか………。手元に置かない理由はなんだ?
おそらくだが、団員にも打ち明けられない何かを頼むためだろう。ヘスティアの性格から考えて子供がよほど危険なことをしない限り、隠し事には本人の意志を尊重するだろうし、団員も少ない。というか二人……隠すにはもってこいのファミリアだ。では何を隠しているか、これがわからない。
「ねーねー、リヴェリアはデートしてきたんでしょ? その人の事どう思ったの?」
「デッ!? デートではありませんわ! ティオナ、その発言を取り消しなさい!」
「そ、そうですそうです! その男が図々しくもリヴェリア様に街の案内などを頼んだだけで、断じてデートなどではありません!」
「そのとおりだ! リヴェリア様がヒューマンの男となどと!」
ティオナの言葉にエルフ達が騒ぎ立てる。ティオナはうー、と煩そうに顔をしかめる。リヴェリアは、王族扱い故の異性との関わりに過剰に反応するエルフ達にはぁ、とため息を吐く。
「今回のデートで思ったことは、彼は少し世間を知らないと言ったところか」
「リヴェリア様!?」
リヴェリアがデートであることを認めたことによりエルフ達に動揺が走る。
「お、お考え直しを! リヴェリア様は聖女セルディア様と同じく、穢を知らぬ我等が誇り!?」
「私は私だ」
「はいはい。みんなひとまず落ち着けー………んで、リヴェリア。世間を知らないちゅーんは?」
「オラリオの特産品のみならず、果物や料理、オラリオの外でも見かけるそれらを物珍しそうに見ていた」
「ほーん。どっかの田舎者ってだけやないの?」
「かもしれんが………何、少し気になっただけだ」
身長はリヴェリアより高いのに、一々色んなものを見て感心するさまは子供のようで、少し可愛いと思った。
「ベルを見てくれてありがとう」
「いえ、シルの未来の伴侶である以前に、傷ついた者を助けるのは当然のことです」
【ロキ・ファミリア】が旬という謎の人物について話し合う中、渦中の旬は『豊饒の女主人』に来ていた。フレイヤと別れ、シャクティに全てのモンスターを倒したことを報告したあとにベル達を探していると旬を探してくれていたリューに出会ったのだ。
「しかし神ヘスティアは過労か……一体何をしていたのやら」
「クラネルさんの得物が新しくなっていましたから、それ関連だと思われます」
「ああ、あのナイフか……」
旬が触れてみたところ、ナイフの銘は『ヘスティア・ナイフ』。入手難易度はAで、ヘスティアの恩恵を持つ者のみ使えるナイフだ。旬の場合刻まれこそすれ影響を受けないので使えない。
「水篠さんも、モンスター討伐お疲れ様です」
因みにベル達は既に帰ってた。入れ違いで、旬も帰ろうとしたがミアが今回と事件の功労者だからと食事を出してくれたので厚意を受け取ることにしたのだ。
「今回、モンスターは複数逃げたと聞きます。さらには、未知のモノまで………その全てを倒し市民を守った事を、私は素晴らしく思います」
「別に、俺が何かしなくても怪我人は出なかったろ………」
何せあのモンスター達は、周りの目を惹きつけるためだけに放たれた囮。事実として旬の行動は少し遅れていたにも関わらずベルや【ロキ・ファミリア】のエルフを除き被害報告は受けていない。
モンスター騒動から数日。何時ものように一人で下層を潜ってきた旬は上層や中層の魔石やドロップアイテムをギルドに売ると素材系をアミッドに売りに行く。と、前方に見知った真っ白な髪を見つける。
「ベル君」
「あ、旬さん! お疲れ様です!」
ベルは真っ白な防具を着ていた。片手のプロテクターだけ色合いが違う。別々に買ったのだろうか?
「いい鎧だね」
「ありがとうございます。エイナさんが、新しい階層に潜るならこれぐらいは、と………」
受付嬢からのアドバイスだったのか。まあ確かに、下に下がるほどモンスターの数も増える。防具は必要だろう。
因みに旬も防具はつけている。『システム』が用意した『転職クエスト』という、旬にある職業を与えたダンジョンに出て来る敵がリビングメイル系で、それを倒して手に入れた防具だ。何故か透明化して、服とかにも影響がない。
「………ん?」
「………」
と、その時だった。路地裏の奥から何やらバタバタと駆ける音が聞こえてくる。数は、二人。ベルも足音から人数把握できるぐらいには成長しているらしい、不安に流されながらベルが曲がり角をのそわこうとした瞬間、ベルの足に子供ほどの人影が引っかかる。
「あうっ!」
「え?」
とても小さい。おそらくはパルゥムという種族だろう。ベルが駆け寄り声を駆けると栗色のまとまりのない髪の、幼い顔立ちが顕になる。どうやら少女のようだ。
「追いついたぞ、この糞パルゥムが! もう逃さねえからな!」
ベルが少女に手を貸そうとした時、道の奥から一人のヒューマンが現れる。大きな剣を背中に差した男は悪鬼の如き表情で少女を睨み、ベルが反射的に少女を庇うように青年の進路に立ち塞がった。
「あぁ? ガキ、邪魔だ、そこをどきやがれ」
ベルより少し強いか同じ程度だろう。だが、対人戦の経験など無いベルは怒りに染まった人間というだけで及び腰で、それでも立っていた。
「あ、あの……今からこの子に、何をするんですか……?」
「うるせえぞガキっ! 今すぐ消えねえと、後ろのそいつごと叩っ斬るぞ!」
その言葉に、ベルは涙目になりながらもどかないと決意したようだった。バックパックを旬に渡してくる。
「ガキ……! マジで殺されてえのか!?」
「そ、その、一回落ち着いたほうが……」
「黙れっ、何なんだよテメエ等!? そのチビの仲間なのか!?」
「しょ、初対面です」
「じゃあ何でそいつを庇ってんだ!」
「……ぉ、女の子だから?」
「何言ってんだよテメエ!」
「何言ってるのベル君………」
旬からも呆れたような声に、うっ、と詰まるベルだったが男の方は限界が来たようで剣を抜いた。
「いい、まずはテメエからブッ殺す」
ベルも反射的にナイフを構えると、パルゥムの少女がそのナイフを見つめる。
「…………?」
妙に思いながらも、旬はひとまず勇気ある少年に助け舟を出す事にする。
「その辺にしておけ」
「るせぇ! テメエも叩っ斬るぞ!?」
「………俺に殺気は、向けないでくれるか……?」
| 『スキル∶殺気』を使用します |
「─────っ!?」
瞬間、場の空気が変わる。男は目を見開き固まる。
| 『アクティブ』 殺気 必要マナ100 −強力なオーラで指定した相手を一分間恐怖のどん底に突き落とします −複数の相手を指定することが出来ます −効果『恐怖』∶すべての能力値−50% |
旬の持つスキルの一つ。旬より高い能力値か、強靭な精神力があれば無効化可能なデバフ魔法のようなもの。
恐怖に震えるようでは戦う資格を持たぬというようなこのスキルに、男は抗えるほど強くなかった。
「ひ、ひあ…………ひゃああああああ!!」
剣を放り投げ涙と鼻水、涎を撒き散らしながら逃げ出す。脚をもつれさせ転び、うまく起き上がることもできず這うように逃げていった。
「…………た、助かりました旬さん………君も大じ………あれ?」
ベルが少女に声をかけようとするも、少女は何時の間にか消えていた。
「お見事です」
「あ、リューさん」
「どうも」
「はい、どうも……」
「あ、あはは………情けないところ見せちゃいましたかね」
ベルとしては少女を守るために立ち塞がったは良い物の、結局旬に助けられた形になり知人の女性に見られたことを恥ずかしそうに頬をかく。
「いえ、あなたの行動は立派だ。事を済ませたのは水篠さんとはいえ、貴方も同じぐらい称賛される権利がある」
「そうだね。立ち向かったのは立派だったよ、ベル君」
二人の言葉にベルは今度は照れくさくて顔を赤くしたのだった。
リューとベルと別れ、アミッドのもとで素材を換金した旬は、そのまま人通りのない裏通りにへと入っていく。
「何か用か、フェルズ」
その言葉に、誰もいなかったはずの場所にフェルズが現れた。
「君に早速
「クエスト?」
「30階層の最奥、
そう言ってクエスト発注用の羊皮紙と30階層の地図を渡してくるフェルズ。マークが書かれている広間が
「そこにある『宝玉』………同士達は触れないほうが良さそうなのでね。それを18階層である人物に渡してほしい」
「ある人物?」
「合言葉を教えておく。それを君に尋ねる者がそうだ………前金として、こちらを渡しておこう」
そう言ってフェルズはヴァリス金貨が入った袋を渡してくる。それなりに重い。
「成功報酬はその倍を渡そう」
「解った。その依頼、引き受けた」
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