俺だけレベルアップの仕方が違うのは間違っているだろうか 作:超高校級の切望
鮮血が舞う。褐色の腕が、白い雪の上に落ち赤く染め上げる。
「てめえらあああああああ─────!?」
切り飛ばされた肩を押さえる妹を見て、ティオネが叫ぶ。憎悪に染まった獣のように、怒りに飲まれた猛獣のように。
| ティオネ・ヒリュテが |
| ティオネ・ヒリュテの攻撃力が17%アップします |
| ティオネ・ヒリュテの攻撃力が34%アップします |
連続で響くティオネの攻撃力が上がったというシステムメッセージ。現在進行形で上がり続けている。恐らく怒りなどによる効果向上なのだろう。
ティオネの拳が、白鬼を吹き飛ばした。
一撃を持って肉片へと変えられる白鬼。今のティオネの一撃は、間違いなくLv.を超えた、理外の一撃。
「てめえ等全員ぶち殺してやらああああ!!」
圧倒的な個が現れた事により、押し返し始める。だが、白鬼達もただではやられない。飛び散った魔石を喰らい、噛み砕く。
「つ、うぅぅ…………」
ティオネが暴れた事により黒の戦士以外と戦っていた白鬼達はそちらに向かう。脅威と判断したのだろう。ティオネが如何に強くなろうと一度に相手できる数には限りがある。ましてや敵は無限に湧く。回収する暇もない魔石を喰らい、時には足を失い動けなくなった同胞の胸を刳り魔石を喰らい強化していく。
このままではいずれフィンにも匹敵する個体が生まれるだろう。そんな状況で、前衛の一人が片腕を失った。
「ティオナ!」
アイズが白鬼達を相手にしながら叫ぶ。数が、多い。質も、高い。【ロキ・ファミリア】二軍程度だが、それは冒険者の平均から見ればかなり上。
「
詠唱をアイズに魔力が風となり顕現する。この吹雪の中、風を起こすなど悪手だ。仲間に寒波が向かわぬように意識を裂きながらも白鬼達を押し出すのに成功する。
すぐさま親友のもとに駆寄ろうとするアイズに、背後から迫る赤い影。
「ッ!?」
咄嗟に防御するも、その場から吹き飛ばされる。視線の先には剣と剣がぶつかり合い起きた衝撃波で窪んだ雪の上に立つ赤い長髪の女。レヴィスと呼ばれていた女が緑色の瞳を細めアイズを見つめる。
「今の風、そうか………お前が『アリア』か」
ドクンと一際強く心臓が跳ねる。金の瞳が大きく見開かれ、喉が詰まったかのようにヒュウとか細い吐息が漏れる。
何故、その名を知っている。この風を見て、何故その名を出せる。僅かな沈黙の中、周囲の音が離れたかのように感じる錯覚の中その声はやけに鮮明に響いた。
『───アアアアアアアアァァァァァァ!!』
「え!? うわ、な、何だ!?」
ルルネのポーチから甲高い叫び声が響く。レヴィスの意識がそちらに向くのを見て、焦燥を顕にする。
「させない!」
「ちぃ!」
ルルネではレヴィスに迫られればなすすべがないだろう。そうはさせぬとアイズが剣を振るう。一瞬、ルルネとリヴェリアを守るように佇む黒い龍を見て黒い炎が灯りかけたが、それでも仲間を傷つけた彼らの思い通りにはさせられない。
「アイスエルフ共! 目的のものはこちらの女が持っている!」
アイス……
疑問を覚えつつもアイズが速度を活かした連撃を放つが、レヴィスの守りは固く突破できない。レヴィスが逆に攻撃してくれば、アイズは後方へと押しやられる。
「うわわ! き、来た! ちくしょう!」
ルルネが短剣を構えるが、白鬼達相手には意味がないだろう。それが解っているのかゲラゲラと笑いながら迫る白鬼達。カイセルが相手どれる数にも限界があるだろう。と………
「ギア!?」
「ガ!」
彼等に矢が突き刺さる。氷の矢だ。放ったのは、リヴェリア。
「いい拾い物をした」
カイセルが相手取った白鬼が持っていた弓を持ち呟くリヴェリア。モンスターの一部扱いらしく、魔石が砕かれたり抜かれれば灰と成って散る中残っていた弓だ。
現状攻撃力の高い魔法は仲間を巻き込み、しかし生半可な魔法では意味をなさぬ相手にせめて仲間たちへの手助けのために取った弓だが、思いの外とんでもない効果があった。
白鬼達が扱う矢を拾い放とうとしたが、矢を拾う前に魔力が吸い込まれる感覚がしたと思いきや氷の粒子が吹き出し反対の手で矢を象った。
矢切れのない弓。弓を扱う者として、これほど理想的なものはない。
「幸い魔力量には自信がある。我等の仲間を傷つけた罪、その命を持って償うが良い!」
リヴェリアがエルフの森に住んでいた頃の趣味は狩だった。神の恩恵により感覚が強化されたリヴェリアの弓は正確無比に白鬼達に当たる。
自身等の武器が似ているだけの別種族に使われているのが癇に障ったのか顔を歪め、短剣や矢を放ってくる。
全方位からは巨体を持つカイセルでも防ぎきれないが、それでもこの数ならルルネでもギリギリ対処できる。そう、ギリギリ………
「あ!?」
ルルネのポーチを回転しながら飛んできた短剣が切り裂き、中から布に包まれた球体が出てくる。その布の隙間から、
ギョロリと大きな目を持った、髪を持つ緑の胎児。不気味なその姿にルルネが思わず回収しようとした手を引っ込めると、胎児はアイズに向かって跳躍する。
「っ!?」
「ちい!!」
アイズが咄嗟にかわし、レヴィスが手を伸ばすも遅く、胎児は雪に埋もれかけていた瀕死の食人花に
『オオオオオオオオオオオオッ!?』
胎児が体表と同化していき、血管が浮き出るかのように赤い脈状の線が駆け巡り、肉が隆起する。
女の形のような輪郭を形成しながらモンスターが暴れる。アイズも白鬼もレヴィスも距離を取る。特にレヴィスは忌々しそうにモンスターを睨む。
「ええい、全て台無しだ!」
別の食人花を取り込みながら成長したモンスターは女体を象った極彩色の上半身と蛸足のように集まった無数の食人花の足と言う姿を取る。
しかし魔力に反応する食人花の性質は変わらぬのか階層全体を覆う吹雪を生み出したバルカと自身の兵を強化する領域を生み出した旬に向かって突っ込む。
「邪魔だ」
が、旬が片手を女性型に向けた途端、体がねじ切られる。それでもなお動く女性型に無数の黒の兵士が殺到しあっという間に殺し尽くした。
「チィ! よそ見とは余裕だな!」
「まあな」
ギィン! とバルカの攻撃が弾かれる。確かにバルカは強くなった。嘗てのバルカとは雲泥の差だ。しかしそれでも、『戦士の領域』で能力値を上げようと、旬が上回る。
白鬼の中でも力をつけた強化種たちが殺到するが、多少の足止め程度にしかならない。
「っぅ〜………!」
「ティ、ティオナさん………そんな、わ、わた………私のせいで………」
戦場が間違いなく終結に向かう中、レフィーヤはただただ申し訳ない気持ちで一杯になった。なんの成果も上げていない。むしろ、足を引っ張るだけの役立たず。
変わりたいと願ったはずなのに、並びたいと願ったはずなのに。何も変わらない。
「あ、あはは………だいじょーぶだいじょーぶ………落ち着いて、レフィーヤ」
「だ、大丈夫なわけが────ッ!?」
レフィーヤに向かって飛んできた氷の矢を掴み取るティオナは手が凍る前に矢を腕の切断面に押し付ける。すぐに傷口が凍りつき、血が止まる。この低温下の中で一部を凍らせるなど自殺行為だが、血を流し続けるよりもマシだ。
「大丈夫、だから………さ。レフィーヤも、特大のお願い!」
「え、きゃあ!?」
「え、わ、わあ!?」
ティオナはレフィーヤをルルネとリヴェリアの方へぶん投げた。ルルネが慌てて受け止める。リヴェリアは氷の矢を放ちながらレフィーヤを見る。
「何をほうけているレフィーヤ、詠唱を唱えろ」
「で、でも、私の魔法なんか……」
「やるしかないだろう? こうも混戦していては、私も手が回らぬ…………ふっ!」
迫ってきた白鬼のうち一体の額を穿ったリヴェリアは、すぐさまフィンと戦っている個体に向かって一度に3本の矢を放つ。
隙が出来た個体の胸をフィンの槍が貫く。細かく砕けた魔石は雪にまじり姿を消す。
「でいりゃあああああ!」
と、赤い息吹を吐き出したティオナが白鬼達を相手どる。
片腕を失うという特大
しかしフィンと異なり戦い方が雑なティオナが殺した白鬼から別の白鬼が魔石を取り出し食らう。
今はまだ押しているが時間の問題。
「レフィーヤ、アイズ達と並びたいと言うのなら、この程度で折れるな!」
「────っ!!」
『死の七日間』と呼ばれる一週間があったらしい。多くの神々が天に返り、多くの人々が、冒険者が殺された凄惨な事件。アイズは、その頃から、まだ幼い頃から戦っていた。
レフィーヤは、平和になったオラリオにやってきた。だから、差があるのは仕方がない。
(いいえ、仕方なくなんか、ない!)
差があるのは当たり前だ。だが、何もせずに追い付けないのはもっと当たり前だ。追いつきたいと、隣に立ちたいと真に願うのならば、折れるな! 立ち続けろ!
「【誇り高き戦士よ、森の射手隊よ。押し寄せる略奪者を前に弓を取れ】」
レフィーヤの
「ぬっ、ちぃ!」
「はぁ!」
飛んできた氷の矢を払い落としたレヴィスにアイズが最大威力の
「【同胞の声に応え矢を番えよ】」
隻腕になったため、ただでさえ足を取られやすい雪の上でバランスを崩したティオナをフォローすべく背後に迫った白鬼を殴り飛ばす。
「あんたは休んでなさい! 片腕なくなってんのよ!」
「大丈夫だって! ティオネがいるもん!」
「こんの馬鹿ティオナ!」
ティオネは叫びながらもティオナに迫る白鬼を殴り殺しティオナは背後を気にせず目の前の敵を殺す。
「【帯よ炎。森の灯火。撃ち放て妖精の火矢】」
長年の付き合いからフィンの動きは予想できる。スレスレを通過する矢は決してフィンに当たらず白鬼達の動きを阻害する。
「部下もだいぶ減ったな………」
「だが、お前が死ねば他の奴らなどどうということはない!」
バルカと旬は高速で短剣を打ち合う。バルカがこの世界に来て初めて与えられた命令は『強くなれ』。
方法が分かったからそれに従った。部下を呼び出し、共にモンスターを狩り、魔石を喰らう。部下の力が溜まってきたら部下に魔石を献上させる。
そうして育ったバルカの戦闘能力は深層モンスターすら歯牙にかけぬ程。適正Lvを図ることも不可能だろう。少なくとも、現オラリオにおいて匹敵する存在はいないのだから。
だが、悪魔の城にて悪魔の王を殺した旬は、そんなバルカすら上回る。
バルカの両腕が切り飛ばされた。武器はない。喉元に死が迫る。
二度目の敗北。前回なら、実力では自分が
「クソ……!」
『強くなれ』という声がやんだと思えば訳もわからぬ連中を手伝えと来た。大して強くもない女に調子乗った骨、姿を見せず暗躍する何者かとそれに従う気に入らない正体不明。
戦士として、弱者と肩を並べるのも裏でコソコソする連中とつるむのも、本音を言えばゴメンだった。もしまた『次』があるのなら、せめてこう言った強者と共に戦場を駆け巡りたいものだ。
「【雨の如く降り注ぎ、蛮族共を焼き払え】!!」
「水篠旬! 下がれ!」
リヴェリアの叫びにバルカの首を切り落とした旬は後方へと跳び、影の兵士達に残りの白鬼達を一箇所に吹き飛ばさせる。
「【ヒュゼレイド・ファラーリカ】!!」
直後放たれる火の雨。燃え上がる鏃型の魔力弾は宙に孤を描き、白鬼目掛け殺到。燃焼音と風切り音を轟かせながら突き刺さり、炎上。爆砕した。
| エネミーボスを討伐しました |
| レベルがアップします レベルがアップします |
| アイテム∶氷魔の弓×15を見つけました |
| アイテム∶氷魔の短剣×21を見つけました |
| アイテム∶バルカの短刀×2を見つけました |
| アイテム∶バルカの魔石を見つけました |
感想お待ちしております
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エシル(悪魔娘)
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観月絵里(ヒーラー)
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今宮さつき(ヒーラー)