俺だけレベルアップの仕方が違うのは間違っているだろうか 作:超高校級の切望
冒険者になって暫くたった。弱いモンスターばかりしか狩れていない為、経験値は少ないがこちらの金、ヴァリスは稼げてきた。アミッドの所で売る素材となる中層のドロップアイテムやダンジョン産の植物などをイベントリに入れ、地上を目指す。
上層あたりに来ると、複数の魔力が近付いてくるのが分かった。『
「は?」
気のせいかひどく慌てているように見えるミノタウロス達は旬の事など見えていないかのように速度も緩めず拳も斧も構えない。取り敢えず正面のをナイトキラーで切り裂いていくがその間に何匹か逃げる。
「なんで上層にミノタウロスが………って、まずい、ベル君!」
ミノタウロスは本来中層のモンスター。その力は推定Lv.2の、駆け出し冒険者では相手できない怪物。
上層の冒険者で相手できる者はまずいない。次々殺されて行き、何れはベルの下に向かうかもしれない。
| 『スキル∶疾走』を使用します |
速度をさらに上げ、ミノタウロス達を後ろから切り刻んでいく。しかし数も多く様々な道に逃げていく為全てを抑えることは出来ない。
7階層、6階層と登っていく。確か、ベルは担当受付嬢のエイナに2、3階層までと念を押されていたが、最近の物足りないと言いたげなあの様子だともう少し下に潜っているだろう。
感じる気配は残り3つ。うち一つが消えた。ミノタウロスを追っていた気配が幾つかあった、その内の誰かだろう。一番近くのミノタウロスの首を切り落とし、最後のミノタウロスに向かうと丁度ベルが追い詰められていた。どんだけ運がないんだ。
| 『スキル∶支配者の手』を使用します |
「ヴオ!?」
ミノタウロスの腕を握り潰す。突然の事に混乱するミノタウロスを引き寄せようとした瞬間、金色の風が吹く。より正確には旬とは別の方向から来た金髪の少女だ。首を捕まれ後ろに倒れかけるミノタウロスを見て不思議そうな顔を浮かべるも、即座に切り捨てる。
「…………あ」
思わず旬が声に出す。細切れにされたミノタウロスの血が飛び散り、ベルが頭からその血を浴びたのだ。
ベルはポカンと目の前の少女を見つめる。
「………大丈夫ですか?」
心配そうに声をかける少女だったが、ベルは固まったまま動かない。少女は再度問いかける。
「あの、大丈夫ですか?」
「だっ───」
「だ?」
「だああああああああああ!?」
「ベル君!?」
ベルは突然叫びだし逃げ出した。少女は固まり、己の手を見る。血に染まったその手を見て、逃げた少年の背を視線で追う。
「………私って、怖い?」
「……………」
旬はさてどうすべきか、と迷う。同派閥のベルを救ってくれた少女へ礼を言うべきではあるのだが、明らかに混乱しているベルが地上に戻れるかも心配だ。
「あの………」
と、考えている間に少女が話しかけてきた。
「さっきの子、知り合いですよね? 怖がらせてごめんなさいって、伝えてくれますか?」
「………ああ、わかった。それと、あの子を助けてくれてありがとう」
「あ、その、私は……」
少女が何かを言う前に旬はベルを追う為に走り出した。その速度に、少女は目を見開き固まった。
そしてベルと合流したのはギルドの中。ベルの気配が地上に出た時点で走るのをやめ、歩いて追っていったらギルドに付いた。そして、今はエイナに二人揃って叱られている。
「良いですか旬さん。貴方がいくら外でモンスターを倒してきたと言っても、ダンジョンの外のモンスターは代を重ねる毎に弱体化していて、ダンジョンのモンスターより弱いんです。せっかく同ファミリアの団員が居るのに二人別れてソロで進むなんて………」
冒険者は冒険してはならないとは、彼女の言葉だ。常に危険が蔓延るダンジョン内で無鉄砲な行動は死に直結する。パーティーを組める相手がいるならパーティーを組み、安全第一に考えるべきと言うのがエイナの考えである。
「けど、ベル君が落ち込むし……」
実際初日、僕も今日から先輩だ! と意気込んでいたベルだったが、蓋を開ければ遥かに強い旬。自分が一匹倒せただけで大喜びで地上に戻ったゴブリンがあっという間に切り刻まれていく姿を見て、ションボリしてた。
「それでもです。安全をきちんと考えてください」
「善処する」
「それ、実行しない人の常套句ですよね?」
エイナの言葉に返答を返さずジト目で睨まれながらもホームに帰る。ヘスティアも帰ってきていた。何気に彼女も働いているのだ。神様なのに。
ベルが死にかけたと報告すると心配そうな顔をするも、大怪我してないようなので安堵していた。まあベルが出会いを求めて下の階層に向かった事には呆れていたが。因みにその時助けた金髪の少女はアイズ・ヴァレンシュタインと言うらしい。
ダンジョンなどと言う物騒な場所で出会う女が生娘な訳がないとのことだ。
「それに、アイズ・ヴァレンシュタイン、だっけ? そんな美しくてべらぼうに強いんだったら他の男どもがほっとかないよ。その娘だって、お気に入りの男の一人や二人囲っているに決まっているさ」
「そ、そんなぁ………」
「………神ヘスティア」
ショボンとうなだれるベルに声をかけようとしたヘスティアだったが、旬が口を挟む。
「知りもしない相手を、気に入らないというだけで貶すのは良くないと思うぞ」
「うぐぅ………」
旬の言葉に唸るヘスティア。とはいえ、やはりアイズ・ヴァレンシュタインが気に入らないのか不機嫌なようだ。ベルとアイズは出会ったばかりだが何かあったのだろうか?
「うう…………よし! 次は旬君の番だよ! ベル君は出てった出てった!」
旬にはレアスキルがあるという事に成っており、隠し事が苦手なベルには見せないという取り決めになっている。が、それは秘密の話をする合図でもある。
旬は此方の知識を得るために購入した本を閉じヘスティアに向き直った。
「何かあったのか?」
「…………ベル君がレアスキルに目覚めた………想いの丈で効果が向上する、成長補正だ」
「成長補正………それは羨ましいな」
「旬君は十分強いじゃないか、これ以上強くなってどうする気さ…………ああ、それにしても、想いの丈って、これって絶対ヴァレン某に惚れたって事だろ!? ちくしょーう! 僕のベル君が〜!」
うがー! と吠えるヘスティアは、やはり人間らしい。神と聞けばとある石像を思い出す旬だが、ヘスティアの在り方は好ましく思う。
「どんな形であれ、強くなろうと願う事は、強くなる事はいい事だ」
「…………旬君は、ベル君が強くなれると思うかい?」
「まだ何とも………ベル君は、まだ漠然とこのままでも強くなれると思っている。それじゃあ駄目だ………強くなるためには、何もかもしなくちゃ」
「…………今はまだ、憧れている場所に、歩いているだけで届くと思っているみたいだからね。じゃあ、それが遥か高みだと、解ったら?」
「それでもなお、手を伸ばせたなら強くなれるよ」
何せこの世界の人間は、努力すればさらなる力を手に入れる事が出来るのだ。向こうの覚醒者は持たないアドバンテージ。
ランクアップに関しては旬のレベルアップより上がり幅が大きいだろう。ただ、それがかなり時間がかかるだけ。しかし早熟するベルなら、それも覆せるかもしれない。
「ううん、僕の
ヘスティアはそう言って、頭を抱えるのだった。
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