俺だけレベルアップの仕方が違うのは間違っているだろうか   作:超高校級の切望

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豊饒の女主人

 翌日、結局エイナの忠告を無視してソロで潜ったベルと旬。ダンジョンから出た旬はふとバベルに振り返りその最上階を睨む。

 ここ最近不躾な視線を感じる。ここ最近というか、ぶっちゃけるとこのオラリオに来てから毎日だ。恐らくウラノス達が言っていた本質を見通す神だろう。自分の本質は、かなり気に入られたらしい。今の所迷惑を被ってないからとりあえずは放置している。因みにこの視線、ベルと一緒にいると少しだけマシになる。

 

 

 そんなベルの成長は、かなり早い。それが目覚めたスキルと、憧れの対象に対する恋慕だと知っているヘスティアはものすごく不機嫌になってしまっていた。バイト先の打ち上げがあるからと出ていったヘスティアを見て、ベルは首を傾げながら旬に尋ねる。

 

「僕、なにかしちゃいましたかね………」

「ベル君………」

 

 ふぅ、と旬はため息を吐く。

 

「俺に聞かれてもわからないよ」

 

 この男、看護婦に連絡先を聞かれても退院後に検査結果を送ってくるのかなとしか思わないし、妹の友達に突然下の名前で呼ばれても少し疑問に思うだけ、悪魔の貴族に娘を借りると言った際何故その悪魔が怒ったのかも理解しない朴念仁である。何処ぞの薬師の神や武神と3人合わせて会話させたら、彼等の眷属達はまずずっこけるだろう。

 

「そうですか………そうですよねえ。何しちゃったんだろ、僕」

 

 そして、他人に対してなら察するのに己に関してはこの少年も、結構な朴念仁である。

 

「あ、そうだ。実は今朝、知り合った人に店に来ないか言われてて、旬さんも行きませんか?」

「そうだね、俺も食事を何処にしようか決めてなかったし、ご相伴与るよ。財布を忘れちゃ駄目だよ?」

「わかってますって」

 

 

 

 

 

 ベルが会ったというシルと言う名の女性。なんでも魔石を拾ってくれた後、弁当ももらったらしい。そのまま悪いと思うなら食事に来てくれと、まあ要するに売り込みだ。その魔石は本当にベルのだったのだろうか?

 たどり着いた店は2階建てで奥行きのある酒場。店の名は『豊饒の女主人』。中を除き、旬はほう、と感心する。

 店員の殆どがB級覚醒者並み。女将であろう恰幅のいいドワーフの女性に至ってはS級でこそないものの今まで出会ったA級の中では一番強いかもしれない。

 

「………………」

 

 因みに店員は全員女性。それを見て、ベルは赤面していた。いや、別に如何わしいわけではないのだが………。

 

「ベル君、行くよ」

「………はい!」

 

 この程度で覚悟を決めた顔になられても、とは思いつつ店に入ると薄鈍色の髪をした女性がパタパタやってきた。

 

「ベルさんっ………此方の方は?」

「あ、えっと。同じファミリア所属の旬さんです」

「よろしく」

 

 どうやら彼女がシルらしく、二人は席に案内された。何故かベルは大食漢と言う事になっていたらしい。ベルは無難にパスタにしていたが旬は金に困っていないのでステーキを頼んだ。あと、頼んでもない酒を出された。

 

『有害成分が検出されました』

 

『解毒が完了しました』

 

 アルコールがすぐに分解される。残念ながら旬は酔う事はない。そのまま料理に舌鼓を打っているとシルがやってきた。楽しんでくれているか聞きにきたらしい。

 まあ料理は美味い。少し高いが、冒険者に人気の店らしい。シルは沢山の人が行き交うこの店で働く内に知らない人と触れ合うのが好きになったらしい。

 と、その時だった。旬が振り返る。強い気配が複数近付いてきた。まっすぐ酒場に近づいてくる気配はそのまま酒場に入ってきた。十数人の団体。強いな。

 ハンタースのB攻略チームより強い。その中に見覚えのある顔があった。ベルを助けてくれたあの時の少女だ。よくよく感覚を凝らせば、彼女から感じる気配、人ではなさそうだ。ベルは顔を赤くして固まっている。そう言えば、スキルが目覚めるほど強く惚れていたのだったか。

 

「べ、ベルさん?」

「そっとしといてくれシル。初恋の相手と思わぬ再会で混乱してるんだ」

 

 旬の言葉にベルは反応することもなく机に突っ伏しジッとアイズ・ヴァレンシュタインを見つめる。かなり不審だ。

 その間にもアイズ・ヴァレンシュタイン含む【ロキ・ファミリア】の面々は宴を始めた。シルいわく、ここは彼らのお気に入りなのだとか。出来るだけここに来ようと心に誓ったベルはアイズを観察し続ける。失礼だが、少し気持ち悪い。【ロキ・ファミリア】はリヴェリアと言うらしい女性の胸をかけ酒飲み勝負をしてるから、そっちも少し気持ち悪い。

 と、その時だった───

 

「そうだ、アイズ! お前あの話を聞かせてやれよ!」

「あの話?」

 

 不意に狼人の青年が叫ぶ。顔が赤い、酔っているのだろう。

 

「あれだって、帰る途中で何匹か逃したミノタウロス! 最後の一匹、お前が5階層で始末しただろ!? そんで、ほれ、あん時いたトマト野郎の!」

 

 ベルの赤かった顔が、打って変わって青くなる。

 【ロキ・ファミリア】の話を聞いているとどうやら17階層でミノタウロスの集団と遭遇し、返り討ちにしたらミノタウロス達が逃げ出したらしい。その結果上層にミノタウロスが来たのだ。

 納得がいった。旬の世界に例えるならゲートを一週間以内に閉じれなかった際起こる現象、ダンジョンブレイク(ダンジョンからモンスターが出てくる状態)に状況が近い。戦えぬ者がいる場所に強力なモンスターを放ってしまったわけだ。大手ギルドや協会管轄なら謝罪会見ものの失態だ。もちろん上層にいるのは冒険者だが、Lv.1ばかり。下手したら地上進出を許していたかもしれない。

 旬がそんな事を考えている間にも話は進み、狼人の男はベルがミノタウロスの血を浴びて真っ赤に染まってしまった事を思い出し笑っていた。

 

「それにだぜ? そのトマト野郎、叫びながらどっかいっちまってっ………ぶくくっ! うちのお姫様、助けた相手に逃げられてやんのお!」

「……くっ」

「アハハハハハッ! そりゃ傑作やぁー! 冒険者怖がらせてまうアイズたんマジ萌えー!」

「ふ、ふふっ……ご、ごめんなさい、アイズっ、流石に我慢できない」

「…………」

「ああぁん、、ほら、そんな怖い顔しないの! 可愛い顔が台無しだぞー?」

 

 笑い声に包まれるアチラと異なりこちらは静かなものだ。うつむくベルをシルが心配そうに声をかける。

 とはいえ旬は、何も言ってやらない。言うべきではないと判断した。と、しまいには狼人はエルフの女性に諌められるのも無視してアイズに問う、自分と情けないトマト野郎、番にするならどちらか、と。

 アイズはベートと言うらしいその狼人に、あなたは御免だと断る。ならトマト野郎はどうだ、受け入れるのか? ありえない。他でもないお前自身が認めない、と狼人は言う。

 

「雑魚じゃあ、アイズ・ヴァレンシュタインには釣り合わねえ」

「────っ!!」

「ベル君」

 

 立ち上がろうとしたベルは、しかし耳に通る旬の言葉に固まる。

 

「………彼の言葉を否定できるか?」

「………いいえ」

「そのとおりだ。俺も彼の言い分は正しいと思う」

「ちょっ、旬さん!?」

 

 シルが何か言うが、今は無視だ。旬はベルを真っ直ぐ見つめる。

 

「そのうえで君は、どうしたい?」

「…………強く、なりたいです」

 

 旬はその目を知っている。誰よりも、その目に覚えがある。

 

「支給品のナイフじゃ、心許ない。これを持ってくと良い」

 

 旬はストアで購入した攻撃力+10のナイフを渡す。冒険者を足元に見ているギルドの豚が駆け出しに渡す為に選んだ低品質の安物よりよほど上等なナイフ。旬の持つナイフには劣るが強い武器だけ持たせればいいと言うものでもない。事実旬の持つ『カサカの毒牙』はよく効果を打ち消されるし。

 とはいえ、普通の冒険者より成長の早いベルにギルドの支給品は質が悪すぎる。これぐらいが丁度いいだろう。

 

「ありがとうございます!」

 

 ナイフを受け取ったベルは、すぐに走り出した。

 

「………よろしいのですか?」

 

 と、エルフの店員が話しかけてきた。この店の中では特に強い少女だ。道門と互角だろうか?

 

「彼を、一人で行かせて………」

「手を貸すのは、ベル君のためにならないからな。まあ………」

 

 と、旬は片手を何故か仲間に押さえつけられていく狼人に向ける。

 

「おいこら離せ! なんだってんだ!」

「もー! アイズが嫌がってたじゃんこのセクハラ狼! おとなしくしろ!」

「ああん!? るせぇ、肋があたんだよ貧相なマナイタゾネス!」

「なんだとお!? え、うひゃ!?」

 

 ググ、と更に力を込めた褐色の少女だったが、突然狼人の身体が跳ねる。そのまま、床に落ちない。

 

「───!? カ、ア……? がァ!」

「ちょっ!? べ、ベート? どうしたの!」

 

 まるで見えない何かに首を掴まれたかのように首元近くを指で掻きむしるも空を切るばかりの狼人に、誰もが困惑する。やがて彼に腕を向ける旬に視線が向かう。

 

「ベル君が馬鹿にされた事自体は、俺も苛立っているけどね」




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俺だけレベルアップの件の女性キャラを出すなら

  • エシル(悪魔娘)
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