俺だけレベルアップの仕方が違うのは間違っているだろうか 作:超高校級の切望
「溺睡症?」
「それが母さんの患った病気だ。覚めることのない眠りにつく病気………治療法は未だ確立されていない」
「そのような病気が………」
アミッドのおすすめだという薬膳料理の店で会話する旬達。眠り、二度と目覚めないと聞いたアミッドの顔は暗い。彼女は人が病に、怪我に脅かされるのを嫌う。ましてや、そこに居るのに二度と言葉を交わらせられぬなどと、残された者からしたら死よりも辛い。
「ですが、旬さんのお母様は目覚められたのですよね。毒性を中和するか、中和した結果の毒が関係しているようですが」
「ああ、これなんだけど………」
そう言って旬がイベントリから『命の神水』を取り出す。イベントリとは『プレイヤー』である旬のみに見えるシステムの通知やメッセージを知らせる半透明な文字盤と同じく『システム』の機能の一つ。
空中ディスプレイのように浮かんだそれに、様々なものを出し入れできるのだ。
当然イベントリを見えないアミッドからは突然瓶が現れたようにしか見えず、少し驚いたが不治の病を治すと聞き興味が勝ったのかおずおずと手を伸ばしてくる。
「中身を確認しても?」
「もちろん」
蓋を開け、中の液体を見つめるアミッド。ほんの少しだけ指を濡らし舌で舐めとる。
「なるほど。
ブツブツと己の中にある薬の材料となる素材の知識を総動員して再現する方法を模索するアミッド。旬は、今度は『世界樹の破片』と『浄化された悪魔王の血』を取り出す。
「これが3つ材料のうち2つだ」
「これが…………っ!?」
アミッドは鑑定士としても店に立つことがある。そのアミッドをして、入手難易度不明の2つの素材は規格外だったらしい。
「すごいですね………こちらの木片は、ただ削っただけでも最高級の杖に匹敵するでしょうし、こちらの液体は………毒性が強いですがそれさえ抜ければ様々な用途に………お母様を治したのは、こちらから毒性を抜いたものですね?」
「そうだ」
「素晴らしい腕ですね。こちらから、完全に毒性を中和するなんて……」
まあシステムの『CRAFT機能』で、旬の腕ではないのだが。そこは説明が長くなりそうだし、出来るだけ隠すように言われているから黙っておく。
「アミッドには出来そうか?」
「…………いえ、こちらの材料だけでは足りませんし、少なくとも私が知る限りの素材でも、毒性の完全除去は不可能かと………」
「…………そうか」
「申し訳ありません」
「いや、気にしてない」
もともと入手難易度∶Sの薬品だ。材料が足りない今、作れる可能性があればいい程度にしか思っていない。
「ですが………」
が、アミッドは更に続ける。その瞳に宿るのは、昨日のベルとは違う、だが良く似た熱。
「これは私が求める到達点の一つ。かならずや、この薬に匹敵する薬を、作り出して見せます」
「………そうか、楽しみにしてるよ」
「ええ」
旬は『命の神水』を一つプレゼントすることにした。彼女なら、サンプルさえあれば近いものが作れるだろうと思ったからだ。
店を出てアミッドと別れた旬。まだベルはダンジョンだろう。ヘスティアは留守だし、また本屋にでも寄ろうかとした時、少し大きな気配を感じて振り返る。
「シャクティさん……」
「………少し良いか」
「俺が、ガネーシャだ!」
シャクティについていくとガネーシャが元気良く自己紹介してきた。その後ろには、巨大なガネーシャ像。股間が扉だがまさかあれ、建物なのだろうか?
「あれは、ガネーシャだ!」
「………
「え、ホーム?」
遠慮せず入れ! と叫ぶガネーシャ。入りたくないのだが………と、シャクティがぽんと肩叩く。
「大丈夫だ。所詮はただの建物。実物を通るわけではない」
自分に言い聞かせる様に聞こえるのは気のせいだろうか。何か遠くを見てる。
股間の左右で待機している門番達が哀れでならない。
「ガネーシャ様、団長、こちらの方は?」
「うむ! 客人だ! シャクティと俺を含めた3人で大事な話をする!」
「は、はあ………見かけない顔ですが」
「おい馬鹿! お前、
「え!? マジ、団長だぞ!?」
「だけどわざわざこんな場所に来るぐらいだ、相手も本気なんだろう」
「「?」」
何の話をしてるのだろうか? 旬とガネーシャは首を傾げた。シャクティは頭が痛いというように額を抑えた。
中は案外、いや、本当に意外にも普通だった。てっきりボディビルダー見たいなポージングをしたガネーシャ像が立ち並ぶのではないかと、初めてインスタンスダンジョン*1に挑んだ時より覚悟が必要だった。
因みに、後に旬は神こそ違えど己の像で廊下も広間も団員の私室も風呂場も主神だらけの館を目にする事になる。
「ここが俺の部屋で、そして俺はガネーシャだ!」
「本題に入るぞ旬、昨晩、【ロキ・ファミリア】とやらかしたらしいな……」
「ああ………」
昨晩というのは狼人を地面にめり込ませたあの出来事だろう。
「まあマズイか………」
この世界において恩恵受けたては旬の世界で言うE級覚醒者扱い。それがA級覚醒者を倒したようなものだ。恩恵受けたてが、Lv.5の上級冒険者に勝利したというのは間違いなく話題となり、娯楽に飢えた神々が動くかもしれない。
「そういう訳で、お前のバックストーリーを用意した」
そう言ってシャクティが渡して来た羊皮紙に目を通す。
要約すると、旬は都市の外の神の恩恵を得てLv.4まで上り詰めた存在。様々な希少スキルや魔法に目覚めた英雄候補で、主神が自分の所ではこれ以上強くなれないと判断しオラリオに送り出す。その後神ヘスティアと偶然出会い彼女の作ったジャガ丸くんに感銘を受け眷属入りした、とのことだ。
「Lv.4?」
「それぐらいなら、スキルさえあればLv.5に勝てなくもない。と、【ロキ・ファミリア】以外になら思わせられるだろう」
逆にベート・ローガの実力を良く知る【ロキ・ファミリア】なら疑う。彼は間違いなくランクアップ間近。Lv.6に至るまで1年とかかるまい。同じLv.5で、それなりに【ロキ・ファミリア】とも交友があるシャクティだからこそ、この情報では不完全だとは思う。
それでも、他の神々の目は多少マシになるだろうし【ロキ・ファミリア】だって吹聴はしないだろう。
「すでにギルドで公式発表させてもらった。事後承諾で悪いとは思うが………」
「いえ、こちらこそ手間をかけさせてしまい申し訳ありません」
「構わんさ。こちらとしても、厄介な仕事を押し付けることになるかもしれないわけだしな………それと、敬語はいい」
シャクティはなれている、とでも言うように笑う。話は終わった、出口まで案内しようと言うシャクティに、裏口はないのか聞く。
「…………後ろにある」
「………前の方が、マシか」
エイナ・チュールはダンジョンの入場履歴を見て眉根を寄せる。あれだけ忠告したのにベルはまた
「うーん、でも、仕方ないのかなあ………」
ギルド上層部から来た通達を見て、エイナはため息を吐く。
Lv.4。第2級冒険者の中でも上位に位置する第1級冒険者手前の存在。都市の外にそれほどの人材がいたなど、それこそ数十年に一度だ。ベルと足並みを揃えるのは難しいだろう。
本来なら真っ先に都市外で恩恵を刻んだか聞くべきなのだが恩恵持ちがわざわざ零細ファミリア……それも発足したばかりのファミリアに入る訳がないかとミイシャが確認を怠った結果なのだが、何故か上からミイシャのお咎めはなしと通告された。ミイシャは安堵していた。
「すまない、少しいいか?」
「はい、なんで…………リ、リヴェリア様!?」
不意に声をかけられ我に返るエイナ。声をかけてきた人物を見て、慌てて姿勢を正す。
リヴェリア・リヨス・アールヴ。言わずと知れた【ロキ・ファミリア】所属の魔導師で、世界最強の魔導師。それ以上に
「ほ、本日はどのような───!」
「落ち着け。少し聞きたいことがあってな」
「聞きたいこと、ですか?」
「ああ、他所のファミリアの事だから、本来なら尋ねていい事ではないのだが………【ヘスティア・ファミリア】について聞きたいのだ」
「【ヘスティア・ファミリア】ですか?」
丁度、つい先程まで考えていたファミリアだ。しかし、何故?
まさか旬がLv.4であることを知りスカウトでもしに来たのだろうか? 都市外で、あの若さでLv.4。欲しがる神も多いだろう。
「ミノタウロスの件は話したろう? 巻き込んでしまった冒険者の中に、そのファミリアの者が居たらしくてな」
「………あ」
そう言えばベルがミノタウロスに殺されかかってた。というかあの時ベルのアイズ・ヴァレンシュタインについて教えて欲しいという熱意に押されて流されてしまったが、本来ギルドから【ロキ・ファミリア】に伝えるべき案件だったのでは?
まあ、だからと言ってホームの場所を教えていい理由にもならない。
「そういうことでしたら、そちらのファミリアの団員は私と私の友人の担当なので、話を通しておきましょうか?」
「そうか? なら、頼む」
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俺だけレベルアップの件の女性キャラを出すなら
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エシル(悪魔娘)
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