ハイスクールEvolution   作:アイリエッタ・ゼロス

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小猫とイリナ

 次の日、放課後になると、私は学校の正門に向かって走っていた。理由は、誠二さん

 という人について紫藤さんに聞くためだからだ。

 

「塔城さん」

 そして、正門に着くと、既に紫藤さんはいた。

 

「紫藤さん! すいません、遅れてしまって....」

「そこまで待ってないから大丈夫よ。....じゃあ、行きましょうか」

「は、はい!」

 そう言って、私は前を歩く紫藤さんについていった。

 

 〜〜〜〜

 

「....あの、紫藤さん」

「何かしら?」

「今、何処に向かっているんですか?」

 学校から歩いて数十分後、私と紫藤さんは商店街を歩いていた。

 

「カフェよ」

「カフェ、ですか?」

「えぇ。少し長い話しになるから、飲み物を飲めるところの方が良いからね」

 そう言って、紫藤さんはあるカフェの前で止まった。そのカフェの名前は“nascita”という

 名前だった。

 

「ここで良いかしら?」

「はい」

「そう。じゃあ入りましょ」

 紫藤さんはそう言うと、カフェの扉を開いた。

 

「いらっしゃいませ。何名様でしょうか?」

 カフェに入ると、黒髪ロングのスタイルの良い店員さんがそう聞いてきた。

 

「二人よ」

「テーブルとカウンターがありますが、どちらになさいますか?」

「テーブルで。後、窓側の方の席にしてもらえないかしら?」

「かしこまりました。では、こちらへ」

 店員はそう言うと、私達を席まで案内してくれた。そして、お冷やとおしぼりを

 持ってきてくれた。

 

「ご注文が決まりましたら、そちらのボタンでお呼びください」

 店員はそう言うと、店の奥に歩いていった。

 

「好きなものを頼んでくれて良いわよ。代金は私が持つから」

「そ、そこまでしてもらうわけには....!」

「良いのよ。教会からそこそこ金を貰ってきてるから」

「そ、そうですか....それじゃあお言葉に甘えて....」

 私は紫藤さんの言葉に甘えて注文するものを決めた。

 

「決まった?」

「はい」

「そう」

 そう言って、紫藤さんは呼び出しボタンを押した。すると、すぐに先程の店員さんが来た。

 

「この、三種のサンドイッチセット一つと季節のケーキセットを一つ」

「かしこまりました。お飲み物はコーヒーか紅茶、どちらになさいますか?」

「塔城さんはどうする?」

「紅茶で」

「じゃあケーキのセットは紅茶で、サンドイッチのセットはコーヒーで」

「かしこまりました」

 店員さんはそう言うと、また厨房の方に戻っていった。

 

「さてと....注文もした事だし、来るまで少し話しましょうか。誠二君の事について、ね」

 紫藤さんは、先程とは比べ物にならないほど真剣な表情になった。

 

「....はい」

「まず最初に質問なんだけど、兵藤 一誠に双子の弟がいるのは知ってる?」

「えっ....?」

 紫藤さんの言葉に、私は困惑してそう呟いた。

 

「....その様子だと、知らないみたいね」

「す、すいません....」

「別に謝らなくて良いわよ。知らなくても不思議じゃないから」

 紫藤さんは気遣ってくれたのかそう言ってくれた。

 

「話しを戻すのだけど、兵藤 一誠には双子の弟がいたの。その子の名前が兵藤 誠二。

 私が言っていた誠二君とはその子の事なのよ」

「そうなんですか....」

 その時、今の話しを聞いて私は一つ疑問に思った。

 

「あの、紫藤さんは変態先輩と知り合いなんですか? 変態先輩は紫藤さんの事を知らなさそう

 でしたが....」

「変態先輩....アイツにはいいあだ名ね」

 紫藤さんはそう言いながら笑っていた。

 

「非常に腹立たしい話しだけど、アイツとは幼馴染だったのよ。でも、私自身アイツとは

 殆ど関わりがなくてね。ずっと一緒にいたのは誠二君だったの。アイツが私の事を

 知らなさそうなのはそういう事なのよ」

「そうなんですね」

「えぇ。ホント、アイツと幼馴染なんて私の人生で唯一の汚点よ」

 そう話していると、店員さんが注文した物を持ってきてくれた。そして、紫藤さんは一口

 コーヒーを飲むと気分を落ち着かせていた。

 

「あの、紫藤さん....」

「何?」

「その、今、誠二さんは何処....」

「誠二君は亡くなってるわ。六年前にね」

「っ!?」

 紫藤さんがそう言った時、突然お皿が割れる音が聞こえた。驚いて音が鳴った方を見ると、

 店員の人が頭を下げて謝っていた。

 

「凄いタイミングで割れたわね....」

「は、はい....」

 紫藤さんもお皿が割れたタイミングに少し驚いていた。

 

「それで、六年前に亡くなったってところまで言ったわよね」

 紫藤さんはコーヒーを一口飲んでそう言ってきた。

 

「....はい」

「誠二君が亡くなった理由はね、全部アイツとその家族が原因なのよ」

「どういう事なんですか....?」

「塔城さん。アイツは学校でどんな様子か教えてもらえない?」

「変態先輩ですか?」

 私は少し考えて、思いついた事を言っていった。

 

「まぁ、覗きをやったり、スカートをめくったり、胸の大きな人の胸を見ていますね」

「....予想通りすぎて驚きもないわね」

 紫藤さんは呆れてため息をついていた。

 

「誠二君が亡くなった理由はね、全部それが原因なのよ」

「覗きとかがですか?」

「えぇ。悲しい事に、アイツと誠二君は双子だったからね。顔はよく似ていたのよ。それを

 アイツは利用してね。自分がやった事を全部誠二君に擦りつけたのよ」

「っ!? それ、本当なんですか!」

「本当の事よ。そのせいで、誠二君はイジメを受けてね。教師や親も自業自得といって

 何もしなかった。それに嫌になったのか、家出をしたのかしらね....その時に、悪魔によって

 殺された。肉体は一つとして残らず、血の池だけが見つかってね....」

「っ....!」

「可笑しな話よね。誠二君は何もしてないのに、悪魔に殺されるなんて....本当に殺されないと

 いけない人間はのうのうと生きているのに....」ポロポロ

 紫藤さんはそう言いながら涙を流していた。

 

「紫藤さん....」

「私にとって誠二君はね、大切な幼馴染で初恋の人だったの。なのに、私は何も出来なかった。

 イジメを止めることも出来なかったし、誠二君を助ける事も出来なかった....」ポロポロ

「....」

 紫藤さんの悲痛な言葉に、私は何も言えなかった。

 

 〜〜〜〜

 

「ごめんなさい、急に泣いてしまって」

 少しすると、紫藤さんは涙を拭いた。

 

「い、いえ! 大切な人がいなくなるのは、私もよくわかりますから....」

 私は姉様が行方不明になった時の事を思い出しながらそう言った。

 

「....不思議ね」

「えっ?」

「塔城さんの様な人が悪魔になったのが不思議だなって思ってね。何か深い事情でもあるの?」

「....少し、私の過去が関係していて。ちょっと長くなりますが、良いですか?」

「えぇ。それは構わないのだけど....それって私が聞いても良いの?」

「私だけ聞いて話さないというのは筋違いですから」

 私はそう言って、紫藤さんに自分の過去を話し始めた。

 

「私は猫魈という妖怪と人間のハーフだったんです。そして、私には姉が一人いてずっと

 二人で生きてきたんです」

「ご両親は....」

「私が物心つく前に亡くなっています」

「っ! ....ごめんなさい」

「気になさらないでください。....話し、続けますね」

「えぇ」

「両親がいなくなり、私と姉様はある悪魔のもとで暮らしていました。その時に、姉様は

 その悪魔の眷属となり、私をたった一人で育ててくれました。ですが....」

 私はあの時の事を思い出しながら話し始めた。

 

「暮らし始めて数年が経った時、姉様は突然、王である悪魔と眷属を全て殺してしまったんです。

 そして、姉様はそのまま行方不明となり、私はグレモリー家に何故か引き取られたんです。

 その結果、私は眷属悪魔になったというわけです」

「....随分と、大変な人生を送ってきたのね」

「まぁ、今思い返せばそうですね」

「お姉さんとその後は一度も?」

「いえ。先日、姉様は私の前に現れたんです。昔と変わらない様子で。その時に、姉様は私に

 こう言ってきたんです。“兵藤 一誠を信じちゃダメ。あの男の家族は悪魔以上の悪魔よ。”と」

「っ! もしかして、それが私に誠二君の事を聞いてきた理由?」

 紫藤さんはそう言って驚いていた。

 

「そうなります」

「そう....」

 そう言うと、紫藤さんは考え込み始めた。

 

「でも、良かったわね。お姉さんと再会する事ができて」

 紫藤さんは考え込むのをやめたのか、私にそう言ってきた。

 

「はい。でも、色々と謎を残していったんですよね....」

「謎?」

「”どうして私が王である悪魔を殺したのか“と言ったんですよ。まるで、何か理由が

 あって殺したかの様な言い方に聞こえませんか?」

「確かにそうね....王である悪魔を殺した理由、ね....一つ思い当たる事があるわ」

「っ! 本当ですか!」

 私は身を乗り出して紫藤さんにそう聞いた。

 

「私が教会にいたときの話なんだけど、はぐれ悪魔の過去が書かれた書類を見たのよ。

 その時に見たやつなんだけど、はぐれ悪魔になった理由が王が嘘をついたって

 書かれていたのよ」

「嘘?」

「何でも、王とはある約束をしていたんですって。でも、その王が約束を破ったから

 はぐれ悪魔になったそうなのよ」

「約束....」

「(じゃあ、もしかしたら姉様もその悪魔と同じように約束をしていた....? でも、その約束を

 破ったから王を....)」

 私は紫藤さんの話しを聞いて一つの仮説を立てた。

 

「お姉さんがどうかまではわからないけど、役には立てたかしら?」

「はい。その線で私なりにも調べてみます」

「そう。頑張ってね」

 

 〜〜〜〜

 

「今日はありがとうございました」

 店を出て、私は紫藤さんにお礼を言った。

 

「気にしないで。私も、こんなに長く人と話すのは久しぶりだったから楽しかったわ。

 ....話の内容は重かったけど」

「....それは言っちゃダメなやつです」

 私は紫藤さんの言葉にそう言わざるを得なかった。

 

「....それもそうね」

 紫藤さんは苦笑いしてそう言った。

 

「それじゃあ、ここでお別れね」

「はい。....聖剣の件、頑張ってくださいね。私も応援しています」

「ありがとう。塔城さんもお姉さんの件、解明できる事を祈っているわ」

 私と紫藤さんはそう言って別れを告げた。その数十分後、紫藤さんのストレスが

 急上昇する事を私は知らなかった。

 

「....」

 そして、私と紫藤さんの事を見ていた目に気づくこともなかった。

 

 

 

 

 

 

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