「ここじゃ」
九重に案内された俺達はある部屋に案内された。
「母上! 創二とその仲間を連れてきたのじゃ!」
九重はそう言って部屋の扉を開いた。部屋の中は絢爛豪華で、奥には金色の着物を
纏った九重の母親である八坂がいた。
「よくぞ参られた創二のお仲間よ。妾は八坂。裏京都を統治する妖じゃ」
八坂は笑顔で俺達にそう言った。
「お主達四人は妾の客人として招待しておる。何かあれば遠慮なく言って欲しい」
「あ、ありがとうございます」
「うむうむ。それと堕天使三人衆、お主達にはこれを渡しておこう」
八坂がそう言って指を鳴らすと、三人の前にはお札が現れた。
「これは?」
「いわゆるビザみたいなものじゃ。妖の中には三大勢力をよく思わない者が少なくない。
姿を見たら襲い掛かってくる血の気の多い者もいるのでな。それを防ぐためにそのビザが
必要なんじゃ。この京都にいる間は肌身離さず持っていて欲しい」
「....感謝するわ」
「うむ。せっかく来てくれたのじゃ。存分に京都を楽しんでほしい。話はこれで終いじゃ。
あぁ創二、お主だけは少し残ってくれ。少し話したいことがある」
八坂は何故か俺だけ残るように言った。
「わかった。イリナちゃん、少しだけ待っててくれ」
「わかったわ」
そう言って、イリナちゃんと三人は部屋から出て行った。
「....それで、話って言うのは」
「端的に言えば計画の事と九重の事じゃ」
「計画と九重?」
「そうじゃ。まず計画の事じゃが、こちらとしてはほとんど準備は終わっている。そちらが
合図を出してくれればいつでも行動できるようになっておる。....今のところ、計画はいつ
実行するつもりなのじゃ?」
「正確には定まっていない。まだ、愚兄にそこまでの地位が無いからな。やるなら、あの男が
最高潮の時に一気に絶望に落とせるタイミングだ」
「なるほど....ならばまだしばらくは動くつもりは無いと?」
「そうなるな」
「....了解じゃ。他の者達に伝えておこう」
そう言いながら、八坂は立ち上がり俺の隣に座った。
「それで、もう一つの事じゃが....」
「九重の事か?」
「その通りじゃ。....九重が婚約者では不満かの?」
「不満つうか....俺好きな子いるんだけど」
「一緒に来ていたツインテールの少女か....」
「あぁ。まぁまだ告白もしてないんだがな....」
「ふむ....まぁ、その件は夕食時にするとしよう。止めてすまなかったのう」
「気にするな。じゃあ、また晩飯の時に」
そう言って、俺は八坂の部屋から出た。そして、出口に向かうとイリナちゃんがいるのが
見えた。
「イリナちゃん」
「創二君。お話し終わったの?」
「あぁ。....三人は?」
「先に表の方に戻っていったわ」
「そっか。....じゃあ、俺達も行こうか」
「うん!」
俺はイリナちゃんとともに表の京都に戻った。
~~~~
「やっぱり実物は写真で見ると違うね」
「そうだな」
まず俺とイリナちゃんは清水寺に来ていた。
「それにやっぱ人多いな....流石は夏休み」
「そうだね....」
そう言いながら、イリナちゃんは俺の腕に抱き着いてきた。
「イリナちゃん!?」
「そ、その....迷子になっちゃだめだから....」///
「そ、そうだな」///
俺は少し恥ずかしかったがイリナちゃんの言う事も最もだったため肯定した。
~~~~
「おっと、そこのお兄さんとお嬢さん。着物のレンタルはどうだい?」
清水寺から出て町中を歩いていろんな店を見ていると、突然店前に立っていた店員に声を
かけられた。
「着物のレンタルですか?」
「おうよ。見たところ観光客だろ? せっかくの京都観光だったら着物の方がテンション
上がるぜ?」
「へぇ....イリナちゃん、せっかくだしレンタルしていかないか?」
「良いよ。じゃあお願いします」
「毎度あり! じゃあお兄さんはそっちで、お嬢さんはそっちから入ってくれ」
「あぁ。じゃあイリナちゃん、またあとで」
「うん」
俺とイリナちゃんは一度分かれ、それぞれレンタルする着物を選んだ。
~三十分後~
「お、おまたせ創二君」
先に着替え終わり外で待っていると、イリナちゃんが出てきた。イリナちゃんは青をベースと
した花の柄が描かれた着物を着ていた。そして、髪型はツインテールではなくストレートに
なっていた。
「ど、どうかな? 似合う....?」
「....女神だ」
「ふえっ!?」///
俺はそんなことを呟きながらイリナちゃんに抱き着いていた。
「そ、創二君!?」///
「似合ってる....すごくかわいいよ、イリナちゃん」
「あ、あう....」///
イリナちゃんは真っ赤になり顔からは湯気が出ていた。
「そ、創二君....もうやめて....これ以上は私が死んじゃう....」///
イリナちゃんは俺の口を手で押さえながらそう言ってきた。そう言われたので、俺は大人しく
イリナちゃんから離れた。
「もう! 創二君のバカ! 恥ずかしかったんだからね!」///
イリナちゃんはそう言いながら俺の胸をポカポカ殴ってきた。
「ごめんってイリナちゃん」
俺はそう言ってイリナちゃんの頭を撫でた。
「....スイーツ。奢ってくれたら許してあげる」
「わかったよ。じゃ、早く行こっか」
俺はイリナちゃんの手を握り、町中を歩き始めた。
~~~~
「どう?」
「美味しいよ。これだけの行列に並ぶって、名店なんだね」
「あぁ。前に来た時に食べたんだがめちゃくちゃ美味くてな」
俺とイリナちゃんはとある店に来ていた。イリナちゃんは抹茶のショートケーキで、俺は抹茶の
ティラミスを食べていた。すると、イリナちゃんは突然周囲を確認し始めた。
「どうしたイリナちゃん?」
「いえ、その....誰も見てないかなって」
「?」
「その....あーん」
イリナちゃんはショートケーキをフォークに刺すと、それを俺に向けてきた。
「えっと、これはその....」
「は、早くして....」///
「あ、あぁ....」///
俺は少し恥ずかしかったが、イリナちゃんにショートケーキを食べさせてもらった。
「(美味いけど....それよりも顔が熱い....)」///
「そ、創二君も....」///
イリナちゃんはそう言うと、目をつぶって口を開けていた。
「あ、あぁ....あーん」///
「ん....美味しいね、創二君のも」///
イリナちゃんは満足したのか、凄く笑顔だった。
「そっか....」///
「(やっぱり、笑ってるイリナちゃんは可愛いな....)」
俺は一人、笑顔のイリナちゃんを見ながら心の中でそう思っていた。
~~~~
「これ、イリナちゃんに似合うな」
「そうかな....?」
「あぁ。よく似合ってるよ」
「....ありがとう」
「じゃあこれにしよっか」
そう言って俺はレジに持っていき、代金を支払った。そして、俺は外に出て買った簪を
渡した。
「創二君、大事にするね」
「あぁ」
そう話していると、突然目の前に狐が現れた。その狐はその場で一回転すると人の形に
なった。
「石動様、紫藤様。八坂様より伝言でございます。そろそろ宴の準備が出来たので裏京都に
戻ってきて欲しいと」
「わかった。レイナーレ達には....」
「彼女達にも使いは出しておりますのでご安心ください。では」
狐はそう言うと、煙に包まれてこの場から消えた。
「創二君、今のは....」
「八坂の使いだ。....取り敢えず、そろそろ戻ろっか。着物も返さないとだめだし」
「....そうだね。じゃあ行こ」
そう言って、俺とイリナちゃんは着物をレンタルした店に向かって歩き出した。