親に虐待を受けてニンテンドースイッチを買ってくるまで帰ってくるなと言われたネット小説サイトで1ヶ月以内に日間ランキング入りを目指す作家志望TS転生者ウロボロ以下略先生とその編集の話   作:各是ライト

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感想をもらって舞い上がって書いたので初投稿です
もっと感想をくれてもいいのよ?(調子に乗ったら乞食してもいいと、古事記にもそう書いてある)


両性具有童貞聖母触手宇宙人の可能性について

 頭尾香椎は作家志望TS転生者である。前世の価値観なぞもう覚えてない。

 

 元彼、現彼女は、ライトノベル作家を志した→

 何とか書き上げた一作はカテゴリーエラーで三次選考止まり→

 じゃあ、売れ線を書けるようになろう(唐突な風刺)。

 

 この冠前絶後の意味不明な(理解する努力をしろ)三段論法を突き付けられた彼女。

 彼女は入魂の一作の企画を通すために一か月の僅かな時間で『カケヨメウレロ』の日間ランキングを入りするという課題に打ち込んでいる。

 

 雨の日も(←確定で壊れるビニール傘)。

 風の日も(←何故か観測者のいるときのみ吹く)。

 嵐の日も(←やっぱり天気いつも悪ない?)。

 親の虐待がヒドイ日も(←ニンテンドースイッチを買ってくるまで帰ってくるなと言われた。ここいる?)。

 

 彼女は来る日も行く日(現在、七日目。言うほどか?)も投稿し。

 ネットカフェで誰に目にも止まらない、端の棒にも引っ掛からない小説の執筆に励んだ。

 その結果承認欲求が爆発し、プライドがズタズタになろうと魂を賭して書いた。

 転生者特有の常人ならざるメンタルがなせる業である(←要検証。ソース求む)。

 

 そんな彼女は入魂の一作がカテゴリーエラーと告げられた翌日、彼女は図書館を訪れていた。かつて常連として通っていた地元のものでなく、それなりに大きなところ。

 

「うわぁ、大きい」

 

 ここまでの規模の図書館を訪れるのは今世では初体験だった。

 その蔵書数と中央を貫くシャレオツ(死語)な螺旋階段がお洒落(卓上の上の文章)。

 調べてみれば、入魂の一作『スチクナモナ・トラノニトラノニ』(何語?)の参考になる文章文献がごまんとあるのだろう。

 それは何ともロマン(ローマ!!)のある話だ。

 

「イケない。イケない。今日来たのはそのためじゃない」

 

 魅力的な話であるが、思い切り首を左右に振る。

 本日わざわざ安住の地となっていたネットカフェを飛び出してここを訪れたのに目的がある。

 

『ウロボロ先生の読書遍歴がどんなものかは分からないですけれど、アウトプットばかりでなく、インプットしてみるのはどうでしょう? 明日の短編の執筆はおやすみにして』

 

 政弦マトエの助言は頭尾香椎にとって目から鱗だった(初歩では?)。

 確かに自分には前世の記憶というアドバンテージがあるから、不要だと思っていた。

 だが言われてみれば、やりたいことをやりつつも、大衆受けする要素を加えた(当社比)あの作品がウケなかった原因は(自業自得)そこにあるのでは、と(責任転嫁)。

 

 つまり、転生したこの世界は現代風なだけで価値観が違う可能性である(支離滅裂な思考)。

 香椎の転生前の世界(普通の日本)ならばカテゴリーエラーなどという不名誉は受けなかったに違いない(どしたって受けるわ、アホ)。

 

 というわけで、この図書館で様々な名作売れ線の作品を読み漁ろうというわけである。

 

「うん、やっぱりこれがよさそうだ」

 

 そういって香椎は一冊の本を手に取った。

 リフレッシュでなんかアイディア(アイデアって言え)も浮かんできそうだし(エビデンスなし)、浮足立ってしまう(思わずスキップして職員さんに怒られた)。

 ともかく、プライドが摩耗していくばかりに比べれば有意義な時間が過ごせそうだ。

 

 

 

「それで、ウロボロ先生は幾つか本を読んで帰ってきたと」

 

 ネットカフェに戻り本日の活動をマトエに報告するとスーム越しに問いかけられる。

 

「はい。久しぶりに気分転換して。気負ってたものが落ちたような気がします」

「それはよかったです。ちなみに何を読んだんですか?」

 

 いつも通りの平坦で抑揚のない声で問いかけられる。

 昨日「カテゴリーエラーなんですよ!!!!!!!」と絶叫してた人物と同一のもとは到底思えない(ギャップがかわいい)。

 

「えっと、三十路を越えた大工の男性がある日、神に与えられた使命に目覚め、非業な死を遂げながらも最後は役目を果たし、報われる話ですね」

「おお、それっぽい」

 

 ただウロボロ先生もとい香椎が“らしい”作品を読んで来ただけに過ぎないのに、言い知れぬ感動を覚えた(母性の萌芽?)。

 だが、それと同時に何かイヤな予感(炎上案件の気配)がする。彼女の語る内容に既視感がある。

 無邪気に語る彼女にそんな害意や誹謗中傷は感じられない(ホントか?)。

 けれど、予感は留まること知らず、確信に変わっていく。

 

「つまり、磯波文庫の聖書を読んできました」

「なんで??」

 

 思わず普段からある程度作っている冷静沈着な仮面を放り出して聞き返してしまう。

 

 マトエにとって想定外(想定外)もいいところだった。

 創作活動において確かに聖書を読むことが役に立たないということはないだろう。

 この国ではあまり実感することはないが、多くの国、そして文化に深く根付いたものであるし、この国の人間も間接的であれば多くの創作物から摂取している。

 かの概念への深い理解は創作家にとって一種の武器になると言って差し支えない。

 更には作風にもよるが、さらりとそれの一節を引用することは作品を引き締めるファクター足りえるだろう。

 

 だが、ぶっちゃけそういうのは求めていたわけではない(これはホント)。

 むしろ弱冠十四歳(マトエ視点の話、精神年齢は計算してはいけない)で一つの異星文化を書き上げた彼女はそういった方面の創作技能はある程度担保されていると言っていい(人類の感性に合っているかはともかく)。

 だからこそ、ライトノベルを読んで、競合他社を知り、そこから己の異端加減を知って欲しかった。あわよくば軌道修正して欲しかった。

 

「何でって、売れ線を読んで来いって言われたので世界で一番読まれた本を、と思いまして」

 

 もしかしてウロボロ先生はバカなのでは?(そうだよ)。

 マトエは口から出かけたその罵倒の言葉を寸前で呑み込んだ(えらい)。

 この思考の跳躍こそがカテゴリーエラー乱造の原因だと香椎は本気で気が付いていない(気が付け、さもなくば未来はないぞ)。

 

「えっと、それで何か得るものはありましたか?」

 

 一応の弁護をすれば、彼女もこの突飛な選択にも意図があるのだ(ホントか?)。

 先程マトエが思考したように宗教の経典というものは古来より存在し深く定着している。現在にも影響力を持つものとなれば尚更である。

 よって、まず前世との比較対象として選択したのがこれであった。

 もっとも前世の記憶はほぼ忘却してしまっていて比較は成立せず得るものはなかったが(やーい、失敗してやんの)。

 

「そうですね……救世主を産み落とした聖母に対して童貞という形容が見られて、彼女様が両性具有(ふたなり)の可能性を思案している間に一日が終わりました」

 

 ウロボロ先生はアホだ(いまさら)。

 お前は何を言っているんだ、とマトエは頭を抱えながらも確信した。

 思い返せば、彼女が言及した版の聖書をマトエは学生時代に読んだ記憶がある。

 その頃の自分は度肝を抜かれつつも、その後調べてみた。

 すると、童貞とは元来カトリックの修道女を表す語であり、現在でも広辞苑などではそういった行為をしたことがない人物、“主に男性を指す”とされているおり実は両性に使える語なので、この表現にも納得できた。

 事実や現実としてはそれ以上でも、それ以下でもない。

 そもそも、常人はそんなイカれた(不敬罪級の)解釈をしないのだ(尚この小説はフィクションです。実在の宗教!!! とは何の関係はありません!!!!!!! 心底、ごめんなさい!!!!!!!!! ゆるして)。

 

「そう考えると、彼女様が聖母として選ばれたのも納得できますよね。大アルカナの世界を始めとして両性具有は一般に神の領域や完全性の象徴とされますし」

 

 理解し難いウンチクと考察を語る香椎(そういうの需要ないから)。

 いい加減黙らせないと、関係者各所が説明責任を問われそうだとマトエは思った。

 スームで二人しか聞いていない(ほんまか?)言うなれば与太話であるというのに。

 

「ところウロボロ先生、明日の予定はどうするおつもりで?」

 

 結局、無難な手段として露骨に話を逸らすことにした(賢明な判断)。

 

「んー、ネタのストックもありませんし、せっかく思いつきましたから両性具有(ふたなり)童貞聖母触手宇宙人について一作書いてみようかと」

「『カケヨメウレロ』に投稿いただいた事に改めて御礼を申し上げますと共に、ウロボロ先生の今後一層のご活躍をお祈り致します」

「書く前からお祈りメール!?」

 

 さすがの触手スコスコウロボロスもとい頭尾香椎もこれにショックを受ける。

 しかもなんか前世のトラウマが刺激される。

 ネットで酷い目に遭ったことぐらいしか覚えていなかった香椎。

 だが、もしかすれば音に聞こえし、闇の就活生だったのだろうか。

 

「いやですよ。私は書きますからね!? 両性具有(ふたなり)童貞聖母触手宇宙人が現実で広く認知される権利を、知られる権利を私が守らないで誰が守るんですか!?」

「じゃあ、せめて究極劣悪モンスターじゃなくて、せめて人間にしてください。お願いです」

やじゃ、人の子など書きとうない!! この子はわしの子じゃ。わしが責任をもって書かなきゃならんのじゃ」

「口調がおかしくなってますし、イマジナリーチャイルドの権利を守るぐらいだったら、現実の報われない子供たちの権利を保護してください(?)」

 

 なかなかの論理の飛躍である。

 空想上の存在の保護と、現実の子供たちの権利を守ることは根本から違う。

 そのぐらいは、マトエも承知している、やはり所詮は与太話なのだ。

 だが、その一言で所謂“のじゃろり”口調でふざけていた香椎は黙り込んでしまう。

 何だかんだ言葉の数の多い彼女にしては珍しかった。

 

「………………現実の報われない、子供たち?……私では?」

「えぇ?」

 

 思いもよならない返答に困惑の声が漏れる。

 

「いや、ニンテンドースイッチを買ってくるまで帰ってくるな、は普通にネグレクト、というか虐待ですよねって話しですけれど……」

「…………アレ、ネタじゃなかったんですか?」

「…………アレ、ネタだと思われてたんですか?」

 

 スーム越しに沈黙が流れる。

 年齢にしては家族の話が一切出てこないとは思ったら、特大の地雷だなんて思わなんだ。

 

「一応ネタではありませんよ。だから、わざわざネットカフェを使ってるんですし」

「テッキリ、家で宇宙人の話なんて恥ずかしいから使ってるのかと思ってました」

「そんなもったいないことしませんよ。そもそも私、人前で話して恥ずかしい小説なんて書いたことありませんし

は?

「ヒェ」

 

 ガチトーン(ガチ)である。

 作品はともかく、少なくともカテゴリーエラーに関しては恥ずべきことでは? マトエは口に出しかけた言葉を呑み込んだ。

 香椎としては、“ただそこに世界があってそれを書いているだけ”なのだから恥ずべき点などあるはずがないのだ(お天道様に顔向けできるという謎の自信)。

 

「あはは、それでともかく今はこの身一つですよ。今はスイッチ代として持たされた二万円で食い繋いでます」

 

 JCⅡ(女子中学生ツー)という身分じゃ、まだバイトも出来ませんしね。

 しかし、昨日の今日で自身が不利であると察しているので誤魔化すように笑って、現状を伝える。

 一応はスイッチを探す気概はあったのだが、二万円では買えないことに気が付いて、家出の決心がついた(しょうもなくない?)。

 

「今、どこのネットカフェですか?」

「はい?」

 

 なんて香椎が思考していると、ガサゴソとうごめく音がパソコンを通して聞こえてくる。

 急な仕事でも入ったのだろうか。だとしたら少し残念だ。

 なんだかんだと言って、マトエと話す時間はすごく楽しいのだから。

 

「だから、今どこのネットカフェから会話してるんですか?」

「急にどうしました?」

「迎えに行きますから住所を教えてくださいってことです」

「え? なんで?」

「別に自分で言った手前ってヤツですよ」

「どういうことです?」

 

 マトエが今の香椎の所在地を知ってどうしようというのか。

 やはり、彼女は意図が如何せん香椎には掴めない。

 困惑する香椎を尻目に(パソコン越しなので実際は不明)一つ溜息をついてから、マトエは端的に告げる。

 

「空想上の存在をどうこうするより、まずは目の前の現実の報われない少女を保護するのが先ってことです」

 

 ライトノベル編集者の言葉ではないかもしれませんけれど。

 香椎は、そう付け加えたマトエのイケメンオーラにアテられ現在地をゲロった。

 やっちゃったぜ(反省しろよ?)

 

 

 ──政弦マトエにとって、頭尾香椎は新星のような少女である。

 

 単なる興味に過ぎなかったのだ。始まりは。怪文書を送り付けた十四歳の少女がいると聞けば誰だって気になる。そういう小さな感情から、彼女の作品を読んで与えられたのは、大いなる興奮だった。

 

 宇宙人、しかも人類という概念を一切使わずにここまで書き上げた少女が、もしも人間というものを書き記せばどうなるか。

 

 想像しただけで心が躍ったことを、マトエは覚えている。

 

 だがそのエモーションは、彼女の担当編集になって初めて対面したときに打ち砕かれた。

 

 全体的に栄養失調なのか年齢の平均以上に矮躯に、雪で染めたような白磁の肌と白髪のツインテールなどという、目を引く愛らしい容姿になどではなく。

 じっと、混沌と暗澹がとぐろをまくような、あの赤く赤い淀んだ目によって。

 

「ただそこにそういう文明のそういう世界があるから、それ書いてるだけですけれど」

 

 初めて会ったとき──カテゴリーエラーなんかはさておき──何故あのような異星文化を書いたのか聞いたときの彼女の返答がそれだった。

 

 それを聞いてようやく政弦マトエは頭尾香椎を理解した。

 

 何せ、彼女とはこちらを見ていて見ていない。

 ただ目の前の世界を夢想へ飛び立つための滑走路あるいは部品としか捉えていない。

 眼前の存在を使えばどういう風に飛び立てて、どこに墜落するのか、それしか見てない。

 

 つまりは、ここにいるだけでこの世界を生きてない。

 

 死んでいるにも等しいのだ。

 

 新星とは星の最も輝く最終進化段階のことであり、あと一手で死ぬ星の末期の姿。

 

 だから、マトエはあの日の大いなる興奮が正しかったと悟り、それに誓った。

 

 人間を見ていない、人間なんて書きたくないと、拗ねた子供のような彼女を振り向かせ、絶対に人間を書かせてみせると。




政弦マトエ せいげんまとえ
親に虐待を受けてニンテンドースイッチを買ってくるまで帰ってくるなと言われたネット小説サイトで1ヶ月以内に日間ランキング入りを目指す作家志望TS転生者触手スコスコウロボロスの編集者。
実は普通に腐女子でもある。暗い作品なら原作の雰囲気ぶち壊しの底抜けに明るい現パロと余計に暗くしたような死にネタが好き。
ただ男性向けライトノベルの編集をしているだけあって、普通にノーマルラブも好きらしい。その場合は身長差がある(女性の方が高いカップル)が好き。

聖母に対して童貞という形容が用いられた聖書
実在するらしい。お暇があれば探してみては?

なんか同行者によって勝手に魂を賭けられたので失踪します

ps、両性具童貞聖母触手宇宙人の母になるっていうのは苗床ENDでは?ボブ訝。

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