真剣で聖人君子(ではない)   作:ピポゴン

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お久しぶりです。たまーに久々に感想をもらうとブーストがかかりますね。ありがとうございます。もう一つの方はもうちっとだけ時間がかかります。生きてました。


将来を案じるのは弱者である蟻の理論

目が覚める。時刻は時計を見なくてもわかる。朝6時だ。アラームや朝日などなくとも、俺のこのボディは起きたい時間を意識するだけで自動的に目が覚める。別に3年間の九鬼での生活のおかげでは無い。もともと生まれた時からそうなのだ。

学校まではまだ時間がある。いつもの通り日課のトレーニングをこなす。ここ2年間は変わらず肉体を維持することに徹底している。流石の俺もスタミナや柔軟さ、筋力に関してはある程度トレーニングしなければ躍進的な成長は見込めない。全速力でのフルマラソンやジムに置いていないレベルの重量上げなどを高ペースでこなしていく。

殆どの達人と呼ばれる者達は、必ず常軌を逸した才能と、血の滲むような鍛錬で達人へと至る。ここで言う達人とは俺基準だ。まあ一部例外は存在する様だが。しかし、達人へと至った者はそれで終わりではない。その実力を維持しておくためにも、また厳つい労力を必要とする。それは基礎トレーニングもそうだが、身体の動かし方の確認、内在エネルギーのコントロールなどが主である。川神鉄心やヒュームなども、この鍛錬は毎日と言っていいほど行っていた。

だが、弱者の理論だ。俺に必要なのは先程も述べた通り基礎トレーニングだけ。技や身体の動かし方の確認。増してや気のコントロールなど、その時の状況によって最善を叩き出せばいいだけだ。

 

一通りのトレーニングが終わると手短に風呂と朝食を済ませ、支度を整える。

さて、憂鬱の始まりだ。

 

________________________

 

3年間の九鬼での任期を終え、日常生活へと戻ることになった俺の元に残ったのは、それはもう莫大な資金だった。結局最後までジジイ共から一勝も奪えなかった。特にヒュームとゾズマは負ける度に一言、おつまみサイズの煽りを入れてくるので、最後の方は自我を失わぬ様に気をつけたものだ。だがまあ、最後の追い込みで順位もかなり上がり、給料もはねあがったことで、労働して少しは良かったと思えた。終わり側には九鬼英雄やら揚羽やら、紋白やらにかなり渋られ、万が一再就職するに当たりコネも作れた。

と、ここまで聞くといいこと尽くめだ。だが、ここからが問題だった。

 

進学するに当たり俺は煩わしさの無い一人暮らしを強く望んだのだ。貯金は余りある。3年間の一人暮らしなど、これでもかと贅沢をしてもなんら問題では無い。だが、そこでうちの両親の待ったがかかった。

何やらその金は将来の為に取っておけだそうだ。うちの親は心配性なのか、本当に必要な時が出てくるかもしれないので、それまで手をつけずに取っておくことを勧めた。この俺だ。そんなものはどうやっても稼げるし、金に困る時など来るわけがないのだが、親の言うことも無碍にはできずにやむなく了承した。

しかし一人暮らしが出来ないとなると、一つの問題が生じる。家から進学先の川神学園まで遠いということだ。俺のハイスペックボディならば散歩で着く程度だが、親はそこを案じたらしい。俺の知らぬ間に、勝手に寮への登録を済ませていた。昔の川神院への入院を彷彿とさせる手際だった。人と私生活を共有するのは嫌いなのだが、渋々OKしたのだ。後悔したのは少し先。まさか、まさかあのなんとかファミリーの馬鹿の寮だとは思わなかった。

それからというもの、位置が割れ、以前よりアクセスしやすくなった俺の元になんとかファミリーの連中が押し寄せる様になった。最悪の序章である。だが、弩級の最悪はここからだった。

入学し、煩わしく学校に通うこと一年。つまり去年だが、なんとかファミリーがこぞって川神学園に入学してきた。それに伴い、なんとこの俺のいる寮にもあいつらが入ってきたのだ。嗚咽がする。そこから1年間。良く耐えたものだ。精神は擦り減り最早ボロ雑巾。朝から晩まで付き纏われる生活が始まったのだ。

 

 

________________________

 

「やべー寝坊した。またしゅう兄に先行かれちゃったぜ」

 

「しゅう兄ほんと朝早いからね。もたもたしてるとすぐ置いてかれるから」

 

「俺様もしゅう兄見習って早起きしようとすんだけどなー。ゲームやっちまって上手くいかねえんだよ」

 

眠そうに目を擦る大和に風間ファミリーの面々が話しかける。彼らは小学生からの付き合いであり、一時は親の事情で離れた京を加え、晴れて川神学園へと全員で入学を果たした。実力至上主義の川神学園で、彼らは最下位の、問題児とすら称される2-Fに所属している。例外があるとすれば修吾だけだ。修吾は対極の学園最上位の3-Sへ所属していた。

 

「まあどうせいつもの場所で合流できるでしょ」

 

「あの人も毎日大変だよなー」

 

いつも通り駄弁りながら通学路を進んで行く。少し歩き、彼らは川にかかる大橋に差し掛かった。

 

「やっぱりな」

 

大和が軽い調子でやれやれと溜息を吐く。橋は川神でも有数の珍スポット。市内の変態どもが何かに吸い寄せられる様にこぞってこの橋に訪れることから、名付けられた名は変態大橋。耐性があるものでなければ寄り付こうとしない。

その橋が、やけに賑わっていた。

大橋の両端に学園の生徒が集っている。河川敷を見下ろしている様だった。大和達はその人集りの片方へと向かう。

 

「よう葵。それと井上と榊原」

 

そしてその一角の3人に声をかけた。

 

「ああ、おはようございます大和君」

 

「んで、今日はどっちがどっちだ?って、聞くまでもないか」

 

大和はそう言って人だかりを見回す。橋の両端に人が集っているが、良く見ると男女比が違う。大和達や葵冬馬などがいる方は比較的に女子が多い。対して対面の人だかりは男子の割合が多かった。

 

「ええ。今から始まるところですよ。まあ、どちらも一瞬で終わってしまうので両方見ることは叶いませんが」

 

大和達は聴きながら河川敷を見下ろす。するとそこには、大量の他校の男子に囲まれた男が1人。スラっとした高身長は制服すらも高級スーツの様に着こなし、しかし首元とネクタイを緩めたスタイルは男の大和も魅了する大人っぽさを醸し出す。捲った腕からは鍛えていることが一瞬でわかる筋肉が露わになっている。そして、顔。テレビに出ている俳優も顔負けな甘いマスク。どれをとっても完璧。見紛う事などありえない。それは正しく、彼らが慕って止まない帝明修吾だった。

囲んでいた集団から、1人の男がズイと出てくる。改造された制服のデザインの違いから判る様に、この者らのリーダーの様だ。

 

「おいてめえ。先日はどうもなあ。ヤスちんをやってくれたそうじゃねえかよ」

 

無駄に張り上げた声は見物人にも容易に聞こえる。対して修吾の方は興味なさげな視線を向けていた。

 

「ヤスちんは俺の大事なダチでよ。それをぶっ飛ばされて黙ってたとあっちゃあ、ダチの名が廃るんだわ」

 

それに、と言って男は付け加える。

 

「武帝と呼ばれるてめえをぶっ殺しゃ、俺らの名も上がるってもん」「うるせえよ」

 

声を張り上げて話していた男に対し、修吾の発した声は凛とした美声。声量は大したものではなかったが、それでもその声はその男以上に響き渡った。

 

「喋ってねえでかかってくんならささっと来いよ」

 

構えることはしない。だが、その言葉が開戦の合図だった。

 

「スカしてんじゃねえよたんカスがあ!!」

 

怒号と共に四方八方から修吾に踊りかかる。全員が凶器を携え修吾に殴りかかる。

 

が、それらが修吾に当たることはなかった。スッと修吾が位置をずらすと、まるで避けているかの様に凶器が修吾を素通りした。これだけの手数。それはまるで針の穴に糸を通す様な技。

大振りを避けられ、体勢がぐらついた。先頭の複数人に対し、修吾は円を描くように蹴りを放つ。体幹がズレることなく、静かに放ったその一撃は、彼らの意識を容易く刈り取り、その場に伏せさせる。

後続の者達がそれを意に介さず突っ込んでくる。が、修吾は一歩を踏みしめるごとに、男達の間を縫い進み、通りすがりに拳を掠め男達をのしていく。

 

「綺麗…」

 

観客の誰かがそう呟いた。

 

「綺麗…ですか」

 

応えるように冬馬が呟いた。風間ファミリーと葵冬馬達は謎に誇らしくなる。そう、修吾の武はとてつもなく綺麗なのだ。まるで武というより、舞の様な。本当にあの百代と同じ流派かと疑いたくなるほどに。

 

「百代さんのが全てを蹴散らす嵐の様な動とするならば、修吾さんのは小河を行く流水の様な静。どちらも見応えがありますね」

 

対面では何人もの男が空へと吹き飛び消えていく。百代が暴れているのだろう。あちらは大歓声が飛び交うが、こちらは声を発する者は1人としていない。みなオーケストラでも見る様に釘付けになっている。

 

「どっちも半端じゃないけど、しゅーにいの方が凄い。百代先輩の方は私みたいな目の長けてる人にしか見えないけど、しゅーにいのは誰でも目で追うことができる。多分あのやられてる奴らでも。それでも対応できない。相手が動く前に行動を開始してるし、力の流れを見てるから、見えてたとしても身体がついていけない」

 

京は風間ファミリーといる時もだが、修吾に関係するとやけに饒舌だ。いつもの寡黙さが嘘の様に嬉々として喋る。

 

「京がそういうんじゃそうなんだろうが、俺達じゃあどっちもすげえとしか思えねえぜ」

 

「だよねえ。片や視認できない速度で相手を殴り飛ばしていくモモ先輩と、片や見えても回避不能な動きで相手を圧倒するしゅう兄。どっちも凄いことくらいしかわからないなあ」

 

そう駄弁っていると、修吾が最後の1人の意識を刈り終える。向こうでも歓声が上がり、百代の方も今終わったのだろう。

2人が軽やかに1跳びで橋上に戻る。橋上で向かい合った2人に今日1の歓声が上がった。

 

「相変わらず凄い人気だね」

 

「2人とも学園を代表する有名人だからな。また連絡増えるんだろうなあ。めんどくせえ」

 

「大変ですね。そんな大和君を私が癒やしてさしあげましょうか?」

 

「いや、遠慮しとく。さ、俺達もさっさと2人に合流しようぜ」

 

「うげ、百代先輩には謎に殴られるからやなんだよな。俺らはしゅう兄とだけ合流出来りゃいいんだが」

 

うだうだ言いながらも大和らは進む。渦中の2人へと。

肩を並べて歩く2人に群衆は避けていく。そしてその後を追っていく。

並んだ2人は先程までの戦いからは予想がつかぬ美男美女。3-F所属。戦うことにおいては世界を見渡しても相手になるものすら稀有な存在であり、齢20も行かない段階で、最強の称号である武神の名を継いだ川神百代。

3-S所属。外見はもちろん、内面、この世のありとあらゆる文武全てに精通し、その全てをこなす完璧超人。彼の武神と唯一渡り合える実力を讃え、自然と武帝と称えられることとなった帝明修吾。

 

彼等が、川神学園が誇る最強の2人である。




少なめです。あとキンクリしました。
あ、それと九鬼従者のメインの人達の序列覚えてる方いらっしゃいますか。俺はもうダメです
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