えっ⁉︎私って、乙女ゲームの世界に転生したんじゃないの⁉︎ 作:ロヒシ&かづ えい子しょうゆ味
どうして……どうしてこうなったの⁉︎
吹雪が吹き荒れる暗く険しい山道を駆けずりながら、私ことソフィア・アイン・ベリックスの脳裏には何度もその言葉が駆け巡っていた。
必死に走っている中、何度も躓いては倒れた為に髪や服はボロボロ、おまけに寒さと走り続けていたせいで体力を消耗して横っ腹が痛い。でも、足を止めるわけにはいかなかった。
「ヒャーッヒャッヒャッヒャッ!」
背後から聴こえる下卑た声。
チラリと視線を一瞬だけ背後に映すと、禍々しい漆黒の翼を持った複数の異形の存在が私を追って来ていた。
奴らは『魔族』。この世界に私達人間と同じように生きている異形の姿をした存在。
振り返り、私は自分の胸元に手を添え意識を集中させる。
すると、私の身体を流れる魔力が赤い輝きを放つのを感じ取った。
「こんのぉーッ‼︎」
私が天に向かって手を翳すと、空から赤い輝きを放つ複数の炎の矢が現れ、三体の魔族達に向かって飛んでいく。
しかし、炎の矢が身体に刺さったにも関わらず魔族達には全然効いている様子はなかった。
「私の魔法が効かないって……まさかこいつら『魔人族』⁉︎何でそんなのがこんな所に……!」
「ヒャーッヒャッヒャッヒャッ!」
魔人の一体が手を翳すと、そこから漆黒の突風が吹き荒れ、私は吹き飛ばされ背中から木に激突する。
叩きつけられた木からどさりと地面に落ちると背中と足に激痛が走る。どうも落ちた時に足首を捻ったみたい。見ると、足首が赤く腫れ上がっていて立ち上がることもできない。
すると、魔人達が高笑いをあげて私を取り囲んだ。
どうして……どうしてこうなったの⁉︎
そう。学園の卒業パーティーで『聖女』に危害を加えた事で
国王のあの言葉さえ無ければ……
ーーソフィア・アイン・ベリックス公爵令嬢を、聖女を虐げた罪により彼女を『鬼の花嫁』に処す!
何なの『鬼の花嫁』って⁉︎そんなの
それにどうして国外追放じゃなくて国内にある、それも立ち入り禁止区域であるアスラール山に連れて行かれるの⁉︎もしかして私嵌められた⁉︎
いやでも……
ーー待ってください父上!『鬼の花嫁』とは何なのです⁉︎ソフィーは聖女であるマインに危害を加えた。その罪で身分剥奪の上で国外追放。それでいいではありませんか⁉︎違うんだソフィア、私は……待て!彼女を連れて行くな!
あの時の彼のあの表情はこうなる事を全く予期していなかったように見えた。だから、彼が私を裏切ったわけではない事は確かなはず……
「ッ⁉︎」
そんな事を考えていると痛みで意識が朦朧としてきた。
何とかして逃げなきゃ……でも、身体がいう事を聞かない。
「ヒャッヒャッヒャッヒャッ!悪イナ嬢チャン。ダガ安心シナ、別二嬢チャンヲ殺ソウッテワケジャネェンダ。大人シク着イテクリャ命マデハ取ラレンダロウサ」
そう言って魔人が私に向かって手を伸ばす。
誰も助けに来ない山奥の中で私は思わず目を瞑り、誰とも知れずに助けを求めた。
その時、ヒュンという風切り音と共に一体の魔人の身体が真っ二つに斬り裂かれた。
「ナッ、何ダ貴サ…ッ⁉︎」
刹那、白銀の三日月が目の前に浮かんだかと思うと、もう一体の魔人の首と胴が別れた。
何が起きたか分からず茫然とする私を他所に、残った一体の魔人が悲鳴を上げて逃げ出そうとする。
すると、またヒュンという風切り音が聞こえ、魔人の身体が跡形もなく消し飛んだ。
カチンという金属音が聴こえたのでそちらに視線を向けると、人の後ろ姿が見えた。
血のように赤い袴に夜のような黒い髪をしたその人が私の方へ振り返る。
その人の姿に私は息を呑んだ。
いつの間にか吹雪が収まり、空には光り輝く大きな満月が見えていた。
その満月を背景に一人の男が立っている。
夜のような黒い髪に金色の瞳、血のように赤い袴を着た男は何故か顔の右半分に鬼の仮面を着けていた。
男の姿を見て、私は息を呑む。
自分でもどうしてか分からないけど、目の前にいる人から目が離せない。
そして、吸い込まれそうなその金色の瞳を見て私はぼそりと呟く。
「綺麗……まるで…夜空…輝く…月の……よう………」
思わず見惚れてしまっていたけど、私はハッと我に返った。
目の前にいる男は人間じゃない、魔人だ。それもかなり大きな力を持った。
「…大丈夫ですか?」
そう言って男が私に手を差し伸べる。
刹那、私は男の袴の裾を掴み取り…
「……目ぇ…食いしばれ……おいしょーっ!」
私は最後の力を振り絞って男の額に思い切り頭突きをかましてやった。
衝撃と共に目の前の景色にがぐにゃりと歪む。
まさか、私の
意識が遠のくまでの間、男は目を見開いて私を見つめていた。
本日は初回という事で2話連続投稿となります