「おはようございまーす!」
早朝だというのに、訓練所では既に10を超える騎士達が鍛錬をはじめていた。
「お、もう目が覚めたか」
声をかけてきたのは、副騎士団長のロラン・マルティノッジ。
俺とエクレールの兄だ。
「おはようアニキ」
「どうしたんだ?今日は朝から元気じゃないか」
「可愛い妹に起こされたんだ。眠気も吹き飛ぶさ」
「なるほどな」
ロラン兄が言うように、俺は朝に強くない。
というのも、日本の忙しい学生生活から一転して、フロニャルドの世界は、ゆる~い生活が一般的となっている。
そのギャップのせい、というか…のんびりでも怒られない社会のおかげで、俺はどちらかというと自堕落な性分がついてしまった。
もちろん、領主やその側近などの人達はそれなりに忙しいようだけど。
「それで、今日も自主練?」
公私の区別を付ける。なんてことを俺はしない。
というか、今でこそ元の年齢を抜かされているが、最初に会ったときはロラン兄だって年端のいかない子供だったんだ。
敬うという感覚が存在しない、というのが正しいだろうか?
「ああ、今日は団長が仕事で忙しいそうだから、午前中は基礎トレーニングだけで上がって良いそうだ」
「なるほど。それじゃ向こうの方で自主練してきやーす」
近くにあった槍を片手に、俺は隅の方へ移動する。
想像していた以上にこの世界は平和だ。
そして、思っていたよりも戦興業は少ない。だいたい、一ヶ月に2回あれば良い方だ。
それでも、ビスコッティ共和国は隣国のガレット獅子団領のおかげで一般的な国よりも戦興業の数は多いと知って驚いたこともある。
だが、考えてみれば騎士以外の人々には各々の仕事があるのだから、言われてみれば妥当なのだ。
農作物は勿論のこと、装飾品や服、文化的生活を行うためには彼等の働きが不可欠である。
それと、フロニャルド独特の紋章関係の仕事も存在する。
正直、思っていたほどのカルチャーショックを受けなかったのが一番の意外であった。