またキャラクターの設定間違いに関しては気軽に教えていただければ幸いです。
感想は励みになりますのでお気軽にどうぞ〜
「なるほど、外から見た以上にロドスの内部は広いのだな」
「そのかわり配管剥き出しだったりと、まぁ内装にはあまり予算を割く余裕がなかったりしますけどね」
「私としては機能美だけで十分素晴らしい施設だと思うがな。商品の充実した購買部、娯楽施設、更には酒保。単なる製薬会社とは思えない施設ばかりだ」
ロドス内部の廊下にて、幾つかの話し声が聞こえる。
先頭を歩くのはいつものようにフードを目深に被るドクター。その斜め後ろを歩くのは龍門近衛局の特別督察隊隊長、チェン。最後尾を歩くのはチェンの部下、ホシグマ。
チェンとホシグマは本来は龍門近衛局所属なのだが、特別人員としてホシグマが先んじてロドスに配属され、そして今日、チェンもロドスに配属されることとなった。
そして今はドクターがチェンと親交のあるホシグマとともにロドス内部をチェンに案内している。
「しかしまさか製薬会社に酒保があるとはな……」
「なかなか良い酒が常備されてましたよ。少々弱めのものが多いのが気になりますが」
「……ホシグマ、もしや通っているな?」
「……ええ、まぁ、少々」
「まぁお前の事だ、酒に呑まれるなんて事はないだろうから、そこら辺の心配はしなくても良いか」
「……付き合った私は潰されましたが」
「なに?」
「ンンッ!」
ドクターの呟きに半目でジッとホシグマを睨み付けるチェン。
居た堪れなくなったのか目を逸らすホシグマ。
二人のあまり見ない様子。それは互いに信頼しあってるからこそ見せる姿なのだろう。フードの下でドクターの顔は綻び、言葉も砕けたものになる。
「龍門近衛局との飲み会でロドスのドクターが急性アルコール中毒で死亡、なんて事になったらどうするんだ」
「本当に申し訳ありません……」
「いやまぁ、ここは薬には困らないから。あの時も二日酔いに効く薬を何錠か飲んでなんとかしたし」
「全く、もう……時にドクター、薬といえば……『ドクターがうわ言を呟きながら石を齧っている』なんて噂がまことしやかに流れているが、本当か?」
「へ?」
いきなりとんでもない話題を振られ、たじろぐドクター。フードでわかりにくいが、目が泳いでいる。
「私は龍門近衛局の人間であり、ロドスのやり方や業務に横から口出しする権限など無いが……お前達の勤務形態に少しばかり不安を覚えるのだが……?」
「さ、さぁ!次はロドスアイランドの甲板です!広いですよ!」
無理やり話の流れをぶった斬り、扉を開け放つドクター。
怪訝な顔をしながらも後に続くチェン。
扉をくぐれば、目の前に広がるのは一面の金属の床。
質素なロドス内部以上に殺風景な景色が広がる。
外に出て運動する者達のためか、甲板にはなんらかのスポーツに使うと思われる白いラインが引かれている。そこに一切遮られることのない太陽の光が降り注ぐ。そして陽の光を浴びて伸び伸びと日光浴をしているオリジムシ達。
……オリジムシ?
「おい待てドクター、なぜオリジムシが甲板を占拠しているんだ!?」
甲板を埋め尽くすオリジムシの大群に若干引き気味のチェン。それでもしっかり腰の刀に手をかけているあたり、流石督察隊隊長といったところか
おそらくこのまま放置しておけば抜刀・絶影で無数のオリジムシが一掃される(とても気持ちがいい)光景が見れたことだろうが、その前にドクターがチェンの前に立ち塞がる。
「あー、これらは保護……というか飼育しているオリジムシ達です。こちらから危害を加えない限り無害ですよ。……そういえば甲板の使用許可願が提出されていたの完全に忘れてたなぁ……」
「ほ……飼育?ロドスは感染生物の飼育までやっているのか?初耳だぞ?」
「『ロドスが』というより、あるオペレーター個人が飼育しているものですけどね」
「個人が?」
「ええ、個人です。……あ、いました、彼女です」
ドクターの指差す先。そこには無数のオリジムシに囲まれ、黒い物体に腰掛けて何やらノートに書き記している人影があった。
ドクターは何食わぬ顔でオリジムシの大群に足を踏み入れ、その人影の元に向かう。ホシグマもその後に続き、最後尾をおっかなびっくりのチェンがついて行く。
オリジムシ達は近よるドクター達を避けこそすれ、こちらに敵意を向けてくる個体は一匹もいなった。
やがてオリジムシをかき分けかき分け、その人物のすぐ側に辿り着く。
チェンはその人物をジッと観察する。
鉤針のような尻尾とボブカットの黒髪から覗く角を見るに、サルカズのようだ。ただ、その角はかなり細く無数の節があり曲がる為、昆虫の触覚にも見えなくもない。ラフな服装から覗く肢体を見るに、戦闘経験皆無の裏方のように見える。とはいえ全く鍛えられていないわけではなく、筋肉量は少ないが登山家の筋肉のつき方に似ているように感じられた。
その人物の奥にはキャンプテーブルが置かれ、その上に大きな鞄、火のついたコンロとコトコトと音を立てる小さな鍋、何かを焼いているホットプレートが置かれていた。
その女性とは初対面のはずだが、どこかで会ったような気がしてならない。
「やぁファーブル。休日を楽しんでいるようで何より」
「ん?ああ!ドクター!……と、あれ、そちらに居るのはチェンさんですか?ホシグマさんが居るのは知っているのですが」
ドクターが声をかけてようやく自分に近づく者に気がついたようで、慌てて立ち上がり服装を正す。
そして見慣れない人物にその顔に疑問を浮かべる。かなり素直な性格なようだ。
「ああ、今日からチェンが特別人員としてロドスに配属された……と社内メールで全オペレーターに通達したはずなのだが……」
「あー……はい、そうなんですね……」
「確認してないな?」
「……ハイ」
「はぁ……改めて、こちらが今日からロドスに特別に配属された龍門近衛局特別督察隊隊長、チェンだ」
「紹介して貰った通り、チェンだ、宜しく頼む」
「はい、宜しくお願い致します!っと、申し遅れました、行動隊作戦記録編集部カメラマン兼ディレクター、ファーブルです。……本業は感染生物研究者……と……言いたい……です……」
最初はハキハキと自己紹介をしていた彼女だったが、だんだんと尻すぼみになってゆく。
なんとなくチェンロドス内で彼女の置かれている状況を理解した。
と同時に彼女への既視感も理解した。
「もしや龍門内でロドスの行動を撮影していたのは貴女か?」
「え?あー、確かに龍門に出向いてカメラを回したこともありましたが……」
「成る程。いや何、何処かで見たような気がしただけだ。気にしなくていい」
自らの既視感に納得し、満足するチェン。
と、その時。視界の端で先ほどまでファーブルが腰掛けていた黒い物体が動いたのだ。
いやまさか、見間違いか?
そう思い、黒い物体を凝視するチェン。
すると今度は間違いなく、チェンの目の前でそれは動いた。
「ッ!」
「あ、すみません、驚かせてしまいましたか?この子はジャン。れっきとしたオリジムシです」
「オリジ……ムシ?これが?」
「はい」
ジャンと名付けられたそれは人の腰程の高さがあり、そこらにいるオリジムシとは比べ物にならない。
さらに驚くべきことに、そのオリジムシ、ジャンはまるでファーブルに懐いているかのような素振りを見せるのだ。
「なんか妙に……大きくないか?」
「どうも栄養が十分だとここまで大きくなるみたいです。あ、野生下にも極々僅かながらこれくらいのオリジムシは存在しますよ」
「そ、そうなのか。見た事はないな」
「だと思います。巨大化したオリジムシは他のオリジムシを統率する特殊個体となって、あまり人が立ち寄らない僻地や厳しい環境下に引き篭もりますから」
「あー、シエスタの」
「ええ!まさしくそれですドクター!」
「何、シエスタ?そこで何かあったのか?」
「小官も詳しくは」
「後程説明します。あれは本当に悪夢だった……」
「私もあんなのがいると知っていたらシエスタに行ってたんですけどね」
ドクターが何処か遠くを眺める。その顔には乾いた笑みを浮かべていた。
それとは対照的にファーブルのテンションは上がっている。
「っと、説明の途中でした。ともかく、特殊個体となったオリジムシは周囲のオリジムシを率い、簡素な社会性を持ちます」
「ああ、なるほど、通りでここらのオリジムシは大人しいわけか」
「というと?」
「いや、統率しているオリジムシ……ジャンと言ったか?そいつが貴女に懐いているようだからな。だから周りのオリジムシは私達に襲い掛からないわけだ、と」
「あ、いえ。それは違います」
「何?」
ふっ、と、ファーブルの纏う気配が変わった気がした。そこにいるのは先ほどまでのお気楽な女性ではなく、一種の曲げられぬ信念を持つ者。
「オリジムシ……動物界軟体動物門腹足綱有肺目原石虫下目原石虫科オリジムシ。彼らはカタツムリの近縁種である陸生貝類で、オリジニウムに感染した生物とされています」
ファーブルその手をジャンの下部、鱗のようなものに覆われた、軟体動物としての本体にあたる部分を撫でる。
「しかし私は感染したのではなく、『進化の結果』オリジニウムを身に宿した、と考えています。そしてオリジニウムを宿しているが故に、レユニオンの術師によって操られ、私たちに牙を剥く。だからこそオリジムシは危険生物であると思われています。ですが本来、彼らは大人しい、雑食性のスカベンジャーです。私たちに牙を剥く姿が本来の彼らの姿ではないのです」
そこへ高質な音が断続的にぶつかる音が聞こえる。
そこにやってきたのは太陽光を浴びて煌めくハガネガニと、燻る源石と一体化したバクダンムシであった。
「バクダンムシ!? こんなものまで飼育しているのか……爆発の危険性は?」
「下手に刺激しなければ大丈夫です。節足動物門鋏角類亜門クモガタ綱バクダンムシ目バクダンムシ科バクダンムシ。外敵から種を守るために自爆という力を手に入れた節足動物で、クモではありませんが近縁種です。ほら」
そう言って1匹のバクダンムシを持ち上げ、腹面を見せる。脚をバタバタと動かしているが、強く抵抗する意志は見せていない。
「ここにペンチのような鋏角があるでしょう?これで源石を砕いて食べるのです。そしてどういうわけか、オリジムシ……いえ、正確には特殊個体のオリジムシと共生関係を結ぶこともあるようです。シエスタでも共生関係のバクダンムシがいたとの事ですし」
「なるほど。ではハガネガニは?」
「クモガタ綱ザトウムシ目ハガネガニ亜目ハガネガニ科ハガネガニ。彼らは特にオリジムシと共生しているわけではありませんが、敵対しているわけでもありません。……いえ、私が知らないだけで共生関係にあるのかも、しれませんが」
そう言ってハガネガニの光沢のある脚を撫でる。
「新しくロドスに入られた戦闘オペレーターの皆さんには初めて会った時なるべくこの話をしているのですが……チェンさん、貴女は何人ものレユニオンを斬ってきたことでしょう?それと同時に感染生物や猟犬も斬り捨ててきたと思います。それを咎めたりはしません。ただ、彼らもレユニオンの犠牲者である、と言うことを知っていただければ幸いです」
「……そうか。頭に入れておこう」
「それは良かったです」
ファーブルはにこりと笑い、触覚のような角が揺れる。
その角には、表層にまで侵食した源石が見て取れた。
感染生物とこうも長く触れ合っているのだ。ロドスの治療は受けているだろうが本人がこの生活をやめない以上、進行を抑えるのは難しいだろう。
チェンが目の前の女性の残酷な運命に想いを馳せる中、けたたましい電子音が鳴り響く。
「あ、すみません、昼食のパスタを茹でてまして……」
ファーブルはバタバタと鍋に向かい、鍋から透明なパウチに入ったトマトソースと茹だったパスタを取り出し、直接パウチにパスタを放り込む。さらに隣のホットプレートで焼いていた何かもパウチに放り込む。
時計を見ればちょうど昼時だ。
「ああ、これから昼食か。邪魔したな」
「では食堂にいきましょうか。案内します」
「あ、そうだ。せっかくですし、『コレ』、食べて行きます?」
そう言ってホットプレートで焼いていたモノの余りを小さなさらに盛り付け差し出してくる。
焼き目はついているが、白っぽく、艶がある。ちょっと得体が知れない。だがファーブルが自分の昼食のパスタに放り込んでいるのを見るに食用の何かである事は間違いない。
なぜかドクターとホシグマの体が強張っているように見えるが、しかし差し出されたものを拒むのは失礼な気がした。
「ふむ、ではいただこう」
「あっ」
「チェン隊長!?」
食べてみると、なかなか弾力がある。と同時にコリコリしている。淡白な味ではあるが、噛めば噛むほど旨味が出てくる。
「ふむ、なかなか美味だな」
これがチェンの素直な感想であった。
それを聞いたファーブルの顔がパァァと明るくなる。
「よかったです!治療の甲斐なく亡くなってしまったオリジムシから源石成分を含む殻と内臓と表皮を取り除いた筋肉組織なんですけど、なかなか美味しいでしょう!」
「ブフォッッ!!?!?」
チェンはその場で泡を吹いて気絶した。
健康診断
造影検査の結果、臓器の輪郭は不明瞭で異常陰影も認められる。循環器系源石顆粒検査の結果においても、同じく鉱石病の兆候が認められる。以上の結果から、鉱石病感染者と判定。
【源石融合率】
9%
角に鉱石病巣あり
【血液中源石密度】
0.29μ/L
感染拡大の抑制治療を行なっているものの、彼女の高い源石接触頻度───感染生物との接触────により、感染者の戦闘オペレーター並みの速度で感染が拡大している。もっとも、彼女がこの生活を辞める事はないだろう。それが研究者というものなのだから
───サイレンス
以下信頼度上昇で解放