我ら、楽玲観察隊!   作:ゆくゆく

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モブ男くんは斎賀さんのクラスメイト、モブ子ちゃんは楽郎くんのクラスメイト設定で。あと楽郎くんと斎賀さんは大学生で付き合ってるということにしといてください。


我ら、楽玲観察隊!

 「……えっと、あとは味噌だけか……」

 

 ええい、母ちゃんめ、何が大学生なんてどうせ暇なんでしょ?だ。俺にだって用事の1つや2つくらい……ないけど。

 

 「…………ん?」

 

 あれは……間違いない。あのやけに隙のない佇まい、大和撫子じみた風貌。高校の頃の同級生、斎賀玲さんそのものだろう。高校の頃はそれなりには仲良かったんだが……こんなとこで何してるんだ?

 

 「悪い、玲さん!遅れた!」

 

 ……ああ、なるほど。デートの待ち合わせか。斎賀玲と陽務楽郎が付き合ったってニュースは当時学校中を騒がせた。あの2人に密かに恋慕を抱いていたものたちは発狂していたし……俺もまたそのうちの1人だった。まぁ、今となっては未練なんてないが……

 

 「……っ!」

 

 なんかついつい隠れてしまった。別にやましいことがあるわけでもないのに。ただそうだな……斎賀さんの数少ない男の友人であった俺には陽務が斎賀さんを幸せにできるやつなのか見極める必要があるな、うん。

 

 「これは調査、これは調査……」

 

 そう、決して興味本位から来る観察などではない!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◆

 

 「お母さんったら……洗剤くらいそのへんのコンビニでいいじゃん……」

 

 あー、今日は溜まってたドラマ消化しようと思ってたのに……

 

 「……あれ?」

 

 今走ってったのって……陽務?こんなとこで何してるんだろ。……ちょっと着いてってみようかな。

 

 

 

 「悪い、玲さん!遅れた!」

 

 ……ああ、そういうこと。斎賀さんとのデートだったんだ。当時のことが思い返される。顔がよく性格も明るい陽務はクラスの女子の中でそれなりの人気を誇っていた。私もそんな女子たちのうちの1人。あわよくば……!なんてこと考えてたこともあった。まぁ、今となっては昔のことだけど……

 

 うーん、でも気になるな。あのクソゲーに魂を売り渡したような陽務が好きになった人。同じ女性として見習う点があるかもしれない。

 

 「これは勉強、これは勉強……」

 

 そう、決して興味本位から来る観察じゃあないから!

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◆

 

 「……この方向だと映画館か?」

 

 ふむふむ、陽務のやつなかなかに定番を攻めるな……だが映画館は沈黙の時間が長いためある程度の絆がないと逆に厳しいぞ?奴は一体どうやって切り抜けるんだ……?

 

 「……!今のは!」

 

 足元の水溜まりに気づかなかった斎賀さんを自然な動きで引き寄せる、だと……!?

 

 「陽務……なんて高度なテクニックを使うんだ……」

 「陽務のやつなかなかやるわね……」

 

 「「え?」」

 

 後ろから急に声がし、振り向くとそこそこ可愛い女子が驚きの目でこちらを見ていた。

 

 「……あ!こんなことしてる場合じゃねぇ!あいつらを追わないと!」

 

 「ちょ、タンマタンマ!君もあの2人を追ってるの?」

 

 「あ、ああ。そうだけど……」

 

 「それじゃあ私と一緒だね。良かったら一緒に行かない?」

 

 なるほど、確かに俺以外にもいてもおかしくは無い、か。

 

 「よし、分かった。そういうことなら歓迎だ」

 

 「うん、よろしくね。……ってああ!あれ、あれ見て!!」

 

 めっちゃ肩を叩きながら前の方を指さしている。なんだ、なにか進展が……

 

 「……!!!て、手を繋いでいるっ……!!」

 

 「いや、しかもただの手つなぎじゃない……あれは恋人繋ぎだよ!!」

 

 な、なんてこった、序盤から飛ばしてきやがる。照れながらも嬉しそうに手を絡めてる斎賀さん可愛すぎないかっ!?

 

 「あ、そろそろ映画館に着くね。私達も行こう!」

 

 「あ、ああそうだな!」

 

 こいつ……あれを見て平常心を保っているのか!?……いや、違ぇわ。若干ヨダレ垂らしてやがる。だが、その気持ち分かるぞっ……!

 

 

 

 

 

 

 

 ◆

 

 恋人繋ぎ……初っ端からすごいものを見せつけられたよ。にしても映画か……最近全然来てないけど2人はどんなの見るのかな……

 

 「おい、あれは……!」

 

 「え、なになに?どんな映画なの?」

 

 「知らないのか!?今話題沸騰中の名作()()映画だ……!」

 

 れ、恋愛映画!デートで見る映画としては定番中の定番!見終わったあとの甘い雰囲気のままデートを続行しようと言うの!?斎賀さん……恐ろしい人!

 

 「……よし、とりあえず席は空いてるみたいだ。はい、これチケット」

 

 「え?あ、ありがとう!幾らだった?」

 

 「え?……ああ、いいよ別に。これくらい奢るわ」

 

 「いやいやいや、そんな初対面の相手に奢ってもらう訳には」

 

 「あーもう、その話は後だ、後!今はあいつらを追うぞ」

 

 「う、うん!」

 

 うーん、ちょっと悪いことをしてしまった。後でちゃんとお金払お。

 

 

 「えーっと席は……」

 

 「おい、どこ行くんだ。こっちだ、こっち」

 

 「あ……ごめん」

 

 「いや、こんなことで謝られても……てか映画とか来たことないn……あれはっ……!」

 

 ……?っっっ!!!ぱ、パーカーをっ!!

 

 「ちょあぁ!な、何あのスマートなやつぅ!」

 

 「やべぇな……陽務のやつ女心を分かりすぎてやがるっ……!」

 

 この映画館はやや空調がキツめで今の時期だと少し肌寒い。けどだからってあんなにスマートに上着かけてあげられる男がいますかぁ!?

 

 興奮のあまり相方の背中を叩きかけたが、ここが映画館であることを寸前で思い出し、手を握りしめるにとどめる。

 

 「ねぇー!もぉー!陽務カッコよすぎじゃぁーん!」

 

 「いやもう全くだ!あれは男の俺から見てもポイント高いぞ……!」

 

 『まもなく開演でございます。

当館においでのお客様はお席についてお待ちください。』

 

 あ。

 

 「まぁ、じゃあとりあえず見よっか、映画」

 

 「ああ、そうだな。さすがに上映中だと暗くて見えないしな」

 

 

 なお映画はとても良かった。2人して泣いちゃった。

 

 

 

 

 

 ◆

 

 「くぅ……ビリィー……!なんて最高なやつなんだ……!」

 

 映画の内容はシンプルながらとてもクオリティが高くついつい見入ってしまった。やはり人気なだけあるな。

 

 「ねぇねぇ、あっちってショッピングモールだよね?」

 

 「ん?……ああ、そうだな。なるほど、陽務のやつランチをショッピングモールで取る気だな?」

 

 悪くない選択だろう。あそこのショッピングモールはここいらでは最大規模。当然飲食店の数なんかも数多い。さらにその後のデートスポットとしても使えるしな。

 

 「ちょうどいいや、俺達もショッピングモールで飯食おうぜ」

 

 「そだね。……っていうかあの2人自然と手ぇ繋いでるじゃん!ラブラブだなぁ!」

 

 「ホントそれなぁ!」

 

 やべぇよ、見てるだけで砂糖が全身から溢れ出てきそうだよ。

 

 「あ、あそこの店にするのかな……えっと和食、かな?」

 

 「なん……だと!?」

 

 「え、何その反応。和食に何かあるの?」

 

 「和食は斎賀さんの好きな料理なんだよ。つまり陽務はそれを知っていてあえて選んだに違いない!」

 

 ほら、ほらぁ!あの!斎賀さんの!嬉しそうな顔ぉ!かんっぜんに自分の好みを覚えてて貰えた、嬉しいなって顔だぜ、ちくしょうめ!

 

 「はぇー……いいなぁ……」

 

 「ん?何て?」

 

 「え?……あ、なんでもないない!!ほら、私達も行こ!」

 

 「わっ……おいおい、急に引っ張んな……」

 

 半ば強引に手を引かれ和食店に導かれる。近くで見るとあれだな、この店結構本格的なやつだ。陽務奮発したんだろうなぁ……

 

 

 

 「ヘイ、ブラザー。ここは飲食店だ…………何が言いたいか分かるね?」

 

 席に着いた途端よく分からない茶番をしかけてきやがった。だが、分かるとも!

 

 「ああ、分かるとも……定番イベント『食べさせ合い』が起こるであろうことが!」

 

 そう、ここは飲食店。ギャルゲにおいてあまりマナーがよろしいとは言えないがカップルならまぁ許せるかな?みたいな雰囲気になる伝説のイベント『食べさせ合い』が起こる場所!!見せてみろ、陽務、お前の真価を!!

 

 「おーい、キミ注文どうするの?」

 

 「え?あ、ああ。えーっと、じゃあ日替わり定食で」

 

 「かしこまりました。生姜焼き定食が1つと日替わり定食が1つでよろしいですか?」

 

 「はい、それで」

 

 「ごゆっくりどうぞ」

 

 やべー、あいつら見てて店員さんが来てるの気づかなかったわ。

 

 「悪いな、注文任せっきりにしちゃって」

 

 「え?いいよいいよ、そんなの。ほら、それより観察観察!」

 

 俺が言えたことじゃないけど、さすがにそんなにはっきり言うのはどうなんだ?まぁ見るんだけどさ。

 

 

 ……楽しそうだな、斎賀さん。少なくとも俺と一緒にいた時はあんな表情を見た事はなかった。だが、それも当然だろう。俺が彼女に淡い恋心を抱いた時には彼女の心は既に1つの太陽に埋め尽くされていたのだから。

 

 「日替わり定食と生姜焼き定食お待たせしました」

 

 「えっ、あ、ああ。ありがとうございます」

 

 いかんいかん、怪しまれないようにしないとな。しかし、こういう時にはアイツが対応しそうなもんだけど……

 

 「ぅえっ!?」

 

 な、泣いてるぅ!?な、ななな何でぇ!?え、俺なんかした!?

 

 「お、おーい……大丈夫?」

 

 「……え?あ、え、あ……な、何でもないよ!ほら、ご飯食べよ!」

 

 いやいや、絶対大丈夫じゃないだろ……でも俺が聞くようなことじゃないか。別に俺とアイツは恋人でもなければ友人でもない。たまたま目的が一緒なだけの今日だけの関係だ。

 

 「んむ……これ美味いな」

 

 「んぐ……うん、こっちも美味しい。この値段でこのクオリティは素晴らしいね」

 

 またこの漬物がいいな。さっぱりとしてていくらでも食える。

 

 「……ふあぁ!ちょちょちょ!見て!見て!!」

 

 「何だ、なにか進展が……!?!?!?」

 

 食べさせ合いをすることまでは予測していた。予測していたが…………斎賀さんの方から、だと!?おいおいおい、あの恋愛クソザコナメクジ斎賀玲はどこいったんだ!?

 

 まずいな、口の中が甘くなってきた。茶を、茶を飲もう。口の中をリセットしなければ……

 

 「あ、それ……」

 

 「んぇ?……あ」

 

 ………………やっべ

 

 「あー、その、ごめん」

 

 「い、いやいや、大丈夫だよ!まだちょっとしか飲んでないし……」

 

 ちょっとは飲んだんだ…………いやいや、気にしてはいけない。こういう時は何事も無かったように湯のみの端を拭ってっと……

 

 ……こういう時はあいつらを見て心を落ち着けよう。

 

 

 

 

 

 

 ◆

 

 ご飯はなかなかに美味しかった。正直また来るかもしれない。ただ、その……

 

 「「………………」」

 

 食事中に起こったちょっとしたアクシデントのせいで今私たちの間にはあまり良いとは言えない雰囲気が漂っている。いや、私も間違えかけてたからそんな言えないんだけどね……でもやっぱり年頃の女の子としては気にしちゃうというか。

 

 とはいえ本来の目的を見失うことはなく今はショッピングモールの中を歩く2人を追いかけている。ウインドウショッピングのつもりだろうか。楽しそうに談笑してるな…………勇気を出せなかった私と勇気を出せた彼女(斎賀さん)。チャンスはいくらでもあったはずなのに行動を起こさなかった私が悪いのは分かっているけど、それでもやはり思ってしまう。どうして今彼の隣にいるのは私でないのか、と。

 

 「ん、あれは……」

 

 「ああ、ゲームセンターだな。あの2人なら十分なデートスポットとして機能するだろう」

 

 ゲーセンかぁ……陽務がゲーム好きって聞いて言ってみたことあるけど、あんまり雰囲気が合わなかったんだよなぁ……

 

 「ん、どした?行かないのか?ゲーセン嫌い?」

 

 「え?あー……まぁ得意ではない、かな。いや、でも行くよ。誰かと一緒だったら大丈夫かもしれないし」

 

 「そうか。まぁ無理そうなら言えよ?」

 

 「うん、ありがとー」

 

 うーん、優しい。人の優しさが身に染みるんじゃ……

 

 

 

 

 「……あれ、意外と平気かも」

 

 なんかあれだ、ゲーセン特有のうるささが少ない気がする。前行ったところはすごいうるさかったしいる人もなんか不良っぽかったからなぁ……

 

 「ここのゲーセンは民度いいからなー。初心者向けから玄人向けまで置いてあるし……ぬっ」

 

 「ん?どしたの……あれってUFOキャッチャー?」

 

 なんかのゆるキャラかな?それのぬいぐるみを取ろうとしてるみたい。……ってあああああ!!

 

 「近い!近いよ陽務ぇ!!」

 

 「いや、あれはおそらく単純に教えてあげようとした無意識の行動!見ろ、あの目を!完全に獲物を狙うハンターの目だ!!」

 

 くあぁ、かっこいい……!あああ、あんなに手が触れ合って、身体も近くてぇ!はわわ……

 

 「…………うらやましい…………」

 

 「へ?」

 

 相方が怪訝そうな顔で見てくる。なんだよ、前を見てなよ…………あれひょっとして今私口に出てた?

 

 「ち、違うの!べ、別に陽務とああいうことがしたいというわけじゃ……」

 

 「いや……分かるよ。俺だって同じだ」

 

 へ?同じって君も陽務のことが……?…………いや違うでしょ、斎賀さんの方か。

 

 「そっか……君も同じかぁ……」

 

 ………………

 

 「ねぇ」

 「なぁ」

 

 「あ、いいよ先」

 

 「それじゃあお言葉に甘えて……っても多分同じことだと思うけど」

 

 「…………帰る?」

 

 「…………帰ろっか」

 

 

 

 ◆

 

 ゲーセンを離れた俺たちはそのまま解散、という気分にもならず近くのカフェでお茶をしていた。

 

 「何だろうな……最初はさ、陽務がダメなやつだったら俺が斎賀さんを守ってやらないととか思ってたんだけどさ。でも全然そんなことなくて、陽務と一緒にいる時の斎賀さんの顔は今までに全然見たことないような顔で、それ見てたら自分がちっぽけな存在に思えてさ……ひでえ話だよな。友達の恋路もろくに応援できないとか」

 

 「いや、私もだよ……正直どっかでワンチャンあるかもとか思ってついてったからね……2人の甘々な雰囲気見てさ、尊い気持ちでいっぱいだったけど同じくらい辛くって、なんで私じゃないんだろうなぁとか考えちゃって……虫のいい話だよね……」

 

 まぁ、実態はとんでもないクズ同士の傷の舐め合いなわけなんだが。でもこんな似たようなやつが偶然会ってここまで来るなんて運命と言うやつは数奇すぎやしないだろうか。

 

 「あ゛ー、もうやめだやめ!そもそも高校卒業する時に吹っ切ったはずなんだよ!」

 

 「……そうだね!もう気にしない!あの2人を全力で応援してやるよ!」

 

 「「やけ食いじゃ!!」」

 

 それからはもう酷かった。斎賀さんのどこがいいのか、陽務のどこがいいのか。高校時代の色々を互いにぶつけ合って、バクバクとケーキやらなんやらを食いまくって、散々泣いて散々笑った。

 

 

 

 

 

 

 「はぁー、スッキリした!」

 

 「いやー、それな!」

 

 「あ、ねぇねぇ」

 

 「あ?どした?」

 

 「連絡先!交換しよ?」

 

 「え?なんでまた……」

 

 「いや、ほら……今後もまたこういうことあるかもしれないし、私も君に愚痴に付き合って欲しいというか……」

 

 「……まぁいいけど」

 

 「やたっ!じゃあ交換してっと……うん、おっけ!じゃあまたね!」

 

 「お、おう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 帰路に着きながら本日の出来事を反芻する。 斎賀さんが陽務のことが好きだと知ってから斎賀さん以外の女性とは話さなくなったし、話しかけないようにしていた。もう二度とあんな思いをしたくなかったから。でも今日は違った。……言ってしまえばストーカー行為中に出会った不思議な少女。斎賀さんと陽務のことで頭がいっぱいだったからその時は気づかなかったけど……結構際どいことしてない!?

 

 いや、落ち着け。何でもかんでも好意的に捉えるもんじゃない。きっと友人扱いだ、うん。ああ、でも……

 

 「名前くらいは聞いてもいいか……」

 

 次に会うときがどういう時かは分からないし、そもそも会うかも分からない。でも、それでも、もう後悔はしたくないから。

 

 <チャットルーム>

 

 ○○○: 名前、なんて言うの? 17:10

 ●●●: 名前、教えて?  17:10




続きそうな終わり方してるけど続きません。思いつかないので。
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