氷の竜はヒーローと出会う   作:シニカケキャスター

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戦闘訓練 後編

 キュレムは核を保有するヴィランチームとなった。チームメイトは尾白(おじろ)猿夫(ましらお)。しっぽの生えた男だ。

 キュレムからしてみれば氷を使う(とどろき)焦凍(しょうと)は眼中にない。キュレムの対戦(あそび)相手としては不足だ。たとえ今まで一度も使っていない左腕を使ったところで、ホッカイロか湯たんぽぐらいにしかならないだろう。

 障子(しょうじ)目蔵(めぞう)も増やせる五感ぐらいしか警戒すべき点がないし、両者とも最悪ごり押しで何とかなる。

 

「俺はどうすればいいかな?」

 

 障子を倒すかここで核を守っていればいい。巻き込まれたくなければキュレムから離れているのが一番だ。

 

「あ、ああ。わかった」

 

 実に賢明な判断だ。こんなところですることはないだろうが、キュレムが全力で暴れている場面に巻き込まれでもすれば、尾白は比喩でなく死にさらすことになるであろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そうこうしているうちに訓練開始だ。ビルが丸ごと凍りついた。

 下手人は轟。おおかた氷で拘束してしまえばどうとでもなると思ったのだろう。しかしキュレムにその考えは通用しない。

 凍りつき寒さに震える尾白の一つ下の階にいるキュレムは、凍りつきも震えもしていなかった。

 それもそのはず。キュレムは氷に耐性がある。ゆえに凍結することなどないのだ。

 

「た、たすけてくれ…」

 

 尾白はガチガチと奥歯を鳴らしている。しかしその声はキュレムには届かない。

 哀れ尾白。厚着をしていない彼は少なくとも決着が済むまではそのままである。最長三十分。冷える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まさかあれでも凍ってねェとはな」

 

 左半身を凍らせた轟はそう言う。キュレムからすれば奇怪なファッションだ。制御できるのになぜわざわざ凍らせる必要があるのか。

 こちらは年中冷気が漏れ出して大変だというのにのんきなことだ。キュレムは愚痴る。

 

「のんきか…お前からしたらそうかもな。だが俺はなめてるわけじゃない。俺は左は使わねェ。この、右腕だけで勝つ」

 

 勝てるものなら勝ってみろ。尾白はいないがキュレムは一人ではないのだ。

 

『ヒーローチーム障子目蔵、戦闘不能!』

 

「なるほど、尾白か」

 

 いいえ、尾白は戦力外です。

 障子を捕えたのはフリージオたちだ。この氷の空間内部であれば、フリージオは自由に動き回ることができる。

 キュレムがあらかじめ別働隊として水蒸気状態のフリージオを配置。その後ビルが凍結されたことで温度が下がり再結晶化。そのまま窓から入ってきた障子を"れいとうビーム"で捕えたのだ。なお、それで部屋の温度がさらに下がったのはご愛嬌である。

 

「ワリィが凍ってくれ!」

 

 轟の氷が迫るが、キュレムからすれば脅威でもなんでもない。くらったところで凍らないからだ。

 しかしそのまま受けてやるほどキュレムは甘くない。向かってきた氷を"いわくだき"の一撃ですべて砕いた。種族値130は伊達ではない。

 実はこの時"ギガインパクト"を使おうと思っていたのだが、そんなことをすれば余波でビルが崩壊する。緑谷に続いてそれはまずい。キュレムは自重を覚えていた。

 

「チッ!」

 

 粉々になった氷が轟に殺到し、また他の氷を作り出して防御した。

 隙だらけである。

 

「ッ!?…ガハッ!」

 

 腹に一発"いわくだき"。拳がめり込んだ轟は吹き飛ばされ、壁に激突。そのまま崩れ落ち、ピクリとも動かなくなった。誰が見ても戦闘不能。とどろきはたおれた!といったところか。

 

『ヴィ、ヴィランチームWIN!』

 

 完全勝利だ。

 なお、この後少しやりすぎだと怒られたのは言うまでもない。

 キュレムは"みねうち"も"てかげん"も使えないのだ。

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