例えばこんな結婚   作:猫又侍

3 / 3
思いつきでだ〜っと書いてたら急展開になりました。お許しを


葉桜牡丹編
ゆったり読書、幼馴染と同人誌


 ペラペラとライトノベルのページをめくりながら夏の風に当たりながらゆったりと過ごす午後。と、本来ならこの様な感じで始まるのだが今俺の目の前に居る一人の人物によりそれは叶わない物となってしまっている。

 

「ねぇ、このシーンってもっと過激でいいと思います?」

「なぁ、その質問は健全な童貞社会人に言う言葉か?」

「? 今更そん事気にする必要ないじゃないですか」

「はぁ……ダメだこりゃ」

 

 俺はラノベを閉じて近くの机の上に置く。そして俺のベッドに寝そべりながら漫画の試行錯誤をしている俺の幼馴染、葉桜牡丹はまだ少年の心を持っている俺には少し厳しい問い掛けをして来た。

 牡丹は俺の幼馴染でもあり、それと同時に多くのファンをもつエロ漫画家なのだ。そうよくコミケで売ってる薄い本。まぁこれは俺の偏見だから実際どうなっているかは知らない。もしこの偏見を牡丹の前で言ってみろ。しばかれる。

 

「お前なぁ、今婚活中で良い人見つけてんだろ? なんで真っ昼間から俺ん家でゴロゴロしながらそんなもん描いてんだよ」

「いいじゃないですか。減るもんじゃないですし」

「俺の精神が減るんだよ。それに、お前も一応社会人なんだろ? その……無防備な姿を晒すのは幾ら幼馴染であっても気おつけて欲しいんですけど……」

「? あ、もしかして意識してます? その展開はもう描いたので他のにして下さいよ」

「はぁ……」

 

 俺と牡丹の付き合いはもうかれこれ三年ほど、随分昔に疎遠になったかと思ったらひょっこり家の近くに越してきていつの間にか家にいる。牡丹との出会いは両親同士が同級生でその話に付き合わされる時に俺が連れ出された時だった。それから何度か両親に連れられては牡丹と遊んでいた。俺は牡丹より三つ年上なので小学校以来学校という場所で会う事はなくなり、自然と親にもついて行かなくなりいつの間にか関係はなくなっていた。

 

「まさか、牡丹がエロ漫画家だとはねぇ……」

「む、エロ漫画じゃないですよ! エロ同人誌です!」

「それ薄いか厚いかの違いじゃないの?」

「良いですか? 違いはですね……」

「また始まったよ」

 

 牡丹は一度この手の話になると軽く小一時間は話す。こうなったら飛び交う下ネタを交わしながら切り抜けるしかない。なんて考えていたが、牡丹の携帯に電話がかかって来る。恐らく相談所で紹介して貰った人だろう。最近はその人としか連絡取ってるの見た事ないし。

 

「例の紹介された人か?」

「そう見たいです。あぁもしもし? え? 今からですか? すみません、今用事で……はい。はい、すみません」

 

 そう言って電話を終わらせる牡丹。確か今日は用事がないから家に居る筈なんだが。なにか不都合でもあるのだろうか。

 

「どうした牡丹。せっかく誘ってもらったんだ、出かけたらどうだ? ネタも見つかるかも知れないんだろ?」

「そ、それはそうですけど……」

「それに、いい人なんだろ? 牡丹の作品見てくれてるんなら尚更応援とかしてくれるんじゃないのか? 俺はお似合いだと思うけどな」

「………もういいです、帰ります」

「おい、ちょ待てよ」

 

 静止する言葉も聞かずに牡丹は早々に帰ってしまった。今までこんな事はなかったはずなのだが、完全に不機嫌だった。なにか悪いことでもしたのだろうか。

 

「はぁ……相談してみるか」

 

 * * * *

 

 俺は喫茶店である人物を待っている。

 とは言え高校以来連絡を少しするだけで、実際に会うのは久しぶりだ。

 コーヒーを片手に暫く待って居ると、店の入り口からその人物が現れた。

 俺は手招きをしてその人物を呼んだ。

 

「悪いな縁太郎。せっかくの休日に相談なんか持ちかけて」

「別にいいさ。高校の友人からってのは断れないしな」

 

 俺の目の前に座るがたいのいい高身長イケメンの名は白城縁太郎。

 牡丹の入会して居る相談所の仲人である。

 

「それで、相談ってのは?」

「ああ、牡丹の事についてだ」

「牡丹について?」

「あいつ、今交際してる人いるだろ? 紹介された仲とはいえ将来結婚を視野に入れてる訳だ。そんな人から連絡があったのにアイツ用事がありますなんて嘘言ったんだ」

「それがどうしたんだ?」

「俺が行った方がいいんじゃないかって言ったら急に怒り出してどっか行くからよ。縁太郎、相談されたりしてないか?」

 

 一通り言いたい事を言うとコーヒーをひと啜りする。

 別に、牡丹の自由だからなにが言いたいとかはないが少し引っかかる節がある。

 そもそも、交際してるのであれば喜んで行くはずだ。

 それをわざわざ嘘をついてまでいかない必要があるのだろうか?

 様々な憶測が飛び交う中、ふと縁太郎がため息をつく。

 

「はぁ、最近牡丹がお前の話をよくすると思ったらそう言う事か」

「は? なに言ってんだ?」

「いや、こっちの話だよ。それと、お前の心は高校から変わってないのか?」

「う、うっせ」

「はぁ、尚更だなこれは」

 

 縁太郎がなにを言ってるのか分からないが取り敢えず縁太郎はなにかを察したと言う事だろう。

 あえてなにも聞かずにその日の会話は終わり、後日牡丹と交際してる人と会ってみるかと言われ了承した。

 その日の夜、俺は風呂から上がるとベッドにダイブしスマホを開く。

 カレンダーの明日に「牡丹交際者と会う」と記入する。

 

「牡丹の自由だからじゃないのかよ」

 

 そう自分に問いかけながら目を瞑る。

 正直に言おう、俺は牡丹が好きだ。

 昔から、どうしようとないほど好きなんだ。

 俺は皆んなにこの名前が嫌いだから言って居ないが、唯一褒めてくれたのが牡丹だった。

 それが嬉しかっただけなのかもしれない。

 けれど、その一言でどれだけ救われたか。

 

「綾小路悠なんてへんな名字と女々しい名前だと罵られたんだけどな」

 

 俺は牡丹が好きだ。

 だけど、牡丹は今交際している。しっかりと見定めた交際者がいる。

 だから俺は、その人に自分勝手だが俺の気持ちを託したい。

 だから俺は、明日会う事を決めた。

 

「はぁ……寝るか」

 

 

 * * * *

 

 次の日、白城相談所に向かうと縁太郎が迎え入れてくれ居間に行くとそこには一人の男性が座って居た。

 

「どうも、牡丹さんと交際させて貰っている駿河野と言います」

「これはご丁寧に、綾小路悠と言います。よく名前だけで女と判断されやすいですが見た目通り男です」

 

 取り敢えず座ってくださいと駿河野さんにら促され、向かい合うように座る。

 俺の想像して居たよりずっと優しそうで真面目そうな人だ。と、心の中では安心しているはずのに心がざわついてならない。

 

「牡丹とは合コンで出会ったと伺っておりますが、大丈夫ですかね?」

「大丈夫とは?」

「あ、別に馬鹿にしてるわけじゃないですよ? ただ牡丹って昔っから集中すると周り見えなくなるんです。だから駿河野さんにも迷惑を掛けて居ないか心配でしたので」

「綾小路さんは牡丹さんとはどんな関係で?」

「俺は腐れ縁って奴です。もっといえば幼馴染ですね。元々両親が仲良かったってのもあって昔はよく遊んでました。俺からすれば妹って認識ですかね」

 

 違う。そう感じて居たのはあの時だけだ。大学を出て、社会人になり久しぶりに牡丹と会った時に妙に緊張してしまって居た。

 そもそも、高校時代から惹かれている奴が無防備に部屋にゴロゴロ居られると精神の減りが半端ない。

 嬉しくないわけじゃないが、その反面不安になる。

 このまま牡丹との関係が幼馴染で終わるのか。それとも、それすら無くなるのか。

 正直言って怖かった。

 

「そうですか。なら良かったです」

「良かった?」

「はい、僕は今から牡丹さんに結婚を申し込もうと思ってるんです」

「はい?」

 

 一瞬、意味がわからなかった。

 けれどそれは一瞬。あとは全てを理解した。

 恐らく、この人は本気だろう。

 目つきから分かる。

 俺には敵いっこない目をしている。

 だから、今ここで言わなきゃ行けないんだ。

 辛くても、苦しくても、結婚式で笑顔でおめでとうを言えるように。

 

「駿河野さん」

「はい」

「牡丹を……」

 

 瞬間、居間のふすまが勢いよく開いた。

 俺と駿河野さんはその音の方へ視線を移すと、牡丹が立って居た。

 

「牡丹……」

「牡丹さん」

「……」

 

 まずい、会って居たのをよく思わないかも知れないと察し俺は荷物を纏めて立ち上がる。

 

「それじゃあ俺は」

「あ、綾小路さん」

 

 俺は牡丹の横を通り過ぎ、もう一度駿河野さんの方を向いて牡丹の肩に手を乗せ告げる。

 

「牡丹の事、頼みます」

 

 そう告げた時だった。

 パァン! と言う音と共に頬に強烈な痛みが走った。

 ビンタされたのだとすぐに理解する。

 俺は視線を戻し牡丹を見る。

 牡丹の目には涙が浮かんでおり、その目には怒りと悲しみが感じ取られた。

 

「牡丹……」

「なんでそんな事言うんですか!」

「………」

「ずっと、好きだったんです。高校の頃、いえ出会った頃から惹かれてました。けど、悠さんは私の事を女として見てないと分かった時に酷く傷つきました。それからは世界が白黒に見えて、白城相談所にいる時だけは何もかも忘れられた。そして駿河野さんと合コンで会って、勝手に浮かれて。でもやっぱり悠さんが頭から離れてくれないんですよ」

 

 語りながらも俺に頭を預ける牡丹。

 先ほどの大声を聞いて駆けつけたのか、同じ相談所の会員も数名駆けつけて居た。

 

「どれだけ忘れようと駿河野さんと一緒に居ても、悠さんが離れてくれないんです」

「牡丹……」

 

 この気持ちはなんなのだろうか。嬉しいのに悲しい。悲しいのにほっとしている。

 駿河野さんに託すと決めたばかりなのに、なぜこんな……自分を戒めたい。しかし、それは牡丹が、縁太郎が許さないだろう。

 

「なぁ牡丹」

「なんですか。私が言いたい事はまだ」

「俺も好きだったよ」

「……え?」

「好きなんだ。だけど俺は牡丹が幸せで居てくれたらそれで良かった。駿河野さんと幸せに、笑って暮らしてくれたら良かったんだよ」

 

 でも、あんな事を言われてしまったら抑えられなくなってしまう。

 ふと駿河野さんに目を向けると、既に姿はなく玄関に座っていた。

 それはそうだ。自分と交際していた人が、実は気を紛らわせるために交際していたなんて俺でもショックを受ける。

 

「なら、私の幸せが大事ならお願いを聞いて下さい」

「……許容範囲なら」

「ダメです。これは大切な選択なんですよ?」

 

 そう言って顔を近づける牡丹。

 先程までのシリアス雰囲気は消えており、今は重い空気が流れている。

 俺は今、選択を迫られているのだろう。

 牡丹と結婚するか否かを。

 俺はゆっくりと深呼吸をし、牡丹とキスをする。

 

「これが俺の答えだ」

「その返事をした事、後悔しないで下さいよ?」

 

 そう言ってはにかむ牡丹の顔はどこまでも眩しく、どこまでも綺麗だった。

 駿河野さんには悪いが、この戦いは俺の勝ちと言わせてもらおう。

 割り込みでずるいだろう。

 けれど、大切な人を守るんならズルでもなんでもしてやるよ。

 それが俺の決めた道だから。

 

「さ、帰ってご飯食べましょう!」

「早速ですか? エロ漫画作家さん」

 

 一般人の童貞社会人とエロ漫画作家の日常は続く。

 どれだけ辛くても、二人なら手を取り合って立ち上がれる。

 俺は牡丹を信じて、牡丹は俺を信じる。

 昔からそうやってただろ?

 

「後悔させない、絶対に」

「はい、後悔なんてしませんよ」




そういえばまだこの作品も初感想貰ったんですよ。ブラックが飲めたみたいな事書いてありました。おめでとうございます
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。