アクセルワールド 悪意の使者   作:オメガリバイブ

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第二話 仕込まれていた悪意

 コスモスとの会談から数日後、司は加速研究会副会長のブラック・バイスと共に池袋の無制限中立フィールドに来ていた。

 

「今日は何をするつもりなのですか、先生?」

 

 司……ジェットブラック・アークは加速研究会の顧問という役職に就いており、研究会の皆からは先生と呼ばれている。

 

「つい最近、5代目のクロム・ディザスターが現れたと聞いた。それで奴が次に現れると思われるのがここ池袋周辺だ。今日君を呼んだのは、そのクロム・ディザスターのデータを回収するのを手伝ってもらうためだ」

 

 アークの言葉にバイスは首をかしげる。

 

「データの回収ですか?クロム・ディザスターもとい災禍の鎧の回収ではなく?」

 

「鎧の回収はしたいが、今回の装着者が今の赤の王に近い者だから赤の王が出っ張ってくる恐れがある。

 それに今の赤の王はとても行動力がある。赤の王がもし今勢いがある黒の王に接触していて、クロム・ディザスター討伐に来ていたら今の私では手に負えない。

 だから、鎧の回収ではなく鎧のデータの回収をするのだよ」

 

「なるほど、そのようなお考えがあるとは」

 

 アークは大量に現れたコンソールを物凄い速さで操作し、そして操作し終えると今使っている自身の観戦用ダミーアバターが黒い液体となって地面から落ちる。

 そしてその液体は人の顔くらいのウニのような形になり中に浮かぶ。

 

 そのウニのような姿が今のジェットブラック・アークの戦闘アバターなのだ。

 

「さて作戦なのだが、ここから3Km先に少し大きなクレーターがある。バイス君はクロム・ディザスター発見次第、奴をこのクレーター内に誘い込み、その後君は離脱してくれ。

 後は私がやるが、もし誘い込みの際に不足の事態が起きれば、臨機応変で乗り切ってもらいたい。行けるかい?」

 

「分かりました、先生」

 

 そう答えて、バイスは自身のアビリティで近くの影に潜っていった。

 そしてアークはクレーターが見える位置まで移動する。

 

 アークがクレーター近くまでくると、そこにはアークの予想外の事態が起こっていた。

 

(──なぜ黄の王がここにいる!?)

 

 クレーターの所には、予想していた赤の王と黒の王が居り、そしてまだ予想範囲内であった以前見たシルバー・クロウとシアン・パイルも居た。

 しかし黄の王がこんなところまで自身のレギオンの軍団を引っ張ってやって来るのは予想外だった。

 

(ここで赤の王、黒の王が撤退をされると今日の計画が水の泡になる。黄の王と今回のクロム・ディザスターは相性悪すぎる)

 

 黄の王は幻覚系の攻撃を得意とするが、クロム・ディザスターは幻覚をなんのそのと攻撃してくる狂戦士で、結果は見えている。

 

 アークは大変不本意と思いながら、自身の対エネミー用のアビリティ《Compulsory control(強制制御)》を心意で弄くって、赤の王やシルバー・クロウに襲いかかっている軍団に向けて発動させ、軍団の動きを止める。

 

 そしてアークにとって幸運なことが起きた。

 黄の王と黒の王が戦っている最中、黄の王の腹から剣が突き出された。その剣の持ち主は今日の計画の主役である、クロム・ディザスターだった。

 

(──バイス、よくやった)

 

 バイスの影は見当たらないが、クレーターの所にクロム・ディザスターを誘い出してくれた。

 

 剣で腹を貫かれた黄の王は緊急脱出用の必殺技を使って、その場から離脱した。

 黄の王が消えると、クロム・ディザスターはその近くに居た黄の王のレギオンのバーストリンカー達を獣のごとく喰らっていく。

 

 そしてある程度バーストリンカー達を喰らうと、今度は黒の王の方に向かっていった。

 迫りくるクロム・ディザスターに黒の王は剣で出来た両腕で迎え撃つ。クロム・ディザスターと黒の王は激しい接近戦を繰り広げ、クロム・ディザスターが徐々に黒の王のHPを削って行くのが分かる。

 すると横からレーザー光線が黒の王を掠め、クロム・ディザスターを呑み込んだ。

 レーザー光線をモロに受けたクロム・ディザスター、しかしクロム・ディザスターはレーザー光線で吹っ飛ばされることもなく、その場に立っていた。そしてレーザー光線を撃った相手────赤の王を襲いかかった。

 

 その時、シルバー・クロウが渾身のパンチをクロム・ディザスターに喰らわせ、クロム・ディザスターは近くのビルの壁に叩きつけた。

 

(───頃合いか)

 

 アークは誰にも気付かれないようクロム・ディザスターに近付く。

 しかし………。

 

「グアァァァァ!!!!」

 

 クロム・ディザスターは雄叫びを上げ、腕からアンカー付きワイヤーを出し、クロム・ディザスターが誰からか奪ったであろう《超長距離ジャンプ》のアビリティを使って移動する。

 それを見たシルバー・クロウが《飛行アビリティ》を使って追いかける。

 

(ちっ!まだ動けるのか)

 

 アークもまたクロム・ディザスターを追う。

 

 そして数100m行った先で、シルバー・クロウがクロム・ディザスターを追い抜き、クロム・ディザスターが次に出すアンカー付きワイヤーの目標地に先回りして自分の背中に引っ掛ける。そして時速100kmにまでスピードを上げて、高度を上げる。

 

 そして高度100mまで来ると、シルバー・クロウは背中に引っ掛けていたアンカー付きワイヤーを外し、そのままクロム・ディザスター目掛けて急降下キックを繰り出した。

 

 急降下キックは綺麗に決まり、クロム・ディザスターを地面に叩きつけた。

 

(──チャンスは逃さない!)

 

 アークはシルバー・クロウに気付かれないようクロム・ディザスターが見える位置に着き、ウニ状の体からあるキーを取り出し、起動させる。

 

『Malice learning ability』

 

 音声と共にクロム・ディザスターからデジタルコード現れ、キーの中に入って行く。

 

「──これで、私の計画がまた一歩前進した」

 

 アークはそう呟き、その場を後にした。

 

─────────────────────────

 

 先程の場所から1㎞離れた場所に来たアークは、先程のキーを取り出す。

 

「──さぁ、始めようか」

 

 アークはキーのデータを自身と共有する。

 

「──ん?私が植え付けた悪意データが少ない……。あれほどの時間を掛けてこの程度とは残念だ。

──まぁもう終わったことだ仕方ない」

 

 アークはキーからあるデータを閲覧する。するとアークの体は形を変え、どんどん人の形になっていく。

 そしてアークの体は、先程クロム・ディザスターになっていたチェリー・ルーク(・・・・・・・・)になった。

 そして……。

 

『アークドライバー!』

 

 腰に黒いドライバーが巻き付き、アークはドライバーの赤いボタンを押す。

 

「変身」

 

『アークライズ!』

 

 音声と共に悲鳴と怨念の声が鳴り、目の前に3つの黒い流体金属が出現し、色んな動物に変わっていく。

 そして流体金属の一つが体を覆っていき、一つが体の左半分の装甲になり、一つが体の右半分の装甲になって体に装着される。

 

『オール・ゼロ………!』

 

 ジェットブラック・アークの体がここに復活した。

 

「───ふむ。こんなものか」

 

 アークは体の調子を確認し、離脱ポータルに向かう。 

 しかし体に異変が起きた。

 

「くっ!」

 

 体中に電気が走り、体がチェリー・ルークの姿に戻る。

 

「──データ不足か。実体のデータ無き体では変身を維持するのも難しいか。やはり仮でも実体のあるデータの体では無いといけないか」

 

 アークはそう呟きながら、離脱ポータルに向かって行った。

 

 

 

 




 次回もお楽しみに(* ̄▽ ̄)ノ~~ ♪

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