アクセルワールド 悪意の使者   作:オメガリバイブ

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第五話 一つ目のピリオドは打たれる

 アークが起こしたヘルメス・コードでの事件から数日後、心意を知った一部のバーストリンカーが、アークの心意とレッド・ライダーのアビリティで作られた、簡単に心意を使える強化外装《ISSキット》使用し、ブレイン・バーストの今まで保たれていたパワーバランスを大きく変えた。

 

 そして事件を起こしたアークは、そのISSキットの使用者6人と交戦することになっていた。

 

(その程度の力を持って、私を倒そうとは──思い上がりすぎだな)

 

 その日アークは、バーストポイントの補充の為に無制限フィールドに入って、手頃なエネミーを狩っていた。

 するとそこにISSキット使用する6人のバーストリンカーが現れ、アークの狩っていたエネミーを横取りして倒し、そしてアークを囲んだのである。

 

「へっへっへっ。お前を倒したら、どんなけポイントがもらえるだろうな?」

 

「俺はあの時、お前の心意技で耐え難い苦痛を貰ったからな、しっかりお礼させて貰うぜ」

 

 そして6人は一生にアークに手を向け、心意を発動するときに出る光を出す。

 

「「「「「「ダーク・ショット!」」」」」

 

 放たれた負の心意攻撃にアークは微動だにせず、心意攻撃は直撃する。

 

 6人はよし!と思ったが、直ぐに驚くことになる。

 6人の心意攻撃を直撃したアークが、傷一つ付かずにその場に立っていたからである。

 

「所詮借り物の攻撃だ、薄く心意のバリアを張っていればどうということもない。──予測をするまでも無かったな」

 

 傷一つ付か無かったなアークを見て、6人は一斉に逃げ出す。

 

「なんだよあいつ!こんなの聞いてないぞ!」

 

「助けてくれーー!!」

 

「い、嫌だあああ!!」

 

 逃げ出す6人をアークは、見逃すことはしなかった。

 

「オリジナルを見せてやろう」

 

《オールエクスティクション!》

 

 アークの足元から必殺技のエネルギーと心意のエネルギーが合わさった物が流れ始め、逃げる6人向かっていく。

 そして5秒程で6人はエネルギーに捕まり、空中に連れて行かれ、一ヶ所に集められ、アークが手を握る動作をするとエネルギーは爆発し、6人HPバーが一気に0になり爆散する。

 

 6人の死亡マーカーは6人が爆散した所の地上に出現し、アークはそれに近付く。

 

「今ここで、私が心意技を使って強力なエネミーを連れてきて、愚かな君達を無間EKしようと思っているのだが、君達はそんな終わりかたは嫌であろう?だから私は君達が攻撃したことを無かったことにするチャンスを与えようと思う」

 

 死亡マーカー状態なので、6人はアークの話を聞くことしか出来ない。

 

「内容は君達が復活してから話そう。そして復活した瞬間に逃げ出す者が居れば、その者をもう一回死亡させて無間EKを行いたいと思う」

 

 6人は恐怖を覚え、そしてこんな奴を相手にしてしまったと思い、後悔する。

 

 そして数分後、復活した6人は逃げ出すこともなく、アークの前に立っていた。

 

「ではこれから、チャンスの内容を話す。アッシュ・ローラーをお前達の手で無間キルしろ。それでさっきの行為は無かったことにしてやろう」

 

 アークはシルバー・クロウ内に居る、クロム・ディザスターのデータをより良い状態で回収したい。

 その為にはシルバー・クロウと仲がよいアッシュ・ローラーをシルバー・クロウの目の前で一方的に理不尽に殺させなければならない。

 そこでISSキット使用者の彼らがアッシュ・ローラーを一方的に理不尽に殺せば、目論み道理によい状態でクロム・ディザスターのデータを回収することが出来るとアークは踏んだのだ。

 最初はアーク自身がアッシュ・ローラーを無間キルしようと思ったのだが、アークが無間キルするのと、6人が無間キルするとでは意の増幅量が違うので、アークは6人に任せることにした。

 

「さあ、行ってこい」

 

 アークの号令と共に6人はアッシュ・ローラーの捜索に向かった。

 

 

 ──加速世界での数時間後。

 

「やっと現れたな」

 

 どこかでクロム・ディザスターが出現したのを感じたアークは、出現した場所に向かう。

 

 クロム・ディザスターが出現した場所には先程の6人の死亡マーカーと、アッシュ・ローラーと思われる死亡マーカーが立っていた。

 

「もう何処かに移動したのか……」

 

 アークは目を凝らし、クロム・ディザスターが使ったであろう負の心意の痕跡を視る。

 

(この方向は……まさか!本体に向かって行ったのか!)

 

 クロム・ディザスターの負の心意の痕跡は、ISSキットのある東京ミッドタウン・タワーの方向に向かっていた。

 アークは足に《ジャンプ強化》の心意を掛け、地面を蹴って、急いで東京ミッドタウン・タワーに向かう。

 

 東京ミッドタウン・タワー付近に到着すると、東京ミッドタウン・タワーの前方200メートルの地面が焼け焦げて居るのが確認でき、クロム・ディザスターの痕跡も、ここで途切れていた。

 地面の焼け焦げは東京ミッドタウン・タワーに巻き付く半透明な巨大なエネミー、本来は芝公園地下大迷宮のラスボス《大天使メタトロン》が放った光線が原因だと思われる。

 メタトロンはバイスが神器《ザ・ルミナリー》の持つ《エネミーテイム》の能力で芝公園地下大迷宮から引っ張ってきて、ISSキット本体を守る強力な守護獣と置いたのだ。

 

(クロム・ディザスターが突っ込んで反応したのかと思ったが、死亡マーカーが無いから他の要因だな。

 それじゃあクロム・ディザスターは何処に消えたんだ?痕跡はここで止まっているから───そうか!外からケーブルを抜かれたんだな、なら辻褄が合う)

 

 この無制限フィールドに入って来るときには、ケーブルを着けて入って来るのが常識とされていて、クロム・ディザスターは誰かにケーブルを抜かれて消えたというのが予測できた。

 

「ならここで寝て待つとしよう。クロム・ディザスターは戦いに餓えているから今日中には戻って来るだろう」

 

 アークは適当なビルの屋上まで飛ぶと、アビリティ《完全再現(パーフェクト リ・クリエイト)》でベルトの赤いコアの様な場所から空中に使いたい物を投影し、多次元プリンターで使えるようにする。

 アークは一機の小さいドローンを創り、辺りに放す。

 

 ドローンは使用者を遠距離攻撃から守り、半径50メートルに何かが近付くと、警告音を鳴らして使用者に知らせる仕組みを持っている。

 

 アークはドローンに警備を任して眠りについた。

 

 

─────────────────────────

 

 

 ドローンが警告音を鳴らし、アークは目覚めた。

 

 そして警戒内に入ってきた人物が、アークの影から現れた。

 

「バイスか……」

 

「これはこれは先生。奇遇ですね」

 

 影から現れたのはブラック・バイスだった。

 

「どうしてここに?」

 

「メタトロンが暴れたと聞いて、様子を見にきたのですよ。先生はここで何を?」

 

「クロム・ディザスターが来るのを待っているのだ。この近くで何者かによって強制ログアウトした模様だからな。──そうだ、せっかくだから少し手伝って貰うぞ、バイス」

 

「いいですよ、先生の頼みならいくらでも聞きますよ。それで何をすればよろしいのでしょうか?」

 

「クロム・ディザスターを止めるために、何者かが現れる。その何者かとクロム・ディザスターを引き離し、その者を拘束しておくのだ。《拘束者》の異名を持つ君になら簡単な話だろ?」

 

「クロム・ディザスターはどうするのです?」

 

「使用者を倒し、データを回収しなければならない。今回の使用者は相性が良いのか、成長が予想より速く、親離れする前に回収しなければ、私にも予測出来ない事態になるかもしれないからな」

 

 クロム・ディザスターの成長は、残っていた負の心意で予想が付き、その成長スピードはアークが手に負えなくなる状態まで直ぐにでも行けそうな感じがしており、アークはデータの回収時期を早めた。

 

「なるほどそういうことなら───────先生、あれは」

 

「ああ、入ってきたな」

 

 クロム・ディザスターが消えた場所に、クロム・ディザスターが再び現れる。そしてクロム・ディザスターのケーブルを抜いたであろう人物も近くに現れる。

 現れたのは黒の王、ブラック・ロータスだった。

 

「バイス、行けるか?」

 

「はい。どんな相手でも《拘束》するのが私なので」

 

 そう言ってバイスは影に潜り、次の瞬間にはブラック・ロータスを黒い板で拘束した。

 

「ではこちらも始めよう」

 

 そう言ってアークはあるものを投影し、多次元プリンターでそれを使えるようにする。

 アークが造り出した物は、ショップに売っている木の人形《ドッペルドール》

 これは使用者と同じ姿になり、巨獣(ビースト)級以下のエネミーを1分間囮になり、使用者は15秒程無敵になれる代物だ。

 アークはドッペルドールのシステムの部分を弄くり、姿をブラック・ロータスにし、アークがコスモスから聞いたブラック・ロータスの性能データをドッペルドールにインストールし、15m程遠隔操作出来るようにする。

 そしてブラック・ロータスに変化したドッペルドールを操り、アークはクロム・ディザスターに近付く。

 クロム・ディザスターが出現した場所の近くには柱があり、アークはそこに身を隠し、ドッペルドールを操る。

 

「先輩、そこに居たんですね」

 

 ブラック・ロータスに変化したドッペルドールに気付いたクロム・ディザスターは、ドッペルドールに近付く。

 そしてアークは、ドッペルドールの射程範囲内にクロム・ディザスターが入って瞬間、ブラック・ロータスの右手の刃をクロム・ディザスターの右胸を貫いた。

 

「え………?!」

 

 クロム・ディザスターは何が起こった分からなくなり、本能でかドッペルドールを蹴ってその反動で後ろに跳び下がった。

 1分間たったドッペルドールは防御力が0で、蹴られたことにより胴体がバラバラになる。

 

(効果時間が切れたのか……。これじゃあ意味がない)

 

「これは、先輩じゃあない!────そこの柱に誰かいる!」

 

 クロム・ディザスターはアークが隠れている柱に向かって叫ぶ。

 アークは仕方なく柱から出てきた。

 

「お前は………アーク!」

 

「久しぶり……ではないか」

 

 予想外の人物の出現にクロム・ディザスターは驚いた。

 

「先輩はどうした?!」

 

「先輩?ああ、ブラック・ロータスの事か。彼女なら今ブラック・バイスに足止めされているだろ。それよりも自分の身を案じたらどうだ?──ダーク・ショット」

 

 アークの手から放たれた負の心意弾はクロム・ディザスターに向かって行くが、クロム・ディザスターは当たる直前に右に跳び、心意弾を回避して、アークに飛びかかりパンチを喰らわせようとするが、アークはそれを避ける。

 クロム・ディザスターはパンチを避けられたと認識した瞬間、もう一方の手でパンチを繰り出す。

 アークは向かってくるパンチを受け流し、肘を鳩尾に入れ、怯んだ隙に頭を鷲掴みして地面に叩きつける。

 

「お前は私とエンカウトした時からこうなることがすでに決まっていたのだよ。──さて、お前がこれ以上強くなる前に、データを回収させてもらう。

 クロム・ディザスターいやシルバー・クロウ、今日がお前の命日になる」

 

 アークはキーを取り出し、クロム・ディザスターに翳し、起動ボタンを押す。

 

『Malice learning ability』

 

 起動音と共にクロム・ディザスターの体から赤黒いリボン状のデータが出て、キーに吸い込まれていく。

 

「あ…………あ……………」

 

 クロム・ディザスターは力を吸いとられていく感覚になっていて、声も思ったように出せない。

 クロム・ディザスターとシルバー・クロウの命は徐々に消えようとしていた。

 

 その時!右側から黒い閃光がアーク目掛けて走り、アークはデータの回収を中断し、後ろに跳び下がった。

 

「これは予想外だな。もうやって来るとは………ブラック・ロータス」

 

「貴様、よくも私の可愛い《子》を痛め付けてくれたな。その代償は高くつくぞ」

 

 ブラック・バイスに拘束されているはずのブラック・ロータスが現れ、クロム・ディザスターの前に立つ。

 

「バイスはどうした?」

 

「倒してきたぞ。少し強引な方法だがな」

 

 ブラック・ロータスの装甲には所々に傷が有り、バイスとの戦闘の激しさを物語っていた。

 

「クロウ、立てるか?」

 

「はい……先輩」

 

「今の私達二人なら奴を倒せる。クロウ、ここが正念場だ!行くぞ!」

 

 立ち上がったクロム・ディザスターとブラック・ロータスがアークに向かって行き、攻撃を開始する。

 二人の攻撃は完璧なコンビネーションであるが、アークは予測してコンビネーション攻撃を回避する。そしてアークはカウンターが出来る予測を立てるが、どのにもカウンターが成功した予測が無かった。

 

(負けはしないが、反撃の余地がない。──これは違うアプローチが必要か?)

 

 アークは再び高速演算し、有効な手を探す。

 そしてある一手を見つけ、アークはそれを実行する。

 

 ブラック・ロータスがアークに腕の剣で攻撃する5秒前にアークは再びドッペルドールを造り出す。

 そしてドールはある者の姿に変わっていく。

 

 それは初代クロム・ディザスターが愛したバーストリンカー《サフラン・ブロッサム》だった。

 

 ブラック・ロータスの剣はサフラン・ブロッサムの胸を貫く。

 

「あ……アアアアアアアア!!!!」

 

 それを見ていたクロム・ディザスターがアークへの攻撃を止め、ブラック・ロータスを攻撃し始めた。

 

「やはり、お前の弱点はそれか」

 

 クロム・ディザスターはブラック・ロータスを押し倒すと、右に左にと拳で顔を殴る。

 

「いいぞ!悪意!憎悪!憤怒!絶望!殺意!破滅!いい感情だ!」

 

 アークは興奮気味に喋り、二人の争い見守る。

 

 するとクロム・ディザスターが輝き始めた。

 

「な、なんだ?!」

 

 輝きが終わると、そこにはクロム・ディザスターではなく、シルバー・クロウがいた。

 

「馬鹿な!?この感じ、クロム・ディザスターを浄化したのか?!あり得ない!」

 

 どんな方法を使ったか分からないが、シルバー・クロウはクロム・ディザスターの呪いから脱出したのだ。

 

「先輩、すみません……」

 

「私は大丈夫だ。君が戻ってくれるのを信じていたからね」

 

 二人は立ち上がると横に並び、手を上に翳す。

 

「────《光線槍(レーザー・ランス)》!!」

「────《奪命撃(ヴオーバル・ストライク)》!!」

 

 二人の心意が重なり、一本の槍になる。

 

 アークはその槍を脅威と見なし、体中から負の心意のエネルギーを出し、巨大な盾を造り出す。

 そして槍は投擲され、盾にぶつかる。

 

 盾は硝子のように簡単に割れ、アークの体を貫き、アークの足場を粉々に砕いた。

 

「まさかこんなことがあり得るとは……」

 

 貫かれたあとから、リボン状のデータが流れ始める。

 

 アークの今のレベルは9で、レベル9同士のサドンデス・ルールが発動し、これから全損するのだ。

 

「欠けたピースは埋まり、次のステージが開かれた」

 

 そう言ってアークは崩れる足場と共に落ちて行った。

 

 

 

─────────────────────────

 

 

 数時間後、崩れ落ちた瓦礫の溜まり場に白の王《ホワイト・コスモス》がやって来た。

 コスモスは心意の力で瓦礫をあるものを探し出し回収する。

 それはアークが持っていたキーだった。

 

「次の段階の移行ね、アーク」

 

 キーはその言葉に呼応したのか、キーに付いている白い顔の赤い目を光らせた。

 

 

 

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