華に。   作:柑れな

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この小説は、LGBTQ+を扱った作品です。
筆者(以下、私)はトランスジェンダーのMTFを自称しています。
作中、GIDのことについて強い表現を使う場面もありますが差別的な意思はありません。
不快に思われないよう尽力しますが、不快に思われる可能性があることをご留意ください。

小説本編第一話です。主人公、芽咲 零(めざき れい)の一人称視点ですが話し方は大人っぽくしています。


第1

秋。

 

 葉した落ち葉が積もり、自然の香りが立ち込める。

涼しく、羽織を羽織る人々が増える。

 

 零は、傷のついた黒いランドセルを背負って、学校へ向かって歩いていた。

軍団登校。家の近い子で集まって小学校へ向かう。当然男女が混じる。

 

「赤のランドセルかわいいな」

「零もスカート履きたい」

 

 そんなこと、昔から思ってた。幼稚園の服だって、女の子のピンクの服もかわいいよね。着たかった。

でも零は男の子だから、水色の服、黒のランドセル。当然のこと。スカート履くことなんて恥ずかしいじゃん。

お母さんもそう言うし、きっとそうなんだろうなって。

 

 なにも不思議に思うことなく、生きてきた。きっとどんな人もお互いの性のこと、いいなって思うことあると思う。

男の子がスカート履いちゃいけないとか、女の子は胸出しちゃいけないとか。

みんなもう片方の性になりたいって思うだろうな。自分もこんなに昔から思うんだから。

 

  なんてこと思いながら、軍団の年下の男の子と会話をする。いや、会話というよりじゃれ合う。

その子は畠田晃輔(はただこうすけ)。やんちゃで、元気で、騒がしくて。いつも零に絡んでくる。

「この子もこんな性格だけど、でもきっと女の子になりたいとか思うんだろうな。」

って、その日は思ってた。こんなに元気で騒がしいけど、でも女の子になりたいって思うなんて。

そう考えてたら、思わず笑ってしまった。

「急に笑った!変なやつ!」

 また煽られてるな。でも小学生の零は、どんな人も異性になりたいって思うと思い込んでいるから、世界を知ったみたいで、おかしくて。面白かった。

 

「学校着いたらみんなに聞いてみよっ」

 

 今日の楽しみができた。今日も学校が楽しい。

 

 

 

 家から学校まで、歩いて25分くらい。軍団の友達と話してると一瞬だ。

零は小学五年生だから、校舎の4階。登るのは毎日大変だが、教室に入れば親友がいる。

毎日毎日そうして楽しみにして階段を上る。今日はすでに聞いてみたいことがある。普段より楽しみが大きい。

そして今日も教室の扉を空けて、いつもの背中を見つける。そして、僕は声をかける。

 

「よっ!!」

 

「なんだ芽咲か おはよ〜」

 

この親友は四弦 秀(しげん しゅう)。小学四年で知り合った、馬の合う友達。

いまはもう親友としてお互い信頼し合っている。勉強、スポーツなど、いろんなことが四弦の方が少し上手。

だからいろいろ手伝ってもらうことも多い。でも零も負けず嫌いだから、親友であり良きライバル。

 

「なんかあった?」

「実はさっき歩いてて思ったんだけどさー」

 

 零は早速、さっき至った話をすることにした。

 

「四弦も女の子になりたいって思うことあるでしょ?これ、零思ったんだけど世の中みん......」

 

「え?いやそもそもそんなこと思ったことないんだけど。」

 

「え?」

 

 零の中の何かが崩れる。

 

「まって、本当に?男の子のままで何も思わない?」

 

「逆にお前男嫌なの?オカマなの?」

 

 零は何も言えなかった。

 

 何か言うこともできなかった。今まで普通だと思っていたことが目の前で、こんなに信頼している親友によって。

___堂々と否定された。

 

 わからない。その後にも他の男の子に聞いて回った。おちゃらけて女の子になりたいとか言う人はいても、

女の子に憧れた人も、赤のランドセルにしたい人もいなかった。

逆に女の子も、男の子になりたいって子はいなかった。

 

『オカマなの?』

 

 その言葉が頭の中を駆け回る。ちょうどその時、テレビではオネェタレントが出てきた頃だった。

何も知らない零は、あまり良い印象を抱いていなかった。

自分はこれなのか?同じようになってしまうのか?

 

 四弦も、他の子もむしろお前がおかしいって反応だ。

変な人を見る視線。冷たい目。慣れているはずなのに、その日はひどく辛かった。

 

 その日は早退した。

 

 次の日になって、朝起き上がる。ベッドの上で、天井を見て落ち着いて考えてみる。

___でも、いくら考えても『わからない』。

 自分がおかしいのか?

 

 世の中普通に生きてる人、みんなもう片方の性別の人を見て憧れないの?

学校の男の子、赤のランドセルかわいいから使いたくない?スカート履きたくない?

 

 お母さんはどうなんだろう。聞かずにはいられなかった。でも帰ってきたのは

 

「男の子はかっこいいものが好きなんだよ。かわいいのが好きな男の子は少ないから。」

 

 そうなの?

 

 じゃあこの気持ちは?少ないの?おかしいの?だめなの?

疑問が山ほど浮かんだ。小学生の頭はパンクしてしまった。

 

「......いってきます。」

 

 その日の朝はだめだった。晃輔の声も頭に入ってこない。

でも零は単純だった。

学校について、長めの休み時間。

 

「芽咲ー!!ドッヂやんぞーーー!!!」

 

「......オッケー!」

 

 楽しかった。四弦といるだけで楽しいのに、他の子も一緒に遊んで。

 

「まあ悩むだけ意味ないな」

 

 子供ながらそう思った。

その後の零は、他の人が異性になりたいと思うかどうかとか、自分がおかしいとか、そんなこと考えることはなかった。考えるだけで嫌な気持ちになるし、しんどかったから。

でも、零の心の中にこの悩みは残り続ける。それは中学二年生の転機が訪れるまで、ずっと心の中で悩ませ続ける悩み。将来もっと大きくなる悩みの種だった。

 

 

 家に帰ると、朝考えていた悩みなんてどうでもよくなっていた。

その後は塾が待っている。零は別にそんなに頭は良くない。

 

 塾には、零がとても苦手にしている人がいる。

別に勉強もそんなにできない、苦手な人がいる塾に行くのが零は少し辛かった。

 

 「変なの。」

 

 未だ土もない。




第一話でした。
オカマなの?という言葉はこの後もキーワードとなりますが、MTFの方には様々ありますがとても刺さります。
もし身近にいたら、そう言った言葉をかけるのはお控えいただくと良いかな?と思います。
またわかりにくくなっていますが、この頃は自分のことを下の名前で読んでいました。
よってこの作品でも下で読んでいます。主人公の一人称の移り変わりもお楽しみいただければなと思います。

柑れな
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