-_-/かずピー
カタカタカタ……ユチャッ。
「うん、何日やっても慣れない」
華煉が気絶したことで、中断させていた柄との鍛錬もお開きとなり、現在自室で書類整理中……なんだが、この都が以前の姿であればあるほど、このパソコンのなんと似合わぬこと。
それに慣れない自分に溜め息を吐きつつ、続きをする。
寝台には柄。俺の、干したて布団の上でうつ伏せに寝転がりつつ、足をぱたぱたと揺らしている。
ところでパソコンをいじくっている擬音なんだが、あれってカタカタっていうよりはチャッて感じだよな。エンターキーとか特に。
「……むう。やはりかすかに丕ぃ姉の匂いがするな。そうか……丕ぃ姉は昨夜、ここで父と……」
「やめなさい」
「……おお、ここに消えきれない赤い染みが」
「やめてください!?」
俺も大分気が動転していたんだろう。自分で洗濯もせずに普通に部屋を出てきてしまって、騒動のあとに戻ってみれば洗濯済みで干してあったシーツさま。ご丁寧に裏返し状態で置き手紙があって、そこには「このばかちんこ」と書かれていた。ご丁寧に日本語だ。泣いていいですか詠さん。
むしろ洗濯済みなのに匂いがあるって、どれほどしぶとい香りなんだよ。ああまあ、洗ってくれたのがシーツだけなら納得も出来るけど。
今さらだけどあの時代の大陸にあれだけ手触りのいいシーツがあることに俺、驚愕。それ言ったら服とかだって相当だけどな。いや、ほんと今さらだった。忘れよう。
「ところで父」
「ごめんな柄。父さん、嫌な予感がするから聞きたくないんだ」
「いや、べつにおかしなことを言うつもりはないぞ。むしろ思って当然だ。どうしてその、丕ぃ姉は父から離れないんだ?」
「聞きたくないって言ったのに!」
あえて気にしないようにしていたが、俺の傍には華煉が居る。すっかり気絶からも復活して、元気……だと思う。わざわざ隣にある円卓の椅子を持ってきて、俺の傍にちょこんと座って、服を摘んだまま離れない。
仕事をしている俺をじぃ~っと見てきているだけなんだが、たまに視線をそちらに向けると、ぽーっとしていた顔が“ふわぁあっ……”と、高速再生映像の花のつぼみが開くシーンみたいに笑顔に変わる。いや、なんなのこのコ。娘だったらご近所にうざったいほど自慢したいんですけど。ああ、産まれたばっかりの時はしたね。みんなかなり引いてたね。そう、産まれ───産まれ?
(お……あ……!?)
今、普通に“娘”って思考から華煉が外れていた。それに普通に驚いた。
柄がきょとんとしているが、これは驚くなってほうが難しい。
……なんというか、やっぱりそういう行為っていうのは深層意識っていうのか? それに、深く意味を刻むっていうのもあるみたいだ。昨日まではどうしても“娘”として見てしまう部分があって、それを押し込めるのも苦労したのに。今は、普通に女性として見ているんだから……まあその、あえて捻くれた口調で言おう。
(うーわー、男って単純ー)
自分への頭痛を溜め息で流して、PCをシャットダウン。
急いで進めるものも無いし……むしろ進めすぎたくらいだから、ちょっと休憩。
けど、面白いもんだ。自分の頭の中が“北郷一刀”の数だけ分けられるみたいな、いろんな方向で物事を考えることが出来る。お陰で仕事が捗る捗る。思考の中の俺達は実に賑やかだ。その性格も各国で生きた分だけ違ったりするし。そんな“俺達”で脳内会議をすれば時々孟徳さんも現れるし、そんな俺達で各国のみんなや娘達になにか手作りで食べるものでも贈ろうと案を出せば、たくさん作ったキャンディーに紛れてオンディーが混ざることさえある。実にニクイ。いや冗談だが。
「なぁ丕ぃ姉。それは面白いのか? 私もやってみていいだろうか」
「───………………」
冗談を脳内で言い合っている中、質問を受けた華煉がぽーっとした顔から阿修羅へクラスチェンジした。なんでこの娘、俺と他とじゃこうまで反応違うの。ちょ、歪んでる歪んでる! 殺気で景色歪んでるから落ち着きなさい! なにこれ独占欲!? ちょっとうれしいけど怖い! とか思ってたら、そんな殺気がぽしゅりと霧散。華煉はふるふると震え、顔を赤くして、口を波線にして結構な時間をあうぅと唸ると、柄を手招きして椅子に座らせ、なんと場所を譲った。
内心驚いている内に「いいのかっ!?」なんて言いながら、もう既に喜んで座っている柄が、「では早速」と……俺の服を摘む。で、数秒後。
「……丕ぃ姉。これ、なにが楽しいんだ?」
自ら、火をつけたマイトさんを体にぐるぐる巻きにするような爆弾発言をしてみせたのでした。
え? その時の華煉さん?
ええ、面白いものなんですが、まず目の色が変わるのはまあいつものこと。けれどそれからが凄かったんですよ。
なんと説明すればいいのやら……ハハ。
いえ、目を逸らしたわけではありません。一部始終を、確かに。
ですから……あれを喩えるならそう。
螺旋。
でしたね。
え? 話し方が鬱陶しい? わざわざ喋る度に顎を左右に揺らすな? そうしたあとに真っ直ぐに見てくるのがうっとうしい? ごもっとも。
スパッと言うなら───華煉は髪をドリルにしていない。華琳のように頭の両側で結わいてはあるけど、ドリルではない。それが、彼女の中で充実した氣が彼女の強い意思で回転を始めた途端、髪の毛をドリル状にしたのだ。
華琳でさえドリルを作るのに専用の器具が必要だというのに、まさかのオーラスタイル。そんな状態でギンと睨めば、口に出したら覇王様に殺されそうだけど、スタイル抜群の覇王様そのもの。髪には黒も混ざっている華煉だけど、威圧の種類が思いっきり華琳だ。
この、すぐに怒鳴るのではなく、じっくりと追い詰めて逃げ道を塞いでからさらに圧して潰すような空気の重さは……! でも人の服掴む行為でギャースカ騒ぐのはやめなさい。と、手に氣を込めて頭をひと撫で。それだけで「ひゃあう!?」という悲鳴とともに髪型はパサーンと元に戻って、威圧もゴシャーとどこかへ飛んでいってしまった。
(……段々慣れつつある自分が嫌だ)
だってこんなの、都に住み始めた頃みたいじゃないか。
あの頃はところどころで意見がぶつかって、時に睨み合うこともあったから、その度に仲裁して……あ、だめだ、思い出したら胃に鈍痛が。
「父!? 父ー! なんだか丕ぃ姉が怖い! どうしたというのだ丕ぃ姉! 私はただ自分に正直な感想を言っただけで!」
「解らない? 解らないというの? へえ、そう。ならばあなたはまだまだ、父さまへの想いが足りないということね。ひとつ訊きたいのだけれど、あなたが父さまに抱かれたいと思うのは、ただの知識欲? それともきちんとした愛あってのものかしら」
そして、ちょっとした胃痛に目を瞑ってしまえば、開いた先で再び問答。
ええいもうあなたの髪の毛どうなってるんですか華煉さん。暴走するより先に抱き締めて「ぴぃっ!?」……なんか妙な悲鳴をあげたけど、無視して膝の上に乗せる。で、頭を撫でつつお腹に手を当て氣を同調させてやると、ポピーとか擬音が鳴りそうなくらいの勢いで体が赤くなってゆき、カタカタと震え始めた。
「おお……すごいな父」
「頼むから妙なことで喧嘩とかはやめてくれな……父さん、自室に居る時くらいのんびりしたいんだ……」
「むう。そうは言うが父。私も丕ぃ姉にああ言われては、自分というものを見つめ返したくもなるというものだ。そして私にはそういうことを気軽に相談出来る相手が居ない。述姉ぇや邵にでも話せばいいのだろうが、悲しいことにあの二人も丕ぃ姉の言っていた言葉に該当する気がする」
「知識欲か?」
訊いてみれば、素直に頷く。確かに、知識欲でああいうことをしたいというのなら、俺がそれに頷くのは難しい。
華煉のようにドがつくほどのストレートな感情だったらとっても解りやすいんだけどな。
「それはもちろんある。だが、だからといってそのために体を許すほど、私の貞操観念は緩くない。そもそも私は元から父が好きだぞ? ずぅっと、それこそあの時代の、子供の頃から父のことはずぅっと見てきた。まあ、その。最初はもちろん興味の方が強かったが」
「ああ、どうやって祭さんにお前を産ませたかってやつか」
「ああ……あれは実に謎だった。あの母が、弱くてだらしのないと見られていた父に、どうして体を許したのかと。好きになったのはその過程だな。元々自分の周囲のために懸命に動く姿を素直に良しと見ていたし───ああ、ここでいう周囲は“私たち家族のため”というのが大きい。民たちのためになにかをやっていた、仕事をしていた、なんてことが解らなくても、家族のために動いていた父は知っている。ぐうたらだ~とか誰がどう言おうが、自分自身でもそう言おうが、適当に語る言葉と尊敬とはまた別だ」
「…………!」
熱く語る柄を横に、俺に撫でられっぱなしの華煉がどうしてか“むふんっ!”と胸を張ったドヤ顔だった。
でもすぐにとろけた。まるで撫でられっぱなしの猫だ。あ、懐きすぎてる犬でも可。
今じゃ完全に俺の胸に体重を預けきっていて、意地でも俺を見ようとするその顔は赤く、目は潤んだままだ。隙を見せれば唇を奪いにくるんじゃないかってくらい、潤んでらっしゃる。
……正直に言おう。認識が甘かったかもしれません。
擦れ違いみたいな親子喧嘩から仲直りして、随分と慕ってくれるようになった華煉だけど、その上があったのはまだ記憶にも新しい。古い部分もあるけれど、新しいほうだと思う。
けど、それ以上があることなんて想定してなかった。
仲直りから急に頼るようになってくれたのは凄まじいほどに嬉しかった。
頼ること以上に、ちょこちょこと付いてくるようになってからも嬉しかった。
気づけばいつも見つめてきているような気がして、あれ? と首を傾げた。
で、やたらと顔を赤らめて、抱き付いてきたりするようになったあたりからハテと思う気持ちが確信へと変わった。
恋に恋するどころか真面目に父親に恋していることに気づいて、なんだってー状態。
それから時を越えるほどに思われ続け、もうさすがにこれ以上はないだろ……と思ってたら、ありました。あったのですよ、上が。
「…………」
「………」
過去に思いを馳せつつ、それでも撫でていると、潤んだ目からとうとう涙がこぼれ、それを俺の胸で拭うようにぐりぐりと顔をうずめてくる。いつの間にか体勢は変わり、俺の膝に横向きで座るような状態で、華煉は俺の胸にすりすり。
猫が頭を撫でられて、もっと撫でろとばかりに頭を押し付けてくるように、ごしごしと顔を擦り付けては、ぎゅーっと抱き付いてくる。
あ、あのー!? 今ここに柄さんがおるとですよー!? 華煉ー!? 華煉さーん!?
…………あ、だめだこれ、俺に集中しすぎて周りが見えなくなってる。
「…………」
「………」
柄は柄で、とろけきって甘えまくりの華煉を見て驚愕状態。
俺と華煉を交互に見て、“ななななんだこれ、なんだこれなんだこれ!”って感じの混乱をして見せている。
……どうしようか、これ。考えてみても状況の整理が追いつかない。
なので、とりあえず猫にそうするように華煉の頭を撫でたり、喉をこしょこしょと撫でてみたりすると、彼女の喉の奥からきゅうぅうん……と小さな声が。相変わらず潤んだ瞳のこの可愛い物体を、ハチャメチャに撫で回したい衝動が爆発───しそうになったところで柄の視線に気づいて踏みとどまる。
ソ、ソウダネ! とりあえず落ち着こうネ! 暴走しすぎて頭の中がとりあえずだらけだけど、なによりまず落ち着こうネ! 平穏バンザーイ!
「……父」
「ナ、ナニカナ?」
かつての娘の前で盛大に暴走したこの北郷に、柄がちょっと低い声を投げる。
な、なんでせう。もしかして女性を猫に見立てて暴走したまま撫で回しそうになった変態として、一生十字架を背負っていくようなことを言われるのだろうか。
「それ、私にもやってみてくれ!」
「」
“は、はああ……!”と北斗の拳のモブさんみたいに怯えていたところに、そんな言葉が投げられた。
もちろん俺、口を開けたまま停止。絶句ってこういう時に使う言葉だろうか。
「実はだな、父。私はいろいろと後悔しているのだ。過去の私は母の後を追うように振る舞うばかりで、自分というものをあまり求めなかった。だが今、こうして自分というものをやり直せている。武の基礎は既に、ここまで育つ過程で体に叩き込んだ。あとは別の、自分の知らないさまざまを知りたい。あ、きちんと勉学もしているぞ? 幼い頃からきちんと学べば、あれも案外面白いものだ。というわけで、困ったことに好奇心の幅が広がってしまったのだ! 協力してくれ、父!」
「」
そして二の句も告げられない。
しかし成長しようとしているかつての娘を捨て置ける筈もなく。
俺は、猫のように甘える華煉をべりゃあと剥がすと───剥がっ……ちょ、剥がれなさい! どれだけ強く抱きついてるの! いや、“やぁああ”じゃなくて! やめて! なんか引き剥がすことに罪悪感が!
そんな格闘ののち、寝台の上で俺の布団に包まり、ジト目でこちらを睨む華煉さんを見ることになった現在。……俺の膝の上にはわくわく顔で先を促す柄さんが……おがったとしぇ……。
◆あとがきみたいな雑談
「ねぇ、あれってクァディシン?」
「ポルタなのんっ」
「ヤーヌアさんでしょ」
「……アズボガですよ」
電ジブでマスターランクまでいったけどすぐに落ちました。
関係ないけど事前登録ガチャってとりあえずやりたくなりますよね。
ガールズブックメイカーで事前ガチャ回してたんですけど、なんでかロリばっかり出て、相当戸惑いました。
3ではピギー、4ではドロシー、5ではミヤザワしかでねぇ! みたいなレベルでロリでした。とりあえずようやくテイルが出たので、僕ロリコンじゃないヨ! と一安心しつつ、一日10回は回してみてます。
お、幼さの残るテイルの容姿に不安になって、閻魔大王出ないカナ……とか思ってるわけじゃないヨ?