ギャフターの外のこと   作:凍傷(ぜろくろ)

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元気と無口に挟まれて①

番外のじゅうに/騒がしくて、無口

 

 絵本が好き。

 彼女はそう言った。

 母に似た黒く長い髪と、母とは違う肌色の女の子。

 無口で、絵本が好きで、眼鏡はつけず、長い髪は腰あたりでひと房に纏められている。

 どういった原理か、常にふよふよしている羽衣のようなものを体に軽く絡ませている彼女……名を、周循(しゅうじゅん)といった。

 

「………」

「………」

 

 さて、そんな循。

 普段は孫紹(そんしょう)に連れ回されて、ボランティアめいたことに精を出しているのだが。

 かつての時代、道場や私塾などに迎えに行った時は、手を繋ぎながら歩いたものである。じゃなくて。

 ともあれそんな循だが、本日……祀瓢とのデートがあった翌々日、何を言うでもなく執務室にて仕事中の俺の傍へと歩み寄り、傍に椅子を用意、ちょこんと座ると、黙々と本を読み始めた。

 

「循?」

「?」

 

 声をかけると本をノタムと閉じて、俺を見て首を傾げる。

 ……本って、閉じる時……結構独特な音、鳴るよな。

 俺的にはノタムって聞こえたりするんだが、他のみんなはどうだろうか。

 パタンではない気がするんだ。ノタムだよな、うん。なんか。

 いや、モトンって感じでもあるか? “ポッ”……って感じでも……ううむ。

 ラノベとかだとカバーがいい音を鳴らすからちょっと違うんだ。

 ページが薄いと音も高いっていうか……逆に分厚いと“モ゛ッ!”って感じで…………どうでもいいか。

 

「今日は手伝いはいいのか?」

「……ん」

「そか」

 

 話が終わると、少ししてから首を傾げ、“もういい?”って顔をする。

 頷いてやるとこくこくと頷いて、本を開いて集中しだした。

 

「………」

「………」

 

 静かなものである。

 軽く俯き、本を見る姿は冥琳のそれとひどく似ている。

 娘であるって部分を抜いても、肌色が違えばむしろ冥琳である。メガネはかけてないが。

 ああ、あと声を聞くことがひどく珍しい。

 積極的に言葉を発しようとしないから、俺が黙れば循の隣はいつでも静かだ。

 

「───」

「? ───」

 

 そんな静けさに、久しぶりにのんびり出来るなーなんて思っていたら、人の気配。

 俺が外に意識を向けると循も釣られて意識を向けて、少し眉間に皺を寄せた。───ところでノック。

 

『父さん父さん、こっちに循は来てる?』

 

 聞こえた声は紹……孫紹のものだった。循を探しに来たのだろう。

 対する循は、その言葉を聞いて眉間に皺を寄せたまま椅子から立ち上がると、ごそごそと俺が使っている机の下に潜り込んだ。

 そして怯えた小動物のような目で、俺を見上げてくるのだ。

 言わないで、言わないでと。

 くそう可愛い、相変わらず可愛いなこの娘は。外見が冥琳とそっくりなのも相まって、やたらと甘やかしたくなる。

 しかしそれと娘に嘘をつくか否かは別なので、その頭をひと撫でして、紹には「居るぞー」と返事をした。

 途端、「!?」と驚きの顔をしたのち、足に抱き着いてくると太ももをズボンごとがぶりと痛ァアアーッ!?

 

「居るというなら話は早いわ。父さん、循を同行させる許可を頂戴、いますぐよっ」

 

 太ももを噛まれた俺のことなぞ知ったことではないと、部屋に入るなり俺に自由な時間を奪う権利を寄越せと言ってくる。

 許可を得ようとするあたり、雪蓮よりは常識的ではあるが。

 

「そりゃだめだ。循が行きたくないって、俺の足にしがみついてる」

「む。そう。行きたくないなら仕方ないわ。嫌なことの押し付けは迷惑だものね。解ったわ、諦める」

 

 で、物分かりも良いわけだ。ほんと雪蓮の娘とは思えない。

 あとこの娘、なにかと手を胸の前で叩き合わせるのが癖である。ぽむ、って。

 

「ならなら父さん、私と一緒に時間を潰さない? 私今とても暇してるのよ。いいでしょ?」

「仕事中。ほれ、今朝届けられた仕事の山がそれだ」

「む。じゃあ私も手伝うわ。仕事はさっさと片づけるに限るもの。うん」

 

 ぽむと手を軽く叩き合わせてから腰に手を当て、うんうんと頷く。

 すぐにさっきまで循が座っていた椅子に腰を下ろすと、書類を広げてにっこり笑った。

 

「ふんふん……なんだ、ようするに父さんの確認が必要な書類なのね。いいわ、任せて、許可不許可を父さんの性格で仕分けていくから、軽く目を通したらさらに分けて。循、落款落とすくらいの作業は手伝ってもらえる?」

「……こくり」

「口で言うのね……まあいいわ、結果が同じならいい返事だもの。じゃあやりましょうはい開始」

 

 ぽむ、と手を叩いて作業開始。

 早速一枚目からざーっと目を通して、はいこれはいこれと分けていく。

 俺はさらにそれを分けてゆき、許可、確認完了のものには循が落款印を落としてゆく。

 作業は思ったよりも効率よく進み、普段の倍の速度であっさりと終了。

 そうなると紹は「んん~っ!」と伸びをしながら席を立ち、俺を見てはにこっと笑った。

 

「さ、これで父さんの時間が浮いたわ。その空いた時間を私にくれない? もちろんやることがあるなら手伝うし、だめっていうなら諦めるわ」

「即断即決は大事だな。よし譲った。なにがしたい?」

「話が早くて嬉しいわ父さん、言った通り暇をしているのよ。手伝ったことで父さんの笑顔が見れたのは、巡り合わせに感謝ってやつね。けれどそれはそれ。父さん、言った通り暇をしているの。付き合ってもらえない?」

 

 暇しているを何度も言うくらい暇しているらしい。

 

「明確になにをしたいって言わないってことは、特に目的があるわけじゃないんだな。純粋に暇つぶしか」

「うんそう。言葉をすぐに返してくれて嬉しいわ。それで父さん、なにかない? ここ最近、姉さんたちとでぇとをしたと聞いたわ。私も結構興味がある」

「お前もしたいって?」

「うーん、でぇと自体にそれほど求める思いはないの。問題はその中身。新しく柄姉さんに真名を与えたのよね? 率直に言うなら私も欲しい」

「そか。紹と循と、続の真名ならもう考えてあるんだが……」

「もう、それを先に言って。最高の暇潰しじゃない。それで? どんなものなの? 教えて? 聞きたいわ」

「まず落ち着こうな」

 

 言葉の区切り毎にポムポムポムポム手を叩き合わせるんじゃありません。やかましいわ。

 あと循も。噛んだところを撫でたりしない。くすぐったいから。

 

「ああけど待って。確か聞いた話じゃ、真名を貰ったならお返しに身を捧げるのよね? 困ったわ。今日はお風呂、沸かしてないのに」

「おいこら待て、誰だそんなデマ情報流したのは」

「? 事情を知った桂花が口にしていたわ。御遣いに真名を授けられるということは、やつの白濁に塗れ、純潔を散らすことであるって」

「………」

 

 おのれ猫耳フード。

 

「でもべつにどうってことないわ。父さんなら怖くないし、許せるし。そもそも真名が欲しいから身を捧げるなんて、子供が欲しいから身を捧げるあの時と同じようなこと、頼まれたって嫌ね。ごめんだわ。私は私の意思で、きちんと望んで父さんと結ばれたいの。そこにそういった、なにかを捧げるから何かを寄越せ、なんてものは必要じゃないわ。だから、父さん」

「……ああ、なんだ?」

「真名、ちょうだい?」

 

 誰かを巻き込んでは、一応同意の下でボランティアに走ってばかりのこいつにしては珍しく、“パパ、わたし頑張ったよ? 褒めて?”と言うようにねだってくる紹。

 相変わらずポムポムと手を合わせるのはやめない。

 なんか可愛かったので頭を撫でようとしたら、その手がべしりと叩き落とされる。

 

「そうじゃないでしょ父さん。欲しいのは真名。別の褒美をもらったら、別の何かを頑張らなきゃいけないじゃない。それはだめ。手柄一つに対して数多くを望むのは賢くないわ。その生き方は嫌い。一つには一つで、よ」

「価値が一緒ならべつに多数とひとつでも交換していいんじゃないか?」

「価値なんて人によって違うじゃない。たとえば私は父さんが作るお菓子が好きよ。とても好き。けれど同じくらい好きなものを一つと、相手がそれを嫌いだから二つあげると言ってきたなら、私は相手の好物を二つ渡す。好きというものに対して、金銭的な価値の問題なんて二の次。好きだから欲して、あげてもいいからあげるの。日本で言う10円のお菓子と、100円のお菓子があったとして、こちらは100円だから10個と交換だ、なんて言われたって、そんなのは嫌。私は好きなものは“好き”で交換する」

「ん。つまり?」

「父さんの時間を私の時間と交換したい。真名に対する対価が仕事の手伝いっていうのは“好き”と釣り合わない気がするけれど、残念なことにまだ私、真名を授かる喜びを知らないの。それがどれほどの好きになるかが解らないから、まだなにも言えない。だからちょうだい? ひとまずは手伝いの見返りとして」

「とんでもなく好きが大きかったらどうするんだ?」

「父さんの“好き”の思う通りに動いてくれればいいわ。私が抱いた好きを越さない限りは全てを受け入れてみせるから」

「既に嫌な予感しかしないんだが」

 

 話の流れで後の展開が読めるっていうか。

 まあでも、せっかく考えた真名だ。きちんと贈らないとだな。

 じゃあ紙と筆を用意して、慣れた手つきでドシュドシュと筆を走らせて文字を書く……なんてことはせず、丁寧に心を込めて文字を線を連ねた。

 書いた文字は二文字。それを紹に見せると、

 

「……風蓮(ふぁんれん)?」

 

 ……読み方を口にする前に言われてしまった。

 断じて“かぜはす”でも“ふうれん”でもない。

 

「ああ。いろいろと悩んだんだけどな。突然やってきては場を掻き回すくせに、落ち着いている時はいやに心地いい。風みたいなお前にはよく似合ってると思う」

「程昱と被ってない?」

「それ言い出したら孫家なんてどうするんだよ」

「あはは、うん、言ってみただけ」

 

 にぱっと笑って、珍しくも紹が左腕に抱き着いてくる。顔はほにゃんほにゃんに緩んだままで。

 

「そっかそっか、悩んだんだ。へー? へーぇ? へ~……?」

「顔が緩みっぱなしだぞ」

「喜ぶ時くらいは気を緩めるべきだって教えてくれたの、父さんじゃない。なら喜ばなきゃ孝行娘じゃないわ。私は自分の気持ちには素直でいたいの」

 

 パッと離れ、右手を胸に、左手を腰に当てて、にこりと微笑み胸を張る。……それが終わるとまた腕に抱き着いてくる。良い笑顔である。

 こいつはどうも芝居がかったポーズが好きなのか、言葉の区切りごとになにかしら違うポーズをとっているような……まあいい。

 それよりも、俺の足元で循が俺を期待を込めた目で見てきてる。

 ズボンくいくい、首はこてり。ようするに“まだ? まだ?”と言いたいのだろう。むしろ言いなさい。きみはちょっと無口すぎる。ある意味、恋より無口ってすごいことですよ?

 

「循の真名はな……こう……」

「ふんふん……?」

「いや、お前は見ないでいいから。こういうのは一番に本人に見せるべきだろ」

「はーい。……えへへー……♪」

 

 ほれ、と風蓮の文字が書かれた紙を渡すと、それを手に、隠すことが出来ないほどに顔を緩ませる紹……風蓮。

 そんな彼女は席を離れて、執務室の机の正面、ようするに俺の正面の奥側まで行くと、紙を両手で抓むようにして喜びの舞を舞い始めた。

 その隙にほれ出てこいと循を促して、横に座らせると文字を連ねてゆく。

 

「……、……」

「引っ張るのはやめなさい、体が揺れると文字がブレるから」

「…………ん、んぅ……」

 

 どうやらかつてないほど期待しているらしい。

 書いてるのに“まだ? まだ?”と子供にせっつかれているような気分だ。

 ともあれ文字を書き、心の中でタッピーツと自己満足に浸る。

 だってどれだけ文字が上手くなっても誰も褒めてくれないし。

 

擁冥(ようめい)って読む。心の奥底を抱きかかえるって意味だ」

「……! ……!」

 

 文字の意味を教えた途端、紙を手に“ぱあああっ……!”と笑顔を咲かせる循。

 そして立ち上がると、紹……もとい風蓮の隣へ小走りして、同じく喜びの舞を舞い始めた。いやなんなのその踊り。誰から習ったの? え? 美以? アー……部族的な踊りでございましたか。

 

「なんにせよ、喜んでくれてるみたいでよかった」

 

 内心、嫌だとか変えてくれとか言われたらどうしようかと思っていた。

 自分の娘には名前をつけてやれなかった俺だ、真名くらいはしっかり考えたかった。

 だって俺が考えるまでもなく、母親が名前はこれだとばかりに決めちゃうんですもの、出る幕もなにもなかった。

 あれも一種の歴史の強制力ってやつなのかな、と何度思ったことか。

 まあそのあたりはきちんと……華琳だけじゃなく、全員とも話し合って決めたから、それはいいんだ。

 ただ、歴史の中で子供が居たって話がなかった人との間には、子供が出来なかったって問題。

 黄忠の娘である黄敍は、名前くらいしか残っておらず、黄忠よりも早く死んでしまったって話だ。

 ああ、ちなみに璃々ちゃんは長生きだった。

 さらに言えば、璃々ちゃんとの間にも子供は出来なかった。

 そうなると、ああいった辻褄から外れそうになった途端に頭痛が起きるような世界の先……様々を都合のいいように纏めたこの世界なら、そういった心配はどうなるのか。

 ……たぶんだけど、もう歴史をなぞる理由なんてないんだから、普通に子供は出来ると思う。

 だから、いつかの日のように、璃々ちゃんが“自分の子にお母さんがしてくれたのと同じくらい、愛情を与えたかった”って泣くこともないんだ。

 

(……ん、頑張ろう)

 

 いや、夜のアレコレを頑張るってことじゃなくて、そんなみんなを支えられるようにって意味で。

 

「ああまずい、これはまずいわ。父さん、嬉しい。これは嬉しいものね。好きの対価が見つからない。私の人生でこれほど嬉しかったことはなんだった? 解らないわ。うん。というわけで父さん、言った通り父さんの思うように私に願いをぶつけて」

「そうか。じゃあひとつ命令してみていいか?」

「願いがあるのねっ? いいわいいわねいいじゃない! 言って言って、全力で叶えるわっ!」

 

 机を挟んだ向こう側、循……擁冥と一緒に喜びの舞を舞っていた風蓮が、机にバンッと手をついて元気に笑う。

 身を乗り出すって言葉がとてもよく合う姿勢である。

 

「そか。全力か。じゃあこっち来て擁冥の真似を完全にしながら一日過ごしてくれ」

「解ったわっ!」

 

 にぱぁっ、と弾ける笑顔って言葉そのままな表情で、隣へ回り込む、なんてことをせずに机に片手をついたままシュパァンッと机を飛び越えてきた風蓮が、隣の椅子にシュタッと座ると……沈黙した。

 

「………」

「………」

「…………、……、……」

 

 静かな時間の訪れである。

 無言。実に無言。

 でも机の向こう側では擁冥がまだ喜びの舞を踊っているわけで。

 

「………」

「………」

「………?」

 

 静かだ。……が、同時に暇だ。

 擁冥ごっこは別のなにかが無ければ辛い。

 なので仕事も終わったことだし、書類を整理して届けることにした。

 こんな場所でもきちんと輸送便というものがあるのだ。毎日運送してくれる人が居る。

 データだけじゃあどうにもならないものってあるもんな。

 そういう時は、日に数度やってくる絡繰運送業の人に書類を預けるのだ。

 ちなみにこの運送業、べつに一人がやっているわけではなく、この町からこの町まで、っていう距離を数人で決めていて、受け渡しては移動してっていうものだ。あとは空港から空輸される。

 データだけで済むものならスキャンして送ってで済むんだけどな。それじゃあダメっていうものが世界には多すぎる。

 あと、自分で行って、目の前で書いて、証明しなきゃあいけないものとか。日本でいうと、役所等でする手続きの大半っていうのはそういうものだろう。

 というわけで預ける作業も終わって、執務室じゃなく自室に戻ってきたわけだが……なんでか二人が離れない。

 自室に戻ってもどこに行くでもなく俺の横に来て、まるでシューティングゲームのビット的オプションのように、二人して一定距離を保ってついてくる。

 

「ん、っと、どうした? 風蓮」

「………、……!」

 

 服を引っ張られて隣を見れば、無表情を維持し続けようとする風蓮の顔がぷるぷる震えていた。

 ……それだけでなんとなく察する。こいつに……というか、孫家の人に喋らずに黙って居ろっていうのはほぼ拷問だ。

 でも全力でって言っちゃってるもんなぁこの娘。

 

「……全力」

「……っ」

「………」

「………!」

 

 続行するようだった。

 気合を込めて無表情ってどうなんだろうな、うん。

 と思ったら、なんかぶつぶつ言ってる。え? なに?

 

(……循、循ね。ええ、解ってる。循はいい娘よ。私の我が儘にも付き合ってくれて、引っ張り回したって愚痴もこぼさない。そんな循だから、私だって遠慮なく振る舞えるし、循が何かを願ってくれたら全力で叶えるつもり。そんな循の真似を、と思ってみたけど、ああ、悔しいったらない。私、循の外のことしか知らないじゃない。なにが好き? なにが嫌い? 趣味はなに? なりたかったものは? ああなんてこと、なにも知らない。あれだけ一緒に居てあれだけいろいろなことをしたというのに。情けない。ああ情けない)

「?」

 

 ……うん。

 なにやら無表情のままぶちぶちこぼしてるんだが……小声すぎて拾えない。

 

(母さんと瑜母さまは仲が良かった……のよね。なんだか母さんの耳を引っ張っていたような思い出しかないけど。自由で、自由すぎて、お酒が好きでちゃらんぽらんで。でも、誰よりも呉を愛していた。そこはいいの。ええそこは。問題なのは……)

 

 と、そんな時。扉がドヴァーンと無遠慮に開けられ、外からやってくるは───元呉王であった。

 

「はぁ~いっ、か~ずとっ♪ 今日の分の書類、もう渡したって聞いたから遊びに来たわよ~っ」

(───この、相手の都合ってものを考えないところと───!)

「あれ? 紹に循も居たの? やっほ、一緒に飲む? って、あれ? 紹? ちょ、いたぁーったたたたたあぁーっ!?」

(このっ! 無駄に高い露出!!)

 

 ……急に来訪した雪蓮を前に、目を鋭くさせた風蓮が急に立ち上がり、ふよふよと浮いていた擁冥の羽衣みたいなものを手に取ると、それを雪蓮の体に巻いて思いっきり締め付けた。

 ああ、なんか懐かしい光景。

 前の時も、やたらと雪蓮の体を拘束したがったっけ。や、拘束が目的じゃないっていうのは解っているんだが。

 ああ、擁冥が取られた羽衣もどきを取り返そうと引っ張って……あ、おーい? そっち引っ張ると余計に「いたたいたいたいたぁああたたたた!! いたっ……いたいって言ってんでしょーがぁっ!!」……怒号が落ちました。

 

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