というわけで見たものが楽しいと書きたくなる症候群2。
とりあえず一巻分まるまる。分割するかは……チェックしてから決めましゃう。
ところであなたは石×つば派ですか? 石×ミコ派ですか?
僕は石×つば派でしたが(先に好きになった存在を応援したい派)、可能性とか出されちゃうと簡単に揺れるアホウです。なので現在は石×こば派です。
恋にならなかった想いがあった? じゃあ押し花とメッセージカードは無かったけど理解者は居たら? とか、そんな可能性。
性格とか口調とか違ったらごめんなさい。
校務仮面は青春したい①
【OH LOVE ME ばかなミスタァァァーーーッ!!】
人を好きになり、告白し、結ばれる。
それはとても素晴らしいことだと誰もが言う。
だがそれは間違いである!!
それは
それは搾取する側される側という力関係!? 否である!!
それは利用する者される者という分かりきった二人の関係が故!? 否であるッッ!!
そう、それは!!
恋をして結ばれた二人に対して恋愛感情と友情を抱いていた者は、そんなものは素晴らしいとは言わないからである!!
告白以前の問題! 大事な二人が結ばれたとて、悔しさに涙する者も居るのだ!!
さて、そんな恋愛話から遠く離れた位置にて、遠い目でお空を眺める一人の少年が居た。
つい先ほどまで、知り合いらの生まれ変わりのような少年少女の登校風景を眺め、「いいなぁ……俺もこんな青春時代を歩きたかったなぁ」なんて呟いていた少年であった。
そんな少年だが、気づけば見知らぬ土地へ立っていた。
「……………………まただよ」
そんな彼の名は、北郷一刀といった。
愛し愛されたことは数知れず! 異世界へと飛ばされ、右も左も分からぬながらも生き延び成長し、やがて天下統一などという偉業を達成してみせた超・高校生である!!
子を作り孫を抱いて曾孫も目にして世界の果てまで人を愛した、正真正銘他人のために生を貫いた聖人とも呼べる人物! それが彼、北郷一刀である!
「………」
見下ろせば小さな自分! 川を見つけて覗いてみれば、高校生とは呼べない背丈の自分! ここで彼は、自分がそれこそ少年になっていることに気づいた!
「衣食住の確保だな」
そして迅速に己の状況を理解、優先すべきを弾き出したのだった。再就職だな、とニヒルに笑った誰かさんのような顔で。
凛々しくも、ちっとも子供らしくない頭脳で答えをはじき出す───こんなものは彼の経験からすれば造作もないことだ───が。そんな彼の心内はといえば、
(まずい! やばい!! 子供で住所も不定とか孤児院直行状況じゃないか!! なんで鬼退治して仲間たちの平和を見届けた先で子供になってるんだよ俺えぇええっ!!)
こんなものであった。
気づけば立っていた見慣れない景色。それを軽く歩いてみれば、ずりずりと引きずる高校生あたりが着ていたような私服。子供になる前に彼が着ていたものである。
こんな姿で町を歩けばいずれ誰かに呼び止められるかポリスに質問されるだろう。しかし戸籍も住民票もない自分にいったいなにが出来るのか。そこまで考えると、彼は“あれ? 別に孤児院でもよくね? そこを拠点にしてびっくり人間として売り出して日銭を稼ぐとかで……よくね?”なんて考えを巡らせていた。
幸い彼には氣と呼吸法がある。開墾技術がEXレベルであるものの、こんな時代で勝手にそんなことをしようものなら同心さんに質問されることは明白!! 衣食住を揃えるにしても考えながら行動する必要があるのだ!
(───問題ない……! これまで培ってきた知識技能経験で、この世界にもすぐに順応してやる───!)
彼には自負があった!
今日までを必死に、しかし生きてきた自負が! この程度ではくじけたりなどしないという、確固たる自信が!!
……しかし正直、再び江戸時代を歩くことになるとは思わなかったらしい。
そう、時は1800年代。
これは一人の少年になった男が、“賑やかな青春を送りたかったなぁ”とこぼしたために生まれた、小さな、けれど確かにそこにある青春の物語である!
× × ×
青春!!
若者にそれは何かと訊ねれば、馬鹿やった少年時代や甘酸っぱぁ~い経験を重ねた日々を振り返ることだろう。
些細なことから友達と喧嘩してしまったあの時。
理由もわからず気になっていたあの子が急に泣き出し、なんか自分が悪いことになったあの日。
理不尽を噛み締めて、女って怖いわぁ~とか思ったあの日や、男同士で馬鹿やったほうが楽しいゼと遊んでいたら、高校生活最後あたりになってなんか急に恋人欲しい! と焦ったあの日。
そう、人は、特に男子たる者は中学~高校終了を青春と呼ぶ者が多い! べつに好いた惚れたなんて大学でもいんじゃね? 就職してからでもいんじゃね? だってまだまだ自由に遊びたいじゃん? と言う者も居るだろう。だがしかし! そんな遊びを恋人と、一人の自分が思ってみなかったほどに楽しめたならそれはどれだけ“あれ? これ、俺ってすっげ青春してね?”と思えるだろうか!
つまり当人達の匙加減で決まるのが青春というものではあるが、青春は求めなければ輝かないものである。断言しよう、勝手にやってきた青春は青春とは呼べないものである。何故ならば、本人が動き、掴み取るような、たった一歩の努力もないものなど、それは本人にとっての青春ではなく、他人の青春に掠るような接触をしただけにすぎないからである。
その点において彼、北郷一刀の青春はといえば───
(え……青春? 青春って……え? 三国駆けずり回ってましたが? その前は及川と馬鹿話をしたりして、せっかく女の子がいっぱい居る場所に入ったってのに“浮足立たない俺、格好いい”とかどこかで考えてたんだよきっと。不動さんに惨敗して、女性に苦手意識を持ったってのもあるかもだけど。でもそういうの自覚する前に途中から三国志だっただろ? 俺の青春って、学生生活って、振り返れば振り返るほどカオスじゃないか。なんで俺だけあんな青春歩まなきゃいけなかったんだよ、おかしいじゃないか)
そんなことを考えながら日々を歩み、成長したのが今、この生徒会に存在する男、北郷一刀。
住所不定で衣食住の衣すらもなかった彼が、200年前に拾われ育ったのがここ、秀知院学園である。
彼は拾われた恩を胸に、氣を通わせ
頭から被った大き目の紙袋には二つの穴が空き、額部分には“校務”の文字。素顔を知りたく、それを取ろうと思った人は数知れず。
取れるものならば取ってみよとばかりに、校務仮面への挑戦は校長直々に許可されており、真剣勝負を挑んだ体育会系部員が空飛び地を滑りゲロ吐いてのたうち回ったことなどそれこそ数知れず。
生徒会メンバーからのどんな要望をも受け入れる彼が、ほぼ唯一受け入れないことこそが、校務仮面の正体を明かすことであった。というのも少年の頃に拾われ、育ち、高校生あたりの容姿になった途端に成長が止まってからが問題になった。
性格良し、努力家で顔も良しと来ると、いろいろあるのだ。たとえば拾ってくれた恩人の妻がイケナイ方向に走りそうになったり、通っている女性がホの字になったり。
なのでいつしか顔を隠すことになり、そしてそれは現代に到るまで続いていた。成長しない彼を周囲は“座敷童的ななにかだ”と思うようになり、それもまた現代まで続き、校務仮面の正体は絶対に秘密ということになっている。
さて、そんな彼だが怒ったところを見た者などほぼ誰も居ないという。
常より温厚、困っている人を助けるのは当然といった風情で、手を差し伸べた回数は百や二百どころのものではない。
自分に出来ることならばと率先して人を助け、救い、癒してきた。
そんな彼が怒った瞬間を見たことがある者は、とある蜂蜜水好きの少女か、とある中等部の、現・高等部一年の彼ら彼女らくらいであろう。
彼は自分のためには怒らず、他人のために怒る。
そんな事実が過去にあり、現在は───
「あ~、そういえばですね~、懸賞で映画のペアチケットが当たったんですが、私、家の方針でこういったものを見るのは禁止されてまして」
「あ、ペアチケットだったら俺も持ってるぞ。福引で当たった」
「へー……なんのチケットですか? 仮面先輩」
「とっとり鳥の助」
「激レアチケットじゃないですか」
「え? そうなの?」
恐らく大して変わってはいない。
ここ、生徒会室にはそれぞれ、彼が原因の人間や間接的に関わった人間が集まっている。
まず会長に
副会長に
書記に
会計に
会計監査に
庶務に
そして生徒会補佐として校務仮面───秀知院二百年の歴史の中、名を謎のままとして君臨する謎多き北郷である! ……北郷である。
普段は温厚な彼が大暴れ将軍として暴れ、とある生徒に大江戸ドライバーをかましたのは大変に有名であり、しかしけれどもそれが正義のために執行されたものであることは誰もが知ることとなり、故に現会計が反省文を書く必要もなく、現会計監査が苦労を背負うこともなく、もろもろの事情によりここに集結。
伊井野ミコは次期生徒会長を目指して、生徒会にて勉強中である。
「あ、鳥の助のチケットでしたら私も持ってますよー? ラブリフレインのと一緒で、こっちもペアチケットですけど。はい、仮面くん」
「え? 俺に渡すの? ……なんか急に鳥の助が2ペアになっちゃったんだけど。優、行く?」
「え? 男二人でってことですか?」
「や、こばちゃんかミコと。俺は校務があるから」
「な、なんで私が石上なんかと……」
「こらミコー? 特に悪いことをされたわけでもないのに、なんかとか言わない」
「あぅ……ご、ごめんなさい……ぁ、って、それ以前に! 学校にそんな、チケットなんて持ってきてはいけません! ダメです! よくないです!」
風紀委員として見過ごせないことを前に、目付き鋭く声を張り上げるは伊井野ミコ。しかしその勢いも背後から藤原に抱き締められ、いい子いい子~♪ と撫でられる内にヘニョヘニョになっていった。
「や、僕はいいですよ。他の女子と一緒にとかヘンな噂立てられても困りますし」
「石上うるさい。大体それ私のセリフだから」
しかし聞き捨てならぬと復活! ぴしゃりと言い放つ伊井野だが、
「まあペアチケットで女子と一緒にミコが出かけたら、ヘンな噂は立てられるよな」
「“私のセリフ”ってそういう意味じゃありません校務先輩! あと石上! 笑わないで!」
基本隙だらけで言いくるめられやすい彼女は、軽口に翻弄されてあれよあれよと話題の方向を逸らされていった。
「仮面くんはほんとにミコちゃんと石上くんの扱いに慣れてますよねー……」
「そうでもないって。……御行とかぐやはどうする? チケット余ってるそうだけど」
「ペアチケットか……そういえば週末は珍しくオフだったな」
「私も特に用事はありません」
「そうか。だったら四宮、俺達で───」
「あ、そうでした。会長、かぐやさん、なんでもこの映画、男女で見に行くと二人は結ばれるジンクスがあるそうなんですよー! 素敵ですよねー!」
「「「うそぉお!? とっとり鳥の助で!?」」」
生徒会、激震───!!
よもやの鳥の助のジンクス効果に、石上と伊井野は顔を見合わせ、校務仮面は素直に驚いた!
「こっちのラブリフレインの方ですよ!! 仮面くんも石上くんもミコちゃんもどうしたらそんな結論が出てくるんですか!!」
「藤原先輩は普段の自分の言動とか考えてからそういうこと言ってください」
「猛省しろ、千花」
「ご、ごめんなさい藤原先輩……! 本音を曲げるわけには……!」
「ミコちゃああああん!?」
そんなわけで、チケットが計6枚。
とっとり鳥の助が4枚に、ラブリフレインが2枚。
ここに集いし6人は、これを巡って頭脳戦を───
「うう……でもどの道私は行けないので、どなたか貰っちゃってくださいぃ……」
「あ、俺も校務があるから無理だ」
「僕もちょっと野暮用というか、やらなきゃいけな……やるべきことがあるので」
「私は勉強が……」
───繰り広げるまでもなく、決着しそうである。
だがしかし、四人の反応が大したものではなくとも、ここに脳を燃やすが如く回転させる天才が二人居た!
(くうっ───! 藤原さんに懸賞を偽装してまでチケットを用意させたというのに、他のペアチケットが四枚も……!! ここで迂闊にも恋愛映画に手を伸ばしたりしようものなら───!!)
【ほぉう? なんだ四宮、我先にと言わんばかりに恋愛映画のペアチケットなんぞに手を伸ばしおって。そんなにこの俺とペアで出掛けたかったのか? ……お可愛い奴め】
(ぁあああああああああっ!! ありえないっ! そんなことはありえません! NO! 乙女的にNO!!)
(くっ……どうする!? 四宮とデ……映画……しかもタダ!! オフの日にこんなことなど二度とないかもしれんというのに……! だがここであいつらが“気が変わったから”なんて理由で動くとして、俺が誰かに取られまいと手に取ろうものなら……!)
【あらあら会長……タダという言葉に弱いのはうすうす感づいてはいましたが、そこまで貪欲にペアチケットを。ペ ア チ ケ ッ トを手にして。いったい誰をそこまで熱心に誘いたかったのでしょう……私達以外の四人は用事がある、と仰っているのに……あらあらまあまあ…………お可愛いこと】
(ぁぁぁぁぁああああああっ!! ありえん! 俺から手にすることはだけは断じてありえん!!)
(ならばここは───)
(つまりここは───)
((如何に相手に先にチケットを取らせるか───!!))
二人の瞳に闘志が燃え盛る!!
天才たちの頭脳は一つの目標に向けて回転し、相手の行動・言動パターンを想定、切り返しや逃げ道を塞ぐ返事を用意し、これならばと思ったところで───
「ていうか仮面先輩、校務が無い日に行けばいいんじゃないですか?」
石上が動いた。
ひょいとチケットを2枚手にし、一枚を校務仮面に渡すのだった。
「あ、名案」
「僕、仮面先輩となら気負いなく行けるんで」
「青春だな」
「仮面先輩って青春って言葉、好きですよね」
「正直、友情や愛情に夢見てる部分はある」
「青臭いっすね」
「青春だもの」
わははと笑い合う二人。その反対側から、ビッと差し出される鳥の助チケット。
「? ……ミコ?」
「わ、私も校務先輩なら、藤原先輩以上に尊敬も信頼もしていますから……そのあの、実は興味があったりしまして……!」
「うわ、風紀委員が異性交遊しようとしてる」
「石上うるさい!! いいのよこれは勉強なんだから! 社会勉強なんだから! こばちゃんもそう言ってたもん!」
「え? 俺鳥の助2回見るの? ていうか優はこばちと見るとかは?」
「こばちの方に用事が集中しちゃってまして。やっておくべきことっていうのもその負担を無くすための勉強だったんですけど、まあたぶん行動読まれてると思うんで」
「あー……優とこばち、ほんと相手の行動とか双子かってくらい読むもんなぁ。お互いがお互いを似ているって認識してる上に、それで同族嫌悪みたいなのがないって、ほんと珍しいと思う」
「お互いが足りないものを補えて、お互いがその行動に尊敬出来るなんて、そんな相手が出来るとは思ってもみませんでしたけどね」
照れくさそうに口元をむずりと緩ませる石上優。
中等部時代に正義感を宿した、自身も認める中二病めいた行動を取ったために誤解を生みそうになった彼だが、その際に割って入った伊井野ミコと大仏こばち、そして校務仮面によってそれらを避け、現在に到る。
その際のストーカー疑惑にて大仏こばちがとある行動を起こしたために、事件は一気に解決に向かい、一人の女生徒が泣き、一人の男子生徒も絶望し、二人とも秀知院を去った。
その後、なんやかんやと伊井野ミコと大仏こばちとの付き合いが続き、主に“危なっかしいミコを見守り隊”的な位置でこばちとの関係が深まり、現在の石上優はといえば髪型もかつてのままに、大仏こばちと付き合っているのである。
……ちなみに。危なっかしい伊井野を見守る中で世話を焼いたり、被らなくてもいい泥を被る羽目になること数十回。彼はまるでダメな妹に物事を言いつけるような口調が定着してしまい、その反発としてか伊井野も口調を荒げ、互いに嫌いとまではいかなくとも好きではない。ようするに“友人の厄介な恋人”、“恋人の厄介な友人”という立ち位置で納得出来てしまう存在である。
まあそんな過去の話はともあれ、である。
「……よし。というわけで鳥の助は俺達でもらうから。ほら、御行、かぐや。自動的に余りものってことになっちゃうけど」
「「は?」」
そうして残されたラブリフレインが、それぞれ一枚ずつ白銀とかぐやの手に握らされたのであった。
本日の勝敗───引き分け