がっこうぐらし 龍を宿す中学生   作:北方守護

7 / 8
第5話 ジッケン

武昭が小学校で少女を保護してから数日経った、ある日の事……

 

「それで武昭君は、瑠璃(るり)ちゃんのお姉さんを探しに行くの?」

朝食を食べながらこれからの予定を話していると圭が武昭に言った。

 

「えぇ、俺ならそれなりに遠出出来ますから」

 

「けど、何処に行くの?目星があるの?」

美樹の質問に武昭は返答した。

 

「はい、瑠璃ちゃんの話を聞いてると先輩達と同じ制服みたいなんですよね、そうだよね?瑠璃ちゃん」

 

「うん!りーねーはお姉ちゃん達と同じ服を着て学校に行ってたよ」 「ワン!」

武昭の横に座っていた瑠璃と太郎丸が返事をした。

 

「それで、少しの間家を空ける事になるんで先輩達には瑠璃ちゃんと太郎丸をお願いしたいんですよ」

 

「うん、私は構わないよ 美樹も良いよね?」

 

「そうだね、私も良いよ……けどね武昭君、無理はしたらダメだから……」

 

「はい、分かりました……瑠璃ちゃん、俺は少しの間いなくなるけど、2人の言う事をちゃんと聞くんだよ?」

 

「うん…分かった……」

瑠璃は落ち込んでいたが武昭に頭を撫でられて笑顔になった。

 

そして、朝食を終えて、武昭は家を出る準備を終えていた。

 

「それじゃ、行ってきます……先輩達と瑠璃ちゃんだけなら食料は、まだ保ちますし、この敷地内から出なければゾンビ達からも見つからないんで」

 

「うん、さっきも言ったけど武昭君も気をつけてね」

 

「そうだよ、ちゃんとココに帰って来る事」

 

「はい、分かりました……それじゃ行って来ます」

武昭は2人に言うと外に出た。


武昭は街中を歩きながら心中のディスと話していた。

 

「うーん……ディス、このペースならどれ位で行けそうだ?」

 

《これならば、1、2時間と言った所だな……ん?武昭、気づいているか?》

 

「気づいてるって……あぁ、少し空が暗くなってきてるって事だろ?多分、雨が降るなって……ポツポツ来てるな……」

 

《そうだな、それとゾンビ達も動きが変わってきてる》

 

「やっぱり、ゾンビになっても元の人間だった頃の記憶があるみたいだな」

武昭が周りを見てるとゾンビ達が雨を避ける様な仕草をしてる事に気付いた。

 

「けど……近くにいたら……〔パン!パン!〕襲って来るのは変わらないみたいだなっ!」

武昭は近くに来たゾンビ達の頭を拳で殴って砕いていた。

 

「それと……コイツらは腐敗はしても活動停止が起こらないんだな」

 

《うむ、我が知るアンデッドの類は時が来れば勝手に朽ちていくものだがな》

 

「そうか……雨が本降りになってきたな……空気防布(エアーシェイド)

武昭が魔法を唱えると体の周りに薄い空気の壁が出来て雨を防いでいた。

 

「うん、これで濡れなくなったか……っと結構な強さだな」

 

《そうだな……それよりも早く目的地に行くぞ……》

 

「あぁ、そうだな……ん?なぁディス……何かゾンビ達が同じ方向に向かってないか?」

 

《確かに武昭の言う通りだな……だが、向かってる者達は皆制服を着てるみたいだ》

 

「ディスの言う通りだな……そりゃ生前の記憶があるなら学生達は学校だろ……ん?何か嫌な感じがするな……俺も行ってみるか」

武昭はゾンビ達が目指す方向に向かった。

 

 

武昭がゾンビ達の向かう場所に着くと目的地でもあった【私立巡ヶ丘学園高等学校】と看板がありグラウンド内には多数のゾンビ達が歩いていた。

 

「おいおい、制服を見た時から何となくは思ってたけど予想通りだと……怖いもんがあるけど……な!」雷槍(サンダージャベリン)!!」

武昭は近づいてきたゾンビに短めの雷を発生させて始末した。

 

「へっ、中を見るにはコイツらを始末しといた方が良いみたいだな!ディス!!」

 

《あぁ!分かっている!!》

 

「来たれ!流れ続ける水よ!!」 《来たれ!轟き鳴る雷よ!!》

 

《「魔法接続(マジックコネクト)!!蒼水轟雷(そうすいごうらい)!!」》

武昭とディスが同時に魔法を唱えると右手に水、左手に雷がそれぞれ発生し、それを合わせると凄まじい威力が巻き起こりゾンビ達を始末した。

 

「ふぅ、久し振りに使ったけど特に問題は無いな」

 

《そうだな……ん? 武昭、あの建物の中から変な気配を感じるぞ》

 

「変な気配って、なんだ?」

 

《うむ、ゾンビの気配はするのだがそれに普通の人間の気配が合わさった様な気配もするのだ》

 

「それって、もしかしたら感染してまだ間もないんじゃないか?ディス、それは何処からだ?」

 

《あぁ、あの建物の下の方からだ》

 

「そうか……なら、言ってみるか……」

武昭はディスが感じた気配の場所に向かった。

 

武昭がディスの感じた場所に行くと学校の地下空間だった。

 

「何で、こんな普通の学校にこんなデカいスペースがあるんだ?……それに……」

 

《あぁ、誰かが開けた形跡があったな……ん?武昭》

 

「分かってる……何かがコッチに来てる……」

武昭が地下二階に降りると床が水浸しになっている中を誰かが歩いている音がした。

 

「さてと……どんなゾンビが来るのかね……なっ!?」

そのゾンビを見た武昭には見覚えがあった。

 

「まさか…佐倉……先生?……」

 

《その様だな……確か以前武昭が学校見学に来た時に案内してくれた者だったな……》

 

「佐倉先生……ディス、《アレを試してみるぞ》……」

 

《武昭……以前から言っているがお前がやりたいのなら好きにやれ……我はそれを手助けするだけだ》

「あぁ……ありがとうなディス……佐倉先生……水球牢(アクアプリズン)

武昭が床に手をつけて魔法を唱えると佐倉先生の体を頭だけを出して水の球が出来た。

 

「破龍変化……〔ザシュ!〕クッ!……先生……まだ意識があるなら……俺の声が聞こえるなら……()()を食べてください……」

武昭は両腕を龍に変化させると右手の爪で左腕の一部を抉り落として佐倉先生の口元に差し出した。

 

《武昭、無理にでも口に入れろ……お前ならば問題はない……》

 

「そうだな……先生……すいません!」

 

〔ガハッ!……ゴクッ!〕

 

「よしっ!体内に取り込んだか!行くぞ!ディス!!」

 

《あぁ!分かっている!!》

佐倉先生が飲み込んだのを確認すると武昭はディスと共に魔法を紡いだ。

 

「我が血肉を取り込みし者よ!」《我が命を受け入れ悪しき者を浄化せよ!!》

 

《「破龍清華(はりゅうせいか)!!」》

2人が魔法を紡ぎ終えると水球が佐倉先生を全て飲み込み、その表面には龍の鱗模様が浮かび上がった。

 

「ふぅ……とりあえずは大丈夫だな……」

 

《あぁ、だがこれが上手くいくかどうかはまだ分からないぞ》

 

「俺も理解してるよ……けど、彼女なら必ず上手く行く筈だ……」

武昭はディスと話しながら水球の前で状況を見ていた。

 

 

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。